1. 顧客を成功へ導く!カスタマーサクセスの本質と成功事例
  2. カスタマーサクセスとは? SaaSビジネスにおける重要性
    1. カスタマーサクセスの本質と目的
    2. サブスクリプション時代の必須戦略
    3. 市場の現状と将来展望
  3. 各社が実践するカスタマーサクセス事例:Sansan、Salesforce、サイボウズ
    1. 大手SaaS企業の戦略:Salesforceの解約率低減策
    2. オンボーディングと顧客エンゲージメントの強化:SmartHRとイルシル
    3. コミュニティとブランド体験によるロイヤルティ向上:メルカリ、スターバックス、花王
  4. IIoT時代に不可欠なカスタマーサクセス:スマートHR、タイムミー、クラウド
    1. IIoTとカスタマーサクセスの融合:データ活用による顧客価値創出
    2. デジタル化を推進するプラットフォームのCS戦略:SmartHRといい生活
    3. AIが加速するカスタマーサクセスの未来
  5. サブスクリプション時代に必須の「顧客の成功」10の原則
    1. 顧客中心のアプローチとオンボーディングの重要性
    2. データに基づいたパーソナライズされた支援
    3. 攻めのCSへの転換とLTV最大化
  6. カスタマーサクセスを応用する:化粧品、看護、ソフトブレーン、ソフトバンク
    1. 業界を超えたCSの可能性:化粧品・看護分野での応用
    2. ソフトウェア・通信業界におけるCSの深化:ソフトブレーン、ソフトバンク
    3. 企業の成長を支えるカスタマーサクセス組織
  7. まとめ
  8. よくある質問
    1. Q: カスタマーサクセスとは具体的にどのような活動ですか?
    2. Q: SaaSビジネスにおいてカスタマーサクセスが重要視されるのはなぜですか?
    3. Q: SansanやSalesforceのカスタマーサクセス事例について教えてください。
    4. Q: 看護や化粧品業界でもカスタマーサクセスは応用できますか?
    5. Q: カスタマーサクセスを成功させるための10の原則とは?

顧客を成功へ導く!カスタマーサクセスの本質と成功事例

ビジネスモデルがサブスクリプションへと移行する中、顧客との長期的な関係構築は企業の成長に不可欠となりました。その鍵を握るのが「カスタマーサクセス」です。

本記事では、カスタマーサクセスの本質から、具体的な成功事例、そして未来の展望までを詳しく解説します。最新の市場動向(2024年~2025年)も交えながら、顧客を成功へ導くための戦略を探っていきましょう。

カスタマーサクセスとは? SaaSビジネスにおける重要性

カスタマーサクセスの本質と目的

カスタマーサクセス(CS)は、企業が提供する製品やサービスを通じて、顧客が真に望む成果を達成できるよう、能動的かつ継続的に支援する活動です。これは従来のカスタマーサポートとは一線を画します。

カスタマーサポートが「問題発生時に対応する」という受動的なアプローチであるのに対し、CSは顧客が課題に気づく前に先回りして支援を行い、顧客の目標達成を強力に後押しします。この支援を通じて、顧客は製品・サービスの価値を最大限に引き出し、企業は顧客との長期的な関係を構築します。まさに、顧客を成功へと導くための戦略的なパートナーシップと言えるでしょう。

CSの本質は、単に顧客満足度を高めるだけでなく、顧客の成功が企業の成長に直結するという考え方に基づいています。顧客が製品を最大限に活用し、期待する結果を得られれば、顧客は継続してサービスを利用し、さらにはアップセルやクロスセルへとつながる可能性が高まります。

結果として、企業の売上向上やLTV(顧客生涯価値)の最大化に不可欠な戦略となります。近年では、単なる「顧客の成功」に留まらず、「顧客の成長」や「顧客との共創」といった、より深いパートナーシップを目指す動きが加速しています。企業と顧客が一体となって未来を創造していく、そんな新たなビジネスの形をCSは提案しています。

サブスクリプション時代の必須戦略

今日のビジネス環境では、製品やサービスを「買い切り型」で提供するモデルから、「サブスクリプション(SaaS)型」へと大きく移行しています。この変革期において、カスタマーサクセスはビジネスの成否を分ける極めて重要な要素となっています。

サブスクリプションモデルでは、顧客が継続してサービスを利用し続けることが収益の基盤となるため、顧客との長期的な関係構築が何よりも重視されます。一度獲得した顧客が満足せず離反してしまえば、新規顧客獲得にかかったコストが無駄になるだけでなく、安定的な収益基盤も損なわれてしまいます。

そのため、顧客満足度を常に高め、解約率(チャーンレート)を低減することがサブスクリプションビジネスにおいては最優先事項となります。カスタマーサクセスは、顧客が製品を最大限に活用し、価値を実感できるよう積極的にサポートすることで、この課題を解決します。

具体的には、顧客の利用状況を把握し、適切なタイミングで情報提供や機能活用のアドバイスを行うことで、顧客体験(CX)を向上させます。顧客が成功すればするほど、そのロイヤルティは高まり、結果としてLTVが向上し、企業は持続的な成長を実現できます。まさに、サブスクリプション時代における企業の成長エンジンとも言える、不可欠な戦略なのです。

市場の現状と将来展望

カスタマーサクセス市場は、その重要性の高まりとともに急速な成長を遂げています。SaaS型カスタマーサクセスツールの市場規模は、2023年に約342.6億円と推計され、2024年には441.2億円、2025年には549.3億円へと拡大すると予測されており、その勢いは止まることを知りません。

さらに広範な世界のカスタマーサクセスマネジメント市場では、2024年に22億6,683万米ドルと評価され、2033年には1億6,563.7万米ドルに達するという驚異的な成長が見込まれており、予測期間中の年平均成長率(CAGR)は24.73%に上ります。この数値は、企業がカスタマーサクセスへの投資をいかに重視しているかを明確に示しています。

一方で、2025年の調査では「カスタマーサクセス」という言葉の認知度がまだ低いことも明らかになっています。全体の21.9%しか聞いたことがなく、その内容を理解している人は2.8%にとどまるというデータは、今後の市場拡大と同時に、その概念のさらなる啓蒙が必要であることを示唆しています。

しかし、その導入は着実に進んでおり、カスタマーサクセスに取り組む企業は49.5%に達し、特に大企業ではその傾向が顕著です。従業員規模10,000人以上の企業では60.2%が取り組んでいます。経営層の約40%が予算増加を検討していることからも、将来への期待の高さが伺えます。AI技術の活用も進んでおり、約8割の企業で導入され、効率化と顧客満足度向上に貢献しています。この市場は今後も、テクノロジーの進化とビジネスモデルの変化に牽引され、さらなる発展が期待されます。

各社が実践するカスタマーサクセス事例:Sansan、Salesforce、サイボウズ

大手SaaS企業の戦略:Salesforceの解約率低減策

世界的なCRMのリーディングカンパニーであるSalesforceは、カスタマーサクセスの重要性を早くから認識し、その実践において業界を牽引してきました。彼らが直面していた課題の一つは、オンボーディングに時間がかかり、結果として顧客が製品の価値を実感する前に離脱してしまうことでした。

この課題に対し、Salesforceは単なるトラブルシューティングに留まらない、能動的なカスタマーサクセス施策を徹底しています。顧客が製品をスムーズに導入し、その機能を最大限に活用できるよう、専任のカスタマーサクセスマネージャー(CSM)が伴走します。

具体的には、顧客のビジネス目標を深く理解し、それに合わせた活用プランを提案。定期的なチェックインや活用状況のモニタリングを通じて、潜在的な課題を早期に発見し、解決策を提供します。これにより、顧客はSalesforce製品を最大限に活用し、ビジネス成果を上げることが可能になります。

この手厚いサポート体制は、顧客満足度を高め、解約率(チャーンレート)の低減に大きく貢献しており、Salesforceの持続的な成長を支える根幹となっています。彼らの事例は、顧客が「成功する」ことを最優先することで、企業もまた成功するというカスタマーサクセスの本質を示しています。

オンボーディングと顧客エンゲージメントの強化:SmartHRとイルシル

カスタマーサクセスにおいて、製品やサービスの導入初期段階である「オンボーディング」の質は、その後の顧客エンゲージメントとLTVに大きく影響します。株式会社SmartHRは、人事労務クラウドの導入から活用促進までを支援する強固なCS体制を構築しており、その成功事例として高く評価されています。

SmartHRでは、複雑な人事労務業務を効率化するために、顧客がシステムをスムーズに使いこなせるよう、丁寧な初期設定支援や研修プログラムを提供しています。これにより、顧客は早期にSmartHRの価値を実感し、継続利用へとつながっています。

また、株式会社ルビスが提供するAIプレゼン資料作成ツール「イルシル」も、オンボーディング効率化で顕著な成果を上げています。彼らは効果的なオンボーディングプロセスを構築することで、無料トライアルから有料プランへの転換率を向上させることに成功しました。これは、ユーザーがプロダクトの価値を迅速に理解し、自身の課題解決に役立つと確信できた結果です。

さらに、マーケティングオートメーションツールの「BowNow」も、オンボーディングプロセスを仕組み化することで、顧客がマーケティング活動をスムーズに開始し、成果を出せるよう支援しています。これらの事例は、初期段階でのきめ細やかなサポートが、顧客の成功と企業の成長に不可欠であることを示しています。

コミュニティとブランド体験によるロイヤルティ向上:メルカリ、スターバックス、花王

カスタマーサクセスは、単に製品機能のサポートに留まらず、顧客が所属感や特別な体験を感じられるコミュニティ形成やブランド体験の提供にも広がりを見せています。フリマアプリのメルカリは、活発なユーザーコミュニティの形成と、それを通じたユーザー満足度の最大化に注力するCS戦略を展開しています。

ユーザー同士の交流や情報共有の場を提供することで、プロダクトへの愛着を深め、継続利用を促しています。これは、ユーザーが自身のニーズや課題を共有し、互いに助け合うことで、より深いレベルでの「成功体験」を創出していると言えるでしょう。

また、スターバックスは、その卓越したブランド体験を通じて顧客ロイヤルティを醸成する代表例です。高品質なコーヒーだけでなく、居心地の良い空間、パーソナライズされたサービス、そしてバリスタとの温かいコミュニケーションが、顧客にとって「特別な場所」としての価値を生み出しています。

これにより、顧客は単なる商品の購入者ではなく、ブランドの熱心なファンへと変わります。花王もまた、マスマーケティングから脱却し、消費者との継続的な関係構築に注力しており、製品提供だけでなく、顧客のライフスタイルに寄り添う情報提供やコミュニティ活動を通じて、長期的なエンゲージメントを築いています。これらの事例は、顧客を単なる消費者としてではなく、共創パートナーとして捉えることで、より強固な顧客基盤を築くカスタマーサクセスの可能性を示唆しています。

IIoT時代に不可欠なカスタマーサクセス:スマートHR、タイムミー、クラウド

IIoTとカスタマーサクセスの融合:データ活用による顧客価値創出

インダストリアルIoT(IIoT)の進化は、製造業やインフラ分野に革新をもたらし、膨大なデータをリアルタイムで収集・分析する能力を提供しています。このIIoT時代において、カスタマーサクセスは、単なるソフトウェアビジネスに留まらない、新たな価値創出の基盤となりつつあります。

IIoTデバイスから得られる稼働状況、パフォーマンスデータ、異常検知などの情報を活用することで、企業は顧客の機器やシステムの利用状況を詳細に把握できるようになります。これにより、問題が発生する前に予兆を検知し、プロアクティブ(先回り)なメンテナンス提案や最適化アドバイスを提供することが可能になります。

例えば、製造装置の故障リスクを事前に通知したり、エネルギー消費の非効率な点を特定して改善策を提示したりすることで、顧客は予期せぬダウンタイムを回避し、運用コストを削減できます。これは、まさに「顧客が望む成果(生産性向上、コスト削減など)を達成できるように能動的に支援する」というカスタマーサクセスの本質を具現化したものです。

データに基づいたパーソナライズされた支援は、顧客体験(CX)を飛躍的に向上させ、顧客にとって企業が不可欠なパートナーとなることを促します。IIoTとカスタマーサクセスの融合は、企業の競争優位性を確立し、新たな収益源を開拓する鍵となるでしょう。

デジタル化を推進するプラットフォームのCS戦略:SmartHRといい生活

デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む現代において、企業が提供するデジタルプラットフォームは、顧客の業務効率化や生産性向上に直結します。これらのプラットフォームにおいて、カスタマーサクセスは顧客がその価値を最大限に引き出すための重要な役割を担っています。

前述の株式会社SmartHRは、人事労務クラウドとして、導入支援から活用促進まで手厚いCS体制を構築し、多くの企業がDXを成功させる上で不可欠な存在となっています。複雑な人事労務のデジタル化を円滑に進めるため、専任のCSMが顧客の組織課題に寄り添い、最適な運用方法を提案することで、顧客は単にシステムを使うだけでなく、業務プロセス全体の改善を実現しています。

また、不動産ITプラットフォームを提供する株式会社いい生活も、カスタマーサクセスの実践で注目すべき成果を上げています。彼らは新機能のリリース後、その認知度を7倍に向上させることに成功しました。これは、単に機能を開発するだけでなく、その新機能が顧客のどのような課題を解決し、どのようなメリットをもたらすのかを明確に伝え、活用を促すカスタマーサクセス活動が功を奏した結果と言えます。

新機能の価値を顧客に確実に届け、その活用を支援することで、顧客はビジネス成果を最大化し、プラットフォームへのロイヤルティを深めることができます。デジタルプラットフォームの普及とともに、このようなCS戦略の重要性は一層高まるでしょう。

AIが加速するカスタマーサクセスの未来

カスタマーサクセスの領域において、AI(人工知能)技術の活用は目覚ましい進展を遂げており、その未来を大きく変えようとしています。すでにカスタマーサクセスに取り組んでいる企業の約8割(74.5%)ではAIの導入・活用が進んでおり、多くの企業がその効果を実感しています。

AIは、顧客データの分析、行動予測、パーソナライズされた情報提供、そして自動化された顧客対応など、多岐にわたる側面でCS業務を強化します。例えば、膨大な顧客データから解約リスクの高い顧客を特定し、先回りして対策を講じることが可能になります。

また、チャットボットやバーチャルアシスタントは、顧客からのよくある質問に24時間365日対応し、人間のCSMがより複雑で高度な課題解決に集中できる環境を創出します。これにより、業務効率化が飛躍的に向上し、CSMはより戦略的な役割を担うことができるようになります。

さらに、AIは顧客の利用状況やフィードバックを分析し、プロダクトの改善点や新機能開発のヒントを抽出する能力も持ち合わせています。これにより、顧客のニーズに基づいた製品開発が加速し、顧客体験の継続的な向上へと繋がります。AIの進化とともに、カスタマーサクセスはよりパーソナライズされ、効率的で、顧客の成功に深く貢献する戦略へと発展していくでしょう。

サブスクリプション時代に必須の「顧客の成功」10の原則

顧客中心のアプローチとオンボーディングの重要性

サブスクリプションビジネスが主流となった現代において、「顧客の成功」は企業の持続的な成長に不可欠な原則です。その基盤となるのは、徹底した顧客中心のアプローチです。単に製品を売るだけでなく、顧客が製品を通じてどのような課題を解決し、どのような目標を達成したいのかを深く理解することが出発点となります。

この理解に基づき、顧客一人ひとりにパーソナライズされたサポートを提供することが求められます。

特に、製品やサービスの導入初期段階であるオンボーディングは極めて重要です。前述のSalesforceやイルシルの事例が示すように、スムーズで効果的なオンボーディングは、顧客が早期に製品価値を実感し、継続利用へと繋がる第一歩となります。

この段階で顧客が「使いこなせない」「効果が出ない」と感じてしまえば、早期の解約へと繋がりかねません。そのため、顧客が迷うことなく、成功体験を積めるよう、導入支援、初期設定サポート、活用トレーニングなどを惜しみなく提供する原則が不可欠です。この時期に顧客との信頼関係を築き、プロダクトの価値を最大限に引き出すための道筋を示すことが、その後の長期的な関係構築の鍵となります。

データに基づいたパーソナライズされた支援

現代のカスタマーサクセスにおいて、感覚や経験だけに頼るアプローチは限界を迎えています。顧客の成功を導くためには、データに基づいた客観的な分析と、それに基づくパーソナライズされた支援が不可欠です。

顧客の利用状況、ログイン頻度、利用機能、問い合わせ履歴、そしてフィードバックデータなどを継続的に収集・分析することで、顧客が抱える潜在的な課題や成功の兆候を早期に発見できます。例えば、特定の機能の利用が滞っている顧客に対しては、その機能の活用方法に関する情報を提供したり、より詳しい説明の機会を設けたりすることが考えられます。

このデータ活用は、解約リスクの高い顧客を事前に特定し、プロアクティブ(先回り)な対応を可能にします。顧客が課題に直面する前に支援の手を差し伸べることで、チャーンレートの低減に大きく貢献します。また、顧客の利用状況やニーズに合わせて、アップセルやクロスセルの適切なタイミングを見極めることにも繋がります。

AIの進化により、このデータ分析とパーソナライゼーションはさらに高度化しています。顧客の行動パターンから未来を予測し、最適なコンテンツやサポートを自動で提供できるようになることで、CSMはより戦略的な役割に注力できるという原則が成り立ちます。データは、顧客の「声なき声」を聞き、真の成功へと導く羅針盤となるのです。

攻めのCSへの転換とLTV最大化

従来のカスタマーサクセスは、顧客の解約を防ぐ「守りのCS」としての側面が強かったかもしれません。しかし、現在の市場動向と企業の事例が示すように、カスタマーサクセスは「攻めのCS」へと転換し、企業の売上やLTV(顧客生涯価値)最大化に直接貢献する戦略として位置づけられています。

この原則は、顧客の成功を追求することが、最終的に企業の収益向上に繋がるという確信に基づいています。顧客が製品を通じて目標を達成し、満足度が高まれば、自然と継続利用の意思が高まり、さらに上位プランへの移行や関連サービスの導入(アップセル・クロスセル)にも繋がりやすくなります。

SalesforceやSmartHR、いい生活といった企業の事例は、この「攻めのCS」の具体的な成果を示しています。オンボーディングの効率化による有料化率向上、新機能の認知度向上による活用促進などは、まさに顧客の成功を企業の成長へと直結させる好例です。

さらに、顧客からのフィードバックを積極的に収集し、製品改善や新機能開発に活かすことで、顧客が本当に求める価値を提供し続けることができます。これにより、顧客は「このサービスは常に進化し、自分たちのニーズに応えてくれる」と感じ、企業への信頼とロイヤルティを一層深めます。顧客との共創を通じて、双方の成長を実現する、これこそが「攻めのCS」の原則であり、サブスクリプション時代における必須の戦略と言えるでしょう。

カスタマーサクセスを応用する:化粧品、看護、ソフトブレーン、ソフトバンク

業界を超えたCSの可能性:化粧品・看護分野での応用

カスタマーサクセスの概念は、SaaS業界を中心に発展してきましたが、その本質は「顧客の目標達成を能動的に支援する」ことにあるため、業種や業界を問わず応用が可能です。例えば、化粧品業界では、製品購入後の顧客体験が非常に重要です。

単に製品を提供するだけでなく、その化粧品が顧客の肌の悩みをどのように解決し、どのような理想の自分に近づけるのかをサポートすることがカスタマーサクセスとなります。具体的には、パーソナルなカウンセリング、使用方法の継続的なアドバイス、肌の変化に合わせた製品提案、そして顧客のライフスタイルに合わせた美容情報の提供などが考えられます。これにより、顧客は製品を通じて「美しくなる」という目標を達成し、ブランドへの高いロイヤルティを築くことができます。花王の事例も、マスマーケティングから顧客との継続的な関係構築へのシフトを示唆しており、これは化粧品分野におけるCSの応用例と言えるでしょう。

一方、看護分野においても、カスタマーサクセスの考え方は患者やその家族の「成功」(健康回復、QOL向上、安心感の獲得など)に貢献する形で応用できます。患者の状態に応じた最適なケアプランの提案、医療機関や地域との連携サポート、退院後の生活支援、そして精神的なサポートに至るまで、患者が安心して療養生活を送れるよう能動的に支援する活動は、まさにカスタマーサクセスの実践です。

患者や家族の不安を軽減し、彼らの「成功」に寄り添うことで、医療サービスの質向上と患者満足度の最大化を図ることができます。このように、顧客の「成功」を支援するという本質は、多様な業界で価値を発揮する可能性を秘めています。

ソフトウェア・通信業界におけるCSの深化:ソフトブレーン、ソフトバンク

ソフトウェア業界では、製品導入後の活用支援が企業の成長に直結するため、カスタマーサクセスは特に重要な戦略として位置づけられています。株式会社ソフトブレーンは、営業支援システム(SFA)などのソフトウェアを提供する企業として、顧客が自社の営業活動を効果的に改善し、目標達成できるようきめ細やかなCSを提供しています。

SFAは導入すればすぐに成果が出るものではなく、組織内の浸透や運用方法の最適化が不可欠です。ソフトブレーンは、顧客企業の営業課題を深く理解し、システムの機能と顧客の業務フローを効果的に結びつけるためのコンサルティングやトレーニングを継続的に実施することで、顧客の営業成績向上という「成功」を支援しています。

また、通信業界のソフトバンクも、単なる回線提供者としてではなく、顧客のデジタルライフを豊かにするパートナーとしてカスタマーサクセスを深化させています。例えば、最新のテクノロジーを活用したスマートデバイスの選び方から、最適な料金プラン、セキュリティ対策、そしてデバイスのトラブルシューティングまで、顧客がスムーズにデジタルサービスを利用できるよう多角的にサポートしています。

法人顧客に対しては、DX推進を支援するソリューション提供と合わせて、導入後の安定稼働や活用促進までをサポートする体制を強化しています。通信サービスは生活やビジネスの基盤となるため、顧客が途切れることなく安心して利用できる環境を提供し、その上で新しい価値を享受できるよう支援することは、企業の信頼性とLTV向上に不可欠なCSの応用と言えるでしょう。

企業の成長を支えるカスタマーサクセス組織

カスタマーサクセスは、単なる部署や機能ではなく、企業文化として組織全体に浸透させることでその真価を発揮します。優れたカスタマーサクセス組織は、顧客の声を吸い上げ、それを製品開発、マーケティング、営業といった他部署と連携して活用することで、企業全体の成長を牽引します。

例えば、メルカリがユーザーコミュニティを通じて顧客満足度を最大化しているように、顧客のフィードバックはプロダクト改善の貴重な源泉となります。カスタマーサクセスチームは、顧客との最前線で得られたインサイトを社内に共有し、プロダクトマネージャーはそれに基づき新機能の開発や既存機能の改善を行う。営業チームは、顧客の成功事例を次の商談で活用し、マーケティングチームは成功事例を広く発信することで、企業のブランド価値を高めます。

カスタマーサクセスへの投資は、単なるコストではなく、企業の将来の成長に向けた戦略的な投資と認識されるべきです。カスタマーサクセスに取り組んでいる企業の経営層の約40%が「予算を増加させる」と回答していることからも、その重要性への理解が深まっていることが伺えます。

組織全体で「顧客の成功」を共通の目標として掲げ、部門間の壁を越えて連携を強化することで、企業は顧客からの信頼を不動のものとし、持続的な成長を実現できます。カスタマーサクセスは、顧客との長期的なパートナーシップを築き、企業価値を向上させるための不可欠な要素であり、その応用範囲は今後もさらに拡大していくことでしょう。