再雇用後の手取り・年収・年金!損しないための計算方法と注意点

  1. 再雇用後の「手取り」はどう変わる?基本給と諸手当を徹底解説
    1. 基本給の大幅減は避けられない?平均的な減少率
    2. 給与減額をサポートする給付金とその落とし穴
    3. 手取り額を最大化するための社会保険料・税金の知識
  2. 再雇用で「年収」はどれくらい減る?平均的な減少率と年収アップの可能性
    1. 平均年収のリアル:データで見る再雇用後の現実
    2. 年収減少を補う「給付金」を賢く活用する
    3. 年収アップの可能性を探る:スキルアップと働き方改革
  3. 再雇用と「年金」の関係!受給額は変わる?知っておきたい制度の仕組み
    1. 働きながら年金をもらう「在職老齢年金制度」の基礎知識
    2. 年金受給額を最大化する「繰り上げ・繰り下げ」の選択肢
    3. 2026年4月からの制度改正で何が変わる?
  4. 「ボーナス」「福利厚生」「手当」はどうなる?再雇用で変わる待遇
    1. ボーナスは期待できる?評価制度と支給基準の変化
    2. 交通費、住宅手当…諸手当の見直しと福利厚生の変化
    3. 雇用形態・労働時間で変わる待遇の違い
  5. シミュレーションでわかる!再雇用後のリアルな収支
    1. 定年前と再雇用後の給与・手取り比較シミュレーション
    2. 働き方と年金の関係:在職老齢年金制度の影響を計算
    3. 総合的な収支を最大化する戦略と注意点
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 再雇用で手取りはどれくらい減りますか?
    2. Q: 再雇用後の年収の平均はどれくらいですか?
    3. Q: 再雇用されると年金受給額は減りますか?
    4. Q: 再雇用でもボーナスはもらえますか?
    5. Q: 野村證券の再雇用では年収はどのくらいになりますか?

再雇用後の「手取り」はどう変わる?基本給と諸手当を徹底解説

基本給の大幅減は避けられない?平均的な減少率

定年退職後、多くの企業で再雇用制度が導入されていますが、一般的に現役時代に比べて給与が減額される傾向にあります。国税庁の「令和4年民間給与実態統計調査」によると、60~64歳の男性の平均給与は569万円、女性は267万円となっています。

これは、55~59歳と比較して男性で約17.5%、女性で約18.8%の減少です。この数字は、再雇用後の給与が大幅に減少する可能性を示唆しており、多くの人が直面する現実と言えるでしょう。

給与減額の主な理由は、再雇用後の役職や業務範囲、責任の度合いが軽減されることが挙げられます。ただし、仕事内容や責任が以前と変わらないにもかかわらず、不自然な減額や不合理な差がある場合は、「同一労働同一賃金」の原則に照らして違法となる可能性もあるため、契約内容の確認が重要です。

給与減額をサポートする給付金とその落とし穴

再雇用後の収入減を補う制度として、雇用保険から支給される「高年齢雇用継続基本給付金」があります。これは、60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者で、60歳以降の賃金が60歳時点の75%未満に低下した場合に支給される制度です。

賃金の低下率に応じて支給率が決まり、最大で60歳時点の賃金の15%が支給されていました。

しかし、この制度には大きな変更点があります。それは、2025年4月1日以降に60歳に達した方は、高年齢雇用継続給付金の支給率が最大15%から最大10%に引き下げられるという点です。これは、今後の再雇用を考える上で非常に重要な「落とし穴」と言えるでしょう。

また、一度退職し失業給付を受給した後に再就職した場合に賃金が再就職前の75%未満になった場合には、「高年齢再就職給付金」が支給される制度もあります。これらの給付金は収入減を補う重要な制度ですが、受給には複雑な条件があるため、ハローワークなどでの事前の確認が不可欠です。

手取り額を最大化するための社会保険料・税金の知識

再雇用後の手取り額は、基本給だけでなく、そこから差し引かれる社会保険料(厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料、介護保険料)や税金(所得税、住民税)によって大きく左右されます。給与が減額されれば、それに伴って社会保険料や税金も下がりますが、手取り額の減少を完全に防ぐことはできません。

ここで知っておきたいのが、「同日得喪(どうじつとくそう)」という制度です。これは、定年退職と同時に再雇用され、同じ会社で働き続ける場合に利用できる手続きです。

同日得喪の手続きを行うと、社会保険の資格を一旦喪失し、再雇用後の低い給与を元に新たな標準報酬月額が設定されます。これにより、再雇用後の社会保険料の負担を軽減し、手取り額を増やす効果が期待できる場合があります。

ただし、社会保険料が下がると、将来受け取る年金額にも影響が出る可能性があるため、長期的な視点で検討し、専門家と相談することをおすすめします。65歳以上の方も一定の条件を満たせば雇用保険に加入し、保険料を納付する必要があります。

再雇用で「年収」はどれくらい減る?平均的な減少率と年収アップの可能性

平均年収のリアル:データで見る再雇用後の現実

再雇用後の年収は、多くの人にとって大きな関心事でしょう。前述の通り、国税庁のデータによれば、60~64歳の平均給与は55~59歳と比較して男性で約17.5%、女性で約18.8%減少しています。

この数字を具体的に見てみましょう。例えば、55~59歳で年収700万円だった男性が再雇用された場合、年収が約577万円に減少する可能性があります。同様に、年収300万円だった女性の場合、約243万円になる計算です。

この年収の減少は、再雇用後の業務内容や責任の範囲が変更されることに加え、給与体系が月給制や時給制に移行したり、各種手当が削減されたりすることによって生じます。定年前と全く同じ水準の年収を維持することは、極めて困難なのが現実です。

年収減少を補う「給付金」を賢く活用する

再雇用後の年収減少は避けられないことが多いですが、先ほども触れた「高年齢雇用継続基本給付金」や「高年齢再就職給付金」は、その減少分を一時的に補う重要な役割を果たします。

これらの給付金は、雇用保険の制度として設けられており、受給条件を満たせば、再雇用後の賃金に上乗せして支給されます。これにより、手取り額が増え、生活設計にゆとりが生まれるでしょう。

特に、2025年4月以降に60歳に達する方は、高年齢雇用継続給付金の支給率が引き下げられるため、ご自身の適用時期を確認し、正確な情報を把握することが肝心です。申請手続きや受給条件は複雑な場合があるため、管轄のハローワークに早めに相談し、計画的に活用することが賢明です。

年収アップの可能性を探る:スキルアップと働き方改革

再雇用後の年収減少が一般的とはいえ、年収アップの可能性が全くないわけではありません。自身の経験や専門性を活かし、より責任のある業務や専門職として再雇用されることで、高い給与水準を維持できる場合があります。

また、新たなスキルの習得や資格取得に努めることで、自身の市場価値を高め、企業との交渉を通じて給与の見直しを求めることも可能です。例えば、これまで培ったマネジメントスキルを活かし、若手育成や特定プロジェクトのリーダーとして貢献する道も考えられます。

近年では、兼業・副業を認める企業も増えており、本業以外の収入源を確保することで、実質的な世帯年収を増やす選択肢もあります。柔軟な働き方を検討し、自身の強みを最大限に活かすことで、再雇用後も充実した収入を得る道を探ることが重要です。

再雇用と「年金」の関係!受給額は変わる?知っておきたい制度の仕組み

働きながら年金をもらう「在職老齢年金制度」の基礎知識

60歳以降も働きながら老齢厚生年金を受け取る場合、「在職老齢年金制度」が適用されます。これは、毎月の給与と年金の合計額が一定額を超えると、年金の一部または全部が支給停止される制度です。年金を受給しながら働く高齢者が、受け取る年金額が減ってしまう可能性があり、注意が必要です。

この制度は、老齢厚生年金の月額と総報酬月額相当額(毎月の給与と直近1年間の賞与を12で割った額)の合計が、特定の基準額を超えた場合に適用されます。以前は60歳台前半と65歳以上で基準額が異なっていましたが、2022年4月からは、65歳以上と同じ基準に統一されました

この制度を理解せずに働き続けると、想定よりも年金受給額が少なくなり、家計に大きな影響を及ぼす可能性があります。ご自身の給与と年金のバランスを事前に把握し、計画を立てることが非常に重要です。

年金受給額を最大化する「繰り上げ・繰り下げ」の選択肢

年金の受給開始時期は、原則として65歳ですが、希望すれば60歳から75歳の間で自由に選ぶことができます。これを「繰り上げ受給」と「繰り下げ受給」と呼びます。

「繰り上げ受給」は、65歳よりも前に年金を受け取り始めることで、1ヶ月あたり0.4%または0.5%の割合で年金が減額されます。例えば、60歳から繰り上げ受給を開始すると、最大で24%も年金額が減ってしまう可能性があります。

一方、「繰り下げ受給」は、65歳よりも後に年金を受け取り始めることで、1ヶ月あたり0.7%の割合で年金が増額されます。もし75歳まで繰り下げると、年金が最大で84%も増額されることになります。

どちらを選ぶかは、ご自身の健康状態、ライフプラン、経済状況によって大きく異なります。長生きするほど繰り下げ受給のメリットは大きくなりますが、受け取り開始が遅れるリスクもあります。平均余命などを考慮し、慎重に判断することが大切です。

2026年4月からの制度改正で何が変わる?

在職老齢年金制度に関して、非常に重要な変更が予定されています。2026年4月以降、在職老齢年金の支給停止基準額が、現在の51万円から62万円(※)に引き上げられることになります。

この改正は、高齢者が年金を満額受給しながら働きやすくなることを目的としており、これにより新たに約20万人が年金を全額受給できるようになると見込まれています。

支給停止基準額が引き上げられることで、より高い給与を得ながらでも年金がカットされにくくなります。これは、働き続ける意欲のある高齢者にとって、経済的なメリットが大きい朗報と言えるでしょう。

※2026年4月1日施行時には、名目賃金変動率に応じて改定されるため、62万円よりも高い額になる可能性があります。最新の情報を随時確認し、ご自身の働き方や年金受給計画にどう影響するかを把握しておくことが重要です。

「ボーナス」「福利厚生」「手当」はどうなる?再雇用で変わる待遇

ボーナスは期待できる?評価制度と支給基準の変化

再雇用後のボーナスについては、現役時代と同じように期待できるとは限りません。多くの企業では、再雇用契約において賞与の支給がないか、支給されたとしても大幅に減額されるケースが一般的です。場合によっては、年俸制に移行し、月給にボーナス分が含まれる形になることもあります。

仮にボーナスが支給される場合でも、評価基準が現役社員とは異なる、あるいは支給率が低いといった条件が付されることが多いでしょう。成果連動型の評価制度に移行し、個人の業績によってボーナス額が大きく変動する可能性もあります。

再雇用契約を結ぶ際には、ボーナスの有無、支給基準、評価方法などを具体的に確認することが非常に重要です。期待値と現実のギャップをなくすためにも、疑問点は遠慮なく会社に質問しましょう。

交通費、住宅手当…諸手当の見直しと福利厚生の変化

現役時代に支給されていた各種手当や福利厚生も、再雇用後に見直されることがよくあります。例えば、住宅手当、家族手当、役職手当、単身赴任手当などが支給対象外となるケースは珍しくありません。

通勤手当は引き続き支給されることが多いものの、その支給基準(上限額など)が現役時代と変わる可能性もあります。また、退職金制度や企業年金制度、財形貯蓄制度など、現役社員向けの福利厚生が、再雇用社員には適用されないこともあります。

健康診断や慶弔見舞金など、基本的な福利厚生は維持されることが多いですが、会社の方針や契約形態によって内容は大きく異なります。再雇用契約書を詳細に確認し、自身の生活設計に必要な手当や福利厚生がどうなるのかを把握しておくことが不可欠です。

雇用形態・労働時間で変わる待遇の違い

再雇用後の待遇は、どのような雇用形態で、どれくらいの時間働くかによって大きく変わってきます。多くの企業では、再雇用にあたり正社員から契約社員や嘱託社員へと雇用形態が変更されます。

契約社員や嘱託社員の場合、給与体系が時給制や月給制となり、賞与や各種手当の支給基準が正社員とは異なるのが一般的です。また、労働時間についても、フルタイム勤務から短時間勤務へ移行する選択肢もあります。

短時間勤務を選択すると、給与だけでなく、厚生年金や健康保険の標準報酬月額も下がるため、将来受け取る年金額にも影響を与える可能性があります。契約期間や契約更新の有無も重要な確認事項です。自身のライフスタイルや経済状況に合わせて、最も適した雇用形態と労働時間を選択できるよう、事前に十分な情報収集と検討を行いましょう。

シミュレーションでわかる!再雇用後のリアルな収支

定年前と再雇用後の給与・手取り比較シミュレーション

具体的な数字で、再雇用後の収支の変化を見てみましょう。例えば、定年前(50代後半)に月給50万円、ボーナス年2回で年収700万円だった男性を想定します。

再雇用後、給与が平均的な減少率である17.5%減少すると仮定すると、月給は約41万2,500円、ボーナスなしとすれば年収は約495万円になります。社会保険料や所得税・住民税も給与減額に伴い減少しますが、手取り額は定年前と比較して大幅に減少するでしょう。

ここで、高年齢雇用継続給付金の有無や支給率の違いも考慮します。例えば、賃金が75%未満に低下した場合、給付金が支給されます。旧制度(2025年3月までに60歳に達した場合)と新制度(2025年4月以降に60歳に達した場合)で、手取り額にどれほどの差が出るかを見てみましょう。

以下の表は、簡略化した例です。(※社会保険料・税金は概算)

項目 定年前(年収700万円) 再雇用後(年収495万円) 再雇用後+給付金(旧制度:最大15%) 再雇用後+給付金(新制度:最大10%)
月額給与(額面) 50万円 41万2,500円 41万2,500円 41万2,500円
給付金(月額) 0円 0円 約6万1,875円(※15%) 約4万1,250円(※10%)
額面合計(給与+給付金) 50万円 41万2,500円 約47万4,375円 約45万3,750円
手取り額(概算) 約40万円 約33万円 約38万円 約36万円

このシミュレーションから、給付金が手取り額の減少をある程度カバーできることがわかりますが、新制度ではその効果が小さくなることも見て取れます。

働き方と年金の関係:在職老齢年金制度の影響を計算

上記の男性が再雇用後に月額給与41万2,500円を受け取り、さらに老齢厚生年金を月15万円受給すると仮定しましょう。

在職老齢年金制度では、年金月額と総報酬月額相当額の合計が、支給停止調整額を超えると年金がカットされます。

  • 給与月額: 41万2,500円
  • 年金月額: 15万円
  • 合計: 56万2,500円

2026年4月からの支給停止基準額は62万円(※変動可能性あり)です。この基準額であれば、合計額が56万2,500円の場合、年金は全額受給できることになります。しかし、それ以前の基準(51万円)であれば、一部がカットされていた可能性があります。

年金の繰り下げ受給を選択した場合、年金月額は増えます。例えば、70歳まで繰り下げれば年金は42%増額され、月額21万3,000円となります。この場合、給与と年金の合計は62万5,500円となり、2026年4月以降の基準額を超えて年金の一部がカットされる可能性があります。

このように、働き方や年金受給のタイミングによって、最終的な手取りや年金額は大きく変動します。ご自身の状況に合わせて、最適な選択肢を検討することが重要です。

総合的な収支を最大化する戦略と注意点

再雇用後の収支を最大化するためには、単一の制度に頼るのではなく、複数の制度を複合的に活用し、戦略を立てることが重要です。

  1. 給付金の活用: 高年齢雇用継続給付金や高年齢再就職給付金は、年収減少を補う貴重な財源です。受給条件を確認し、対象となる場合は積極的に申請しましょう。
  2. 在職老齢年金制度の理解と働き方の調整: 自分の給与と年金の合計が支給停止調整額を超えない範囲で働くなど、働き方を調整することも一案です。特に2026年4月からの基準額引き上げは大きな影響を与えます。
  3. 年金受給の繰り下げ検討: 健康状態や経済状況が許すのであれば、年金の繰り下げ受給も有力な選択肢です。生涯にわたる年金受給額を増やす効果が期待できます。
  4. 「同日得喪」の検討: 社会保険料の負担軽減に繋がる「同日得喪」制度も検討の価値がありますが、将来の年金受給額への影響も考慮し、慎重に判断しましょう。
  5. 労働条件の交渉: 再雇用契約を結ぶ際には、業務内容や責任範囲、給与、手当、福利厚生などをしっかりと確認し、可能であれば会社と交渉することも大切です。

再雇用は、長年の経験を活かし、社会と繋がり続けるための大切な機会です。これらの情報とシミュレーションを参考に、損をしない賢い選択をして、充実したセカンドキャリアを築きましょう。不明な点があれば、社会保険労務士などの専門家やハローワークに相談することをおすすめします。