1. 内定通知書とは?基本のキを理解しよう
    1. 内定通知書の法的性質と一般的な記載事項
    2. 内定通知書の送付タイミングと法的効力
    3. 内定通知書と労働条件通知書の違いと役割
  2. 学校提出・就職活動での内定通知書の役割
    1. 推薦応募における内定通知書の特別対応
    2. 就職活動における内定通知書の活用場面
    3. 内定辞退と学校への影響
  3. 外国人留学生採用における内定通知書の重要性
    1. 増加する外国人労働者と採用ニーズの変化
    2. 在留資格と内定通知書:手続き上の注意点
    3. 日本語レベルと入社後の活躍支援
  4. 多様な雇用形態と内定通知書:派遣・業務委託・役員
    1. 派遣社員採用における内定通知書
    2. 業務委託・フリーランスとの契約合意書
    3. 役員採用における内定通知書と選任手続き
  5. 内定通知書に関するよくある質問とその回答
    1. 内定通知書を受け取ったらまず何をすべきですか?
    2. 内定辞退はいつまで可能ですか?
    3. 内定取り消しになることはありますか?
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 内定通知書とは具体的にどのような書類ですか?
    2. Q: 内定通知書を学校に提出する必要はありますか?
    3. Q: 外国人留学生が内定通知書を受け取った場合、次に何をすべきですか?
    4. Q: 無期雇用派遣や業務委託の場合、内定通知書はどのように扱われますか?
    5. Q: 内定通知書は、入社意思を確定する前に受け取っても問題ないですか?

内定通知書とは?基本のキを理解しよう

内定通知書の法的性質と一般的な記載事項

内定通知書は、企業が求職者に対し、採用を決定したことを正式に通知する重要な書類です。

発行に法的な義務はありませんが、採用後のトラブルを未然に防ぎ、双方の認識を明確にするため、ほとんどの企業が発行しています。

内定通知書を送付することで、企業と求職者の間で「条件付きの労働契約が成立した」とみなされることが一般的です。

正式な書式は定められていませんが、一般的には以下の項目が記載されます。

  • 日付:内定通知書の発行日
  • 内定者の氏名:内定者のフルネーム
  • 企業名:内定を出す企業名
  • 入社日:予定されている入社年月日
  • 就業場所:勤務する事業所や部署
  • 準備書類:入社までに提出が必要な書類(例:健康診断書、卒業証明書など)
  • 内定取り消し事由:内定が取り消される可能性がある条件(例:卒業不可、重大な経歴詐称など)

労働条件通知書とは異なり、内定通知書自体に法的な記載義務はありませんが、後に発行される労働条件通知書の内容と食い違いがないよう、最低限の労働条件(賃金や勤務場所など)を記載することが推奨されます。

内定通知書の送付タイミングと法的効力

内定通知書を送付するタイミングに法的な期限はありませんが、採用決定後、速やかに送付するのが一般的です。

多くの企業では、最終選考から10日以内に送付しているケースが見られます。

この迅速な対応は、求職者が他の企業の選考と比較検討する時間を確保し、企業への信頼感を高める上でも重要です。

内定通知書発行後の法的効力は非常に高く、企業側からの内定取り消しは原則として無効とされています。

これは、内定が一種の労働契約とみなされるため、正当な理由なく一方的に破棄することはできないからです。

一方で、内定者側からの内定辞退は、入社日の2週間前までであれば、法的に可能です。

民法627条により、雇用期間の定めのない労働契約は、いつでも解約を申し入れることができ、申し入れから2週間が経過すれば契約が終了すると定められています。

ただし、円満な関係を維持するためにも、辞退の際には速やかに企業へ連絡し、誠意をもって対応することが求められます。

内定通知書と労働条件通知書の違いと役割

内定通知書と労働条件通知書は、どちらも採用プロセスにおいて重要な書類ですが、その役割と法的性質には明確な違いがあります。

内定通知書は、企業が求職者に対して「あなたを採用します」という意思表示をするための書類であり、前述の通り「条件付きの労働契約が成立した」ことを示すものです。

主に入社意思の確認や入社手続きの案内といった役割を担います。

一方、労働条件通知書は、労働基準法第15条により、企業が労働者に対して書面で明示することが義務付けられている書類です。

賃金、労働時間、休日、就業場所、従事すべき業務、退職に関する事項など、具体的な労働条件を詳細に記載します。

これは、労働者が働く上で最低限知っておくべき情報を保証し、労働者保護の観点から非常に重要な意味を持ちます。

内定通知書は採用決定の通知、労働条件通知書は具体的な労働条件の明示という補完的な関係にあります。

通常、内定通知書が送付された後に、より具体的な労働条件を記した労働条件通知書が別途発行されるか、あるいは内定通知書に労働条件通知書の内容を兼ねて記載されるケースもあります。

学校提出・就職活動での内定通知書の役割

推薦応募における内定通知書の特別対応

高校や大学の推薦制度を利用して就職活動を行った場合、内定通知書の取り扱いには特別な配慮がされることがあります。

企業が学校の推薦を受けて内定者を採用した場合、学校側へ推薦へのお礼と内定報告を兼ねて、学校宛てに内定通知書を送付するケースがあります。

この場合、内定通知書の宛先は内定者個人ではなく、学校名や担当教員名が記載されることが一般的です。

これは、企業が学校との良好な関係を維持し、今後の採用活動においても協力を得るための重要なステップとなります。

学校側も、推薦した学生の内定状況を把握することで、推薦枠の有効活用やキャリア指導の改善に役立てます。

学生にとっては、学校推薦の内定通知書は、自身の進路が確定したことを学校に報告し、安心感を与える意味合いも持ちます。

そのため、推薦制度を利用した場合は、内定通知書の受け取り方や学校への提出方法について、事前に学校のキャリアセンターや担当教員に確認しておくことが大切です。

就職活動における内定通知書の活用場面

就職活動において内定通知書は、単なる採用の証にとどまらず、学生や求職者にとって様々な場面で活用される重要なツールとなります。

まず、複数の企業から内定を得た場合、内定通知書に記載されている入社日や就業場所、準備書類などの情報を比較検討する上で不可欠な資料となります。

これにより、自身のキャリアプランや希望に最も合致する企業を選択するための具体的な判断材料を得ることができます。

また、内定通知書は、自身の就職活動が成功したことを家族や友人に報告する際の具体的な証拠としても機能します。

特に、親元を離れて就職する学生にとっては、家族に安心感を与える意味合いも大きいです。

さらに、入社前のモチベーション維持にもつながります。

内定通知書を手にすることで、入社への期待感が高まり、残りの学生生活や現在の仕事への取り組み方も前向きになることが期待できます。

具体的な企業の提示内容を確認することで、入社後のキャリアをより明確にイメージし、入社準備を進める上での指針となるのです。

内定辞退と学校への影響

内定辞退は求職者の自由な権利として法的に認められていますが、特に学校推薦で応募し内定を得た後の辞退は、学校との関係に少なからず影響を及ぼす可能性があります。

企業は、学校の推薦を信頼して選考を行い、内定を出しています。

そのため、推薦した学生が内定を辞退した場合、企業によっては学校に対する信頼が損なわれたり、今後の採用活動でその学校からの推薦枠が減少したりする可能性もゼロではありません。

このような事態を避けるためにも、推薦で応募した学生は、内定辞退を検討する際に、事前に学校のキャリアセンターや担当教員に相談し、適切な対応方法を確認することが非常に重要です。

誠実な対応としては、内定辞退の意思を固めたら速やかに企業へ連絡し、辞退理由を丁寧に説明することが挙げられます。

また、承諾後の辞退は、企業に大きな迷惑をかけることになるため、内定承諾の前に、提示された条件を十分に検討し、後悔のない選択をすることが求められます。

内定辞退は慎重に行うべきであり、自身の選択が周囲に与える影響も考慮に入れる必要があるでしょう。

外国人留学生採用における内定通知書の重要性

増加する外国人労働者と採用ニーズの変化

日本の少子高齢化に伴う労働力不足は深刻化しており、外国人労働者の存在は企業にとって不可欠なものとなっています。

厚生労働省のデータによると、2024年には外国人労働者数が230万人を超え、過去最高を更新しました。

これは前年比12.4%増という驚異的な伸びであり、年間増加数は25万人を超え、日本全体の就業者増加数の60.5%を占めています。

外国人材の採用理由にも変化が見られます。

以前は「国籍を問わず優秀な人材確保のため」や「外国語が必要な業務」「インバウンド需要対策」が主流でしたが、近年では「ダイバーシティ推進のため」を理由に挙げる企業が増加傾向にあります。

これは、単なる労働力不足の補填だけでなく、多様な視点や価値観を取り入れることで組織を活性化しようとする企業の意識変化を示しています。

特に、IT・技術分野、建設業、サービス業、製造業など、幅広い分野で高度なスキルを持つ外国人労働者の需要が高まっており、AI、ロボティクス、ビッグデータなどの先端技術分野ではその傾向が顕著です。

在留資格と内定通知書:手続き上の注意点

外国人留学生を採用する際には、内定通知書の発行だけでなく、応募者の在留資格に関する厳格な確認が不可欠です。

企業は、採用にあたり、応募者の在留カードを確認し、就労制限がないか、在留期限内であるかなどを丁寧にチェックする必要があります。

在留資格によって日本での活動範囲が定められており、就労が認められていない資格や、特定の業種・職種に限定される資格もあります。

面接で応募者の国籍や出身地を直接質問することは差別につながる可能性があるため避けるべきです。</

代わりに、「現在の在留資格で当社の業務に従事可能か」「就労に関して制限があるか」といった、業務上必要な範囲での質問に限定することが推奨されます。

内定通知書は、入社後のビザ申請や在留資格変更手続きにおいて、雇用契約の存在を証明する重要な書類となることがあります。

そのため、内定通知後、企業側で準備が必要な雇用契約書や労働条件通知書などは不備なく準備し、滞りなく手続きを進められるようにすることが重要です。

大学や専門学校に在学中の外国人が内定を得た場合、卒業まで「特定活動」の在留資格で滞在を延長できる制度もあり、この期間中、一定の要件を満たせば資格外活動(アルバイト)も可能です。

日本語レベルと入社後の活躍支援

外国人留学生の採用において、日本語能力は企業の大きな関心事の一つです。

ある調査によると、外国人留学生の採用において、企業が求める日本語レベルは日本語能力試験N1~N2が93.1%を占めていることが示されています。

これは、日本の企業文化や業務内容を理解し、円滑なコミュニケーションを図る上で、高度な日本語能力が必須であると認識されているためです。

しかし、日本語レベルが高いからといって、入社後に必ず活躍できるとは限りません。

外国人留学生の入社後の活躍状況は69.0%にとどまっており、残りの3割以上が何らかの課題に直面していることが示唆されます。

この背景には、外国人採用に関する情報不足、企業側の受け入れ体制の整備不足、そして入社後の日本語教育の不足などが課題として挙げられます。

企業は、内定通知後の入社前研修や、入社後のメンター制度、多文化理解研修などを通じて、外国人材が最大限に能力を発揮できるような支援体制を構築することが求められます。

単に採用するだけでなく、入社後の定着と活躍をサポートすることが、ダイバーシティ推進の成功に繋がります。

多様な雇用形態と内定通知書:派遣・業務委託・役員

派遣社員採用における内定通知書

派遣社員として働く場合、一般的な正社員採用とは異なり、内定通知書の取り扱いにも違いがあります。

派遣社員は、派遣会社(派遣元企業)と雇用契約を結び、派遣先の企業で働く形態です。

そのため、内定通知書は、雇用主である派遣元企業から発行されるのが原則です。

派遣先の企業が派遣社員候補者に対して「内定」を出すことは、厳密には「派遣元企業を通じてその人材を受け入れたい」という事実上の採用意思表示に過ぎません。

派遣先企業から直接、内定通知書や労働条件通知書が発行されることはありません。

派遣社員は、派遣元企業との間で雇用契約が成立した後に、労働条件通知書を受け取り、派遣先での業務内容や労働条件の詳細を確認します。

この点が正社員採用との大きな違いであり、派遣として働くことを希望する方は、雇用主が派遣元企業であることを明確に理解しておく必要があります。

派遣先企業からの内定的な意思表示があったとしても、最終的な雇用契約は派遣元企業との間で行われることを念頭に置くことが重要です。

業務委託・フリーランスとの契約合意書

業務委託契約やフリーランスとの契約においては、従業員を雇用するわけではないため、「内定通知書」という概念は存在しません。

企業と業務委託契約を結ぶ個人事業主やフリーランスは、対等なビジネスパートナーとしての関係性にあります。

そのため、採用ではなく「契約」という形になり、内定通知書の代わりに「業務委託契約書」や、場合によっては「基本合意書」「覚書」といった書類が交わされます。

これらの契約書には、業務内容、成果物の定義、報酬、契約期間、秘密保持義務、損害賠償など、双方の権利と義務を明確にするための具体的な条項が記載されます。

特に、業務内容や報酬については、後々のトラブルを防ぐためにも、詳細かつ具体的に明記することが非常に重要です。

雇用契約ではないため、労働基準法などの労働関係法令は適用されず、社会保険や雇用保険などの加入義務もありません。

「内定」という言葉を使ってしまうと、後に雇用契約であると誤解される可能性もあるため、企業側は言葉遣いにも注意し、契約の種類を明確に伝える必要があります。

役員採用における内定通知書と選任手続き

企業の役員(取締役、監査役など)は、従業員とは異なる特別な立場にあり、その採用プロセスも一般の従業員とは異なります。

役員は、会社と「委任契約」を結ぶことが一般的であり、労働基準法上の労働者には該当しません。

そのため、一般の従業員向けの「内定通知書」という形式が発行されることは稀です。

しかし、役員として迎え入れる意思を伝えるために、口頭での内定の他、「役員就任承諾書」や「選任合意書」「覚書」といった書類が交わされることはあります。

これらの書類には、役職、報酬、就任日、権限、責任範囲などが記載されることが一般的です。

役員の選任は、最終的には株主総会の決議を経て正式に決定されます。

内定的な合意があったとしても、株主総会での承認が得られなければ、正式に役員に就任することはできません。

企業側は、役員候補者に対し、株主総会での承認が必要であることや、取締役としての職務内容、責任、報酬体系などを事前に十分に説明し、誤解が生じないように努める必要があります。

役員という重要なポジションだからこそ、透明性の高いプロセスと明確な合意形成が求められます。

内定通知書に関するよくある質問とその回答

内定通知書を受け取ったらまず何をすべきですか?

内定通知書を受け取ったら、まずはその内容を隅々まで丁寧に確認することが最も重要です。

特に以下の点に注意してチェックしましょう。

  • 入社日:希望通りか、または調整が必要か。
  • 就業場所:自宅からの通勤が可能か、引っ越しの必要性など。
  • 給与や待遇:事前に聞いていた内容と相違ないか。労働条件通知書が同封されていれば、そちらも詳細に確認。
  • 準備書類:入社までに何を、いつまでに準備する必要があるか。
  • 返答期限:内定承諾または辞退の意思表示期限。

内容に疑問点や不明な点があれば、遠慮せずに企業の人事担当者へ問い合わせて解消しましょう。

確認が済んだら、返答期限までに、内定を承諾するか、または辞退するかを企業に連絡します。

承諾する場合は、入社に向けて必要な手続きや準備を進めることになります。

辞退する場合は、できるだけ早く、丁寧な言葉遣いで連絡することがマナーです。

内定辞退はいつまで可能ですか?

内定辞退は、法的には入社日の2週間前までであれば可能です。

これは民法627条に定められており、期間の定めのない雇用契約は、解約の申し入れから2週間が経過すれば終了するとされているためです。

しかし、企業側からすれば、採用活動には多くの時間とコストがかかっており、内定辞退は少なからず影響を与えます。

そのため、法的な期限があるとはいえ、できるだけ早めに、そして誠意をもって辞退の意思を伝えることが望ましいです。

辞退の連絡は、まず電話で担当者に直接伝え、その後、書面(メールなど)でも改めて辞退の意思表示を行うのが一般的です。

理由を尋ねられた場合は、正直かつ丁寧に説明しましょう。

企業との良好な関係を保つためにも、一方的な連絡ではなく、相手への配慮を忘れないことが大切です。

特に、推薦応募で内定を得た場合は、学校への影響も考慮し、より慎重な対応が求められます。

内定取り消しになることはありますか?

内定通知書発行後の企業側からの内定取り消しは、原則として法的に無効とされています。

内定は「解約権留保付労働契約」とみなされ、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合に限り、例外的に取り消しが認められます。

具体的には、以下のような状況が該当する可能性があります。

  • 経営状況の著しい悪化:企業が事業を継続できないほど経営が悪化した場合。
  • 卒業不可・資格取得不可:入社条件としていた卒業や特定の資格取得ができなかった場合。
  • 健康状態の悪化:入社前に業務遂行が困難となる健康状態になった場合。
  • 経歴詐称:重大な経歴詐称が発覚した場合。
  • 犯罪行為:入社前に犯罪行為を犯し、逮捕・起訴された場合。

これらの事由が客観的に証明され、かつ企業が内定取り消し以外の手段を尽くしたと認められる場合にのみ、内定取り消しが正当と判断される可能性があります。

内定取り消しは、労働契約法における解雇権濫用の法理が準用されるため、企業側には非常に高いハードルが課せられます。

もし内定取り消しに納得がいかない場合は、労働基準監督署や弁護士に相談することを検討しましょう。