1. 賞与がもらえないのは仕方ない?知っておきたい労働基準法
    1. 賞与に法的な支給義務はないって本当?
    2. 就業規則や雇用契約書が重要になる理由
    3. 支給されない理由と会社の状況を理解する
  2. 賞与がもらえる条件とは?利益分配の仕組みを理解しよう
    1. 賞与が「もらえる人」と「もらえない人」の決定的な違い
    2. 会社の業績が賞与に与える影響
    3. 企業規模によって賞与額に差があるのはなぜ?
  3. 賞与をもらえるタイミングはいつ?連絡なしでも確認は必要
    1. 一般的な賞与の支給時期と連絡方法
    2. 支給日における在籍要件の落とし穴
    3. 賞与が支給されない場合の確認と相談先
  4. 賞与をもらったことがない人もいる?もらえる人とそうでない人の実態
    1. 賞与ゼロの企業の割合とその背景
    2. 年俸制と賞与の関係を再確認
    3. 「賞与あり」でも期待できないケースとは
  5. 賞与についてさらに詳しく知りたい方へ
    1. まずは自社の就業規則を確認しよう
    2. 会社に直接問い合わせる際のポイント
    3. 外部の専門機関に相談するタイミング
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 賞与は法律で定められたものですか?
    2. Q: 賞与がもらえない場合、会社に問い合わせても良いですか?
    3. Q: 賞与は会社の利益の何パーセントくらいが目安ですか?
    4. Q: 無給で働いている場合でも賞与はもらえますか?
    5. Q: 賞与の連絡がないのですが、どうすれば良いですか?

賞与がもらえないのは仕方ない?知っておきたい労働基準法

賞与に法的な支給義務はないって本当?

「ボーナスが出なかった…」と落ち込む前に知っておきたいのが、賞与(ボーナス)に関する法的な位置づけです。実は、毎月支払われる給与とは異なり、賞与には労働基準法による支給義務はありません。多くの企業で「寸志」や「一時金」といった名目で支給されることが多いですが、これは企業が従業員の日々の貢献を評価し、今後のモチベーション向上を目的として任意で行っているものなのです。

そのため、賞与の支給額、回数、時期などは、基本的に各企業の判断によって自由に設定されます。企業によっては、経営方針や業績状況に応じて、賞与を全く支給しないという選択をすることも可能です。近年では、約22%〜30%の会社で賞与が支給されていないという推計もあり、特に中小企業やスタートアップでその傾向が顕著に見られます。

しかし、これは「どんな場合でも支給されなくてOK」ということではありません。会社が従業員と賞与に関する契約を交わしている場合は、その契約内容に従う義務が生じます。この点が、もらえる人ともらえない人を分ける大きなポイントとなります。

就業規則や雇用契約書が重要になる理由

「法的な支給義務がない」と聞くと不安になるかもしれませんが、安心してください。多くの会社では、賞与に関する規定が明確に定められています。その主な場所が、「就業規則」や「雇用契約書」です。これらの書類に賞与の支給に関する条項が明記されている場合、会社はその内容に従って賞与を支給する義務を負います。

例えば、「毎年〇月に基本給の〇ヶ月分を支給する」といった具体的な記載があれば、原則としてその条件を満たす従業員には賞与が支払われることになります。しかし、注意が必要なのは、「会社の業績不振の場合には支給しない場合がある」「個人の勤務評価に基づいて支給額を決定する」といった但し書きが付されているケースです。

これらの但し書きがある場合、たとえ就業規則に賞与の記載があっても、会社の業績や個人の評価によっては支給されなかったり、減額されたりする可能性があります。そのため、自身の会社の就業規則や雇用契約書を隅々まで確認し、賞与の支給条件や不支給となる可能性について正しく理解しておくことが非常に重要です。

支給されない理由と会社の状況を理解する

では、なぜ賞与が支給されない会社が存在するのでしょうか。その理由は様々ですが、主に以下のようなケースが考えられます。

  • 年俸制の採用: 年間を通して支払われる給与総額をあらかじめ定め、それを12分割して毎月支給する年俸制の場合、賞与という名目での別途支給は一般的ではありません。賞与分が月々の給与にすでに含まれていると考えるのが自然です。
  • 業績の悪化: 会社の業績が低迷している場合、賞与の支給を見送ったり、減額したりすることがあります。特に業績連動型の賞与を採用している企業では、会社の利益が直接支給額に反映されます。
  • 会社の経営状況: 起業したばかりのベンチャー企業や、事業規模が小さい会社は、まだ経営基盤が安定していないため、賞与を支給する余力がなく、利益を事業の成長や投資に回すことを優先するケースが多く見られます。
  • 労働組合の不在: 労働組合がない会社では、従業員が会社と賞与を含む賃金体系について交渉する機会が少ないため、賞与制度が導入されにくい傾向があります。
  • その他: 基本給が高く設定されている代わりに賞与がない、あるいは経営方針として賞与よりも従業員の福利厚生や教育訓練への投資を重視している、といった理由も考えられます。

これらの理由を理解することで、ご自身の会社で賞与が支給されない背景が見えてくるかもしれません。

賞与がもらえる条件とは?利益分配の仕組みを理解しよう

賞与が「もらえる人」と「もらえない人」の決定的な違い

賞与が支給される人ともらえない人の違いは、主に「会社との約束」と「個人の状況」の2つの側面で決まります。最も基本的なのは、先述の通り、会社の就業規則や雇用契約書に賞与の支給に関する明確な規定があるかどうかです。もし規定があり、その条件を満たしていれば、原則として支給対象となります。

次に重要なのが「在籍要件」です。多くの企業では、賞与の支給日において会社に在籍していることを支給条件としています。例えば、夏のボーナス支給日が7月1日であれば、その日に退職届を出していても、在籍していれば支給対象となることが多いです。しかし、支給日よりも前に退職した場合は、査定期間を満たしていても支給されないのが一般的です。

さらに、「勤務成績や業績」も大きな要素です。特に業績連動型や個人の評価に基づいて支給額が決まる賞与の場合、個人のパフォーマンスが低かったり、会社全体の業績が目標を達成できなかったりすると、支給額が減額されたり、不支給になったりする可能性があります。つまり、単に在籍しているだけでなく、会社への貢献度も問われるのです。

会社の業績が賞与に与える影響

賞与は「利益分配」の意味合いが強いため、会社の業績は支給額に直結します。特に、近年増えている「業績連動型賞与」を採用している企業では、会社の売上や利益が目標を上回れば賞与が増額され、目標を下回れば減額されたり、最悪の場合不支給になったりすることもあります。

例えば、新型コロナウイルスの影響で多くの企業が業績を悪化させた際、一時的に賞与の支給を見送ったり、大幅に減額したりするケースが多発しました。これは、企業の存続や雇用の維持を優先するための苦渋の決断であることがほとんどです。

また、起業して間もないスタートアップ企業や、まだ経営基盤が安定していない中小企業では、利益が出てもそれを賞与に回すよりも、新たな事業への投資、設備の拡充、人材採用などに充てることを優先する傾向にあります。これは、会社の将来的な成長と安定を目指すための戦略であり、従業員もその会社の成長に貢献するという共通認識を持つことが求められます。

企業規模によって賞与額に差があるのはなぜ?

賞与の支給状況は、会社の規模によって大きく異なる傾向が見られます。厚生労働省の調査などを見ると、一般的に大企業ほど賞与の支給割合が高く、支給額も大きい傾向があります。

例えば、従業員数500人以上の大企業では、平均して給与の1.48ヶ月分〜1.61ヶ月分程度の賞与が支給されるのに対し、従業員数5〜29人の中小企業では0.98ヶ月分程度となることもあります。

企業規模別 賞与支給月数(例)
企業規模 賞与支給月数(平均)
500人以上(大企業) 1.48ヶ月分〜1.61ヶ月分
5〜29人(中小企業) 0.98ヶ月分

この差が生じる主な理由は、経営体力と利益率の違いにあります。大企業は市場での競争力が高く、安定した収益を上げやすい傾向があるため、従業員への利益還元も手厚くなる傾向があります。また、大企業ほど労働組合が組織されており、賞与を含む労働条件について会社と交渉する機会が多いことも、支給割合の高さに影響していると考えられます。

一方で、中小企業は経営資源が限られているため、賞与よりも毎月の給与水準や福利厚生の充実に力を入れている場合もあります。一概に「賞与が少ない=悪い会社」とは言えないため、企業の特性を理解することが重要です。

賞与をもらえるタイミングはいつ?連絡なしでも確認は必要

一般的な賞与の支給時期と連絡方法

賞与は通常、年に2回、夏と冬に支給されるのが一般的です。具体的な時期は企業によって異なりますが、夏のボーナスは6月末から7月上旬冬のボーナスは12月上旬から中旬に支給されることが多いです。決算月や繁忙期に合わせて、年に1回や3回以上支給される企業もあります。

支給日や支給額については、通常、会社から事前に従業員へ通知があります。給与明細に記載されたり、社内システムを通じて確認できたり、人事部から個別に連絡がある場合もあります。しかし、もしそうした連絡が全くない場合でも、決して諦めず、ご自身で積極的に確認を取りに行くことが重要です。

特に初めてボーナス支給の時期を迎える方や、転職したばかりの方は、会社の慣習が分からず不安になるかもしれません。まずは会社の就業規則を確認し、それでも不明な場合は、人事部や直属の上司に問い合わせてみましょう。

支給日における在籍要件の落とし穴

賞与の支給条件として多くの企業が設けているのが「支給日における在籍要件」です。これは、賞与の支給日時点で会社に籍を置いていることを意味します。この要件があるため、「ボーナスをもらってから辞めたい」と考える人が多いのです。

例えば、夏のボーナス支給日が7月1日と定められている場合、6月30日付けで退職してしまうと、たとえ査定期間中しっかりと働いて貢献していたとしても、支給対象外となるのが一般的です。逆に、7月1日までは在籍していれば、支給を受けることができる可能性が高まります。

また、入社時期によっても支給額に影響が出ることがあります。例えば、査定期間の途中で入社した場合、満額支給ではなく、在籍期間に応じた按分計算で支給されるのが通例です。自身の退職や入社のタイミングが賞与にどう影響するか、就業規則でしっかり確認しておく必要があります。

賞与が支給されない場合の確認と相談先

「就業規則に賞与の規定があるはずなのに、支給されなかった」「支給条件を満たしているはずなのに、連絡もない」といった状況に直面した場合は、まずはご自身の就業規則や雇用契約書を再度確認しましょう。特に、支給条件や不支給となるケースに関する但し書きがないかを重点的にチェックしてください。

次に、人事部や直属の上司に、穏便な形で問い合わせてみましょう。「賞与の件でお伺いしたいのですが、今年の支給状況はいかがでしょうか?」といった形で、具体的な根拠(就業規則の条項など)を挙げながら質問すると、相手も状況を説明しやすくなります。

会社からの説明に納得がいかない場合や、就業規則に明確な支給義務があるにも関わらず不当に支給されなかった場合は、外部の専門機関への相談も検討できます。労働基準監督署労働問題に詳しい弁護士に相談することで、法的なアドバイスや介入を期待できる可能性があります。ただし、繰り返しになりますが、法的な支給義務がない場合は、外部機関も介入が難しいことを理解しておく必要があります。

賞与をもらったことがない人もいる?もらえる人とそうでない人の実態

賞与ゼロの企業の割合とその背景

「ボーナスをもらったことがない」という人は、決して珍しくありません。実際に、日本では約22%〜30%の企業で賞与が支給されていないと推計されています。この割合は、特定の業界や企業規模に偏りが見られます。

例えば、IT業界のスタートアップ企業や、サービス業の中小企業では、賞与がない代わりに月給が高めに設定されていたり、ストックオプションなどのインセンティブ制度が導入されていたりすることがあります。これらの企業は、成長段階にあり、得られた利益を従業員への賞与よりも、事業拡大や新たな技術開発、設備投資などに優先的に充てる傾向があるためです。

また、企業の業績が慢性的に低迷している場合や、年俸制を採用している場合は、賞与がないという実態につながります。賞与がないからといって、必ずしも「ブラック企業」であるとは限りません。その会社の経営方針や賃金体系を総合的に見て判断することが重要です。

年俸制と賞与の関係を再確認

賞与がもらえない理由の一つとして非常に多いのが、年俸制の採用です。年俸制とは、年間の給与総額をあらかじめ確定させ、それを12ヶ月で割って毎月支給する給与形態を指します。この場合、ボーナスという形で別途支給されることは原則としてありません。

年俸制のメリットは、年間を通して安定した収入が見込めることや、個人の成果がダイレクトに給与に反映されやすい点です。しかし、「賞与がない」ことに抵抗を感じる人も少なくありません。年俸制で働く場合は、求人票や雇用契約書に「年俸制(賞与なし)」といった記載があるか、年俸に賞与分が含まれているかなどを契約時にしっかりと確認することが不可欠です。

月々の給与額だけで判断するのではなく、年間総額で比較検討し、自分の働き方やライフスタイルに合っているかを考えることが大切です。見かけの月給が高くても、年間で見るとボーナスありの会社の方が総収入が多いというケースも十分にあり得ます。

「賞与あり」でも期待できないケースとは

求人票に「賞与あり」と記載されていたのに、実際には支給されなかった、あるいはごくわずかな金額だった、という経験を持つ人もいるかもしれません。これは、いくつかの理由で起こり得ます。

  • 「業績連動型」の但し書き: 就業規則や雇用契約書に「会社の業績によって支給しない場合がある」といった記載がある場合、たとえ「賞与あり」でも、業績が悪ければ支給されないことがあります。
  • 「寸志」程度の支給: 「賞与あり」とは記載されていても、実際には数万円程度の「寸志」しか支給されないケースもあります。特に小規模な会社や、まだ経営が安定していない企業で見られます。
  • 個人の評価が著しく低い場合: 査定期間中の勤務態度や実績が極端に低いと評価された場合、個人の成績に基づいて支給額が決まる賞与では、不支給や大幅な減額となる可能性があります。
  • 労働組合の機能不全: 労働組合が形式的に存在していても、実質的な交渉力が弱い場合、経営側の意向が強く反映され、賞与の交渉がうまくいかないことがあります。

これらのケースでは、「賞与あり」という情報だけで判断せず、面接時や内定時に、具体的な支給実績や支給条件について詳しく確認することが、後悔しないための重要なステップとなります。

賞与についてさらに詳しく知りたい方へ

まずは自社の就業規則を確認しよう

賞与に関する疑問や不安を解消するための最初のステップは、何よりもご自身の会社の就業規則雇用契約書を徹底的に確認することです。これらの書類には、賞与の支給に関する最も重要な情報が記載されています。

確認すべきポイントは以下の通りです。

  1. 賞与の支給に関する条項: 賞与の有無、支給回数、支給時期が明記されているか。
  2. 支給条件: 在籍要件、査定期間、入社・退職時の扱いなど、具体的な支給条件。
  3. 支給額の算定方法: 基本給の〇ヶ月分、業績連動、個人の評価など、どのように支給額が計算されるのか。
  4. 不支給・減額となるケース: 業績不振の場合、懲戒処分を受けた場合など、支給されない可能性がある条件。

これらの情報を正しく理解することで、自分が賞与の支給対象となるのか、もし支給されないとしたらなぜなのか、その理由を客観的に判断できるようになります。不明な点があれば、印をつけておくと良いでしょう。

会社に直接問い合わせる際のポイント

就業規則などを確認しても不明な点があったり、会社の対応に疑問を感じたりした場合は、人事部や直属の上司に直接問い合わせることが次のステップです。問い合わせる際は、感情的にならず、冷静かつ建設的な姿勢で臨むことが大切です。

質問のポイントとしては、例えば「就業規則の〇条に〇〇とありますが、現在の私の状況で賞与の支給はどうなりますでしょうか?」といったように、具体的な根拠を示しながら尋ねると、相手も状況を把握しやすくなります。

もし、会社側から「今年の業績が悪いため」といった説明があった場合は、その具体的な根拠や今後の見通しについても、可能な範囲で確認してみましょう。会社からの説明をしっかりと理解しようと努める姿勢を示すことで、円滑なコミュニケーションにつながります。記録のために、やり取りをメモしておくと良いでしょう。

外部の専門機関に相談するタイミング

会社からの説明に納得がいかない場合や、就業規則に明確な支給義務があるにも関わらず不当に賞与が支給されない、あるいは減額されたといった状況であれば、外部の専門機関に相談することを検討しましょう。

主な相談先としては、労働基準監督署労働問題に詳しい弁護士が挙げられます。労働基準監督署は、労働基準法に違反する行為があった場合に是正勧告などを行いますが、賞与の不支給が法的に問題となるのは、あくまで「支給義務があるにも関わらず支給されない」ケースに限られます。

そのため、もし会社の就業規則や雇用契約書に賞与の支給義務が明確に定められていながら、正当な理由なく不支給となった場合は、弁護士に相談し、法的措置を検討することも選択肢の一つとなります。ただし、法的な支給義務がない場合は、外部機関も介入が難しいことを理解した上で、冷静に判断することが重要です。