概要: 「企業年金」という言葉を聞いたことはあっても、自分の会社にあるのか、どんな種類があるのか、よく分からないという方も多いのではないでしょうか。この記事では、ご自身の会社に企業年金があるかどうかの調べ方から、企業年金の種類、加入条件、運用方法まで、分かりやすく解説します。
あなたの会社に企業年金はある?確認方法から種類まで徹底解説
老後の生活を支える大切な年金制度。公的年金だけでなく、会社が提供する「企業年金」があることをご存じでしょうか?
もしあなたの会社に企業年金があれば、将来受け取れる年金額がさらに手厚くなる可能性があります。
しかし、「うちの会社にあるのかな?」「どんな種類があるんだろう?」と疑問に思う方も多いはず。
この記事では、企業年金の確認方法から種類、運用方法、さらにはよくある疑問まで、幅広く徹底解説します。あなたの会社がどのような制度を導入しているのか、一緒に確認していきましょう!
企業年金、あなたの会社にあるか確認する方法
企業年金は、公的年金に上乗せして支給される私的年金の一種です。自分の会社にこの制度があるかどうかを知ることは、将来の資産形成を考える上で非常に重要です。
まずは、最も確実で手軽な確認方法から見ていきましょう。
勤務先への直接確認と社内資料の確認
最も確実で手っ取り早い方法は、やはり勤務先に直接問い合わせることです。
人事部や総務部の担当者に、「企業年金制度はありますか?」と尋ねてみましょう。制度の有無だけでなく、もしあればどのような種類の企業年金が導入されているか、加入条件なども詳しく教えてもらえるはずです。
また、会社の就業規則や退職金規程を確認するのも有効です。これらの社内規定には、福利厚生制度の一環として企業年金制度が明記されている場合があります。会社のウェブサイトやイントラネットで公開されていることもあるので、一度チェックしてみると良いでしょう。
さらに、毎月の給与明細も確認のヒントになります。「確定拠出掛金」や「DC掛金」といった項目が記載されていれば、会社が確定拠出年金(企業型DC)の掛金を拠出している証拠です。これらの方法で、まずは身近なところから情報収集を始めてみましょう。
公的書類や外部機関を活用した確認方法
もし勤務先への確認が難しい場合や、過去に勤めていた会社の企業年金について知りたい場合は、公的書類や外部機関を活用する方法もあります。
毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」は、公的年金の加入記録だけでなく、厚生年金基金に加入していた場合の情報も記載されています。基金加入欄に情報があれば、かつて企業年金の一種である厚生年金基金に加入していたことがわかります。
ただし、厚生年金基金は現在、新規設立が認められておらず、ほとんどが確定給付企業年金(DB)へ移行したり解散したりしています。
過去に加入していた企業年金の記録がないか確認したい場合は、企業年金連合会に問い合わせるのが最も確実です。
企業年金連合会は、企業年金制度の移換や管理を行う公的な機関で、過去に加入していた確定給付企業年金や厚生年金基金の記録を照会することができます。特に転職を繰り返している方は、複数の会社で企業年金に加入していた可能性があるので、利用してみる価値は大いにあります。
企業年金がない場合の選択肢
確認の結果、「残念ながらうちの会社には企業年金制度がない…」という場合もあるかもしれません。
特に中小企業では、大企業に比べて企業年金の導入率が低い傾向にあります。参考情報によると、近年では中小企業を中心に企業年金を導入しない会社が増加傾向にあるようです。
しかし、企業年金がなくても、老後資金の準備を諦める必要はありません。個人でできる強力な資産形成の選択肢がいくつか存在します。
代表的なものとしては、個人型確定拠出年金(iDeCo:イデコ)や、つみたてNISA、一般NISAなどの非課税投資制度が挙げられます。
iDeCoは、企業型DCと同様に掛金が全額所得控除の対象となり、運用益も非課税、そして受け取り時にも税制優遇がある、非常にメリットの大きい制度です。また、企業年金がない中小企業向けには、設立手続きを簡素化した「簡易型DC」や、iDeCoに企業が上乗せ拠出できる「iDeCoプラス」といった制度もあります。
会社に企業年金がなくても、これらの制度を活用して、計画的に老後資金を準備していきましょう。
企業年金の種類を知ろう!「3階建て」やiDeCo、401kとの違い
日本の年金制度は「3階建て」とよく例えられますが、企業年金はこのうちどの部分を指すのでしょうか?
また、最近よく耳にするiDeCoや401kといった言葉と、企業年金はどのように関係しているのか、その違いを明確に理解することは、自分にとって最適な老後資金の準備方法を見つける第一歩となります。
日本の年金制度「3階建て」の理解
日本の公的年金制度は、国民が共通して加入する「国民年金」を1階部分とし、会社員や公務員が上乗せで加入する「厚生年金」を2階部分としています。
そして、この公的年金に加えて、企業が従業員のために独自に設ける年金制度が、まさに3階部分にあたる「企業年金」なのです。私的年金の一種であり、公的年金だけでは不足しがちな老後資金を補完し、より豊かなセカンドライフを送るための重要な役割を担っています。
この3階建て構造を理解することで、なぜ企業年金がこれほどまでに注目されるのか、その意義が見えてくるでしょう。
公的年金は生活の基盤を支えるものですが、少子高齢化が進む現代において、それだけで十分な生活費を賄うのは難しいとされています。企業年金は、そうした公的年金の不足分を補い、従業員がより安心して老後を迎えられるようにするための、会社の重要な福利厚生制度の一つと言えるでしょう。
確定給付企業年金(DB)と確定拠出年金(DC)の違い
企業年金には、大きく分けて「確定給付企業年金(DB)」と「確定拠出年金(DC)」の2種類があります。
これらの違いを理解することが、自分の会社の制度を把握する上で非常に重要です。
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確定給付企業年金(DB:Defined Benefit plan):
将来受け取れる年金額が、あらかじめ定められた計算式に基づいて「確定」している制度です。掛金は事業主(会社)が拠出し、運用も事業主の責任で行われます。万が一、運用が予定通りに進まなくても、事業主が追加で掛金を拠出して、約束された給付額を確保する義務を負います。
加入者から見れば、運用リスクを負う必要がなく、将来の年金額が分かりやすいというメリットがあります。「規約型」と「基金型」の2種類がありますが、近年は運用リスクを企業が負うことから、新規導入は敬遠され、加入者数は横ばい、規約数は減少傾向にあります。
2022年度末時点でのDBの加入者数は930万人です。
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確定拠出年金(DC:Defined Contribution plan):
企業が拠出する掛金額が一定のルールに従って「確定」している制度です。そして、その掛金を加入者自身が運用商品を選んで運用を行います。運用実績によって将来の年金給付額が変動するため、加入者自身が運用責任を負うことになります。
DCには、会社が導入する「企業型DC」と、個人が加入する「個人型DC(iDeCo:イデコ)」があります。運用次第で将来の受取額を大きく増やせる可能性がある反面、元本割れのリスクも伴います。しかし、運用益が非課税になるなどの税制優遇が手厚いのが大きな特徴です。特に企業型DCは導入が年々進んでおり、2022年3月時点で約42,000社が導入、加入者数は個人型DCと合計で1,000万人を超えています。
企業型DC、iDeCo、401kの関連性と選択肢
「401k」という言葉を耳にしたことがある方もいるかもしれません。これはアメリカの確定拠出年金制度の名称で、日本の企業型確定拠出年金(企業型DC)がこの制度をモデルにしていることから、「日本版401k」と呼ばれることがあります。
つまり、企業型DCと401kは、基本的な仕組みが同じで、掛金が確定しており、加入者が自己責任で運用を行うという点で共通しています。
一方、iDeCo(イデコ)は、個人型確定拠出年金のことで、会社に企業年金がなくても、あるいは企業型DCがあっても、個人で任意に加入できる制度です。企業型DCとiDeCoは、どちらも確定拠出年金であるため、運用は自己責任で、税制優遇を受けられるという点で共通しています。
企業型DCに加入している場合は、原則としてiDeCoには加入できませんが、企業型DC規約の定めや拠出限度額に余裕がある場合など、条件によっては併用できるケースもあります。
参考情報によると、2022年度末時点の確定拠出年金(個人型・企業型合計)の加入者は1,000万人を超えており、2014年度末から倍増しています。特にiDeCoの加入者は8年間で13倍に増加しており、30代では5.6人に1人、20代でも8人に1人が確定拠出年金に加入しているなど、若い世代にも浸透しつつあります。
自分の会社の制度や、個人の状況に合わせて、これらの制度を賢く選択し、老後資金の準備を進めましょう。
企業年金はアルバイトでも加入できる?
企業年金は、主に正社員向けの福利厚生制度というイメージが強いかもしれません。しかし、雇用形態が多様化する現代において、「アルバイトやパートタイム労働者でも企業年金に加入できるのか?」という疑問を持つ方もいるでしょう。
ここでは、その可能性と、もし加入できない場合にどう老後資金を準備すべきかについて解説します。
企業年金加入の基本条件
企業年金は、それぞれの会社が独自に規約を定めて導入する制度であるため、加入条件は企業によって異なります。
しかし、一般的に企業年金の加入対象となるのは、厚生年金保険の被保険者である「正社員」であることが多いです。企業年金は、公的年金(国民年金・厚生年金)に上乗せする形で支給される私的年金制度のため、まず2階部分である厚生年金に加入していることが前提となるケースがほとんどだからです。
厚生年金に加入するためには、原則として週の所定労働時間および月の所定労働日数が正社員の4分の3以上である必要があります。この条件を満たさない場合は、そもそも厚生年金に加入できないため、企業年金の対象外となるのが一般的です。
自分の会社の企業年金規約や就業規則を確認し、加入資格について詳しく調べてみましょう。
アルバイト・パートタイム労働者の加入状況
アルバイトやパートタイム労働者でも、厚生年金の加入条件を満たしていれば、企業年金の対象となる可能性はゼロではありません。
具体的には、従業員数101人以上の企業で週20時間以上働き、月額賃金が8.8万円以上、1年以上継続して雇用される見込みがあるなどの要件を満たせば、厚生年金に加入できます。これらの条件を満たし、かつ会社の企業年金規約でアルバイト・パート従業員も加入対象と定められていれば、企業年金に加入できる可能性があります。
しかし、実際には多くの企業で、アルバイト・パート従業員は企業年金の対象外としているのが現状です。企業側は、企業年金導入にはコストや事務負担がかかるため、正社員を主な対象とし、アルバイトやパート従業員は含めないケースが多いのです。
参考情報にもあるように、中小企業を中心に企業年金を導入しない会社が増加傾向にあることも、アルバイト・パート従業員の加入機会が限定的である一因と言えるでしょう。
非正規雇用者が老後資金を準備する方法
もしアルバイトやパートタイムで働いていて、会社に企業年金制度がなかったり、対象外だったりしても、老後資金の準備を諦める必要は全くありません。
むしろ、積極的に個人で資産形成に取り組むことが重要になります。最も有力な選択肢は、個人型確定拠出年金(iDeCo)です。iDeCoは、原則20歳以上65歳未満の国民年金被保険者であれば誰でも加入でき、アルバイトやパートの方でも利用できます。
iDeCoは、掛金が全額所得控除の対象となるため、節税効果が高いのが魅力です。また、運用益も非課税で再投資され、将来受け取る際にも税制優遇があります。
その他にも、つみたてNISAなどの非課税投資制度も、少額からコツコツと資産形成を始めるのに適しています。これらの制度を賢く活用し、自分自身の力で計画的に老後資金を準備していくことが、より安心できる未来につながります。
企業年金の運用はどうなっている?知っておきたい基礎知識
企業年金は、会社が掛金を拠出して運用され、将来の年金給付に繋がる制度です。しかし、「具体的にどう運用されているの?」「自分も運用に関わるの?」といった疑問を抱く方もいるかもしれません。
企業年金の種類によって運用方法や運用責任の所在が大きく異なるため、それぞれの制度の特性を理解しておくことが重要です。
確定給付企業年金(DB)の運用
確定給付企業年金(DB)の場合、掛金を拠出するのは事業主である会社です。そして、その掛金を運用する責任も会社が負います。
具体的には、会社が選定した信託銀行や生命保険会社、投資顧問会社といった外部の専門機関が、加入者から集めた資金をまとめて運用します。加入者自身が個別の運用商品を選択したり、運用状況を常にチェックしたりする必要はありません。
なぜなら、将来受け取れる年金額はあらかじめ定められているため、もし運用実績が予定を下回った場合でも、会社が追加で掛金を拠出するなどして、約束された給付額を確保する義務があるからです。
加入者にとっては、運用の手間がかからず、将来の受取額が確定しているため安心感がある、というのがDBの大きなメリットです。ただし、運用実績が良かった場合でも、年金給付額が増えることは基本的にありません。あくまでも、規約に定められた金額が保証される仕組みです。
現在、確定給付企業年金の加入者数は2022年度末時点で930万人となっています。
確定拠出年金(DC)の運用と加入者の役割
一方、確定拠出年金(DC)の場合は、運用方法と加入者の役割が大きく異なります。
企業型DCでは、会社が毎月掛金を拠出してくれますが、その掛金の運用は加入者自身が行います。会社から提示される運用商品リストの中から、加入者自身が複数の投資信託や預金、保険商品などを選び、ポートフォリオを組んで運用するのです。
運用実績によって将来受け取れる年金給付額が変動するため、加入者には自己責任で運用を行うという意識が求められます。運用がうまくいけば年金給付額が増えますが、運用がうまくいかなければ元本割れのリスクもあります。そのため、運用の基礎知識を学び、自身の年齢やリスク許容度に合わせて商品を選ぶことが非常に重要です。
企業型DCの加入者は、2022年度末時点で個人型DCと合計で1,000万人を超えています。これは多くの会社員が自ら資産運用に取り組んでいることを意味します。会社は、運用に関する情報提供や研修を行う義務がありますが、最終的な運用判断と責任は加入者にあります。
積極的に運用について学び、自身で資産を育てる意識を持つことが、DCを最大限に活用するカギとなります。
運用商品の選び方と注意点
確定拠出年金(DC)で運用を行うにあたり、どのような商品を選べば良いのでしょうか。
一般的に、提供される運用商品には大きく分けて「元本確保型商品」と「元本変動型商品」があります。元本確保型商品には定期預金や保険商品などがあり、元本割れのリスクは低いですが、リターンも期待できません。
一方、元本変動型商品には投資信託があり、国内外の株式や債券などに投資することで、元本割れのリスクはあるものの、大きなリターンを期待できます。
運用商品を選ぶ際のポイントは以下の通りです。
- リスク許容度を把握する:自分がどれくらいのリスク(元本が減る可能性)を受け入れられるか考えましょう。若いうちはリスクを取って積極的に運用し、老後に近づくにつれてリスクを抑えた運用に切り替える「ライフサイクル型」の考え方も有効です。
- 分散投資を心がける:一つの商品に集中せず、複数の種類(株式、債券など)や地域(国内、海外)に分散して投資することで、リスクを軽減できます。
- 手数料を確認する:運用商品には、信託報酬などの手数料がかかるものがあります。手数料は長期的な運用成績に影響を与えるため、できるだけ低いものを選ぶのが賢明です。
- 定期的に見直す:一度決めたポートフォリオも、経済状況の変化や自身のライフステージの変化に合わせて、定期的に見直しを行いましょう。
運用は自己責任ですが、賢い選択と継続的な見直しによって、企業年金をより有効に活用し、将来の資産形成に役立てることが可能です。
企業年金に関する疑問を解決!よくある質問
企業年金は、老後の生活設計に大きく関わる重要な制度です。そのため、多くの人が様々な疑問を抱いています。
ここでは、企業年金に関してよくある質問とその回答をまとめました。あなたの疑問解決の一助となれば幸いです。
転職・退職時の企業年金はどうなる?
転職や退職は、企業年金制度を利用している人にとって大きな転機となります。加入していた企業年金がどうなるかは、制度の種類によって異なります。
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確定給付企業年金(DB)の場合:
DBは将来の給付額が確定しているため、通常は転職・退職時に年金資産を企業年金連合会に移換したり、転職先のDB制度に引き継いだり(ポータビリティ制度)することが可能です。また、一定の加入期間を満たしていれば、その会社のDBから直接年金を受け取る「据え置き」の選択肢もあります。
企業年金連合会は、複数の企業年金制度に加入していた場合の年金記録を一元管理し、通算して給付を行う役割を担っています。2022年度末時点でDBの加入者数は930万人おり、多くの人が転職時にこの問題に直面する可能性があります。
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確定拠出年金(DC)の場合:
企業型DCに加入していた場合、転職先にも企業型DCがあれば、原則としてそちらに移換することになります。転職先に企業型DCがない場合や、自営業になるなどの場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)に移換して運用を継続できます。
また、確定拠出年金連合会に「特定運営管理機関」として移換し、一時的に運用を停止して管理してもらうことも可能です。DCは個人に資産が紐づいているため、比較的ポータビリティが高いのが特徴です。
2022年度末時点のDC加入者は1,000万人を超えており、転職時の手続きは多くの人にとって関心の高いテーマと言えるでしょう。
いずれの場合も、転職や退職が決まったら、速やかに人事担当者や年金制度の運営管理機関に確認し、必要な手続きを行うことが大切です。手続きを怠ると、年金資産が自動的に移換されたり、管理手数料が発生したりする場合がありますので注意しましょう。
企業年金がある会社とない会社のメリット・デメリット
企業年金制度の有無は、従業員にとってはもちろん、会社にとっても様々な影響があります。
企業年金がある会社のメリット・デメリット
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メリット:
- 従業員への安心感:公的年金に上乗せして老後資金が確保されるため、従業員は将来への不安が軽減されます。
- 福利厚生の充実:優秀な人材の確保や定着に繋がり、企業のイメージアップにも貢献します。
- 企業の税制優遇:会社が拠出する掛金は、法人税の損金算入ができるなどの税制優遇が受けられます。
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デメリット:
- 企業側のコスト負担:掛金の拠出や制度運営のための事務コストが発生します。特に確定給付企業年金(DB)の場合は、運用結果責任を企業が負うため、追加拠出のリスクもあります。
企業年金がない会社のメリット・デメリット
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メリット:
- 企業側のコスト削減:年金制度運営にかかるコストや事務負担がないため、その分を人件費や事業投資に回すことができます。
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デメリット:
- 従業員の不安:従業員は老後資金の準備を自己責任で行う必要があり、不安を感じる場合があります。
- 人材確保の不利:福利厚生面で他社との差が生じ、優秀な人材の確保が難しくなる可能性があります。
参考情報では、中小企業を中心に企業年金を導入しない会社が増加傾向にあるとされています。企業年金がない場合でも、従業員がiDeCoなどを活用できるよう、会社が情報提供やサポートを行うことが求められます。
企業年金制度の今後の展望
日本の企業年金制度は、少子高齢化の進展や経済情勢の変化に伴い、常に進化を続けています。
今後の展望として、最も注目されるのは確定拠出年金(DC)のさらなる普及拡大です。企業が運用リスクを負う確定給付企業年金(DB)に代わり、運用を加入者自身が行うDCは、企業側の負担軽減につながるため、導入企業が増える傾向にあります。
2022年度末時点の確定拠出年金(個人型・企業型合計)の加入者は1,000万人を超えており、2014年度末から倍増しています。特に個人型DC(iDeCo)の加入者は8年間で13倍に増加し、30代では5.6人に1人、20代でも8人に1人が加入するなど、若年層にも広く浸透しています。
「老後2,000万円問題」に代表されるように、公的年金だけでは不安という声が高まる中で、自助努力による資産形成の重要性は今後ますます高まるでしょう。
政府も、中小企業向けの「簡易型DC」や、iDeCoに企業が掛金を上乗せできる「iDeCoプラス」など、制度の普及を促進する施策を打ち出しています。企業年金は、個人の資産形成において重要な柱の一つであり続けることは間違いありません。
私たち一人ひとりが制度を正しく理解し、積極的に活用していくことが、豊かな老後を迎えるための鍵となるでしょう。
まとめ
よくある質問
Q: 自分の会社に企業年金があるかどうか、どうやって調べればいいですか?
A: 会社の就業規則や給与明細を確認するのが一般的です。不明な場合は、人事部や総務部などの担当部署に直接問い合わせてみましょう。
Q: 「3階建て」の企業年金とは何ですか?
A: 「1階部分」の公的年金(国民年金、厚生年金)、「2階部分」の企業年金(確定給付企業年金(DB)や企業型DCなど)、「3階部分」の個人型確定拠出年金(iDeCo)を合わせた、多層的な年金制度のことを指します。
Q: 企業型DCとiDeCo(個人型確定拠出年金)の違いは何ですか?
A: 企業型DCは企業が導入する制度で、iDeCoは個人が任意で加入する制度です。掛金の上限額や加入条件、運営管理機関などに違いがあります。両方を併用できる場合もあります。
Q: アルバイトでも企業年金に加入できますか?
A: 企業年金の加入資格は、会社の制度によります。正社員だけでなく、一定の条件を満たすアルバイトやパートタイマーも加入できる場合があります。就業規則などで確認が必要です。
Q: 企業年金の運用利回りは、どのように決まりますか?
A: 企業年金の種類によって異なります。確定給付企業年金(DB)では、運用方針は会社が決定し、将来受け取る年金額はあらかじめ定められています。企業型確定拠出年金(DC)やiDeCoでは、加入者自身が運用方法を選択します。運用利回りは、選択した運用商品や市場の状況によって変動します。
