仕事を探す上で、「給与」や「勤務地」と同じくらい、あるいはそれ以上に多くの人が重視するのが「やりがい」ではないでしょうか。

エン・ジャパンの調査によると、実に96%もの人が仕事においてやりがいを必要だと回答しています。その理由は多岐にわたりますが、「仕事そのものが充実するから」「自身の成長感を得たいから」「自分の存在価値を感じるから」といった内面的な満足感を求める声が多く聞かれます。

この記事では、私たちの仕事に活力と意味をもたらす「やりがい」の正体に迫ります。

美容師やYouTuberといった人気の職種を例にとりながら、有形・無形を問わず、様々な仕事に共通する「やりがい」の源泉を探り、あなた自身が「やりがい」を見つけるための具体的なヒントをご紹介します。さあ、あなたにとっての理想の「やりがい」ある仕事を見つける旅に出かけましょう。

「やりがい」を感じやすい仕事とは？

「やりがい」とは何か？その本質を探る

私たちが仕事に対して抱く「やりがい」とは、一言で言えば「仕事に取り組んだ際に得られる満足感や達成感」のことです。

単にお金を稼ぐ手段としてだけでなく、自分の時間や労力を費やすことで得られる精神的な報酬、それがやりがいと言えるでしょう。この感情は、モチベーションを高く保ち、日々の業務に前向きに取り組む原動力となります。

エン・ジャパンの調査が示すように、96%もの人々が仕事にやりがいを求めているのは、それが個人の幸福感や充実感に直結すると理解しているからです。仕事を通じて自分の能力を発揮し、目標を達成することで得られる喜びは、自己肯定感を高め、さらなる成長へとつながります。

また、自分の努力が誰かの役に立ったり、社会に貢献していると感じられたりすることも、やりがいの大きな源泉です。このような内面的な報酬が、私たちを仕事に没頭させ、困難な状況でも乗り越える力を与えてくれるのです。

仕事に共通する「やりがい」の要素

では、具体的にどのような要素が「やりがい」につながるのでしょうか。多くの仕事に共通して見られるのは、いくつかの特定の要素です。

  • 毎日の業務の目標が明確に設定されている：目標に向かって努力し、達成する過程で得られる達成感は、やりがいの中核をなします。
  • スキルアップできる環境がある：自身の能力が向上し、成長を実感できることは、大きなモチベーションとなります。新しい技術や知識を習得する喜びも、これに含まれます。
  • 自分の意見が取り入れられる：主体的に仕事に関わり、自分のアイデアや提案が形になることで、貢献感と責任感が生まれ、それがやりがいにつながります。
  • 仕事の努力を正しく評価してくれる：自分の頑張りや成果が認められることは、次への意欲を高めます。正当な評価は、存在価値を感じさせる重要な要素です。
  • 顧客や社会に貢献している実感を得られる：自分の仕事が誰かの笑顔や幸福に繋がり、社会全体をより良くしていると感じられる時、人々は深いやりがいを感じます。
  • 自分が興味のあるジャンルで働ける：情熱を傾けられる分野で働くことは、仕事自体を楽しみ、没頭できるため、結果的に大きなやりがいをもたらします。

これらの要素が複合的に作用することで、私たちは日々の業務の中で、より深い充実感と満足感を得ることができるのです。

なぜ現代人は「やりがい」を強く求めるのか？

現代において、なぜこれほどまでに「やりがい」が重視されるのでしょうか。その背景には、社会や価値観の変化があります。

かつての「会社に尽くす」といった画一的な働き方から、個人の価値観や幸福を追求する傾向が強まっています。人々は、単に生活の糧を得るだけでなく、自己実現や人生の目的を仕事に見出そうとしているのです。

特に、VUCA（変動性、不確実性、複雑性、曖昧性）の時代と呼ばれる現代において、自分の仕事が持つ意味や価値を明確にすることは、精神的な安定と自己肯定感を保つ上で不可欠です。仕事を通じて「自分は何者か」「何を成し遂げたいのか」という問いに対する答えを見つけたいという欲求が強くなっています。

また、情報過多な社会で多くの選択肢があるからこそ、自分の時間や労力を投資する対象として、心から納得できるものを選びたいという意識も高まっています。仕事が自己成長の場であり、自身の存在価値を実感できる場所であること。これが、現代人が「やりがい」を強く求める最大の理由と言えるでしょう。

形のない価値を提供する仕事の魅力（無形商材）

感情や体験を生み出す仕事の醍醐味

「無形商材」を扱う仕事とは、商品そのものに形がなく、サービスや情報、体験といった目に見えない価値を提供するものです。

この分野の仕事の最大の魅力は、顧客の感情や人生に直接的に働きかけ、その結果として深い満足感や幸福感を生み出せる点にあります。例えば、教育サービスは知識やスキルを提供し、コンサルティングは課題解決の知恵を授け、エンターテイメントは感動や喜びを与えます。

これらの仕事は、顧客のQOL（Quality of Life＝生活の質）を高めたり、自己実現をサポートしたりと、人生に大きな影響を与える可能性があります。顧客からの「ありがとう」という感謝の言葉や、サービスを通して成長していく姿を間近で見られることは、何物にも代えがたいやりがいとなるでしょう。

形がないからこそ、提供する側の人間性やスキル、そして顧客との信頼関係が重要になります。一つ一つのサービスが顧客にとって唯一無二の体験となり、その価値を最大限に引き出すことに注力する。そこに、無形商材の仕事の奥深さと大きなやりがいが存在します。

YouTuberが示す「共感」という価値

現代において「無形商材」の提供者として特に注目されているのがYouTuberです。

彼らは、自身の知識、経験、ユーモア、感動といった「コンテンツ」という形のない価値を動画という形で提供します。YouTuberの仕事のやりがいは多岐にわたりますが、特に顕著なのは、視聴者との距離が非常に近く、リアクションを直接感じられることです。

コメント欄やSNSでのダイレクトな反応は、クリエイターにとって大きな喜びとなり、次の動画制作へのモチベーションにつながります。好きなことや得意なことで収入を得られるという点も、大きな魅力の一つです。

また、自分の動画が人々に笑いや感動、学びを与え、時には人生に影響を与える可能性を秘めていることも、この仕事の大きなやりがいです。世界中の人々に動画を届けられる可能性を秘めており、企画力、撮影技術、編集能力、マーケティング知識、そして何よりも根気強く動画を投稿し続ける継続力といった多様なスキルが求められます。これらのスキルを総合的に活用し、視聴者と共感を生み出すことに成功した時、YouTuberは計り知れない達成感を味わうことができるのです。

顧客の人生に寄り添う専門職の深さ

無形商材を扱う仕事の中でも、特に顧客の人生に深く寄り添い、その変化をサポートする専門職は、非常に大きなやりがいを感じやすいと言えるでしょう。

例えば、キャリアカウンセラーは個人のキャリア形成を支援し、ファイナンシャルプランナーは人生設計におけるお金の課題解決をサポートします。また、心理カウンセラーやコーチは、心の健康や自己成長を助け、人生の転換点に立ち会うことも少なくありません。

これらの仕事では、顧客の抱える悩みや目標を深く理解し、それに対して専門的な知識と経験をもって最適な解決策やサポートを提供します。顧客の成長や課題解決に貢献できた時の喜びは、非常に大きく、自身の仕事の価値を強く実感できる瞬間です。

信頼関係の構築が何よりも重要であり、長期的に顧客の隣に立ち続けることで、深い感謝と尊敬を得ることができます。人の人生に良い影響を与え、その変化を共有できることは、まさに無形商材を提供する専門職ならではの醍醐味であり、深いやりがいにつながるのです。

形あるものづくり、提供の喜び（有形商材）

創造性でカタチを生み出す喜び

「有形商材」とは、自動車や電化製品、食品、衣料品といった目に見える具体的な製品のことです。

有形商材を扱う仕事の最大の魅力は、自分のアイデアや技術が形となり、実際に人々の手に渡る過程を実感できる点にあります。製品開発、製造、デザイン、販売など、どの工程においても創造性を発揮し、ゼロからイチを生み出す喜びを感じることができます。

例えば、デザイナーであれば頭の中で描いたイメージが、試行錯誤を経て美しいプロダクトとして現実のものになる瞬間に大きな達成感を覚えるでしょう。職人であれば、自分の手で素材を加工し、一つ一つ丁寧に仕上げていく中で、技術と情熱が込められた唯一無二の作品が完成するたびに深い充実感を味わいます。

自分が携わった製品が店頭に並び、実際に消費者が手にとって喜んでいる姿を見た時、その苦労は大きな喜びに変わります。創造性を駆使し、物理的な形で価値を生み出す。この一連のプロセスこそが、有形商材の仕事におけるやりがいの大きな源泉です。

美容師が彩る「変身」と「自信」

有形商材の代表例として、そして人と直接関わる仕事として、美容師の仕事は多くのやりがいに満ちています。

美容師は、お客様の髪という「形あるもの」を扱いながら、その人自身の美しさや個性を引き出し、「変身」という体験と「自信」という無形の価値を提供します。お客様をきれいにし、感謝されることはもちろん、ヘアスタイルを通じて新しい自分を発見させ、内面からの自信を与えることができるのは、この仕事ならではの醍醐味です。

また、流行のトレンドを発信したり、自分のアイデアやセンスをヘアスタイルという形で表現したりする機会も豊富です。日々の技術力の向上を実感でき、努力と実力次第で収入アップや独立・開業のチャンスがあることも、美容師にとって大きなモチベーションとなります。

成人式や結婚式といった人生の節目に立ち会い、お客様の特別な日を最高の形で彩ることができるのも、美容師の大きなやりがいです。SNSなどを通して自身の作品を発信し、個人として注目を集めることも可能です。お客様との距離が非常に近い接客業であり、施術の結果をすぐに実感できるため、やりがいを感じやすい職業と言えるでしょう。

顧客の生活を豊かにする「確かな提供」

有形商材を扱う仕事は、単に製品を製造・販売するだけでなく、顧客の日常生活を豊かにし、社会を支える「確かな提供」という側面から大きなやりがいを感じられます。

例えば、食品メーカーで働く人は、自分が携わった商品が食卓に並び、家族の笑顔に貢献していることを実感できます。家電製品の開発者は、生活を便利にする革新的な技術を世に送り出すことで、人々の暮らしの質向上に貢献します。建設業であれば、自分が関わった建物が街の風景となり、人々の生活や活動の拠点となることに大きな達成感を覚えるでしょう。

これらの仕事は、製品の品質や安全性に徹底的にこだわり、顧客が安心して利用できる価値を提供することが求められます。製品が市場に受け入れられ、人々の役に立っているという実感は、日々の業務における責任感と誇りにつながります。

自分の手がけたものが、社会インフラの一部となったり、多くの人々の生活に溶け込んだりする。この「確かな提供」こそが、有形商材の仕事における、揺るぎないやりがいの源泉と言えるでしょう。

多様な職種に共通する「やりがい」とは？

顧客や社会への貢献実感

美容師やYouTuberに限らず、多様な職種に共通する「やりがい」の核となるのは、顧客や社会への貢献実感です。

どんな仕事であれ、私たちは何らかの形で誰かの役に立ち、社会の一員として機能しています。直接的に顧客と接する仕事であれば、「ありがとう」という感謝の言葉が直接的な貢献実感につながります。

一方で、バックオフィス業務や研究開発など、顧客と直接接することの少ない仕事でも、自分の業務が組織全体の目標達成に貢献し、ひいては社会全体の発展に繋がっているという視点を持つことで、やりがいを見出すことができます。例えば、会計担当者は企業の健全な運営を支え、研究者は未来の技術革新の礎を築いています。

自分の仕事が「誰かのためになっている」「世の中に価値を提供している」と感じられる時、私たちは強い達成感と自己肯定感を得ることができます。この貢献実感こそが、仕事のモチベーションを維持し、困難を乗り越えるための大きな力となるのです。

自己成長とスキルアップの機会

仕事における「やりがい」を感じる上で、自己成長とスキルアップの機会は不可欠な要素です。

人間は本来、新しいことを学び、自分の能力を高めることに喜びを感じる生き物です。日々の業務を通じて、新たな知識や技術を習得し、これまでできなかったことができるようになる。この成長のプロセス自体が、大きなやりがいとなります。

例えば、企画職であればマーケティング戦略の立案能力が向上したり、エンジニアであれば新しいプログラミング言語を習得したりといった具体的なスキルの向上だけでなく、困難な課題に直面し、それを乗り越える過程で培われる問題解決能力やリーダーシップも、重要な自己成長の一環です。

「自身の成長感を得たいから」という声が、エン・ジャパンの調査でやりがいを求める理由の上位に挙げられていることからも、この要素の重要性がわかります。常に学び続け、成長を実感できる環境は、私たちの仕事人生をより豊かで充実したものにしてくれるでしょう。

裁量と評価がもたらす達成感

自分の仕事に対する裁量が与えられ、その努力や成果が適切に評価されることも、多様な職種に共通する重要なやりがいです。

「自分の意見が取り入れられる」環境では、従業員は主体的に業務に関わり、責任感を持って取り組むことができます。これにより、ただ指示されたことをこなすだけではなく、自らの意思で価値を生み出しているという感覚を得られます。

また、「仕事の努力を正しく評価してくれる」ことは、個人のモチベーション維持に不可欠です。正当な評価は、単なる報酬だけでなく、自分の存在価値を認められたという強い実感につながり、「もっと頑張ろう」という意欲を掻き立てます。これは「自分の存在価値を感じるから」というやりがいを求める理由にも直結します。

たとえ小さなプロジェクトであっても、自らの判断で進め、その結果がチームや会社の成果に貢献し、それが認められた時、私たちは大きな達成感を味わいます。この裁量と評価のサイクルこそが、仕事における深い満足感と継続的なモチベーションを生み出す鍵となるのです。

あなたにぴったりの「やりがい」を見つけるヒント

自分を知る「自己分析」と「経験の棚卸し」

あなたにぴったりの「やりがい」を見つける第一歩は、自分自身を深く理解することです。

まずは「自己分析」を行いましょう。自分の興味、価値観、得意なこと、苦手なこと、情熱を傾けられることは何か。これまでどんな時に喜びを感じ、どんな時に充実感を覚えたかを深く掘り下げてみてください。例えば、論理的な思考が得意なのか、人とのコミュニケーションが得意なのか、黙々と作業するのが好きなのか。

次に「経験の棚卸し」を行います。これまでの学業や職務、プライベートでの経験を振り返り、具体的にどのような状況で「やりがい」や「達成感」を感じたのかを書き出してみましょう。

  • どんな目標を設定し、どう達成したか？
  • どんな困難を乗り越えたか？
  • どんなスキルを使い、どんな結果を出したか？
  • 誰から感謝され、どんな貢献ができたか？

これらの問いに向き合うことで、自分自身の核となる価値観や、本当に求めているものが明確になってくるはずです。客観的な視点を得るために、友人や家族に自分の長所や得意なことを聞いてみるのも良い方法です。

理想の働き方を描く「条件の優先順位付け」と「情報収集」

自己分析を通して自分の内面を理解したら、次は具体的な仕事の形に落とし込む作業です。

まずは「条件の優先順位付け」を行いましょう。仕事内容、給与水準、職場環境、休日、福利厚生、キャリアパスなど、仕事に求める条件は多岐にわたります。これら全てを完璧に満たす仕事は稀であるため、自分にとって何が最も重要で、何を譲れないのかを明確にする必要があります。

例えば、「給与は最低限でも、興味のあるジャンルで社会貢献できるなら」という人もいれば、「ワークライフバランスを重視し、スキルアップできる環境が必須」という人もいるでしょう。

優先順位が明確になったら、次に「情報収集」を行います。興味のある業界や職種について徹底的に調べ、実際にその分野で働いている人の話を聞くのが最も効果的です。企業のウェブサイトや求人情報だけでなく、業界セミナー、OB/OG訪問、SNSなどを積極的に活用し、リアルな情報を集めましょう。

特に、自分がやりがいを感じそうな具体的な業務内容や、職場の雰囲気、キャリアアップのモデルケースなどを聞くことで、より具体的なイメージを持つことができます。

日々の業務に「やりがい」を生み出す目標設定

最後に、日々の業務に「やりがい」を生み出すための具体的なアプローチとして、「目標設定」が挙げられます。

「毎日の業務の目標が明確に設定されている」ことは、やりがいのある仕事の共通点の一つです。大きなキャリア目標だけでなく、毎週、毎日といった小さな目標を明確に設定し、その達成に向けて努力するプロセス自体が、やりがいを生み出します。

目標は、具体的で測定可能、達成可能、関連性が高く、時間制限がある（SMART）ものにしましょう。例えば、「今週中に〇〇の資料を完成させる」「〇〇のスキルに関する新しい知識を一つ習得する」といった具合です。目標を達成するたびに、小さな成功体験が積み重なり、それが自己効力感を高め、次のモチベーションへとつながります。

もし目標達成が難しい場合でも、何が課題だったのかを振り返り、改善策を考えることで、自己成長の機会に変えることができます。上司や同僚からのフィードバックを積極的に求め、自身の業務の質を高める意識を持つことも重要です。日々の業務に意味と目的を見出すことで、あなたはどんな仕事からでも「やりがい」を引き出すことができるでしょう。