1. 雇用保険料の月額計算、意外と知らない基本
    1. そもそも雇用保険料とは?その目的を理解しよう
    2. 基本の計算式をマスター!賃金総額と雇用保険料率
    3. あなたの事業はどの分類?異なる雇用保険料率をチェック
  2. 月収5万円から!雇用保険料はいくらから引かれる?
    1. 雇用保険の加入条件と対象者
    2. 具体的な月収例でシミュレーション
    3. 雇用保険料が「引かれない」ケースとは?
  3. 残業代やボーナスは雇用保険料の計算に含まれる?
    1. 残業代は賃金総額に含まれる!注意点とは
    2. ボーナス(賞与)も計算対象!高額支給時の影響
    3. 通勤手当や住宅手当など、各種手当の扱い
  4. 雇用保険料の税金・税率、そして増税の可能性
    1. 雇用保険料は税金ではない!社会保険料控除の対象
    2. 2025年度に引き下げ!最新の雇用保険料率をチェック
    3. 今後の増税(料率引き上げ)の可能性は?
  5. 知っておきたい!雇用保険料の財源と割合
    1. 雇用保険料はどこへ?その主な使い道
    2. 労働者と事業主、それぞれの負担割合
    3. 国の財政と雇用保険料率の変動
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 雇用保険料は月収いくらから引かれますか?
    2. Q: 雇用保険料は月額いくらくらい引かれますか?
    3. Q: 残業代やボーナスは雇用保険料の計算に含まれますか?
    4. Q: 雇用保険料は税金として扱われますか?
    5. Q: 雇用保険の財源はどのような割合で構成されていますか?

雇用保険料の月額計算、意外と知らない基本

そもそも雇用保険料とは?その目的を理解しよう

「給与明細を見ると毎月引かれているけれど、一体何のために?」そう思っている方もいらっしゃるかもしれません。

雇用保険料は、あなたが安心して働き続けられるように、そして万が一の事態に備えるための大切な社会保険料の一つです。

雇用保険の主な目的は、労働者が失業した場合に生活を安定させるための「失業給付」を提供すること、育児や介護で休業する際に収入を補う「育児休業給付金」や「介護休業給付金」を支給することです。

さらに、働く人々のスキルアップを支援する「教育訓練給付金」など、幅広いサポートが含まれています。

原則として、週20時間以上働き、31日以上の雇用見込みがある人は加入の対象となります。

日々の生活を支え、将来への投資とも言えるこの制度は、私たちの働き方を強力にバックアップしてくれています。

基本の計算式をマスター!賃金総額と雇用保険料率

雇用保険料の計算は、実はとてもシンプルです。

雇用保険料 = 賃金総額 × 雇用保険料率

この計算式が基本となります。ここで言う「賃金総額」とは、基本給だけでなく、残業代、各種手当(住宅手当、通勤手当など)、そしてボーナス(賞与)も含まれます。

つまり、労働の対価として支払われる全ての金額が対象になるということです。

ただし、傷病手当金や退職金など、特別な事情に基づく一時的な支給は含まれませんので注意が必要です。

計算結果に1円未満の端数が生じた場合は、原則として50銭未満は切り捨て、50銭以上は切り上げて1円単位に調整されます。

自身の給与明細と照らし合わせて、計算方法を理解しておくと、納得して保険料を支払うことができるでしょう。

あなたの事業はどの分類?異なる雇用保険料率をチェック

雇用保険料率は、実は全ての事業で一律ではありません。

事業の種類によって、適用される料率が異なります。大きく分けて「一般の事業」「農林水産業・清酒製造業」「建設業」の3つがあります。

特に2025年度(令和7年度)からは、労働者負担・事業主負担ともに引き下げられる予定となっており、8年ぶりの引き下げとなります。

具体的な2025年度の料率は以下の通りです。

事業の種類 労働者負担 事業主負担 合計(雇用保険料率)
一般の事業 0.55% (5.5/1,000) 0.90% (9/1,000) 1.45%
農林水産業・清酒製造業 0.65% (6.5/1,000) 1.00% (10/1,000) 1.65%
建設業 0.65% (6.5/1,000) 1.10% (11/1,000) 1.75%

※園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖および特定の船員を雇用する事業については、一般の事業の料率が適用されます。

ご自身の勤務先がどの事業に該当するかを確認し、適用される料率を把握しておくことが重要です。

月収5万円から!雇用保険料はいくらから引かれる?

雇用保険の加入条件と対象者

「月収が少ないと雇用保険料は引かれないの?」といった疑問を持つ方もいるかもしれません。

雇用保険の加入に、最低賃金や最低月収の規定はありません。雇用保険料が引かれるかどうかは、賃金総額ではなく、まず雇用保険の「加入条件」を満たしているかにかかっています。

主な加入条件は以下の通りです。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 31日以上の雇用見込みがあること

これらを満たしていれば、月収が5万円であっても、10万円であっても、雇用保険の被保険者となり、給与から雇用保険料が控除されます。

学生(夜間学生や通信制学生を除く)は原則として対象外となるため、アルバイトであっても雇用保険料は引かれません。

自分の働き方が加入条件に合致しているか、確認してみましょう。

具体的な月収例でシミュレーション

それでは、月収別に具体的な雇用保険料の控除額を見てみましょう。

ここでは、最も一般的な「一般の事業」の労働者負担料率0.55%(2025年度適用)を例に計算します。

  • 月収20万円の場合:

    200,000円 × 0.0055 = 1,100円

    毎月1,100円が雇用保険料として控除されます。

  • 月収30万円の場合:

    300,000円 × 0.0055 = 1,650円

    毎月1,650円が雇用保険料として控除されます。

  • 月収40万円の場合:

    400,000円 × 0.0055 = 2,200円

    毎月2,200円が雇用保険料として控除されます。

このように、月収に応じて雇用保険料も変動します。

自分の月収に当てはめて計算してみると、毎月の給与からいくら引かれているのかが明確になります。

雇用保険料が「引かれない」ケースとは?

先述の通り、雇用保険料は加入条件を満たさない場合は控除されません。

具体的には、以下のようなケースが挙げられます。

  • 週の労働時間が20時間未満の場合:

    短時間勤務のアルバイトやパートなどで、週の労働時間が20時間を下回る場合は、雇用保険の対象外となります。

  • 雇用期間が31日未満と決まっている場合:

    単発のアルバイトや極めて短期の雇用契約の場合も、雇用保険は適用されません。

  • 会社の役員として報酬を得ている場合:

    労働者としての立場ではなく、会社の役員として報酬(役員報酬)を受け取っている場合は、原則として雇用保険の対象外となります。ただし、労働者としての実態がある場合は加入対象となることもあります。

これらのケースに当てはまる場合、給与明細から雇用保険料が引かれることはありませんが、同時に雇用保険の各種給付金も受けられないことになります。

残業代やボーナスは雇用保険料の計算に含まれる?

残業代は賃金総額に含まれる!注意点とは

毎月の給与で特に変動しやすいのが残業代ではないでしょうか。

雇用保険料の計算において、残業代は賃金総額にしっかりと含まれます。

そのため、「今月は残業が多かったから給料が増えた!」という時、それに伴って雇用保険料も少し高くなる、ということを覚えておきましょう。

具体的な例で見てみましょう。

例えば、基本給30万円の方が、月に2.5万円の残業代を受け取ったとします。

この場合の賃金総額は32.5万円(30万円 + 2.5万円)となります。

一般事業の労働者負担料率0.55%(2025年度適用)で計算すると、325,000円 × 0.0055 = 1,787.5円

端数処理後、1,787円が雇用保険料として控除されることになります。

残業代も大切な収入の一部ですが、その分社会保険料も増えることを理解しておくと、手取り額の予測もしやすくなります。

ボーナス(賞与)も計算対象!高額支給時の影響

夏や冬に支給されるボーナス(賞与)も、雇用保険料の計算に含まれる「賃金総額」の一部です。

ボーナスは「労働の対価」として支給されるため、毎月の給与と同様に雇用保険料の対象となります。

そのため、ボーナスが支給される月は、その分の雇用保険料が追加で控除されることになります。

例えば、基本給25万円の方が、50万円のボーナスを受け取った場合、その月の雇用保険料は、通常の月給にかかる保険料に加えて、50万円にかかる保険料も引かれることになります。

ボーナスの金額が大きければ大きいほど、その月の雇用保険料の控除額も高額になります。

年間の雇用保険料の総額を考える際には、ボーナスで発生する保険料も考慮に入れておくことが大切です。

通勤手当や住宅手当など、各種手当の扱い

基本給や残業代だけでなく、会社から支給される様々な「手当」も雇用保険料の計算対象となります。

例えば、通勤手当、住宅手当、家族手当、役職手当など、名称を問わず、労働の対価として支給されるものであれば全て賃金総額に含まれます

これは、これらの手当も「労働者が働くことによって得られる収入」とみなされるためです。

ただし、税法上の扱いと雇用保険料の扱いが異なる場合もあるので注意が必要です。

例えば、非課税とされる通勤手当でも、雇用保険料の計算上は課税対象賃金として扱われるのが一般的です。

給与明細に記載されている「総支給額」が、原則として雇用保険料の計算の基盤となることを覚えておきましょう。

雇用保険料の税金・税率、そして増税の可能性

雇用保険料は税金ではない!社会保険料控除の対象

雇用保険料は「税金」と混同されがちですが、厳密には「社会保険料」の一つです。

所得税や住民税とは異なり、雇用保険料自体が国に納める税金ではありません。

しかし、雇用保険料には税金を軽減する効果があります。

なぜなら、支払った雇用保険料は「社会保険料控除」の対象となるからです。

社会保険料控除とは、支払った社会保険料の全額を所得から差し引くことができる制度で、これにより課税所得が減り、結果として所得税や住民税の負担が軽くなります。

つまり、給与の「総支給額(額面)」から雇用保険料が計算され、その雇用保険料が今度は税金を計算する上での控除対象となる、という関係性にあるのです。

2025年度に引き下げ!最新の雇用保険料率をチェック

冒頭でも触れましたが、2025年4月1日から雇用保険料率が引き下げられる予定です。

これは2017年度以来、8年ぶりの引き下げとなり、労働者・事業主双方にとって朗報と言えるでしょう。

最新の料率は以下の通りです(2025年度適用)。

<失業等給付等の保険料率>

  • 一般の事業:労働者負担 0.55% / 事業主負担 0.55%
  • 農林水産・清酒製造の事業および建設の事業:労働者負担 0.65% / 事業主負担 0.65%

<雇用保険二事業の保険料率(事業主のみ負担)>

  • 一般の事業:事業主負担 0.35%
  • 建設の事業:事業主負担 0.45%

これらの合計が、各事業の「事業主負担」の総額となります。

例えば一般の事業では、労働者負担0.55%、事業主負担は0.55% + 0.35% = 0.90%となるため、総額で1.45%の雇用保険料率となります。

料率の引き下げにより、手取り額がわずかに増える可能性がありますので、給与明細をチェックする際に意識してみると良いでしょう。

今後の増税(料率引き上げ)の可能性は?

2025年度は料率引き下げとなりますが、雇用保険料率が将来的に引き上げられる可能性は常に存在します。

雇用保険の財源は、景気の変動や雇用情勢、そして給付金の支給状況に大きく左右されます。

例えば、大規模な経済危機やコロナ禍のような事態が発生し、失業者が急増して失業給付の支給が増大すれば、財源がひっ迫し、料率の引き上げが検討されることがあります。

また、高齢化社会の進展や働き方の多様化(非正規雇用の増加など)も、雇用保険財政に影響を与える要因となります。

政府は雇用保険制度の持続可能性を確保するため、常に財政状況をモニタリングし、必要に応じて料率を見直しています。

私たちは、今後の社会情勢や国の動向にも注目し、雇用保険料率の変動について関心を持っておくことが重要です。

知っておきたい!雇用保険料の財源と割合

雇用保険料はどこへ?その主な使い道

私たちが毎月支払っている雇用保険料は、決して無駄遣いされているわけではありません。

その使い道は、大きく分けて二つの柱があります。

  1. 失業等給付:

    これは、失業した際に支給される「基本手当」(いわゆる失業手当)をはじめ、再就職を支援する給付、高年齢者が働き続けるのを支援する「高年齢雇用継続給付」、そして育児や介護のために休業する際に支給される「育児休業給付金」「介護休業給付金」などに充てられます。

  2. 雇用保険二事業:

    こちらは「雇用安定事業」と「能力開発事業」の総称です。雇用安定事業は、失業の予防や雇用機会の増大、労働者の能力開発などを支援するもので、事業主に対する助成金(雇用調整助成金など)が代表的です。能力開発事業は、働く人々のスキルアップやキャリア形成を支援する教育訓練給付金などに使われます。

このように、雇用保険料は、失業時のセーフティネットから、現役で働く人々の能力向上、企業の雇用維持支援まで、多岐にわたる重要な役割を担っています。

労働者と事業主、それぞれの負担割合

雇用保険料は、労働者と事業主が共同で負担する仕組みとなっていますが、国民健康保険や厚生年金保険のように「労使折半」(半分ずつ負担)ではありません。

事業主の方がより多くの割合を負担するのが特徴です。

2025年度(令和7年度)の一般の事業を例に見てみましょう。

  • 労働者負担:0.55% (賃金総額の5.5/1,000)
  • 事業主負担:0.90% (賃金総額の9/1,000)

この事業主負担0.90%の内訳は、失業等給付等の保険料率0.55%と、雇用保険二事業の保険料率0.35%の合計です。

雇用保険二事業の費用は、全額が事業主負担となっています。

事業主が多くの負担を担うのは、企業が雇用を維持し、労働者の能力開発を支援することを通じて、社会全体の経済活動を活性化するという側面があるためです。

この負担割合の仕組みを理解することで、雇用保険制度の役割がより深く理解できるでしょう。

国の財政と雇用保険料率の変動

雇用保険料率は、国の財政状況や雇用情勢に密接に連動して変動します。

特に、失業給付の主な財源である「失業等給付等」の保険料率は、景気の状況や失業率の推移によって大きく左右されます。

例えば、経済が好調で失業者が少ない時期には、給付金の支給が減るため、財源に余裕ができ、料率が引き下げられることがあります。

逆に、経済が悪化して失業者が急増すると、給付金の支給が増え、財源が不足する可能性が高まるため、料率が引き上げられる傾向にあります。

過去には、リーマンショック後や新型コロナウイルス感染症の影響により、雇用保険財政がひっ迫し、特例措置や料率の引き上げが行われた時期もありました。

今回の2025年度の引き下げは、雇用情勢の改善や財源に一定の余裕が生じた結果と言えるでしょう。

雇用保険は、社会全体の雇用と生活の安定を支える重要な制度であり、その料率は常に社会経済状況と深く関わっているのです。