「毎月の給与明細を見ると、様々な項目が引かれていて、一体何にいくら払っているんだろう?」と感じたことはありませんか?その中でも特に、雇用保険料は「いくら引かれているのか」「どうやって計算されているのか」が分かりにくいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、そんな雇用保険料について、2025年度の最新情報をもとに、その計算方法や具体的な金額例を徹底解説します。給与や賞与から引かれる金額の仕組みを理解し、あなた自身のマネープランに役立てていきましょう。

  1. 雇用保険料はいくら引かれる?基本を理解しよう
    1. 雇用保険とは?その役割と仕組み
    2. 「賃金総額」とは?どこまでが対象になる?
    3. 誰が、いつから雇用保険料を払うの?
  2. 雇用保険料の計算方法:500円未満や端数処理の疑問を解消!
    1. 雇用保険料の基本的な計算式
    2. 雇用保険料率、業種によってなぜ違う?2025年度最新情報
    3. 500円未満の端数処理は?具体的な計算例で確認
  3. 知っておきたい!雇用保険料の具体的な金額例(5.5%、9.5%など)
    1. 一般の事業:あなたの雇用保険料はいくら?
    2. 農林水産業・建設業:なぜ料率が高いのか?
    3. 2025年度最新!雇用保険料率一覧と注意点
  4. エクセルで簡単計算!雇用保険料の計算式と活用法
    1. 基本の計算式をエクセルに入力しよう
    2. 複数月の計算や年度更新にも対応!
    3. 雇用保険料計算ツールとしての活用
  5. 雇用保険でもらえるお金とは?基本手当(失業保険)について
    1. 「失業保険」の正式名称「基本手当」とは?
    2. 基本手当の受給条件と期間
    3. 雇用保険の他の給付金:育児休業給付金など
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 雇用保険料は給与からいくら引かれますか?
    2. Q: 雇用保険料が500円未満になることはありますか?
    3. Q: 雇用保険料の端数処理はどのように行われますか?
    4. Q: 雇用保険料の保険料率は何%ですか?
    5. Q: 雇用保険で「88,000円以下」とありますが、これは何に関係しますか?

雇用保険料はいくら引かれる?基本を理解しよう

雇用保険とは?その役割と仕組み

雇用保険は、私たち働く人々にとって非常に重要な公的な保険制度です。その主な目的は、労働者の生活と雇用の安定、そして再就職の促進にあります。例えば、万が一失業してしまった際、次の仕事が見つかるまでの生活を支えるための「基本手当(失業保険)」などが代表的な給付です。

この保険料は、会社と従業員が共に負担しています。従業員が負担する分は、毎月の給与や賞与から天引きされる形で支払われます。つまり、私たちは普段から少しずつ雇用保険料を納めることで、もしもの時に備えているわけです。

失業時だけでなく、育児休業や介護休業中の生活保障、さらにはスキルアップのための教育訓練を受ける際の費用の一部補助など、多様な形で私たちの働く生活を支えてくれる仕組みと言えるでしょう。

「賃金総額」とは?どこまでが対象になる?

雇用保険料を計算する上で、まず理解しておくべき重要なキーワードが「賃金総額」です。賃金総額とは、税金や社会保険料が控除される前の、会社が従業員に支払う賃金の合計額を指します。

具体的には、基本給はもちろんのこと、残業手当、役職手当、住宅手当、通勤手当など、会社から支払われるほとんどの手当が含まれます。 また、年に数回支給される賞与(ボーナス)も、雇用保険料の計算対象となります。

よく質問される交通費(通勤手当)も、実費弁償的な性格が強くても、原則として賃金総額に含まれて雇用保険料の対象となる点には注意が必要です。給与明細に記載されている「総支給額」が、この賃金総額に該当すると考えて良いでしょう。

誰が、いつから雇用保険料を払うの?

雇用保険の加入は、一定の条件を満たす労働者に義務付けられています。一般的には、週20時間以上働き、かつ31日以上の雇用見込みがある方であれば、正社員、パート、アルバイトといった雇用形態に関わらず、雇用保険の被保険者となります。

加入要件を満たした場合、雇用保険料の支払いは、原則として入社した月から発生します。例えば、4月1日に入社した場合、4月分の給与から雇用保険料が天引きされることになります。

自分の雇用保険料がいくら引かれているかは、毎月発行される給与明細の控除欄で確認できます。もし、ご自身の働き方が加入条件に該当するにもかかわらず、給与明細に雇用保険料の記載がない場合は、会社の担当部署に確認してみることをおすすめします。

雇用保険料の計算方法:500円未満や端数処理の疑問を解消!

雇用保険料の基本的な計算式

雇用保険料の計算は、至ってシンプルです。基本的な計算式は以下の通りです。

雇用保険料 = 賃金総額(総支給額) × 雇用保険料率

ここで言う「賃金総額」とは、前述の通り、税金や社会保険料が引かれる前の給与や賞与の合計金額を指します。そして「雇用保険料率」は、国が定める料率で、後述するように業種によって異なります。

この計算式に、あなたの賃金総額と該当する雇用保険料率を当てはめることで、毎月いくらの雇用保険料が給与から天引きされているのかを把握することができます。この仕組みを理解することは、自身の給与や手取り額を正しく認識するための第一歩となります。

雇用保険料率、業種によってなぜ違う?2025年度最新情報

雇用保険料率は、全ての事業所で一律ではありません。実は、業種によって異なる料率が設定されています。 これは、業種ごとの失業リスクの高さや、事業主が負担する「雇用保険二事業」(失業の予防、労働者の能力開発向上、雇用機会の拡大などを目的とした事業)の財源に充てられるためです。

例えば、一般の事業に比べて、建設業や農林水産業などは景気変動や季節変動の影響を受けやすく、失業リスクが高いと判断されるため、少し高めの料率が適用されています。

2025年度(2025年4月1日〜2026年3月31日)の労働者負担分の雇用保険料率は以下の通りです。

  • 一般の事業:0.55%
  • 農林水産業・清酒製造業:0.65%
  • 建設業:0.65%

これらの料率は毎年見直される可能性があるため、常に最新情報を確認することが重要です。

500円未満の端数処理は?具体的な計算例で確認

雇用保険料を計算する際、多くの場合、小数点以下の端数が発生します。例えば、賃金総額に料率をかけると「1,787.5円」のような金額になることがあります。この端数処理については、国から具体的なルールが定められています。

通常、雇用保険料の端数処理は「切り捨て」となります。 つまり、1,787.5円であれば、小数点以下は切り捨てられ、最終的に1,787円が控除されることになります。これは、事業主が賃金総額から控除する際に、労働者に不利にならないようにするための措置とされています。

具体的な例を見てみましょう。一般の事業で月給325,000円の場合、2025年度の労働者負担分の雇用保険料は、
325,000円 × 0.55% = 1,787.5円 となります。
この場合、端数処理により1,787円が控除されることになります。500円未満の端数であっても、切り捨てとなることを覚えておきましょう。

知っておきたい!雇用保険料の具体的な金額例(5.5%、9.5%など)

一般の事業:あなたの雇用保険料はいくら?

日本で最も多くの労働者が属する「一般の事業」における2025年度の雇用保険料率(労働者負担分)は0.55%です。この料率を使って、あなたの給与からどれくらい引かれるのか、具体的な金額例を見ていきましょう。

  • 月給200,000円の場合:
    200,000円 × 0.55% = 1,100円
  • 月給300,000円の場合:
    300,000円 × 0.55% = 1,650円
  • 月給400,000円の場合:
    400,000円 × 0.55% = 2,200円

上記の金額が、あなたの毎月の給与から雇用保険料として差し引かれるおおよその金額になります。また、忘れがちなのが賞与(ボーナス)も雇用保険料の計算対象となる点です。例えば、賞与が30万円であれば、300,000円 × 0.55% = 1,650円が賞与から引かれることになります。

農林水産業・建設業:なぜ料率が高いのか?

農林水産業・清酒製造業、そして建設業では、一般の事業よりも高い雇用保険料率が適用されます。2025年度の労働者負担分は、いずれも0.65%です。この料率がなぜ高いのか、その背景にはそれぞれの業種が抱える特性があります。

これらの業種は、季節変動や天候の影響を受けやすく、またプロジェクト単位で雇用が終了するケースも少なくありません。そのため、他の業種に比べて失業のリスクが比較的高いとされています。高い料率を設定することで、万が一の失業時に手厚い給付を提供できるよう、財源を確保しているのです。

例えば、月給300,000円の方がこれらの業種に勤務している場合、
300,000円 × 0.65% = 1,950円が雇用保険料として控除されます。一般の事業と比較すると、毎月300円ほど多く負担していることになります。

2025年度最新!雇用保険料率一覧と注意点

2025年度(令和7年度)の雇用保険料率は、2024年度と比較して、労働者負担・事業主負担ともに0.05%引き下げられる見込みです。最新の料率を以下の表で確認しておきましょう。

2025年度(令和7年度)雇用保険料率(2025年4月1日~2026年3月31日)
業種区分 労働者負担 事業主負担 合計
一般の事業 0.55% (5.5/1000) 0.90% (9/1000) 1.45% (14.5/1000)
農林水産業・清酒製造業 0.65% (6.5/1000) 1.00% (10/1000) 1.65% (16.5/1000)
建設業 0.65% (6.5/1000) 1.10% (11/1000) 1.75% (17.5/1000)

※ただし、園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖および特定の船員を雇用する事業については、一般の事業の料率が適用されます。

雇用保険料率は、経済状況や失業率の変化に応じて毎年見直される可能性があります。 そのため、ご自身の雇用保険料について正確な情報を把握するためには、常に厚生労働省の発表など最新情報を確認することが重要です。給与明細を定期的にチェックし、正しい金額が控除されているかを確認する習慣をつけましょう。

エクセルで簡単計算!雇用保険料の計算式と活用法

基本の計算式をエクセルに入力しよう

雇用保険料の計算は、複雑な関数を使う必要もなく、エクセルで非常に簡単に行うことができます。基本的な計算式は「賃金総額 × 雇用保険料率」ですので、これを利用しましょう。

例えば、エクセルのシートで以下のように入力します。

  1. A1セルに「賃金総額(例:325000)」を入力
  2. B1セルに「雇用保険料率(例:0.0055 ※0.55%の場合)」を入力
  3. C1セルに「=A1*B1」と入力

これでC1セルに計算結果が表示されます。端数処理を自動で行いたい場合は、C1セルに「=ROUNDDOWN(A1*B1,0)」と入力すると、小数点以下が切り捨てられた整数値が表示されます。

このように設定しておけば、A1セルの賃金総額を変更するだけで、自動的に雇用保険料が計算されるため、手計算によるミスを防ぎ、効率的に確認することができます。

複数月の計算や年度更新にも対応!

エクセルを活用すれば、単月の計算だけでなく、複数月にわたる雇用保険料の確認や、料率変更時の対応も簡単になります。例えば、毎月の給与額を縦に並べ、それぞれの行で上記計算式を適用すれば、年間で支払う雇用保険料の合計も一目で把握できます。

また、雇用保険料率は毎年見直される可能性がありますが、エクセルシートであれば、B1セルに設定した料率を更新するだけで、全ての計算に自動的に反映させることが可能です。年度更新の時期には、この料率部分だけを変更すれば、すぐに最新の計算ができるため、非常に便利です。

賞与(ボーナス)の計算にも応用できるため、個人のマネープランニングはもちろん、企業の給与計算担当者にとっても、エクセルは強力なツールとなるでしょう。

雇用保険料計算ツールとしての活用

エクセルは、単なる計算ソフトとしてだけでなく、自分専用の雇用保険料計算ツールとして活用することができます。例えば、以下のようなシートを作成してみましょう。

  • 入力欄: 月給、残業手当、各種手当、賞与
  • 設定欄: 雇用保険料率(業種別で選択式にしても良い)
  • 結果表示欄: 雇用保険料(月額)、年間雇用保険料

これにより、あなたの給与が変動した場合や、来年度の料率が変更された場合でも、手軽に雇用保険料をシミュレーションできます。自身の給与からいくら引かれているのかを正確に把握することで、手取り額を意識した家計管理や貯蓄計画を立てるのに役立つでしょう。

また、将来のキャリアプランを考える上で、転職先や昇進後の給与を想定し、手取り額がどう変化するかを予測する際にも、このようなエクセルツールが役立つはずです。

雇用保険でもらえるお金とは?基本手当(失業保険)について

「失業保険」の正式名称「基本手当」とは?

「失業保険」という言葉は一般的に広く使われていますが、正式には「基本手当」と呼びます。これは、雇用保険から給付される様々な手当の一つであり、主に失業して再就職を目指す方の生活を支援するための制度です。

基本手当の支給目的は、失業によって収入が途絶えた場合に、次の仕事を見つけるまでの期間、安心して求職活動に専念できるよう経済的なサポートを提供することにあります。私たちが毎月納めている雇用保険料は、この基本手当をはじめとする様々な給付金の財源となっているのです。

失業したからといって誰もがすぐに受給できるわけではなく、一定の条件を満たす必要があります。しかし、万が一に備えるセーフティネットとして、その存在と仕組みを理解しておくことは非常に重要です。

基本手当の受給条件と期間

基本手当を受け取るためには、いくつかの条件を満たす必要があります。主な受給条件は以下の通りです。

  1. 雇用保険の加入期間: 離職日以前の2年間で、被保険者期間が12ヶ月以上あること。(特定理由離職者や特定受給資格者の場合は、離職日以前の1年間で被保険者期間が6ヶ月以上でも可)
  2. 離職理由: 自己都合退職、会社都合退職などによって、給付制限の有無や受給期間が異なります。
  3. 求職活動の意思と能力: 「いつでも働ける状態」であり、ハローワークで求職の申し込みを行い、積極的に就職活動を行っていること。

基本手当が支給される期間は、雇用保険の加入期間、離職理由、そして離職時の年齢などによって異なります。一般的には、90日から360日の間で設定され、長く雇用保険に加入していた方や、会社都合で離職した方の方が、より長く手当を受け取れる傾向にあります。

詳細な条件や給付日数については、ハローワークの窓口で相談することが最も確実です。

雇用保険の他の給付金:育児休業給付金など

雇用保険が提供するのは、基本手当(失業保険)だけではありません。私たちの働き方を多角的にサポートするために、他にも様々な給付金が用意されています。

  • 育児休業給付金: 育児のために休業する期間中の生活を保障するための給付金です。男女問わず、育児休業を取得する方が対象となります。
  • 介護休業給付金: 家族の介護のために休業する期間中の生活を支援するための給付金です。
  • 教育訓練給付金: スキルアップやキャリアアップのために厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講した場合に、費用の一部が支給される制度です。
  • 高年齢雇用継続給付金: 60歳以降も働き続ける方が、賃金が下がった場合に支給される給付金です。

これらの給付金は、私たち労働者が安心して働き続けられるよう、そしてより良いキャリアを築けるよう支えるために存在しています。これらもまた、私たちが毎月支払っている雇用保険料がその財源の一部となっていることを理解し、いざという時には活用できるように、制度の概要を知っておくことが大切です。

雇用保険は、単に「失業した時の保険」というだけでなく、ライフステージの変化やキャリアアップを応援する、私たちの生活に密着した重要な制度なのです。

ここまで、雇用保険料の計算方法から、具体的な金額例、そして雇用保険から受け取れる給付金まで、幅広く解説してきました。

毎月の給与から控除される雇用保険料は、決して無駄な支出ではありません。いざという時の安心だけでなく、育児や介護、スキルアップなど、私たちの働き方を多角的に支える大切な財源となっています。この記事を参考に、ご自身の給与明細を改めて確認し、雇用保険の仕組みへの理解を深めていただければ幸いです。