【雇用保険】90日受給はいつから?認定日・金額・延長まで徹底解説

会社を退職し、次に進む準備期間として心強い味方となるのが雇用保険の基本手当、いわゆる失業保険です。特に「90日受給」という言葉を耳にすることが多いかもしれませんが、これは一体どのような制度なのでしょうか。

本記事では、雇用保険の基本手当における90日受給について、いつから受け取れるのか、認定日の流れ、具体的な受給金額の計算方法、そしてもしもの時の延長給付まで、分かりやすく徹底的に解説します。安心して次のステップへ進むためにも、正しい知識を身につけましょう。

雇用保険の90日受給、いつから受け取れる?基本を理解しよう

90日受給の対象者とは?

雇用保険の基本手当における「90日受給」とは、一般的に、離職日以前の2年間に雇用保険の被保険者期間が1年未満である場合に該当する給付日数として認識されています。ただし、これはあくまで目安であり、全ての人に一律に適用されるわけではありません。

給付日数は、退職理由、離職時の年齢、そして被保険者期間の長さによって細かく定められています。例えば、会社都合による退職(特定受給資格者)や、倒産・解雇などによる退職(特定理由離職者)の場合、被保険者期間が1年未満であっても、90日を超える給付が受けられるケースもあります。

一方で、自己都合退職の場合は、被保険者期間が1年以上なければ、そもそも基本手当の受給資格を得ることができません。まずはご自身の被保険者期間と退職理由を確認し、ハローワークで正確な給付日数を確認することが重要です。

給付が始まるまでの流れと待期期間

雇用保険の基本手当の支給は、申請したらすぐに始まるわけではありません。まず、ハローワークで求職の申し込みを行い、受給資格の決定を受ける必要があります。その後、非常に重要な期間として「待期期間」が設けられています。

この待期期間は、原則として7日間です。待期期間は、ハローワークに求職の申し込みをしてから7日間は基本手当が支給されない期間を指します。この期間は、文字通り「待つ」期間であり、求職活動をしても手当は発生しません。

待期期間が満了した翌日から、いよいよ基本手当の支給対象となります。最初の失業認定日には、受給資格決定時に指定された日にハローワークへ行き、失業の認定を受けることで、最初の基本手当が指定口座に振り込まれることになります。この流れをしっかり把握しておくことで、スムーズな受給開始が可能です。

自己都合退職と給付制限期間

自己都合退職の場合、待期期間の他に「給付制限期間」が設けられることがあります。これは、本人の意思で退職したため、一定期間、基本手当の支給が制限される期間を指します。従来の給付制限期間は原則として2ヶ月、または3ヶ月でしたが、雇用情勢の変化に伴い、制度の見直しが進んでいます。

特に、2025年4月からは自己都合退職の場合の給付制限期間が短縮される可能性があります。現行制度では、5年間のうち2回目以降の自己都合退職では3ヶ月の給付制限期間が課されることがありましたが、これが緩和される動きです。

給付制限期間が適用されると、待期期間7日間が経過した後も、さらに1ヶ月または2ヶ月間は基本手当を受け取ることができません。この期間は生活費の準備が必要となるため、退職前にしっかりと確認し、計画を立てておくことが不可欠です。ご自身の退職理由が給付制限の対象となるか、ハローワークで詳細を確認しましょう。

雇用保険90日分の認定日と受給金額の計算方法

失業認定日とは?初回と2回目以降

失業認定日は、雇用保険の基本手当を受給するために、ハローワークで「失業していること」を認定してもらう大切な日です。この認定がなければ、基本手当は支給されません。

初回認定日は、受給資格決定手続きの際にハローワークから指定されます。この日までに、雇用保険説明会への参加や、初回失業認定に必要な書類(求職活動実績の記載など)の準備を済ませておく必要があります。初めての認定日は特に緊張するかもしれませんが、職員の説明をしっかり聞きましょう。

2回目以降の認定日は、原則として4週間に1度、ハローワークから指定されます。この認定日に、前回の認定日から今回までの期間(認定対象期間)における求職活動実績を報告し、就職活動をきちんと行っていることを示す必要があります。具体的な求職活動実績としては、ハローワークでの職業相談、求人への応募、セミナー参加などが挙げられます。

もし、病気や体調不良などで指定された認定日にハローワークへ行けない場合は、必ず事前にハローワークに連絡し、認定日の変更手続きを行うようにしてください。無断で認定日を過ぎてしまうと、その期間の基本手当が受け取れなくなる可能性があります。

基本手当日額の計算ロジック

基本手当の1日あたりの支給額(基本手当日額)は、あなたの離職前の賃金に基づいて計算されます。具体的な計算式は以下の通りです。

まず、「賃金日額」を算出します。これは、離職した日の直前の6ヶ月間に支払われた賃金の合計を180で割った金額です。

そして、基本手当日額は、この賃金日額に一定の給付率を乗じて算出されます。給付率は、賃金日額によって異なり、おおよそ50%~80%の範囲で設定されています。賃金が低い方ほど、生活保障の観点から給付率が高くなる仕組みです(例:60歳~64歳の方は45%~80%)。

ただし、基本手当日額には上限額と下限額が定められており、毎年8月1日に改定されます。例えば、2023年8月1日以降の基本手当日額の上限額は、60歳未満で7,270円、60歳以上65歳未満で6,231円となっています(下限額は2,125円)。

ご自身の賃金日額が上限・下限額の範囲内に収まるかを確認し、おおよその受給額を把握しておきましょう。ハローワークでの受給資格決定時に、正確な基本手当日額が通知されます。

90日間の総受給金額の目安

雇用保険の基本手当における総受給金額は、非常にシンプルな計算で算出できます。それは、「基本手当日額」に「所定給付日数」(受給できる日数)を掛けるというものです。

今回のテーマである「90日受給」の場合、所定給付日数は文字通り90日となります。例えば、あなたの基本手当日額が仮に5,000円だったとしましょう。この場合、90日間の総受給金額は以下のようになります。

5,000円(基本手当日額) × 90日(所定給付日数) = 450,000円

この金額が、あなたが90日間にわたって受け取れる基本手当の総額の目安となります。もちろん、認定期間ごとに指定口座に振り込まれるため、一度に全額が支給されるわけではありません。

ご自身の基本手当日額が確定したら、この計算式に当てはめて総受給金額の目安を把握し、失業期間中の生活設計に役立ててください。この総額が、再就職までの大切な生活資金となることを意識し、計画的な利用を心がけましょう。

雇用保険の90日延長給付とは?条件と申請方法

受給期間延長の対象となる正当な理由

雇用保険の基本手当は、原則として離職日の翌日から1年間が受給期間と定められています。しかし、この期間中に、すぐに就職活動ができないやむを得ない事情が発生した場合、「受給期間の延長」という制度を利用することができます。

延長の対象となる「正当な理由」は、主に以下の通りです。

  • 病気やケガ:医師の診断書などで就業が困難であることを証明できる場合。
  • 妊娠、出産、育児:産前産後休業や育児休業で、就職が難しい期間。
  • 親族の介護:同居の親族で、介護が必要な状態にある場合。
  • 配偶者の海外転勤に同行:海外居住となり、日本での就職活動が困難な場合。
  • 事業の開始準備:独立・開業準備に専念し、就職が困難な場合(一部制限あり)。

これらの理由で30日以上引き続き就職することができない場合に、受給期間の延長が認められる可能性があります。重要なのは、これらの理由が「正当」であるとハローワークに認められる客観的な証拠を提示できることです。

延長できる期間と注意点

受給期間の延長が認められた場合、本来の受給期間(原則1年間)に加えて、最長3年間まで延長することが可能です。これにより、離職日の翌日から合計4年間の範囲内で、基本手当の受給資格を維持できるようになります。

しかし、ここで非常に重要な注意点があります。それは、「延長できるのはあくまで受給『期間』であり、もらえる基本手当の総額(所定給付日数)が増えるわけではない」ということです。

例えば、あなたが90日間の基本手当を受け取る資格があったとして、受給期間を延長した場合でも、受け取れるのは合計90日分までです。延長によって、失業状態が長引いても、その間ずっと手当がもらえるようになるわけではありません。

この制度は、一時的に就職活動ができない期間を乗り越え、本来もらえるはずの基本手当の権利を失わないようにするためのものです。延長期間中は、就職活動が再開できるようになり次第、ハローワークで認定手続きを再開し、残りの日数分の手当を受け取ることになります。

延長給付の申請手順と期限

受給期間の延長を希望する場合、ハローワークでの申請手続きが必要です。主な手順は以下の通りです。

  1. 申請書類の準備
    • 受給期間延長申請書
    • 雇用保険受給資格者証
    • 延長理由を証明する書類(例:病気なら診断書、出産なら母子手帳の写し、介護なら住民票や介護証明書など)
    • 印鑑
    • マイナンバーカード(個人番号確認書類)と本人確認書類
  2. ハローワークへの申請

    準備した書類を持って、管轄のハローワークの窓口で申請を行います。窓口で担当者から詳しい説明を受け、不明な点があれば質問しましょう。

  3. 申請期限

    受給期間延長の申請には、原則として期限が定められています。最も一般的なのは、離職日の翌日から1ヶ月以内、または本来の受給期間(離職日の翌日から1年間)の終了日までです。ただし、延長理由によっては、その理由が終了した日の翌日から1ヶ月以内など、個別の期限が設定される場合もあります。

申請が遅れてしまうと、本来受け取れるはずだった手当の受給資格を失ってしまう可能性もあります。延長を検討する場合は、できるだけ早めにハローワークに相談し、必要な手続きを進めることが大切です。

雇用保険の受け取り方と、延長申請に必要な書類

基本手当を受け取るまでのステップ

雇用保険の基本手当を受け取るためには、いくつかの段階を踏む必要があります。これらのステップを理解し、計画的に行動することが、スムーズな受給開始につながります。

  1. 離職後、必要書類を準備する

    退職時に会社から受け取る「雇用保険離職票-1」と「雇用保険離職票-2」を必ず確認し、その他必要な本人確認書類などを揃えましょう。

  2. ハローワークで求職申し込みと受給資格決定を行う

    住所地を管轄するハローワークへ行き、求職の申し込みを行います。同時に、離職票などを提出し、基本手当の「受給資格の決定」を受けます。この時に、初回失業認定日や雇用保険説明会の日程が伝えられます。

  3. 待期期間(7日間)の経過

    求職申し込み後、7日間の待期期間が設けられます。この期間は基本手当は支給されません。

  4. 雇用保険説明会への参加

    初回失業認定日までに、ハローワークが開催する雇用保険説明会に参加します。ここでは、今後の手続きの流れや求職活動のルールについて詳しく説明されます。

  5. 失業認定日(初回)

    指定された初回失業認定日に、ハローワークへ行き、求職活動実績などを記載した「失業認定申告書」と「雇用保険受給資格者証」を提出し、失業の認定を受けます。認定後、約1週間で指定口座に基本手当が振り込まれます。

  6. 求職活動と定期的な失業認定

    その後は原則4週間に一度、指定された失業認定日にハローワークへ行き、求職活動実績を報告し、認定を受け続けることで基本手当が支給されます。

認定日に持参すべき重要書類

失業認定日にハローワークへ行く際は、忘れずに以下の重要書類を持参しましょう。これらが不足していると、失業の認定が受けられず、基本手当の支給が遅れてしまう可能性があります。

  • 失業認定申告書

    前回の認定日から今回の認定日までの期間に、どのような求職活動を行ったか、収入があったかなどを記載する書類です。正確に記入し、求職活動の証明となるもの(応募した企業の控えなど)があれば一緒に持参すると良いでしょう。

  • 雇用保険受給資格者証

    受給資格決定時にハローワークから交付される大切な書類です。氏名や基本手当日額、所定給付日数などの情報が記載されており、毎回認定日に提出が必要です。紛失した場合は速やかにハローワークに相談しましょう。

  • 印鑑

    書類の訂正などで必要になる場合があります。シャチハタ以外の認印を持参するのが一般的です。

  • 筆記用具

    書類の記入や訂正に備えて持参すると便利です。

これらの書類は、基本手当を受け取る上で不可欠なものです。認定日の前には必ず準備状況を確認し、忘れ物がないように心がけましょう。

延長申請に必要な書類と準備

雇用保険の受給期間延長を申請する際には、単に申請書を提出するだけでなく、その延長理由を客観的に証明する書類が必要となります。これらの書類を事前にしっかりと準備しておくことが、スムーズな申請の鍵となります。

まず、ハローワークで「受給期間延長申請書」を入手し、必要事項を正確に記入します。この申請書に加えて、以下の書類が求められます。

  • 雇用保険受給資格者証

    基本手当の受給資格があることを証明する書類です。必ず持参しましょう。

  • 延長理由を証明する書類

    これが最も重要な書類群です。具体的な延長理由に応じて、以下の書類などを準備します。

    • 病気・ケガの場合:医師の診断書(就労が困難である旨の記載があるもの)
    • 妊娠・出産の場合:母子健康手帳(出産予定日や出産日の記載があるページ)
    • 育児の場合:母子健康手帳または住民票(子どもの氏名や生年月日が確認できるもの)
    • 親族の介護の場合:介護を必要とする親族の診断書、住民票(同居を証明できるもの)、介護している事実を証明できる書類
    • 配偶者の海外転勤に同行する場合:配偶者の辞令、ビザ、住民票など(海外居住を証明できるもの)
  • その他

    申請者の本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)、印鑑なども必要となる場合があります。

これらの書類は、理由によって細部が異なりますので、必ず事前にハローワークに相談し、ご自身のケースで何が必要かを確認するようにしてください。不備があると申請が遅れる原因となります。

雇用保険、いつまでもらえる?延長給付の注意点

受給期間延長制度のメリット・デメリット

雇用保険の受給期間延長制度は、やむを得ない事情で就職活動ができない期間に、基本手当の受給資格を維持できるという大きなメリットがあります。しかし、同時にいくつかのデメリットも存在するため、制度を正しく理解しておくことが重要です。

【メリット】

  • 受給資格の温存:病気や育児などで一時的に働けない期間があっても、本来もらえるはずの基本手当の受給権を失わずに済みます。
  • 安心して治療や育児に専念できる:就職活動のプレッシャーから解放され、治療や子育てに集中できる環境を確保できます。
  • 本来の給付日数をフル活用できる:就職活動を再開した際に、延長によって確保された期間内で残りの給付日数分の手当を受け取ることができます。

【デメリット】

  • 給付日数は増えない:延長されるのは受給できる期間であり、もらえる基本手当の総額(所定給付日数)が増えるわけではありません。
  • 手続きの手間:申請には複数の書類準備やハローワークへの出向が必要となり、手間がかかります。
  • 経済的空白期間:延長期間中は基本手当が支給されないため、その間の生活費は自己負担となります。

延長制度は、受給資格を維持しつつ、一時的な困難を乗り越えるためのセーフティネットです。ご自身の状況に合わせて、メリットとデメリットを比較検討し、賢く利用しましょう。

再就職手当の活用と不正受給の危険性

雇用保険制度には、失業中の生活を支える基本手当だけでなく、早期の再就職を促進するための「再就職手当」という非常に有用な制度もあります。

【再就職手当の活用】

基本手当の受給資格が決定された後に、早期に安定した職業に就職した場合、残っている所定給付日数の3分の1以上が残っている場合に、その残日数に応じた再就職手当が支給されます。これは、失業給付の消化を早めてもらう代わりに、新たな生活の立ち上げ資金を支援する目的があります。

例えば、90日間の給付日数があったとして、60日分の手当を残して再就職した場合、残日数に応じた金額が支給される可能性があります。この手当は、ハローワークでの職業相談や紹介を通じて就職した場合だけでなく、自分で見つけた就職先でも条件を満たせば対象となります。再就職が決まったら、忘れずにハローワークへ相談しましょう。

【不正受給の危険性】

一方で、雇用保険の制度を悪用した「不正受給」は、非常に重いペナルティが課せられます。例えば、以下のような行為が不正受給に該当します。

  • 就職したにもかかわらず、その事実を申告せずに基本手当を受け取った。
  • アルバイトなどで収入を得ているのに、申告しなかった、または過少に申告した。
  • 求職活動実績を偽って申告した。

不正受給が発覚した場合、受け取った基本手当の全額返還を命じられるだけでなく、不正受給金額の2倍までの納付(つまり、最大3倍の金額)を命じられることがあります。さらに、悪質な場合は詐欺罪として刑事告訴される可能性もあります。

雇用保険は、困っている人を助けるための公的な制度です。虚偽の申告などは絶対にせず、ルールに則って正しく利用することが重要です。

給付期間中の求職活動の義務

雇用保険の基本手当は、単に「失業している」というだけで支給されるものではありません。手当は、再就職に向けた求職活動を積極的に行っている方に支給されるという原則があります。

失業認定日ごとに失業の認定を受けるためには、原則として、前回の認定日から今回までの「認定対象期間」中に、2回以上の求職活動実績が必要です。この求職活動は、単に求人情報を見るだけでなく、以下のような具体的な行動を指します。

  • ハローワークの職業相談・職業紹介を受けること
  • ハローワークが開催する各種セミナーや講習会に参加すること
  • 許可・届出のある職業紹介事業者(民間職業紹介会社など)に求職の申し込みを行い、職業相談や紹介を受けること
  • 求人に応募すること(面接や書類選考を含む)
  • 公的機関が実施する職業訓練などを受講すること

単なる求人情報の閲覧や新聞広告を読むだけでは、求職活動実績として認められない場合がありますので注意が必要です。

失業認定申告書には、これらの求職活動の内容を詳細に記載する必要があります。いつ、どこで、どのような活動を行ったのかを正確に記録しておきましょう。この義務を怠ると、失業認定が受けられず、その期間の基本手当が支給されなくなるだけでなく、給付日数が残っていても受給資格自体が取り消される可能性もあります。積極的な求職活動を行い、早期の再就職を目指しましょう。