概要: 福利厚生は、従業員だけでなく会社にとっても節税や企業価値向上に繋がる重要な制度です。本記事では、福利厚生費の損金計上から、年収換算での価値、具体的な活用法、さらには相場まで、実践的な情報をお届けします。賢く福利厚生を活用し、会社とお金の双方にお得をもたらしましょう。
損金になる!福利厚生費の節税効果を徹底解説
なぜ福利厚生が節税になるのか?
企業の利益に対して課せられる法人税は、「益金(売上など)」から「損金(経費など)」を差し引いた課税所得をもとに計算されます。
この仕組みにおいて、福利厚生費が「損金」として認められる場合、課税対象となる所得が減少するため、結果的に法人税の納税額が減少します。これが、福利厚生がもたらす最大の「節税効果」です。
従業員にとっては、給与として受け取るよりも、非課税でサービスや手当を享受できるため、実質的な手取りが増えるという大きなメリットがあります。
会社は従業員の満足度とエンゲージメントを高めつつ、税負担を軽減できるため、まさに一石二鳥の戦略と言えるでしょう。
このように、福利厚生は「第三の賃上げ」とも称され、賢く活用することで会社とお金の双方にお得をもたらします。
節税効果を最大化する条件とは?
福利厚生費を損金として計上し、節税効果を最大限に得るためには、いくつかの重要な条件を満たす必要があります。
これらの条件をしっかり把握し、適切に運用することが不可欠です。
- 全従業員が対象であること: 特定の役員や一部の従業員のみを対象とするのではなく、原則としてすべての従業員が平等に利用できる制度であることが求められます。ただし、年齢や勤続年数など、社会通念上合理的な制限は認められる場合もあります。
- 社内規定に明記されていること: 福利厚生制度の根拠となる社内規定を明確に定め、その内容を文書化しておくことが重要です。これにより、税務調査などでも制度の正当性を説明できます。
- 金額が社会通念上妥当であること: 提供される福利厚生の金額や内容は、社会一般の常識の範囲内であることが条件です。あまりにも高額な場合、給与とみなされて課税対象となるリスクがあります。
- 現金支給でない・換金性がないこと: 現金や商品券など、容易に換金できるものは給与とみなされやすいため、節税効果は期待できません。あくまで現物支給やサービス提供の形式が基本となります。
これらの条件を満たすことで、福利厚生費が適正に「損金」として認められ、法人税の節税へと繋がります。
節税効果の高い福利厚生の具体例
上記の条件を満たし、高い節税効果が期待できる代表的な福利厚生をいくつかご紹介します。
これらの制度は、従業員の生活を直接的にサポートしつつ、企業の税負担軽減にも貢献します。
- 社宅・住宅手当: 会社名義で賃貸契約を結び、従業員から一定額を徴収することで、会社は家賃を損金に計上し、従業員は市場価格より安価で住宅を利用できます。従業員負担額が原価の半分以上といった条件があります。
- 食事補助: 社員食堂の運営、弁当の提供、または「チケットレストラン」のような食事補助サービスの活用が一般的です。会社が費用を負担する場合、従業員の負担額が原価の半分以上、かつ会社負担額が月3,500円(税別)以下などの条件を満たすと、会社負担分が非課税扱いとなります。
- 健康診断・人間ドック補助: 法定健康診断だけでなく、全従業員を対象としたオプション検査費用も経費計上が可能です。従業員の健康維持は、会社の生産性向上にも直結する重要な投資です。
- 社員旅行: 従業員のリフレッシュを目的とした旅行も、社会通念上一般的な範囲内であれば非課税となります。具体的には、概ね4泊5日以内、参加人数が全体の50%以上、一人あたり10万円程度が目安とされています。
- 慶弔見舞金: 従業員の結婚、出産、死亡といった慶弔時に支給される金銭も、社会通念上妥当な範囲内であれば非課税として扱われます。従業員の安心感を高める上で重要な制度です。
これらの福利厚生を導入・活用することで、従業員の満足度を高めつつ、会社の節税対策を効果的に進めることが可能です。
天引き・積立・投資!福利厚生の賢い活用法
「第三の賃上げ」としての福利厚生
給与を直接増額すると、それに応じて所得税や住民税、社会保険料といった税金・社会保険料の負担が増加し、従業員の手取りの伸びが鈍化します。
しかし、福利厚生は非課税や優遇税制の対象となることが多いため、従業員の実質的な手取り収入を増やす効果があります。
この特性から、福利厚生は「第三の賃上げ」とも呼ばれ、直接的な給与アップに代わる有効な手段として注目されています。
生活費の負担軽減や自己投資支援を通じて、従業員の金銭的・精神的満足度を高めることができるのです。
会社にとっても、給与増額による社会保険料負担の増加を抑えつつ、人材定着やモチベーション向上を図れるメリットがあります。賢く活用することで、会社と従業員双方にとって「お得」な仕組みを構築できるでしょう。
従業員が活用できる積立・投資関連の福利厚生
福利厚生の中には、従業員の長期的な資産形成を支援する積立や投資に関連する制度も存在します。
これらは老後の安心や将来設計に大きく貢献します。
- 企業型確定拠出年金(iDeCo+): 会社が掛金を拠出し、従業員が自ら運用する年金制度です。会社が拠出した掛金は全額損金算入できる上、従業員は運用益が非課税、受取時にも税制優遇が受けられます。中小企業向けには、企業型DCに加入していない事業主が従業員のiDeCo掛金に上乗せ拠出できる「iDeCo+(イデコプラス)」という制度もあり、導入のハードルは下がっています。
- 財形貯蓄制度: 給与から天引きで貯蓄を行う制度で、「一般財形」「住宅財形」「年金財形」の3種類があります。特に住宅財形や年金財形は、一定額まで利子が非課税となる優遇措置があり、従業員の計画的な資産形成を強力にサポートします。
これらの制度は、従業員が将来に備えるための強力なサポートとなり、会社へのエンゲージメント向上にも寄与するでしょう。
手間なくお得に!利用しやすい天引き型の福利厚生
日々の生活に直結し、従業員が意識せずにメリットを享受できる天引き型の福利厚生は、高い満足度と利用率が期待できます。
会社側も管理が比較的容易なものが多く、導入しやすいのが特徴です。
- 住宅手当・家賃補助: 会社が従業員の家賃の一部を負担し、給与から天引きで家賃を徴収することで、従業員の家賃負担を実質的に軽減し、手取りを増やします。生活費の大部分を占める費用であるため、従業員満足度が高い傾向にあります。
- 食事補助サービス: 「チケットレストラン」や「エデンレッド」などのサービスは、従業員の食事代の一部を補助し、会社は税制優遇を受けられます。専用のICカードやアプリを使用するため、従業員は手軽に利用でき、会社側も管理が容易です。日々のランチ代の負担軽減は、従業員の満足度向上に直結します。
- 通勤手当: 非課税枠の範囲内であれば、会社が従業員の通勤費用を全額負担できます。これも生活費に直結する項目であり、基本的な福利厚生として多くの企業で導入されています。
これらの天引き型福利厚生は、従業員が手間なく経済的メリットを享受できるため、企業と従業員の双方にとってWin-Winの関係を築く上で非常に有効です。
年収換算でいくら?意外と知らない福利厚生の価値
実質手取りが増える仕組みを理解しよう
給与として直接10万円を受け取った場合、そこから所得税、住民税、社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険)が差し引かれ、実際に手元に残る金額は少なくなります。
例えば、手取りで約7万円~8万円程度になるケースも少なくありません。
一方、福利厚生を通じて10万円相当のサービスや手当を非課税で受け取れた場合、税金や社会保険料の控除がないため、そのまま10万円分の価値を享受できます。
この差こそが、福利厚生が「実質的な手取りを増やす」と言われる所以です。
会社にとっても、給与増額による社会保険料負担の増加を抑えつつ、従業員満足度を向上させられるメリットがあります。給与換算で考えると、福利厚生の価値は額面以上に大きくなることが多いのです。
具体的な福利厚生でどれだけお得になる?
いくつかの具体的な福利厚生について、その金銭的な価値を計算してみましょう。
福利厚生の非課税メリットを実感できるはずです。
- 食事補助(月額3,500円の会社負担): 年間では42,000円分の食費が補助されます。もしこの42,000円を給与として受け取った場合、所得税・住民税・社会保険料で約25%~35%が引かれると仮定すると、手取りで約27,300円~31,500円にしかなりません。福利厚生なら全額42,000円分を利用可能です。
- 住宅手当(月額2万円相当の会社負担): 年間では24万円分の住居費負担が軽減されます。これを給与として受け取った場合、税金・社会保険料控除後には約15.6万円~18万円程度に減少する可能性があります。福利厚生として適切に運用されれば、24万円分の住居費負担がそのまま軽減されます。
- 健康診断・人間ドック(年1回5万円の補助): 年間5万円の健康維持費用が非課税で賄えることは、従業員にとって大きな経済的メリットです。もし自己負担で支払う場合、医療費控除の対象とならないケースも多く、実質的な支出減に大きく貢献します。
これらの例から、福利厚生が従業員の生活費を直接的に軽減し、実質的な年収を大きく押し上げていることが分かります。
見えない形で支える!健康・スキルアップ支援の価値
直接的な金銭的価値に換算しにくい福利厚生も、従業員の長期的なキャリアや幸福度、ひいては年収に大きく貢献しています。
その価値は計り知れません。
- 資格取得・スキルアップ支援: 研修費用や資格取得費用の補助は、従業員の市場価値を高め、将来的なキャリアアップや昇給に繋がります。これは、将来の年収増という形で還元される会社からの大きな投資と言えます。
- 自己啓発支援: 読書費補助やオンライン学習プラットフォームの提供、セミナー参加費補助などは、従業員の知識・スキル向上を促し、仕事のパフォーマンス向上に寄与します。これもまた、自身の成長を通じて将来の可能性を広げるものです。
- メンタルヘルスケア・整体等の補助: 心身の健康を維持することは、医療費の削減や生産性の維持・向上に直結します。従業員が健康で安心して働き続けられることは、企業にとっても個人にとっても長期的に見て計り知れない価値があります。
これらの福利厚生は、目に見える形での「お得」だけでなく、従業員のウェルビーイングを高め、長期的な視点で豊かな生活とキャリアを支援する重要な役割を担っているのです。
整体・手当など!具体的な福利厚生の相場と種類
会社を強くする!人気の法定外福利厚生とは?
法定外福利厚生とは、法律で義務付けられていないものの、企業が独自に提供する福利厚生のことです。
これらは、人材採用・定着、従業員満足度向上に直結するため、多くの企業が積極的に導入しています。
- 住宅・食事補助: 従業員の生活費の大部分を占める費用を直接支援するため、最も人気が高く、従業員満足度が高い福利厚生です。特に中小企業では導入率が高い傾向にあり、生活の安定に大きく寄与します。
- 健康診断・人間ドック補助: 法定外のオプション検査費用を補助することで、従業員の健康意識を高め、病気の早期発見・早期治療に繋げます。これは従業員の長期的な活躍と生産性向上に貢献します。
- 慶弔見舞金: 従業員のライフイベントに寄り添う制度として、結婚、出産、死亡など、社会通念上妥当な範囲で金銭を支給します。従業員の安心感を高め、会社への帰属意識を醸成する重要な要素です。
- 通勤手当: 非課税枠内で通勤費を補助することで、従業員の経済的負担を軽減します。多くの企業で導入されており、もはや基本的な福利厚生の一つとして定着しています。
これらの福利厚生は、従業員の生活の質を向上させ、会社へのエンゲージメントを高める上で不可欠な要素と言えるでしょう。
従業員満足度UP!ユニークな福利厚生の紹介
近年では、従業員の多様なニーズに応えるため、既存の枠にとらわれないユニークな福利厚生を導入する企業も増えています。
これらは従業員のエンゲージメントを強化し、企業文化を豊かにします。
- 整体・マッサージ補助: デスクワークによる肩こりや腰痛対策として、整体やマッサージ費用の一部を補助する制度です。従業員の健康維持とリフレッシュに役立ち、ストレス軽減や生産性向上にも繋がります。
- リフレッシュ休暇・バースデー休暇: 有給休暇とは別に、心身のリフレッシュを目的とした特別休暇を付与する制度です。従業員のワークライフバランスの向上に寄与し、モチベーション維持に貢献します。
- 自己啓発・スキルアップ支援: 語学学習、ビジネススキル研修、専門資格取得など、従業員の自律的な成長をサポートする制度です。書籍購入費の補助やeラーニングの提供なども含まれ、企業の競争力向上にも繋がる投資です。
- 子育て支援・介護支援: 育児や介護に携わる従業員をサポートするための手当や制度(ベビーシッター補助、介護休暇延長など)も、多様な働き方を推進し、優秀な人材の離職防止に貢献します。
これらのユニークな福利厚生は、従業員のエンゲージメントを強化し、企業文化を豊かにする上で重要な役割を果たします。
中小企業でも導入しやすい!少額から始められるサービス
「福利厚生は大手企業だけのもの」というイメージは、もはや過去のものです。
近年、中小企業でも手軽に導入できる、安価で質の高い福利厚生サービスが多数登場しています。
- 福利厚生代行サービス: ベネフィット・ワンやリロクラブなどが提供するサービスで、月額数百円から数千円/人程度で、提携する宿泊施設、レジャー施設、飲食店、育児・介護サービスなどを割引価格で利用できます。個別の契約や管理の手間なく、多種多様な福利厚生を提供できるのが最大の魅力です。
- 食事補助サービス: 「チケットレストラン」や「エデンレッド」などのサービスは、従業員の食事代の一部を補助し、会社は税制優遇を受けられます。専用のICカードやアプリを使用するため、管理が容易で、日々の食費軽減に貢献します。
- 健康経営サポート: 安価で導入できる健康アプリやオンラインフィットネス、EAP(従業員支援プログラム)なども増えています。従業員の心身の健康をサポートし、生産性向上に繋げられます。
中小企業においても、70%以上の企業が法定外福利厚生を導入しているというデータもあり、これらのサービスを活用することで、無理なく魅力的な福利厚生を実現することが可能です。
福利厚生を充実させて、社員の満足度と会社への貢献度を高める!
優秀な人材を惹きつけ、定着させる力
現代の労働市場において、福利厚生は単なる「おまけ」ではありません。企業が優秀な人材を獲得し、長く定着させるための、非常に重要な戦略ツールとなっています。
魅力的な福利厚生は、求職者にとって企業を選ぶ際の大きなアピールポイントとなり、競合他社との差別化を図ることができます。
一度入社した従業員にとっても、充実した福利厚生は日々の生活を支え、会社への満足度とエンゲージメントを大きく高めます。
結果として、従業員の離職率の低下に繋がり、採用コストの削減や組織全体の安定化に寄与するのです。従業員が「この会社で働き続けたい」と感じる理由の一つとして、福利厚生の存在は非常に大きいと言えるでしょう。
生産性向上と企業イメージアップへの寄与
福利厚生は、従業員の健康と幸福をサポートすることで、間接的に会社の生産性向上に大きく貢献します。
健康診断補助やメンタルヘルスケアの充実は、従業員の健康不安を軽減し、病欠や休職のリスクを低減します。
育児・介護支援は、ライフイベントと仕事の両立を可能にし、従業員が安心して業務に集中できる環境を整えます。
これらの取り組みは、従業員のモチベーション向上にも繋がり、結果として業務効率や生産性の向上に直結するのです。
さらに、従業員を大切にする企業姿勢は、社外への企業イメージ向上にも繋がります。顧客や取引先からの信頼を獲得し、優秀な人材が集まる企業としてのブランド力を高める効果も期待できます。
会社と社員、双方に「お得」をもたらす未来へ
福利厚生制度は、単なるコストではなく、会社と従業員双方にとって多岐にわたるメリットをもたらす「戦略的な投資」です。
会社は法人税の節税、優秀な人材の採用・定着、生産性の向上、そして企業イメージの向上という形でその恩恵を享受できます。
一方、従業員は実質的な手取り収入の増加、生活費負担の軽減、健康維持・増進、スキルアップの機会といった形で、より豊かで安定した生活を送ることができます。
自社の状況や従業員のニーズに合わせて、最適な福利厚生制度を導入・活用していくことは、持続的な企業成長と社員の幸福を実現するための賢明な選択と言えるでしょう。
福利厚生を起点とした「Win-Win」の関係を築き、会社全体の活力を高めていきましょう。
まとめ
よくある質問
Q: 福利厚生費は、会社の経費(損金)として計上できますか?
A: はい、福利厚生費の多くは一定の要件を満たせば損金として計上できます。これにより、会社の法人税負担を軽減することが可能です。ただし、個人の給与とみなされるものや、過剰なものは損金にならない場合もありますので注意が必要です。
Q: 福利厚生は、従業員の年収にどのように影響しますか?
A: 福利厚生は、直接的な給与とは異なりますが、実質的な年収を向上させる効果があります。例えば、住宅手当や育児支援、自己啓発支援などは、従業員が負担するはずだった費用を会社が負担してくれるため、可処分所得が増えたのと同等の効果をもたらします。年収換算する際には、これらの制度の年間利用額などを考慮すると良いでしょう。
Q: 福利厚生の「積立」や「投資」とは具体的にどのようなものでしょうか?
A: 積立型の福利厚生としては、財形貯蓄制度や退職金共済制度などがあります。従業員が給与から一定額を積み立て、会社が奨励金を上乗せしたり、税制上の優遇措置を受けられたりします。投資型としては、従業員持株会制度などが挙げられ、自社株式への投資を促進し、会社へのエンゲージメントを高める目的があります。
Q: 整体やマッサージといった、健康関連の福利厚生の相場はどれくらいですか?
A: 健康関連の福利厚生は、企業規模や提供内容によって大きく異なります。例えば、法人契約でのリラクゼーション施設利用補助や、提携する整体院・マッサージ店での割引、社内マッサージ師の配置などが考えられます。月額数千円から数万円程度の費用がかかる場合もありますが、従業員の健康維持・増進に繋がるため、導入を検討する企業も増えています。
Q: 給与から天引きされる福利厚生にはどのようなものがありますか?
A: 給与から天引きされる福利厚生としては、健康保険料、厚生年金保険料などの法定福利費の他、財形貯蓄、従業員持株会、社内預金、団体保険などが一般的です。これらの制度は、従業員が手軽に貯蓄や資産形成を行えるメリットがあります。