概要: 近年、様々な業界でリストラが報告されています。本記事では、ケロッグ、資生堂、花王、昭栄美術、アサヒビール、ビステオン、ゼネカ、ブリヂストン、ベネッセといった企業を例に、リストラの背景と実情を分析。特に50代のビルメンの方々が、リストラに備え、新たなキャリアを築くための具体的な戦略と心構えを解説します。
リストラ予兆?企業別分析と50代ビルメンのキャリア戦略
リストラが頻発する企業とその背景
近年のリストラ傾向と業界動向
近年、テクノロジーの進化やグローバル競争の激化を背景に、多くの企業で大規模なリストラが実施されています。特に、IT企業や製造業では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による業務効率化や、市場の変化に対応するための事業再編が頻繁に行われ、人員削減に繋がるケースが少なくありません。
ビルメンテナンス業界においては、現時点で直接的に50代のリストラが頻繁に行われているという情報は見当たりません。
しかし、全く無関係ではありません。業界内でもロボット導入などDXが進められており、一部業務の省人化が将来的に進む可能性は否定できません。また、慢性的な人手不足の中で賃金上昇が経営を圧迫している企業もあり、コスト削減のために人員配置を見直す動きが出てくる可能性もゼロではないでしょう。
このような間接的な変化が、結果的に個々の従業員の雇用環境に影響を与える可能性を認識しておくことが重要です。
ビルメン業界における雇用情勢の特殊性
ビルメンテナンス業界は、他の業種と比較して非常に特徴的な雇用情勢を持っています。特筆すべきは、中高年の雇用機会が多く、年齢構成が若年層よりも高齢層に偏っている点です。厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、「ビル・建物清掃員」の平均年齢は53.27歳、「警備員」は51.6歳と、50代の労働者が多数を占めています。
さらに、55歳以上が業界全体の半数以上を占めるという調査結果もあり、これは高齢者にとって働きやすい環境であると言えます。しかし、その一方で、正社員以外の雇用形態(パート・アルバイト、契約社員)が中心であり、正社員の割合は男性で3割強、女性で2割弱と決して高くありません。短時間就業者が多い傾向も見られ、安定したフルタイム雇用を望む人には課題となる側面もあります。
業界全体が「現場従業員が集まりにくい」と89.5%もの企業が回答するほどの慢性的な人手不足に悩んでおり、このため高齢者の採用・活用が積極的に進められています。しかし、「現場従業員の若返りが図りにくい」という課題も同時に抱えているのが現状です。
(出典:厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査、ザイマックス総研 ビルメンテナンス業の人手不足に関する実態調査)
賃金と雇用の流動性がもたらす課題
ビルメンテナンス業界の賃金水準は、必ずしも高いとは言えません。一般清掃、設備管理、警備といった職種の中途採用における平均賃金は、それぞれ月21.5万円、26.0万円、21.1万円程度とされています。さらに、正社員であっても半数以上が月収20万円未満という調査結果もあり、家計を支える上で十分な収入を得ることが難しいと感じる人も少なくないでしょう。
また、この業界では現職の在籍期間が3年未満と比較的短い人が多い一方で、清掃経験年数はそれよりも長い傾向にあります。これは、特定の企業に長く勤めるよりも、同業種内で転職を繰り返す「雇用の流動性」が高いことを示唆しています。
この流動性は、ある意味で再就職がしやすいというメリットにもなり得ますが、裏を返せば、企業側がコスト削減のために人員の見直しを行う際に、比較的容易に人員を調整できる可能性も秘めています。低い賃金水準と高い雇用の流動性は、企業が人件費削減を迫られた際に、従業員が予期せぬ形で影響を受けるリスクとなり得ます。
(出典:厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査)
著名企業におけるリストラ事例を深掘り
IT・製造業における大規模リストラの教訓
IT企業や製造業では、ここ数年、グローバル規模での大規模なリストラが頻繁に報じられています。例えば、AIやクラウド技術の急速な進化は、従来のビジネスモデルを大きく変革し、それに伴い求められるスキルセットも変化しました。
古い技術や既存の業務に特化した従業員は、会社の新しい戦略と合致しなくなり、人員削減の対象となることがあります。これらの事例から学べるのは、業界や企業の安定性にあぐらをかくことなく、常に自身のスキルをアップデートし続けることの重要性です。DXの波はIT・製造業に限定されず、ビルメンテナンス業界にも確実に押し寄せており、ロボットによる清掃や設備管理の自動化が進められています。これは、将来的に一部の業務が省人化され、人の手による業務が減少する可能性を示唆しています。
サービス業における人員削減の動向
サービス業全体では、新型コロナウイルスの影響や、非接触・自動化へのシフトによって、人員削減の動きが見られました。例えば、飲食業界や小売業界では、フードロボットやセルフレジの導入が進み、人的サービスが減少する傾向にあります。ビルメンテナンス業も広義のサービス業であり、この流れから無縁ではありません。
特に、清掃業務ではロボット掃除機の導入が一部で進み、警備業務ではAIを活用した監視システムが導入される事例も増えています。人手不足が深刻な業界でありながら、同時にDXによる省人化が進むという、二律背反の状況に直面しているのです。この状況下では、単純な労働力としての価値だけでなく、DXを使いこなしたり、人間ならではのきめ細やかなサービスを提供したりできる人材がより一層求められるようになるでしょう。
ビルメンテナンス業界での隠れた人員見直しリスク
ビルメンテナンス業界では、直接的な「リストラ」という言葉で人員削減が行われるケースは少ないかもしれません。しかし、契約更新の見送り、希望退職の募集、あるいは配置転換といった形で、実質的な人員の見直しが行われる可能性は十分にあります。
特に、先に述べたように、DXの進展による省人化は、特定のスキルを持たない従業員や、特定の業務にしか対応できない従業員にとって、雇用の不安定化を招くリスクとなります。また、正社員以外の雇用形態が多いという業界の特性も、人員調整のハードルを下げてしまう要因となり得ます。
企業が経営の効率化やコスト削減を追求する中で、人件費は大きなターゲットとなりがちです。したがって、例え安定していると言われるビルメンテナンス業界であっても、自身の市場価値を高め、常に「必要とされる人材」であり続ける努力が不可欠なのです。
50代ビルメンがリストラに備えるべきこと
自身の市場価値を客観的に把握する
50代でリストラに備える第一歩は、自分自身の市場価値を客観的に把握することです。これまでの職務経験、取得した資格、身につけてきたスキル、そして人生経験を通じて培ったコミュニケーション能力や問題解決能力などを徹底的に棚卸ししましょう。
例えば、長年のビルメンテナンス業務で培った建物の構造に関する知識や、多様なトラブル対応経験は、若手にはない貴重な強みとなります。また、テナントや協力業者との円滑な関係構築能力も、ビルメンの仕事における重要なスキルです。厚生労働省が提供する「職業能力評価基準」などを活用することで、自身のスキルを客観的に評価し、不足している部分やさらに伸ばすべき強みを見つけることができます。
自分が「何ができて、何が強みなのか」を明確に言語化できるようになれば、次のキャリアを考える上での大きな武器となるでしょう。
(出典:厚生労働省 職業能力評価基準)
必須資格と推奨資格の取得
ビルメンテナンス業界で50代以降も長く活躍し、市場価値を高めるためには、資格取得が非常に有効な手段です。未経験からでも努力次第で資格を取得し、スキルアップを図れる点がこの業界の魅力の一つでもあります。
特に、設備管理に関連する資格は、キャリアアップや年収アップに直結する可能性が高いです。具体的な例としては、以下のような資格が挙げられます。
- 電気工事士(第一種・第二種):電気設備の点検・修理に必須。
- 危険物取扱者(乙種4類):ボイラー燃料などの危険物管理に必要。
- ボイラー技士(特級・1級・2級):空調・給湯設備などのボイラー操作・管理。
- 冷凍機械責任者(第一種~第三種):冷凍機や空調設備の管理に必要。
- 建築物環境衛生管理技術者(ビル管):大規模ビルの衛生管理業務の統括者。
これらの資格は、専門知識と技術の証であり、企業からのニーズも高いため、自身の市場価値を大きく向上させることができます。一つでも多くの資格を取得することで、将来的な選択肢を広げ、安定したキャリアを築く基盤となります。
ネットワーク構築と情報収集の重要性
ビルメンテナンス業界では同業種内での転職が多い傾向にあります。この特性を活かし、積極的に業界内のネットワークを構築し、常に最新の情報を収集することがリストラへの備えとして非常に重要です。
例えば、業界団体が主催するセミナーや交流会に参加したり、同業の仲間との情報交換を密にしたりすることで、企業の求人動向、業界のトレンド、新しい技術情報などをいち早くキャッチできます。いざという時に、そうした人脈が新しい職場を見つけるための貴重な情報源となることも少なくありません。
また、インターネット上の転職サイトや業界専門の情報サイトを定期的にチェックする習慣をつけ、自身のスキルや経験が現在の市場でどの程度評価されるのかを常に把握しておくことも大切です。情報収集を怠らず、常にアンテナを張っておくことで、変化の兆候を早期に察知し、適切な対策を講じることが可能になります。
キャリアチェンジのための具体的なステップ
自身の強みを見つめ直し、適応可能な職種を探る
キャリアチェンジを検討する際、まずはこれまでのビルメン経験で培ってきた自身の強みを深く見つめ直すことが不可欠です。ビルメンテナンスの仕事では、建物の安全・安心を守る「責任感」、テナントや協力業者との円滑な調整を行う「コミュニケーション能力」、予期せぬトラブルに冷静に対応する「問題解決能力」など、汎用性の高いスキルが自然と身についています。
これらのスキルは、ビルメンテナンス業界に限定されず、他のサービス業や施設管理、さらには顧客対応が必要な営業職など、多岐にわたる職種で活かすことができます。例えば、テナントの要望を的確に把握し、最適な解決策を提案してきた経験は、コンサルティング的な思考力として評価されることもあります。
自身の「やりたいこと」と「できること」を明確にし、それらが活かせるであろう新たな職種や業界を具体的にリサーチすることで、漠然とした不安を解消し、具体的な行動へと繋げることが可能になります。
資格取得や研修によるスキルアップ
キャリアチェンジを目指す上で、現在のスキルに加え、新たな分野での資格取得や専門的な研修を受けることは非常に有効です。特に、DX化が進む現代において、従来のビルメンテナンス業務だけでは立ち行かなくなる可能性も考慮し、ロボット操作、データ分析、IoT(モノのインターネット)技術といった、最新技術に関する知識やスキルを身につけることが推奨されます。
例えば、オフィスビルのスマート化が進む中で、エネルギー管理システムやセキュリティシステムの監視・運用知識は、今後さらに需要が高まるでしょう。厚生労働省は、キャリアアップを支援するための様々な能力開発支援制度を提供しており、これらを活用することで費用を抑えながら新しいスキルを習得できます。
50代からの学び直しは決して遅いことではありません。むしろ、これまでの経験に新しいスキルが加わることで、唯一無二の市場価値を持つ人材へと進化できる可能性を秘めているのです。
多様な雇用形態を視野に入れた柔軟な働き方
キャリアチェンジを検討する際、必ずしも正社員に限定せず、パート・アルバイトや契約社員、あるいは派遣社員といった多様な雇用形態を視野に入れることで、選択肢を大きく広げることができます。
ビルメンテナンス業界は、短時間勤務の需要も高く、自身の体力やライフスタイルに合わせた働き方を選びやすいというメリットがあります。例えば、週3日勤務や午前中のみの勤務など、柔軟な働き方を選択することで、体力的な負担を軽減しつつ、長期的にキャリアを継続することが可能です。
また、一度非正規雇用で新しい分野に飛び込み、そこで経験とスキルを積んでから正社員登用を目指すという戦略も有効です。自身の健康状態や家族の状況などを考慮し、無理なく働ける環境を選ぶことが、50代以降のキャリアを成功させる鍵となります。柔軟な働き方は、安定性だけでなく、精神的なゆとりをもたらすことにも繋がるでしょう。
リストラを乗り越えるためのマインドセット
「安定」への過度な執着からの脱却
ビルメンテナンス業界は「建物がある限り仕事がなくならない」という、圧倒的な安定性が魅力の一つであることは間違いありません。しかし、現代社会の変化のスピードを考えると、どのような業界や企業であっても「絶対的な安定」は存在しないと認識することが重要です。
DXの推進や人口構造の変化など、外部環境は常に変動しています。このため、「この仕事は安泰だ」という過度な執着は、かえって変化への対応を遅らせ、リスクを高める可能性があります。むしろ、安定性を享受しつつも、常に学び、新しい知識やスキルを身につける努力を怠らない姿勢が、真の安定を生み出します。
「建物がある限り仕事はなくならない」という認識は持ちつつも、その仕事の内容や求められるスキルが変化していく可能性を受け入れ、柔軟に対応していくマインドセットが不可欠です。
変化を成長の機会と捉える前向きな姿勢
リストラの可能性やキャリアチェンジへの挑戦は、時に大きな不安を伴うものです。しかし、それをネガティブな出来事として捉えるだけでなく、「新しい自分を発見し、成長する機会」と前向きに捉えることが、困難を乗り越えるための重要なマインドセットとなります。
例えば、これまでの経験に加えて、テナントの特性に合わせたメンテナンス計画の策定など、「企画提案型」の人材への転換を目指すことは、単なる業務の遂行から一歩踏み出し、より付加価値の高い仕事へと挑戦する意欲の表れです。50代からの学び直しや新しい挑戦は、自分自身の可能性を広げ、人生をより豊かにする機会でもあります。
変化を恐れず、むしろその変化を自らの成長の糧とすることで、困難な状況も乗り越え、新しいキャリアを築くことができるでしょう。
セーフティネットの活用と精神的な準備
万が一、リストラや雇用の見直しに直面した場合に備え、公的なセーフティネットについての情報を事前に把握し、精神的な準備をしておくことも非常に重要です。
例えば、失業給付金の制度や、ハローワークなどの公的機関が提供する再就職支援プログラムの内容を調べておけば、いざという時に落ち着いて行動できます。また、家族や信頼できる友人、同僚に自身のキャリアに関する不安や悩みを相談し、精神的なサポートを得ることも大切です。
一人で抱え込まず、外部の力を借りることで、精神的な負担を軽減し、冷静に次のステップを考えることができます。不安やストレスが大きくなりすぎた場合は、専門のカウンセリングを受けることも有効な選択肢です。事前の準備と周囲のサポートを活用することで、困難な状況も乗り越え、前向きな未来を切り開くことができるはずです。
まとめ
よくある質問
Q: ケロッグのリストラはどのような背景で行われましたか?
A: ケロッグでは、事業再編やグローバル戦略の見直しに伴う人員削減が報じられています。特に、特定事業部門の統合や効率化が目的とされることが多いです。
Q: 資生堂や花王の美容部員リストラはなぜ起きたのですか?
A: 資生堂や花王における美容部員のリストラは、eコマースの拡大や店舗販売戦略の見直し、あるいはコロナ禍の影響による一時的な需要変動などが要因として考えられます。販売チャネルの変化への対応が求められています。
Q: 昭栄美術やアサヒビールのリストラについて教えてください。
A: 昭栄美術は、業界再編や経営環境の変化によるリストラが報じられました。アサヒビールも、M&Aによる事業統合や組織再編の一環で、一部人員の削減が行われるケースがあります。
Q: 50代のビルメンがリストラに備えるにはどうすれば良いですか?
A: 50代のビルメンの方は、これまでの経験やスキルを活かせる同業他社への転職、あるいはビルメンで培った管理能力を活かせる異業種へのキャリアチェンジを検討しましょう。資格取得や研修参加でスキルアップも有効です。
Q: ベネッセのリストラはどのような状況でしたか?
A: ベネッセでは、教育事業の構造変化やデジタル化への対応、あるいは不採算事業の見直しなど、事業ポートフォリオの再構築に伴うリストラが報じられています。