【分野別】OJTで役立つ英語表現と実践例

OJT(On-the-Job Training)は、職場で上司や先輩が部下や後輩に対し、実際の仕事を通して必要な知識やスキル、態度を指導・教育する手法です。

日本語では「職場内訓練」や「実務を通じた指導」と訳され、即戦力育成に欠かせないものとして多くの企業で取り入れられています。

近年、企業のグローバル化や外国人材の活躍が増える中、OJTの現場でも英語でのコミュニケーションが求められる機会が増えてきました。

この記事では、OJTにおける英語の重要性を解説し、様々な分野で役立つ実践的な英語表現と、OJTを成功させるためのポイントをご紹介します。

OJTにおける英語の重要性とは?

OJTの基本と国際化の波

OJTは、職場の上司や先輩が、実際の業務を通じて部下や後輩を指導・育成する効果的な教育手法です。

その目的は、社員の早期育成と業務効率の向上にあり、指導担当者自身のマネジメント力向上にも寄与します。厚生労働省の「能力開発基本調査」(2023年度)によると、従業員に対して計画的なOJTを実施している事業所は63.2%に上り、多くの日本企業でその重要性が認識されています。

しかし、現代のビジネス環境は急速に国際化しており、海外拠点との連携や外国人社員の採用が増加傾向にあります。

これにより、OJTの現場でも日本語だけでなく、英語での円滑なコミュニケーションが求められる場面が格段に増えてきているのです。

なぜ今、OJTで英語が必要なのか

OJTの現場で英語が必要となる主な理由は、外国人社員への指導が挙げられます。

彼らの日本語能力を過信せず、母国語に近い英語で丁寧に指導することで、業務理解度を深め、不安を軽減することができます。

また、国際的なプロジェクトや外国人顧客とのやり取りが多い部署では、現場の業務指示やフィードバック自体に英語が必要となることも少なくありません。

文化的な背景の違いを考慮した上で、的確な英語表現を用いることは、信頼関係を築き、OJTの効果を最大化するために不可欠です。

言葉の壁が解消されれば、外国人社員も積極的に質問しやすくなり、成長スピードも加速するでしょう。

英語力向上によるOJT効果の最大化

指導担当者自身の英語力向上は、OJT全体の効果を飛躍的に高めます。

英語でスムーズに指導ができるようになれば、より多様なバックグラウンドを持つ人材を育成できるようになり、企業の競争力強化にも繋がります。

OJTの現場で役立つ汎用的な英語表現をいくつか覚えておくだけでも、コミュニケーションは格段に円滑になります。

例えば、以下のようなフレーズは、指導の導入から確認まで幅広く活用できます。

  • “Let me show you how to do this.” (これをどうやるかお見せします。)
  • “Could you try doing it yourself now?” (今度は自分でやってみてくれますか?)
  • “Feel free to ask any questions.” (どんな質問でも気軽にしてください。)

これらのフレーズを使いこなすことで、指導を受ける側も安心して業務に取り組める環境が作られ、OJTの成果をより一層引き出すことができるでしょう。

【営業・製造業】OJTで使える英語例文集

営業現場で役立つ指示と確認

営業職におけるOJTでは、顧客対応や商談の流れ、製品知識の説明など多岐にわたる指導が必要です。

特に外国人社員への指導では、具体的な指示と進捗確認を英語で行うことが重要になります。

例えば、資料作成や顧客へのアプローチに関する指示では、以下のような表現が役立つでしょう。

  • “Please prepare a presentation for the client meeting next week.” (来週の顧客会議のプレゼンテーション資料を作成してください。)
  • “Could you call Mr. Smith to confirm the delivery date?” (スミスさんに電話して、納期を確認してもらえますか?)

また、商談後のフィードバックや改善点を伝える際には、

  • “How was the client meeting? What were the key takeaways?” (顧客会議はどうでしたか?主なポイントは何でしたか?)
  • “That was a good attempt, but next time, try to emphasize the benefits more.” (良い試みでしたが、次回はもっとメリットを強調してみてください。)

といった言葉で、具体的にアドバイスを提供することが効果的です。

製造ラインで安全・正確に伝える

製造業のOJTでは、安全管理が最も重要な要素の一つです。危険を伴う作業も多いため、明確で誤解のない英語表現で指示を出す必要があります。

作業手順の説明や安全指示には、簡潔かつ具体的な言葉を選びましょう。

  • “Always wear your safety helmet and gloves in this area.” (この区域では常に安全ヘルメットと手袋を着用してください。)
  • “First, press the red button, then wait for the light to turn green.” (まず赤いボタンを押し、次にライトが緑色に変わるのを待ってください。)

品質管理や検査に関する指導では、

  • “Please check the dimensions of this component carefully.” (この部品の寸法を注意深く確認してください。)
  • “If you notice any defects, report them immediately.” (何か不具合を見つけたら、すぐに報告してください。)

といった表現が適切です。異常発生時の対応についても、冷静に指示を出すためのフレーズを準備しておくと良いでしょう。

実践的なロールプレイング例

営業・製造業を問わず、OJTの効果を高めるためには実践的なロールプレイングが非常に有効です。

実際の業務シナリオを設定し、指導を受ける側に体験させることで、座学だけでは得られない実践的なスキルと自信を養うことができます。

例えば、営業職であれば「新規顧客への製品紹介」、製造業であれば「機械のトラブルシューティング」といったテーマでロールプレイングを実施します。

ロールプレイング中には、以下のようなフレーズを使って指導とフィードバックを行いましょう。

  • “Imagine I am a client. Please explain our product to me.” (私がクライアントだと思って、製品を説明してください。)
  • “You did well explaining the features. Now, let’s practice how to handle objections.” (機能の説明はよくできました。次に、反論への対応方法を練習しましょう。)

繰り返し練習を重ねることで、外国人社員は英語での業務遂行に慣れ、実際の現場で自信を持って対応できるようになります。

【エンジニア・IT】OJTで役立つ英会話

専門用語と技術指導の英語表現

エンジニアやIT分野のOJTでは、技術的な専門用語が多いため、正確な英語表現を用いることが不可欠です。

プログラミング言語、フレームワーク、システムアーキテクチャなど、特定の用語を共有し、その意味を明確に伝えることが重要になります。

例えば、コーディングに関する指示では、

  • “Please implement this feature using the React framework.” (この機能をReactフレームワークを使って実装してください。)
  • “We need to optimize this query for better performance.” (パフォーマンス向上のため、このクエリを最適化する必要があります。)

といった具体的な指示が求められます。図やコードを共有しながら、

  • “Do you understand this part of the code?” (このコードの部分は理解できましたか?)
  • “Let’s walk through the architecture diagram together.” (一緒にアーキテクチャ図を見ていきましょう。)

と理解度を確認することも、円滑なOJTには欠かせません。

問題解決とフィードバックの英語

エンジニアリングの現場では、バグの特定やシステムのトラブルシューティングが日常的に発生します。これらの問題解決プロセスにおいても、英語でのコミュニケーションが重要です。

問題報告や原因究明の際には、

  • “I encountered an error when trying to deploy the application.” (アプリケーションをデプロイしようとしたときにエラーが発生しました。)
  • “Could you check the logs for any unusual activities?” (何か異常なアクティビティがないか、ログを確認してもらえますか?)

といった表現が役立ちます。また、コードレビューやパフォーマンス改善に関するフィードバックでは、

  • “This logic could be simplified. Let’s discuss an alternative approach.” (このロジックはもっと単純化できます。別の方法を検討しましょう。)
  • “Your commit message needs to be more descriptive.” (コミットメッセージはもっと具体的に記述する必要があります。)

のように、建設的かつ具体的なアドバイスを提供することで、指導を受ける側の成長を促します。

チームコラボレーションを促す英会話

現代のIT開発は、チームでの協業が中心です。OJTにおいても、外国人社員がチームの一員としてスムーズに連携できるよう、コミュニケーションを促す英会話が重要になります。

朝会や進捗会議、ブレインストーミングなど、様々な場面で発言を促し、意見交換を活発にするフレーズを使いましょう。

  • “What’s your progress on the assigned task today?” (今日の担当タスクの進捗はどうですか?)
  • “Do you have any questions or blockers you’d like to share?” (何か質問や、作業を妨げているものがあれば共有してください。)

また、技術的な議論やアイデア出しの際には、

  • “What do you think about this solution?” (この解決策についてどう思いますか?)
  • “Let’s brainstorm some ideas for the next sprint.” (次のスプリントに向けていくつかアイデアを出し合いましょう。)

と積極的な参加を促すことが大切です。これにより、外国人社員もチームの一員として貢献している実感を得られ、エンゲージメントが高まるでしょう。

【医療・介護】OJTで使われる英語表現

患者・利用者とのコミュニケーション

医療・介護分野では、患者さんや利用者さんとの信頼関係を築くことが最も重要です。外国人社員がスムーズに患者・利用者さんとコミュニケーションを取れるよう、OJTでの英語指導は不可欠となります。

基本的な挨拶から、症状の確認、治療やケア内容の説明まで、丁寧で分かりやすい英語表現を指導しましょう。

  • “Hello, my name is [Your Name]. I will be your nurse today.” (こんにちは、[あなたの名前]です。今日担当させていただきます看護師です。)
  • “How are you feeling today? Are you experiencing any pain?” (今日の体調はいかがですか?痛みはありますか?)
  • “I’m going to take your blood pressure now.” (今から血圧を測りますね。)

文化的な背景の違いも考慮し、相手が安心して話せる環境を整えることが大切です。不安を和らげる「Don’t worry, you are in good hands.(心配いりません、私たちがついていますから。)」といった表現も有効です。

安全管理と手順の説明

医療・介護現場における安全管理は、患者・利用者さんの命に関わるため、OJTでの徹底した指導が求められます。特に衛生管理、感染予防、医療機器の操作手順などは、正確な英語で伝える必要があります。

  • “Please wash your hands thoroughly before and after every patient contact.” (すべての患者さんとの接触前後には、徹底的に手を洗ってください。)
  • “This is how you operate the ventilator. Pay close attention to the settings.” (これが人工呼吸器の操作方法です。設定に十分注意してください。)

薬剤の管理や与薬に関する指導も、誤解が生じないよう慎重に行うべきです。

  • “Administer this medication orally, three times a day after meals.” (この薬は、食後に1日3回、経口で投与してください。)
  • “Always double-check the patient’s name and dosage before administering.” (投与前には必ず患者さんの名前と投与量を再確認してください。)

といった具体的な指示とともに、危険回避のための確認を怠らないよう指導しましょう。

緊急時対応と多職種連携

医療・介護現場では、緊急事態が発生することもあります。そのような状況で外国人社員が冷静かつ的確に対応できるよう、OJTで緊急時の報告や指示に関する英語表現を習得させておくことは極めて重要です。

緊急時の状況報告では、

  • “The patient’s condition has suddenly changed. Their blood pressure is dropping.” (患者さんの容態が急変しました。血圧が低下しています。)
  • “I need immediate assistance in Room 3. The patient is having difficulty breathing.” (3号室に緊急の応援が必要です。患者さんが呼吸困難に陥っています。)

といった表現を迅速に行えるように指導します。また、医師や他の医療スタッフ、救急隊員との連携も英語で行われる可能性があります。

  • “Could you please call Dr. Tanaka immediately?” (田中先生にすぐに連絡してもらえますか?)
  • “We need to prepare for patient transfer to the emergency room.” (救急室への患者移送の準備が必要です。)

OJTを通じて、緊急時における冷静な判断と、チームメンバーとの円滑な連携に必要な英語コミュニケーション能力を養うことが、患者・利用者さんの安全を守る上で不可欠です。

OJTを成功させるためのポイント

指導担当者へのサポートと研修

OJTの効果は、指導する側のスキルや熱意に大きく左右されます。特に外国人社員へのOJTでは、語学力だけでなく、異文化理解やコーチングスキルがより一層求められます。

そのため、企業は指導担当者向けに十分なサポートと研修を提供することが不可欠です。具体的には、OJTの進め方に関するマニュアル整備や、外国人社員への指導に特化した研修を実施することが有効です。

例えば、
「異文化コミュニケーション研修」
「OJTで使える英語フレーズ集の提供」
「メンター制度の導入」などが考えられます。
これにより、指導担当者は自信を持ってOJTに臨めるだけでなく、自身のマネジメント能力向上にも繋がります。

Off-JTとの効果的な併用

OJTは個別対応で教育効果が高い反面、指導に手間がかかり、効率性が低下する場合があります。一方、Off-JT(Off the Job Training:職場を離れて行う訓練)は、集合研修などで効率的に知識を伝えられますが、個々の理解度や実践力を高めるのが難しい側面があります。

OJTを成功させるためには、これらOJTとOff-JTのメリットを最大限に活かした併用が重要です。

例えば、基礎的な知識や理論はOff-JTで効率的に学び、その後、OJTで実務を通して応用力を養うという流れが理想的です。特に、技術革新のスピードが速い現代においては、OJTだけでは対応しきれない専門知識の習得にOff-JTが不可欠な場合も多いでしょう。

効果的な組み合わせを計画することで、学習効果を最大化し、人材育成をより効率的に進めることができます。

公的制度の活用と文化への配慮

OJTをより効果的に、そして継続的に実施するためには、国の支援制度を積極的に活用することも賢明な選択です。

厚生労働省では、OJTを含む人材育成のための様々な支援制度を提供しています。

例えば、「人材開発支援助成金」は、OJTを含む訓練の実施にかかる経費や賃金の一部を助成する制度であり、企業の負担を軽減するのに役立ちます。また、「職業能力評価基準」では、「職業能力評価シート」や「OJTコミュニケーションシート」といったツールが提供されており、OJTの効果的な実施を支援します(出典:厚生労働省)。

さらに、外国人社員へのOJTにおいては、日本語能力の過信を避け、文化的な背景の違いを理解した上で、より丁寧で分かりやすい指導を心がけることが大切です。これらの公的制度と文化への配慮を通じて、すべての社員が成長できるOJT環境を構築しましょう。