1. 【再雇用】介護と社会保険、賢く活用する方法
  2. 再雇用と介護休暇・介護休業の基礎知識
    1. 2025年4月施行!育児・介護休業法改正のポイント
    2. 介護休業と介護休暇、再雇用者が知るべき違いと活用法
    3. 介護離職を防ぐ!企業の支援制度と再雇用者への期待
  3. 再雇用後の社会保険料と給付金について
    1. 再雇用と社会保険料の基本原則(労使折半と40歳からの介護保険料)
    2. 介護休業給付金とは?再雇用者が受け取る条件と金額
    3. 2024年度介護保険制度改正のポイントと再雇用への影響
  4. 健康診断・厚生年金・雇用保険の注意点
    1. 再雇用者の健康診断義務と健康経営の重要性
    2. 再雇用後の厚生年金、働きながら年金を受給する際の注意点
    3. 雇用保険の加入条件と失業保険・介護休業給付金との関係
  5. 傷病手当金と失業保険の再雇用における扱い
    1. 再雇用中の傷病手当金、受給要件と活用法
    2. 再雇用者が失業保険を受給するケースと注意点
    3. 再雇用における失業保険と年金の調整
  6. 再雇用者のための社会保険料節約術
    1. 給与改定のタイミングを活用した社会保険料の見直し
    2. 退職・再雇用時の賃金設定と保険料負担のバランス
    3. 賢く活用!高年齢雇用継続給付金と社会保険料の関係
  7. まとめ
  8. よくある質問
    1. Q: 再雇用後でも介護休暇や介護休業は取得できますか?
    2. Q: 再雇用後の社会保険料はどのように計算されますか?
    3. Q: 再雇用後に厚生年金に加入しない場合、将来の年金額はどうなりますか?
    4. Q: 再雇用後に失業保険は受給できますか?
    5. Q: 再雇用者の健康診断は義務ですか?

【再雇用】介護と社会保険、賢く活用する方法

定年後の再雇用は、長年の経験とスキルを活かせる素晴らしい機会です。しかし、この時期に直面しやすいのが「介護」の問題。親の高齢化や自身の健康状態の変化など、予期せぬ出来事が起こりうるのも事実です。

本記事では、2025年度の法改正や最新の動向を踏まえ、再雇用後の従業員が介護と仕事を両立しながら、社会保険制度を賢く活用するための具体的な方法を解説します。大切なキャリアを諦めず、安心して働き続けるためのヒントが満載です。

ぜひ、最後までお読みいただき、今後の働き方やライフプランにお役立てください。


再雇用と介護休暇・介護休業の基礎知識

再雇用後の従業員にとって、仕事と介護の両立は大きな課題となりがちです。しかし、2025年4月1日からは、育児・介護休業法が改正され、介護支援制度がさらに強化されます。これらの制度を正しく理解し、賢く活用することが、長く働き続けるための鍵となります。

2025年4月施行!育児・介護休業法改正のポイント

2025年4月1日から施行される育児・介護休業法の改正は、介護に直面する従業員にとって非常に心強い内容となっています。主な変更点の一つは、企業に「個別周知・意向確認の義務化」が課せられることです。

これにより、企業は介護に直面した従業員に対し、介護休業や短時間勤務、所定外労働の免除といった両立支援制度について、個別に情報提供を行い、利用の意向を確認しなければなりません。また、介護に直面する前の早い段階、例えば従業員が40歳になる頃に、介護休業制度などに関する情報提供を行うことも義務化されます。

さらに、企業には研修の実施や相談窓口の設置など、制度を利用しやすい「雇用環境の整備」が求められます。特に介護を行う労働者に対しては、テレワークを選択できるよう、事業主が措置を講じることが「努力義務」となります。これにより、介護が必要な家族の状況に合わせて、より柔軟な働き方が選択できるようになるでしょう。

また、介護休暇の対象も拡大され、従来取得に制限があった「勤続6ヶ月未満」の労働者も、一部例外を除き介護休暇の対象に含まれるようになります。再雇用されたばかりの従業員でも、緊急時に介護休暇を取得しやすくなるため、安心して仕事と介護を両立できる環境が整備されていくと期待されます。

介護休業と介護休暇、再雇用者が知るべき違いと活用法

介護のための休業制度には、大きく分けて「介護休業」と「介護休暇」の2種類があります。再雇用後の従業員がこれらの制度を賢く活用するためには、それぞれの違いと利用条件を正確に理解することが重要です。

介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで取得でき、分割して3回まで取得が可能です。これは、長期的な介護が必要な場合に備える制度で、雇用保険の被保険者であれば、一定の条件を満たすことで「介護休業給付金」が支給され、休業中の所得を一部補填してくれます。給付額は休業前給与の約67%で、生活の支えとなるでしょう。

一方、介護休暇は、通院の付き添いや介護サービスの契約手続きなど、短期間の介護のために利用できる制度です。対象家族が1人の場合は年に5日まで、2人以上の場合は年に10日まで、時間単位で取得することができます。2025年4月からは、勤続6ヶ月未満の労働者も取得可能となるため、再雇用後すぐに介護の必要が生じた場合でも安心して利用できるようになります。

再雇用された従業員は、企業との雇用契約に基づいてこれらの制度を利用することになります。契約内容によっては、制度の適用条件が異なる場合もあるため、必ず就業規則を確認し、人事担当者と事前に相談することが大切です。企業側も従業員への個別周知が義務化されるため、積極的に情報を求め、自身の状況に合った制度を賢く選択しましょう。

介護離職を防ぐ!企業の支援制度と再雇用者への期待

介護は突然始まることが多く、準備ができていないまま介護離職に至ってしまうケースも少なくありません。2023年度の調査では、介護離職者の5割超が、介護休業や休暇制度を利用していなかったという結果も出ており、制度の存在を知っていても利用に至らない現状が浮き彫りになっています。

このような状況を改善するため、国や企業はさまざまな支援策を強化しています。特に中小企業を対象とした「介護離職防止支援コース」は、仕事と介護の両立支援を促進するための助成金制度です。

このコースには、従業員が介護休業を取得した際の支援や、柔軟な働き方を支援する制度導入、さらには介護休業取得者の業務を代替する従業員への支援などが含まれています。企業がこうした助成金を活用することで、従業員はより安心して介護と仕事を両立できる環境が整備されます。

また、2025年4月の法改正では、企業に従業員への情報提供や雇用環境の整備が義務付けられています。これは、再雇用者を含むすべての従業員が、介護を理由にキャリアを諦めることなく、長く働き続けられるようにするための重要な一歩です。再雇用者の皆さんも、自身の知識や経験を活かし、企業の介護支援制度について積極的に情報を集め、活用していく姿勢が求められます。

企業と従業員が協力し、互いに理解を深めることで、介護離職を防ぎ、再雇用者の貴重な人材が企業にとってかけがえのない戦力として活躍し続けられる社会の実現を目指しましょう。


再雇用後の社会保険料と給付金について

再雇用後の働き方や収入は、社会保険料の負担や受け取れる給付金に大きく影響します。特に40歳以上の従業員は介護保険料の負担も発生するため、社会保険の仕組みを理解しておくことは、家計管理や将来設計において非常に重要です。

再雇用と社会保険料の基本原則(労使折半と40歳からの介護保険料)

社会保険料は、私たちの生活を支える重要なセーフティネットであり、再雇用後も引き続き加入が義務付けられます。社会保険料には、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、雇用保険料があり、原則として事業主と従業員で折半して負担する「労使折半」が基本です。ただし、労災保険料については、事業主が全額を負担します。

特に注意が必要なのが、40歳以上の従業員です。40歳に到達すると、介護保険第2号被保険者として介護保険料の負担が新たに発生します。この介護保険料は、健康保険料と一体で徴収され、こちらも労使折半で負担します。例えば、健康保険料の通知には、健康保険料と介護保険料が合算された形で記載されていることが多いでしょう。

再雇用後の給与額が定年前と比べて変動した場合、それに伴い社会保険料も変わる可能性があります。社会保険料の算出基礎となるのは「標準報酬月額」であり、これは毎月の給与額に応じて決定されます。給与が大幅に下がった場合には、標準報酬月額も下がり、結果として社会保険料の負担も軽くなることがあります。しかし、将来受け取る年金額にも影響するため、目先の保険料だけでなく長期的な視点での検討が重要です。

再雇用契約を結ぶ際には、自身の給与額とそれに伴う社会保険料の負担額を事前に確認し、家計への影響を把握しておくことをおすすめします。

介護休業給付金とは?再雇用者が受け取る条件と金額

介護休業給付金は、雇用保険の被保険者が家族の介護のために休業した場合に、生活を支援するための重要な制度です。再雇用された従業員も、雇用保険に加入していれば、一定の条件を満たすことでこの給付金を受け取ることができます。

受給のための主な条件は以下の通りです。

  1. 介護休業開始日以前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あること。
  2. 介護休業期間中の各1ヶ月ごとに、休業開始前の賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと。
  3. 介護休業期間中の就業日数が、各1ヶ月ごとに10日以下であること。

支給される給付額は、原則として休業開始時賃金日額の約67%に相当する額です。この給付金は、対象家族1人につき最長93日間、介護休業を取得している期間について支給されます。例えば、月給30万円の方が介護休業を取得した場合、約20万円程度が支給される計算になります(上限額あり)。

介護休業給付金は、介護による収入減を補い、従業員が安心して介護に専念できる環境を整えることを目的としています。再雇用後の従業員にとって、介護と仕事の両立は大きな課題となりがちですが、この給付金を活用することで、経済的な不安を軽減し、精神的な負担も和らげることが可能です。

制度の利用を検討する際は、ハローワークや勤務先の人事担当者に相談し、具体的な条件や手続きについて確認することをおすすめします。

2024年度介護保険制度改正のポイントと再雇用への影響

介護保険制度は、高齢化社会の進展に伴い、常に変化しています。2025年問題(団塊の世代が75歳以上となる年)を見据え、2024年度にも介護保険制度改正が行われました。これらの変更点は、再雇用者が介護サービスを利用する際や、将来の制度設計を考える上で重要な影響を及ぼします。

今回の改正の主な目的は、介護報酬の適正化、質の高いサービス提供、そして介護職の労働環境改善などです。具体的には、介護報酬が1.59%引き上げられました。これは、介護サービス提供事業者にとって重要な財源となり、サービスの質向上や介護職員の処遇改善に繋がることが期待されます。

また、介護情報の電子化推進や、自立支援・重度化防止に向けた取り組みが強化されています。例えば、ICTを活用した情報共有や、個々人の状態に合わせた予防介護の推進などが挙げられます。これにより、より効率的で質の高い介護サービスが提供されるようになるでしょう。再雇用者の皆さんが介護サービスを利用する際も、これらの取り組みがサービスの選択肢や質に影響を与える可能性があります。

一方で、「複合型の新介護サービス創設」や「ケアプランの有料化」といった一部の大きな変更案は、2024年度改正では見送られ、次回の2027年度改正で検討される予定です。これらの動向は、将来的な介護サービスの利用費用や、ケアプラン作成のあり方に影響を与える可能性があるため、引き続き注視が必要です。

再雇用者の皆さんは、自身が40歳以上であれば介護保険料を負担しているため、介護保険制度の動向は直接的な関心事となるでしょう。制度改正の内容を理解し、将来の介護に備えるための情報収集を怠らないことが重要です。


健康診断・厚生年金・雇用保険の注意点

再雇用後も、現役世代と同様に健康で働き続けるためには、健康管理はもちろん、厚生年金や雇用保険といった社会保険制度の理解が不可欠です。これらの制度は、万が一の病気や失業、老後の生活を支える大切な基盤となります。

再雇用者の健康診断義務と健康経営の重要性

再雇用された従業員も、労働者である以上、労働安全衛生法に基づき定期的な健康診断の受診が義務付けられています。これは、従業員の健康状態を把握し、健康障害の早期発見・早期治療、ひいては労働災害の防止を目的とするものです。

特に高齢期の再雇用者にとって、健康維持は長く働き続けるための最重要課題と言えます。企業側も、従業員の健康を重要な経営資源と捉える「健康経営」の考え方を推進しています。具体的には、定期健康診断の実施だけでなく、健康相談窓口の設置、生活習慣病予防のための啓発活動、運動機会の提供など、多様な健康サポートに取り組む企業が増えています。

再雇用者の皆さんは、これらの健康診断や企業が提供する健康サポートを積極的に活用することが大切です。年に一度の健康診断を怠らず、少しでも体の異変を感じたら、すぐに相談できる体制を整えておきましょう。定期的な健康チェックは、単に病気を発見するだけでなく、自身の健康状態を把握し、生活習慣を見直す良い機会にもなります。

健康的な体と心があってこそ、再雇用での仕事も充実し、介護が必要な家族を支えることも可能になります。自身の健康を最優先に考え、長く活躍できる基盤を築いていきましょう。

再雇用後の厚生年金、働きながら年金を受給する際の注意点

再雇用後も厚生年金保険の適用事業所で働く場合、60歳以降も引き続き厚生年金保険料を支払うことになります。これは、将来受け取る年金額を増やすことにも繋がりますが、働きながら年金を受給する際には「在職老齢年金制度」に注意が必要です。

在職老齢年金制度とは、厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取る場合、給与と年金の合計額が一定額(2024年度では月額50万円)を超えると、年金の一部または全額が支給停止される仕組みです。再雇用後の給与額によっては、年金が減額される可能性があるため、自身の給与と年金のバランスを事前に確認しておくことが重要です。

例えば、定年退職後に再雇用され、給与が大きく下がった場合は、年金の支給停止額も少なくなる傾向にあります。逆に、再雇用後も高い給与水準を維持できる場合は、年金が大きく停止される可能性も考えられます。

厚生年金の受給開始年齢は原則65歳ですが、希望すれば60歳から64歳の間に繰り上げて受給することも可能です(ただし年金額は減額されます)。再雇用期間と年金受給開始年齢、そして在職老齢年金制度の関係を理解し、ご自身のライフプランに合わせた最適な選択をすることが求められます。

年金事務所や社会保険労務士などの専門家に相談し、具体的なシミュレーションを行うことで、安心して再雇用期間を過ごせるでしょう。

雇用保険の加入条件と失業保険・介護休業給付金との関係

再雇用後も、一定の条件を満たせば雇用保険に加入することになります。雇用保険は、失業時の生活保障や、育児・介護休業時の給付金など、働く上で非常に重要な役割を担っています。

雇用保険の主な加入条件は以下の通りです。

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること。
  • 31日以上の雇用見込みがあること。

再雇用契約でこれらの条件を満たしていれば、雇用保険に加入し、保険料を支払うことになります。雇用保険に加入していることのメリットは多岐にわたります。最も広く知られているのが「失業保険(基本手当)」ですが、これは再雇用期間の終了や自己都合での離職後に、次の仕事が見つかるまでの生活を支えてくれる制度です。

また、前述した「介護休業給付金」も、この雇用保険制度から支給されます。介護が必要となり介護休業を取得する際に、休業中の収入減をカバーしてくれるため、再雇用者にとっても非常に重要な制度です。

さらに、雇用保険は、教育訓練給付金など、スキルアップや再就職を支援する制度も提供しています。再雇用後も、自身のキャリア形成や万が一の事態に備えるために、雇用保険の加入状況と給付金制度の内容をしっかり把握しておくことが賢明です。

自身の再雇用契約が雇用保険の加入条件を満たしているか、またどのような給付金が利用できるかについて、勤務先の人事担当者やハローワークで確認しておきましょう。


傷病手当金と失業保険の再雇用における扱い

再雇用後も、病気やケガで仕事を休まざるを得なくなったり、再雇用契約の終了後に次の仕事を探すことになったりする可能性があります。そのような不測の事態に備え、傷病手当金や失業保険といった制度を理解しておくことは、安心して生活を送る上で非常に重要です。

再雇用中の傷病手当金、受給要件と活用法

再雇用期間中に、業務外の病気やケガで会社を休むことになった場合、健康保険の被保険者であれば「傷病手当金」を受給できる可能性があります。これは、病気やケガによって仕事を休み、給与が支払われない期間の生活を保障するための制度です。

傷病手当金の主な受給要件は以下の通りです。

  1. 業務外の病気やケガで療養中であること。
  2. その病気やケガのために仕事に就くことができない状態であること(労務不能)。
  3. 連続する3日間(待期期間)を含み4日以上休んでいること。
  4. 休んだ期間について給与の支払いがないこと(または給与が傷病手当金より少ないこと)。

支給額は、標準報酬日額(おおよその日給額)の2/3に相当する額で、最長1年6ヶ月間受給することができます。これは、再雇用者が病気やケガで長期療養が必要になった際に、経済的な不安を大きく軽減してくれる制度です。

例えば、再雇用で無理をしてしまい体調を崩した場合でも、傷病手当金があれば焦って復帰する必要がなく、治療に専念できるでしょう。再雇用者の皆さんは、自身の健康状態に不安がある場合や、持病がある場合は特に、この制度の存在をしっかり把握しておくことが大切です。

制度の利用を検討する際は、勤務先の健康保険組合や人事担当者に相談し、必要書類や手続きについて確認しましょう。診断書などの提出が必要となるため、医師との連携も重要です。

再雇用者が失業保険を受給するケースと注意点

再雇用契約が終了した後に次の仕事が見つからない場合や、期間途中で退職することになった場合、雇用保険の被保険者であれば「失業保険(基本手当)」を受給できる可能性があります。再雇用者が失業保険を受給する際のケースと注意点を理解しておくことは、次のキャリアステップを考える上で重要です。

失業保険の主な受給条件は以下の通りです。

  1. 雇用保険の被保険者期間が一定期間(原則として離職日以前2年間に12ヶ月以上)あること。
  2. 現在、失業状態にあり、働く意思と能力があるにもかかわらず、職業に就くことができないこと。
  3. ハローワークに求職の申し込みをし、積極的に求職活動を行っていること。

再雇用契約満了による離職は「会社都合」に該当し、自己都合退職よりも待期期間が短く、給付を受けられる場合があります。また、65歳以降に離職した場合は「高年齢求職者給付金」の対象となり、通常の基本手当とは異なる制度が適用されます。

再雇用契約終了時に「介護」が理由で直ちに次の仕事を探せない場合、失業保険の受給期間を延長できる制度もあります。これは、病気やケガ、妊娠・出産・育児などの理由で、30日以上引き続き働くことができない場合に、本来の受給期間を最大1年間延長できるというものです。

再雇用終了後のライフプランとして、介護に専念する期間を設ける可能性がある場合は、この受給期間延長制度についても事前に調べておくと良いでしょう。ハローワークでの相談や情報収集が、スムーズな制度活用に繋がります。

再雇用における失業保険と年金の調整

再雇用後、特に60歳以降に離職して失業保険(基本手当)を受給する場合、厚生年金との間に併給調整が行われることがあります。この調整について理解しておくことは、再雇用者の経済計画において非常に重要です。

原則として、雇用保険の基本手当を受給している期間中は、老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金を含む)は全額支給停止となります。これは、失業保険と年金が、どちらも生活保障を目的とした公的給付であるため、重複して支給されることを防ぐための仕組みです。

例えば、60歳で定年退職し、再雇用後にさらに離職して失業保険を受給する場合、その期間は年金がストップします。そのため、失業保険の受給を優先するか、年金を受給し続けるかを、自身の状況や家計の状況に合わせて判断する必要があります。

一般的には、失業保険の方が一時的な受給額が高い傾向にあるため、短期間で再就職を目指すのであれば失業保険を優先する選択肢もあります。しかし、年金は長期的な生活を支える基盤であるため、慎重な検討が求められます。特に、失業保険の給付期間が終了した後も年金が全額支給されるようになるため、トータルで見た収入をシミュレーションすることが重要です。

この併給調整は、複雑なケースも多いため、自身の具体的な状況に合わせて、年金事務所やハローワーク、社会保険労務士などの専門家に相談し、最適な選択肢を見つけることを強くおすすめします。誤った認識で進めてしまうと、思わぬ不利益を被る可能性もあるため、注意が必要です。


再雇用者のための社会保険料節約術

再雇用後の収入は、定年前と比べて減少することが一般的です。そのため、社会保険料の負担は家計にとって大きな割合を占めることがあります。ここでは、再雇用者が社会保険料を賢く節約するためのポイントを解説します。

給与改定のタイミングを活用した社会保険料の見直し

社会保険料は、原則として毎年4月・5月・6月の3ヶ月間の給与平均額を基に決定される「標準報酬月額」によって決まります(定時決定)。この標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月までの社会保険料に適用されます。

再雇用時には、多くの場合、給与水準が定年前よりも低く設定されます。この再雇用による給与の大幅な変動は、社会保険料の見直しを行う良い機会となります。例えば、再雇用で給与が大幅に下がった場合、会社の総務担当者に相談し、「随時改定(月額変更届)」の手続きを行うことで、変動後の給与に応じた低い標準報酬月額に早期に変更できる可能性があります。

随時改定は、給与が大きく変動し、かつその状態が3ヶ月以上続く場合などに適用される制度です。再雇用後の給与が、定年前の給与と比べて2等級以上下がった場合、速やかに手続きを行うことで、通常9月まで待たなくても、社会保険料の負担を軽減することができます。

社会保険料の負担が減ることは、手取り収入の増加に直結します。再雇用契約を結ぶ際や、再雇用後に給与が変更になった際には、この随時改定の可能性について会社の人事・総務部門に確認してみましょう。賢く制度を利用することで、無駄な社会保険料の支払いを避け、家計の負担を軽減することができます。

退職・再雇用時の賃金設定と保険料負担のバランス

再雇用時の賃金設定は、単に目先の収入だけでなく、将来の社会保険料負担や年金受給額にも大きく影響します。退職と再雇用のタイミングで、賃金設定と保険料負担の最適なバランスを考えることが、賢い選択に繋がります。

再雇用後の賃金が大きく下がった場合、社会保険料も減少します。これは一見すると良いことのように思えますが、同時に将来受け取る厚生年金の額も減少する可能性があるという側面も持ち合わせています。厚生年金は、現役時代の標準報酬月額に応じて計算されるため、賃金が低い期間が長ければ長いほど、年金額は少なくなります。

そのため、再雇用契約を結ぶ際には、目先の社会保険料負担だけでなく、将来の年金受給額とのバランスを考慮することが重要です。例えば、あえて社会保険加入条件を満たすギリギリの労働時間(週20時間未満)に設定し、社会保険料の支払いを避けるという選択肢も理論上は存在します。しかし、この場合は健康保険や厚生年金の保障がなくなるため、健康リスクや老後資金の計画と照らし合わせて慎重に判断する必要があります。

企業との交渉においては、社会保険に関する知識を持っていることが有利に働くこともあります。自身のライフプランや健康状態、将来の介護の可能性などを総合的に考慮し、企業側と賃金や労働条件について話し合うことが大切です。

退職金やその他の資産形成状況も踏まえ、どの程度の社会保険料を負担し、どの程度の年金見込み額を確保したいかを明確にしておきましょう。

賢く活用!高年齢雇用継続給付金と社会保険料の関係

高年齢雇用継続給付金は、60歳以降も働き続ける方が、60歳時点の賃金と比較して賃金が大きく下がった場合に、その賃金低下を補うために雇用保険から支給される制度です。再雇用者の社会保険料節約を考える上で、この制度と社会保険料の関係を理解しておくことが重要です。

この給付金は、60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者で、被保険者期間が5年以上あり、かつ60歳時点の賃金と比べて75%未満に低下した場合に支給されます。賃金の低下率に応じて、最大で賃金の15%が給付金として支給されます

重要な点として、この高年齢雇用継続給付金は、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)の計算には含まれません。つまり、給付金を受け取っても、それによって標準報酬月額が上がり、社会保険料が増えるということはありません。しかし、給付金を受給している期間中は、賃金と給付金の合計額によっては、在職老齢年金制度により老齢厚生年金の一部が支給停止される場合があります。

制度名 目的 社会保険料への影響 年金への影響
高年齢雇用継続給付金 60歳以降の賃金低下補填 給付金は計算対象外 賃金と給付金合計で年金停止の可能性あり
在職老齢年金制度 働きながら年金を受給する際の調整 給与額で保険料決定 給与額と年金合計で年金停止

再雇用者の皆さんは、高年齢雇用継続給付金を活用することで、手取り収入を実質的に増やすことができます。ただし、年金との併給調整があるため、トータルでの収入と社会保険料のバランスを考慮し、最も有利な選択をすることが求められます。ハローワークや年金事務所、社会保険労務士に相談し、自身のケースに合わせた詳細なシミュレーションを行うことを強くおすすめします。