概要: 派遣法改正により、派遣社員の3年ルールや再雇用制度に変化が生じます。本記事では、65歳以降の再雇用、退職金、税金に関する疑問を解消し、定年後も安心して働き続けるための知識を解説します。
近年、高齢者の雇用に関する法制度の改正や、社会全体の高齢化が進む中で、定年後の働き方について関心が高まっています。
「定年後も安心!派遣法改正と再雇用制度の活用法」をテーマに、最新の正確な情報とデータ、傾向をもとに、定年後も安心して働き続けるためのヒントをご紹介します。
派遣法改正で変わる?「3年ルール」と再雇用の注意点
1. 労働者派遣法の「抵触日」と60歳以上の特例
労働者派遣法には「抵触日」というルールがあり、原則として同じ派遣先企業の同じ部署で3年を超えて働くことはできません。これを「3年ルール」と呼びます。
このルールは、派遣労働者の雇用の安定を図るためのものですが、派遣先企業にとっては長期的な人材活用が難しい側面もありました。
しかし、60歳以上の派遣労働者には、この抵触日の適用が除外される特例があります。つまり、60歳以上の派遣社員は、同じ派遣先の同じ部署で3年を超えて働き続けることが可能です。
この特例は、企業が高齢者の経験やスキルを継続的に活用できるメリットがあるだけでなく、高齢者自身も慣れた職場で長く働けるという安心感につながります。
実際、「厚生労働省の派遣労働者実態調査によると、派遣労働者に占める60歳以上の割合は、2012年の7.5%から2022年には11.2%に増加しています」。これは、高齢者の就業意欲と企業のニーズが合致した結果と言えるでしょう。
2. 日雇派遣の原則禁止と高齢者の例外
労働者派遣法では、雇用期間が30日以内の「日雇派遣」は原則として禁止されています。
これは、不安定な雇用形態から派遣労働者を保護するための措置ですが、一部例外が設けられています。その例外の一つが「60歳以上の労働者」です。
60歳以上の派遣労働者は、この日雇派遣原則禁止の適用除外となるため、短期・単発の業務でも派遣として就業することが可能となります。これにより、例えば「週に数日だけ働きたい」「特定の時期だけ集中して働きたい」といった柔軟な働き方を求める高齢者のニーズに応えることができます。
企業側にとっても、突発的な人手不足の解消や、特定のプロジェクト期間だけ専門性の高い人材を確保したい場合などに、この特例を活用できるというメリットがあります。
自身の体力やライフスタイルに合わせて、無理なく仕事とプライベートを両立させるための有効な選択肢と言えるでしょう。
3. 定年後の再雇用制度との比較と選択肢
定年後の働き方として、最も一般的なのは元の会社で継続して働く「再雇用制度」です。
一方、派遣社員として働くことは、より多様な企業や職種でスキルを活かせる自由度を提供します。再雇用制度の場合、通常は定年前の役職や業務内容から変更され、給与水準も下がるのが一般的です。
しかし、慣れた環境で働く安心感や、長年の経験が直接活かされるメリットがあります。
派遣社員として働く場合は、勤務時間や業務内容を選びやすく、様々な職場を経験できる可能性がありますが、継続的な雇用が保証されない場合もあります。どちらの選択肢も一長一短があるため、自身のライフスタイル、経済状況、スキル、今後のキャリアプランを考慮して選択することが重要です。
「自分の都合の良い時間に働きたい」という理由で非正規雇用を選ぶ高齢者が多いことからも、多様な選択肢を持つことの重要性がわかります。
65歳以降も働く!年齢別の再雇用制度と知っておきたい権利
1. 2025年4月からの「65歳までの雇用確保」義務化とは
高年齢者雇用安定法は、働く意欲のある高齢者の活躍を支援するための重要な法律です。特に注目すべきは、2025年4月1日から完全に義務化される「65歳までの雇用確保措置」です。
これまでも65歳までの雇用確保は企業の義務でしたが、一部の企業では「継続雇用制度の経過措置」として、対象者を限定する基準を設けることが認められていました。しかし、この経過措置が2025年4月1日をもって終了します。
つまり、この日以降、企業は希望する従業員全員に対して、65歳まで雇用機会を確保しなければなりません。企業が講じるべき措置は以下のいずれかです。
- 定年を65歳まで引き上げる(定年の延長)
- 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度、勤務延長制度)を導入する
- 定年制を廃止する
この義務化により、より多くの人が65歳まで安心して働き続けられる環境が整備されることになります。
2. 70歳までの就業機会確保の「努力義務」と選択肢
さらに、高年齢者雇用安定法は2021年4月1日の改正により、70歳までの就業機会確保を企業の「努力義務」として定めています。
これは、企業に以下のいずれかの措置を講じるよう求めているものです。
- 70歳までの定年引き上げ
- 70歳までの継続雇用制度の導入(再雇用制度、勤務延長制度)
- 定年制の廃止
- 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
- 70歳まで継続的に、事業主が実施する社会貢献事業に従事できる制度の導入
「努力義務」であるため、企業に法的拘束力はありませんが、国として高齢者のさらなる活躍を推進する強いメッセージと言えます。
「2023年の『高年齢者雇用状況等報告』によると、70歳までの就業確保措置を実施済みの企業は29.7%で、前年から増加しています」。この数字は、企業の取り組みが徐々に進んでいることを示しています。
労働者側から見ても、70歳まで働く選択肢が広がることで、自身の健康状態や経済状況に応じた柔軟な働き方が可能になります。
3. 再雇用後の労働条件と「同一労働同一賃金」の原則
再雇用制度を利用して定年後も働き続ける場合、多くは定年前と比べて労働条件が変わることが一般的です。給与が下がる、役職がなくなる、業務内容が変わるといったケースがよく見られます。
しかし、ここで重要になるのが「同一労働同一賃金」の原則です。この原則は、雇用形態(正社員、非正規社員)にかかわらず、同じ労働には同じ賃金を支払うべきという考え方に基づいています。
したがって、再雇用後の労働条件が変更されたとしても、定年前と同一または同等の業務内容に従事しているにもかかわらず、給与が不合理に大幅に引き下げられることは、同一労働同一賃金の原則に反する可能性があります。
企業側は、再雇用後の労働条件について、定年前の職務内容や責任範囲、配置転換の有無などを踏まえ、待遇差の合理性を丁寧に説明する責任があります。
労働者としては、再雇用契約を結ぶ前に、労働条件通知書などをしっかりと確認し、疑問点があれば会社に説明を求めることが大切です。不当だと感じる場合は、労働組合や労働基準監督署などの専門機関に相談することも検討しましょう。
再雇用でも気になる!退職金、源泉徴収票、確定申告の疑問を解決
1. 再雇用と退職金:受け取りタイミングと税務上の注意点
定年退職後、再雇用制度を利用して働き続ける場合、退職金は一度「定年退職時」に支給されるのが一般的です。
退職金は、長年の勤労に対する功労金として、税法上特別な優遇措置が設けられています。具体的には「退職所得控除」という大きな控除があり、分離課税となるため、他の所得と合算されずに税額が計算され、税負担が軽減される仕組みです。
再雇用された場合、その再雇用期間は新たな勤続期間として扱われることが多く、再雇用終了時に再度退職金が支給されるケースもあります。
この場合、それぞれの退職金に対して退職所得控除が適用されますが、短期間で退職金が複数回支給されると、税法上の取り扱いが複雑になることがあります。特に、前回の退職金の支給から一定期間が経過していない場合は、控除額の計算に注意が必要です。
退職金の受け取りに関する税務上の不安がある場合は、税務署や税理士に相談することをお勧めします。
2. 源泉徴収票と年末調整:再雇用後の手続き
再雇用後も会社員として働き続ける場合、給与はこれまでと同様に源泉徴収されます。会社は毎月の給与から所得税や社会保険料を天引きし、年末には年末調整を行います。
したがって、通常の手続きと大きく変わることはありません。
ただし、定年退職した年(再雇用される前)と再雇用された年では、源泉徴収票の発行や年末調整の手続きに少し違いが生じることがあります。
例えば、定年退職時に退職金を受け取っている場合、その年の源泉徴収票は定年前の給与と退職金が別々に記載されるか、または退職金は別途「退職所得の源泉徴収票」として発行されます。
再雇用後の給与所得については、通常の年末調整で対応されます。複数の会社から給与を受け取っている場合や、年金収入と給与収入がある場合は、確定申告が必要になる可能性もあるため、ご自身の状況を確認することが重要です。
3. 確定申告が必要なケースと準備のポイント
再雇用後も多くの場合は年末調整で所得税の精算が完了しますが、以下のようなケースでは確定申告が必要になります。
- 給与所得以外の所得(例えば、副業の所得や不動産所得など)が年間20万円を超える場合
- 複数の会社から給与を受け取っており、年末調整が一方の会社でしか行われていない場合
- 公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、それ以外の所得が年間20万円を超える場合(公的年金等の収入金額が400万円以下で、それ以外の所得が20万円以下なら原則不要)
- 高額な医療費控除、住宅ローン控除の初回適用など、特定の控除を受けたい場合
確定申告の準備としては、まず勤務先から発行される「源泉徴収票」を必ず保管してください。その他、医療費の領収書、生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、寄付金の領収書など、各種控除に必要な書類を漏れなく集めることがポイントです。
早めに準備を始めることで、スムーズに手続きを進めることができます。不明な点があれば、国税庁のウェブサイトや税務署の相談窓口を活用しましょう。
再雇用を最大限に活かす!メリットと注意点を徹底解説
1. 企業にとっての再雇用のメリットと活用戦略
企業にとって再雇用制度の導入は、多くのメリットをもたらします。最も大きいのは、長年培った従業員の経験、スキル、人脈を継続して活用できる点です。
ベテラン社員の知識やノウハウは、業務効率の維持・向上に貢献するだけでなく、顧客との良好な関係を維持するためにも不可欠です。また、若手社員への技術指導やOJTを通じて、熟練の技や企業文化を次世代に継承する重要な役割も担います。
さらに、新規採用や育成にかかるコストを大幅に削減できるという経済的なメリットも大きいです。
社内の事情を熟知している再雇用者が活躍することで、組織全体の安定性にも寄与します。一部の企業では、高年齢労働者雇用を促進する企業向けの助成金制度を活用することも可能です。
企業は再雇用者を単なるコスト削減の対象ではなく、貴重な戦略的資源と捉え、適切な役割と待遇を提供することで、持続的な成長につなげることができるでしょう。
2. 労働者にとっての再雇用のメリットと心構え
労働者側から見た再雇用の最大のメリットは、何よりも経済的な安定です。
年金支給までの空白期間を埋めたり、年金だけでは不足する生活費を補うことで、安心して老後を迎えることができます。また、仕事を続けることで社会との接点を維持し、達成感ややりがいを感じることは、精神的な健康にも良い影響を与えます。
適度な運動や精神的な刺激は、健康寿命の延伸にも寄与すると言われています。
長年培ってきた専門知識やスキルを活かし、若手社員の指導やサポート役として貢献できる喜びも大きいでしょう。再雇用後の心構えとしては、定年前とは異なる役割や労働条件を受け入れる柔軟性が求められます。
役職や給与が下がっても、自身の経験を活かして新しい価値を創造しようとする意欲や、若手社員との良好なコミュニケーションを築く協調性、そして新しい知識やスキルの習得にも前向きに取り組む姿勢が、充実したセカンドキャリアを築く鍵となります。
3. 再雇用で注意すべき労働条件とトラブル回避策
再雇用制度は多くのメリットがある一方で、いくつか注意すべき点も存在します。最も多いのは、労働条件の変更に関するものです。
定年前と比べて給与、役職、業務内容、勤務時間などが変更されることが一般的であり、これによりモチベーションの低下を招く可能性もあります。また、新しい環境や役割に馴染めず、孤立感を感じたり、年齢によるハラスメントに直面するケースも稀に発生します。
これらのトラブルを回避するためには、以下の点に留意することが重要です。
- 契約内容の事前確認と書面での明示: 再雇用契約を結ぶ前に、労働条件通知書や雇用契約書の内容を隅々まで確認し、不明点は必ず会社に質問して書面で明確にしてもらいましょう。
- オープンなコミュニケーション: 定期的に会社側と労働条件や業務内容について話し合う機会を設け、不満や疑問がある場合は早期に相談することが大切です。
- 専門機関への相談: もし会社との話し合いで解決しない場合や、不当な待遇だと感じる場合は、労働基準監督署や弁護士、労働組合などの専門機関に相談することも検討しましょう。
事前の確認と適切なコミュニケーションにより、再雇用後のトラブルを未然に防ぎ、安心して働き続けることができます。
知っておきたい!再雇用に関するよくある質問
1. 再雇用後の給与はなぜ下がる?生活設計への影響
再雇用後に給与が定年前よりも下がることは、多くの企業で一般的な傾向です。
これにはいくつかの理由があります。一つは、定年前は役職手当や責任手当など、高い給与水準に紐づく手当が支給されていたのに対し、再雇用後は役割が変わり、これらの手当がなくなることが多いためです。また、評価制度も定年前とは異なり、経験年数よりも成果や貢献度に応じた賃金体系に移行することもあります。
給与の減少は、年金受給開始までの生活設計に直接的な影響を及ぼします。
再雇用を検討する際には、減少後の給与額で生活が成り立つのか、貯蓄や年金収入と合わせてどう家計をやりくりしていくのかを具体的にシミュレーションすることが非常に重要です。もし給与が定年前の75%未満に下がった場合、「高年齢雇用継続給付金」という国の制度を利用できる可能性があります。これは、一定の条件を満たせば、給与の減額分の一部を国が補填してくれる制度です。詳細はお近くのハローワークで確認しましょう。
2. 再雇用後の業務内容は変わる?やりがいを見つけるには
再雇用後、業務内容や責任範囲が定年前から変わることは少なくありません。
例えば、管理職から一般職へ、あるいは若手育成やサポート業務、専門知識を活かしたコンサルティング業務など、新しい役割を担う可能性があります。定年前と同じ業務を続ける場合でも、責任範囲が限定されたり、勤務時間が短縮されたりすることもあります。
新しい業務内容の中でやりがいを見つけるためには、いくつかのポイントがあります。
- 自身の知識や経験を活かす: 長年のキャリアで培ったスキルやノウハウを、後輩の指導や新しいプロジェクトの支援に積極的に役立てましょう。
- 新しいスキルの習得: 新しい業務に挑戦することで、これまで知らなかった分野の知識やスキルを習得する機会と捉えることもできます。
- 柔軟な思考: 定年前の役割にこだわりすぎず、会社や社会にどのように貢献できるかを主体的に考え、新しい貢献の形を見つけることが大切です。
自身の貢献がどのように会社に役立っているかを理解し、感謝されることで、新たなやりがいを感じることができるでしょう。
3. 再雇用を断ることはできる?他の選択肢は?
従業員には、企業から提示された再雇用契約を断る自由があります。
高年齢者雇用安定法は、企業に雇用機会の確保を義務付けていますが、これはあくまで労働者が希望した場合の話です。再雇用を断った場合、定年退職という形になり、それまでの勤続に対する退職金などが支給されます。
再雇用以外にも、定年後の働き方には多様な選択肢があります。
- 他社への転職: 自身のスキルや経験を活かし、他の企業で働く道。
- 派遣社員: 柔軟な働き方を求めて、派遣会社を通じて様々な職場で経験を積む。
- フリーランス・起業: 長年の専門知識を活かして独立する。
- 地域活動・ボランティア: 仕事以外の社会貢献活動に時間を費やす。
- 悠々自適な生活: 仕事を完全に引退し、趣味や旅行を楽しむ。
再雇用制度は一つの選択肢に過ぎません。自身の健康状態、経済状況、そして何よりも「定年後、どのような生活を送りたいか」というライフプランをじっくりと考え、最も納得のいく選択をすることが重要です。
まとめ
よくある質問
Q: 派遣法で定められている「3年ルール」とは何ですか?
A: 派遣法における「3年ルール」とは、派遣労働者が同一の派遣先で3年を超えて就業する場合、派遣元は労働者の希望に応じて直接雇用に切り替えるか、または新たな派遣先を提供しなければならないというルールのことです。ただし、派遣労働者本人が3年を超えて派遣先で就業することを希望しない場合は、この限りではありません。
Q: 65歳以降も再雇用されることは義務ですか?
A: 原則として、65歳以降も希望する全ての高齢者に対する雇用機会の確保は、事業主の努力義務とされています。ただし、65歳以降も継続して雇用する義務(60歳定年後も継続雇用義務)があり、65歳まで継続雇用している場合は、65歳以降も希望者に対して継続雇用に努める必要があります。ただし、本人の希望がない場合や、一定の基準を満たさない場合は、この限りではありません。
Q: 再雇用された場合、退職金はどのように扱われますか?
A: 再雇用の場合、退職金の扱いは勤務先の就業規則や退職金規定によります。一度退職して再雇用となる場合、前回の退職をもって退職金が支払われるケースと、再雇用期間を含めて通算して退職金が計算されるケースがあります。また、退職金が2回目となる場合、退職所得控除の適用が変わることがありますので、詳細は勤務先にご確認ください。
Q: 再雇用されても、源泉徴収票は2枚発行されますか?
A: 退職して年内に再雇用された場合、前の会社と新しい会社からそれぞれ源泉徴収票が発行されるため、合計2枚になることがあります。これは、それぞれの会社での収入に対して源泉徴収が行われたことを示すためです。年末調整や確定申告の際に必要となるので、大切に保管しておきましょう。
Q: 再雇用された場合の確定申告は必要ですか?
A: 再雇用された場合でも、年間の給与収入が一定額を超える場合や、複数の収入源がある場合などは確定申告が必要になることがあります。特に、退職金や再雇用期間中の給与について、源泉徴収票の内容と実際の収入に差異がある場合や、扶養控除等に変更があった場合などは、確定申告をした方が有利になることもあります。ご自身の状況に応じて、税務署や税理士にご相談ください。