事業主の皆様、毎年恒例の「労働保険の年度更新」の時期が近づいてきました。
令和7年度(2025年度)も、前年度の確定保険料の精算と、新年度の概算保険料の申告・納付が必要です。
特に、納付方法の中でも「口座振替」は多くのメリットがあり、ぜひ活用をご検討いただきたい方法です。

本記事では、令和7年度の労働保険料の納付方法と口座振替について、最新情報を交えながら徹底解説します。
手続きの概要から、お得で便利な口座振替の利用方法、そして変更される雇用保険料率についても詳しくご説明しますので、ぜひ最後までお読みください。

令和7年度の労働保険料納付期限と納付方法

年度更新手続きの基本と対象

労働保険の年度更新は、毎年6月1日から7月10日までの期間に行われます。この手続きでは、前年度(令和6年度)に労働者に支払った賃金総額を基に、労災保険料と雇用保険料の「確定保険料」を算出し、精算します。同時に、今年度(令和7年度)に支払う予定の賃金総額を見込み、「概算保険料」を計算して申告・納付します。

対象となるのは、従業員を一人でも雇用している全ての事業主です。法人だけでなく個人事業主の方も例外ではありません。国から個別に保険料額の通知が来ることはないため、事業主ご自身で正確に計算し、申告する必要があります。

万が一、申告が遅れると追徴金が課される可能性がありますので、期限厳守で手続きを進めましょう。また、事業を廃業した場合でも、廃止届を提出していない場合は年度更新の申告義務がありますのでご注意ください。

納付期限と電子申請の活用

令和7年度の労働保険料の納付期限は、原則として令和7年7月10日(木)です。年度更新の窓口申請や郵送提出もこの日までに行う必要があります。ただし、電子申請(e-Gov)を利用する場合は、令和7年6月1日(日)午前8時から手続きを開始できるため、余裕を持って作業を進めることができます。

電子申請は、24時間いつでもどこからでも手続きが可能で、入力ミスを自動でチェックしてくれる機能や、添付書類の省略など、多くのメリットがあります。特に、多忙な事業主の方にとっては、時間や場所にとらわれずに手続きを進められるため、非常におすすめの納付方法と言えるでしょう。

申告書が正しく受理され、期限内に納付を完了することが、事業主としての義務です。最新の情報を厚生労働省のウェブサイトで確認し、適切な方法で手続きを進めるように心がけましょう。

多様な納付方法の選択肢

労働保険料の納付方法には、いくつかの選択肢があります。ご自身の状況や利便性に合わせて、最適な方法を選びましょう。主な納付方法は以下の通りです。

  • 金融機関、郵便局、労働基準監督署等での窓口納付: 納付書を持参し、現金で納める最も一般的な方法です。
  • 郵送提出: 申告書を労働局に郵送し、後日送付される納付書で納める方法です。
  • 電子申請(e-Gov): オンラインで申告から納付まで一貫して行うことが可能です。ダイレクト納付などと連携すれば、銀行窓口に行かずに納付を完結できます。
  • 口座振替: 事前に登録した金融機関の口座から自動で引き落とされる方法です。次のセクションで詳しくご紹介しますが、手数料がかからず、納付忘れの心配がないため、非常におすすめです。

それぞれの方法に一長一短がありますが、特に口座振替は、一度手続きをすれば毎年自動で納付が完了するため、事務負担を大幅に軽減できる利点があります。ご自身の業務スタイルに合わせて、最適な納付方法を選択してください。

労働保険料の口座振替がお得で便利!

口座振替の大きなメリット

労働保険料の納付方法として、口座振替は最もお得で便利な選択肢の一つです。最大のメリットは、手数料が一切かからない点です。窓口で現金納付を行う際に発生する振込手数料や、郵送費用などを気にする必要がありません。

さらに、口座振替は納付忘れを防止し、納付期限にゆとりが生まれるという大きな利点があります。原則7月10日である窓口納付の期限に対し、口座振替では全期一括納付の場合でも9月8日と、約2ヶ月の猶予が与えられます。これにより、資金繰りの計画も立てやすくなるでしょう。

一度申し込み手続きを完了すれば、翌年度以降も自動的に口座から引き落としが継続されるため、毎年発生する納付手続きの事務負担を大幅に削減できます。特に、従業員を抱える多忙な事業主の方にとって、時間と手間を節約できる口座振替は非常に有効な手段と言えるでしょう。

全期・分割払いにおける振替日

口座振替では、全期一括払いまたは分割払いの選択が可能です。それぞれの振替日は以下の通り、窓口納付の期限よりも大幅にゆとりが設定されています。

納付区分 振替日(令和7年度) 備考
全期(第1期) 令和7年9月8日 窓口納付期限(7月10日)より約2ヶ月後
第2期 令和7年11月14日
第3期 令和8年2月16日 (年によって異なる場合があります)

この日程を見てもわかる通り、口座振替を選択することで、資金をより長く手元に置くことができ、事業の運転資金として活用する柔軟性が高まります。特に、期の途中で大きな支出がある場合など、資金繰りにゆとりを持たせたい事業主の方にとっては非常に魅力的な制度です。

ただし、振替日の前日までに必ず口座残高を確認し、確実に引き落としができるように準備しておくことが重要です。残高不足で引き落としができない場合、延滞金が発生する可能性もあるため注意が必要です。

なぜ口座振替がおすすめなのか

労働保険料の納付に口座振替をおすすめする理由は、事業主様の時間、コスト、そして精神的な負担を大幅に軽減できるからです。毎年、多岐にわたる経営業務をこなしながら、期限内に正確な労働保険料を計算し、納付手続きを行うのは決して簡単なことではありません。

口座振替を利用すれば、一度の申し込みで毎年自動で納付が完了します。これにより、納付忘れの心配がなくなり、金融機関の窓口に足を運んだり、電子申請で支払い手続きを行う手間も省けます。また、現金を持ち歩くリスクや、振込手数料などの追加費用も発生しません

特に令和7年度からは雇用保険料率の変更もあり、正確な計算と迅速な納付がより一層求められます。このような状況において、口座振替は事務処理の効率化と確実な納付を実現するための強力なツールとなります。事業の健全な運営のためにも、ぜひ口座振替の利用をご検討ください。

労働保険料口座振替の申込方法と必要書類

申込手続きと必要書類

労働保険料の口座振替を申し込むには、「労働保険 保険料等口座振替納付書送付(変更)依頼書兼口座振替依頼書」を提出する必要があります。この書類は、労働局の窓口やハローワーク、またはインターネット上の厚生労働省のウェブサイトからダウンロードして入手できます。

書類には、事業主の名称や所在地、労働保険番号といった基本情報のほか、口座振替を希望する金融機関名、預金種別、口座番号、口座名義人などを正確に記入する必要があります。特に重要なのは、金融機関に登録している届出印の押印です。不鮮明であったり、登録印と異なる印鑑を使用したりすると、手続きが完了しない場合がありますので、十分にご注意ください。

記入漏れや不備がないことを確認したら、口座を開設している金融機関の窓口に直接提出します。郵送では受け付けていない場合が多いので、必ず窓口で手続きを行いましょう。

申込締切日を逃さないために

口座振替を希望する期によって、申込締切日が異なります。特に、全期(第1期)での口座振替を希望する場合は、令和7年2月25日が締切日でした。この日を過ぎてしまうと、その年度の全期(第1期)での口座振替はできません。

まだ口座振替を申し込んでいない場合でも、第2期や第3期からの振替は可能です。それぞれの申込締切日は以下の通りです。

  • 第2期: 令和7年8月14日
  • 第3期: 令和7年11月14日(※年によって異なる場合があります)

これらの締切日を過ぎてしまうと、その期の口座振替は行えません。もし締切日を過ぎてしまった場合は、金融機関の窓口などで直接納付する必要があります。来年度以降の全期(第1期)からの口座振替を希望する場合は、翌年2月末頃が締切日となるため、早めの準備と申し込みを心がけましょう。計画的な手続きが、納付漏れや延滞金の発生を防ぐ上で非常に重要です。

継続利用の利便性

労働保険料の口座振替は、一度申し込めばその後の年度も自動的に継続利用されるという大きな利便性があります。毎年面倒な申し込み手続きを繰り返す必要がないため、事業主の事務負担を大幅に軽減できます。

この継続性により、納付忘れのリスクがほとんどなくなり、安心して事業運営に集中できるようになります。ただし、事業所の情報(名称、所在地など)や、口座情報(金融機関、口座番号など)に変更があった場合は、速やかに「労働保険 保険料等口座振替納付書送付(変更)依頼書兼口座振替依頼書」を再提出し、変更手続きを行う必要があります。変更手続きを怠ると、正しく保険料が引き落とされない原因となりますのでご注意ください。

長期間にわたって有効なこのシステムは、特に中小企業の経営者や経理担当者にとって、年間を通じた業務効率化に大きく貢献します。一度の手間で長期的な安心を得られるため、まだ口座振替を利用していない場合は、ぜひこの機会にご検討ください。

知っておきたい!口座振替の注意点とよくある質問

締切日と振替不能時の対応

口座振替の申し込みには、期ごとに厳密な締切日が設けられています。この締切日を1日でも過ぎてしまうと、その期の口座振替は行えなくなります。そのため、早めの手続きを心がけることが不可欠です。締切日を過ぎた場合は、窓口での納付など、別の方法で対応する必要があります。

また、口座振替日に残高不足などで引き落としができなかった場合、「振替不能通知」が送付されます。この通知を受け取ったら、速やかに金融機関の窓口などで指定された方法により納付しなければなりません。期限内に納付が完了しない場合、延滞金が発生する可能性がありますので、振替日には必ず口座の残高を確認し、確実に引き落としができるよう準備しておきましょう。

事前に引き落とし額を確認し、前日までに必要な金額を口座に入金しておく習慣をつけることが、余計な手間やコストを避けるための最善策です。

廃業時の注意点

事業を廃業した場合でも、注意が必要です。労働保険料の納付義務は、廃止届を提出するまで継続します。そのため、たとえ事業活動を停止していても、廃止届を正式に提出していない場合は、年度更新の申告・納付が必要となることがあります。

口座振替を利用している場合は、廃業に伴い口座振替の停止手続きが必要になることがあります。労働局や、労働保険事務組合に委託している場合はその事務組合に連絡し、必要な手続きについて確認しましょう。手続きを怠ると、不必要な保険料が請求されたり、未申告・未納付によるペナルティが発生したりするリスクがあります。

廃業や事業規模の縮小など、事業状況に大きな変化があった場合は、速やかに労働局や関係機関に連絡し、適切な手続きを行うことが重要です。不明な点があれば、自己判断せずに必ず専門機関に相談するようにしてください。

委託事業主の特殊なケース

労働保険事務処理を労働保険事務組合に委託している事業主の方には、通常の事業主とは異なる点があります。事務組合に委託している場合、概算保険料の額が40万円以上であれば、概算保険料申告書提出時に延納(分割払い)の申請が可能となります。これは、事務組合を通じて手続きが行われるため、一般的な事業主とは異なるメリットです。

また、事務組合は事業主の代わりに労働保険に関する事務処理全般を行うため、事業主自身が直接口座振替の手続きを行う必要がない場合が多いです。保険料の納付も事務組合を通じて行われるため、事務負担は大幅に軽減されます。事務組合は労働保険の専門知識を有しており、正確な計算や期限管理を代行してくれるため、安心して任せることができます。

もし事務組合に委託している場合は、ご自身の契約内容や事務組合の担当者と連携し、保険料の納付方法やスケジュールについて確認しておくことが大切です。これにより、二重納付や納付漏れといったトラブルを未然に防ぎ、スムーズな保険料納付が実現します。

令和7年度から変わる?労働保険料率と納付について

雇用保険料率の変更点

令和7年度(2025年度)から、雇用保険料率が変更となります。全体的に保険料率が引き下げられ、特に労働者負担分は1,000分の0.5(0.05%)の引き下げとなります。この変更は、令和7年4月1日以降に締日が到来する給与から適用されます。賞与についても、同様に4月1日以降に賞与計算期間の締日が来たものから新料率が適用されます。

具体的な料率は以下の通りです。

事業の種類 労働者負担(料率) 事業主負担(料率) 備考
一般の事業 5.5/1,000 9/1,000 (失業等給付・育児休業給付 5.5/1,000 + 雇用保険二事業 3.5/1,000)
農林水産・清酒製造の事業 6.5/1,000 10/1,000
建設の事業 6.5/1,000 11/1,000

事業主は、この新しい料率に基づいて、4月以降の給与計算や年度更新時の概算保険料の計算を行う必要があります。誤った料率で計算すると、後で追徴金や還付手続きが発生する可能性があるため、注意が必要です。

労災保険料率は変更なし

令和7年度の労災保険料率は、令和6年度から変更ありません。雇用保険料率が変更される一方で、労災保険料率は据え置きとなりますので、この点はご安心ください。

労災保険料率は、事業の種類(業種)によって細かく定められています。建設業や製造業など、リスクの高い業種ほど料率が高くなる傾向があります。事業主は、自社の事業に適用される正確な労災保険料率を確認し、年度更新手続きを進める必要があります。

この労災保険料は、事業主が全額を負担するものであり、従業員からの徴収はありません。安定した事業運営のためにも、労災保険の適切な加入と保険料の納付は非常に重要です。厚生労働省のウェブサイトなどで、自社の業種に該当する正確な料率を必ず確認するようにしましょう。

年度更新時の料率適用と計算

労働保険の年度更新手続きでは、前年度(令和6年度)の確定保険料と、新年度(令和7年度)の概算保険料を計算し、申告・納付します。ここで特に注意が必要なのが、雇用保険料率の変更がどのように適用されるかという点です。

前年度の確定保険料は、令和6年度に適用されていた旧雇用保険料率で計算します。一方、新年度の概算保険料は、令和7年度から適用される新しい雇用保険料率で計算する必要があります。労災保険料率は変更がないため、こちらは令和6年度と同じ料率を使用します。

このように、年度の途中で料率が変更される場合、計算を誤りやすいため、特に慎重な対応が求められます。正確な計算を行うためには、厚生労働省のウェブサイトで公開されている最新の情報や計算ツールを活用することをおすすめします。不明な点があれば、労働局や労働保険事務組合に相談し、誤りのない手続きを行いましょう。

【参考情報】
厚生労働省ウェブサイト
協会けんぽ(都道府県別の健康保険料率を確認できます)

本記事の情報は、公開されている情報に基づき作成されています。最新かつ詳細な情報については、必ず厚生労働省や関連機関の公式発表をご確認ください。