概要: ダブルワーク(副業)をしている場合、扶養控除等申告書の提出方法に悩む方は多いでしょう。本記事では、「従たる給与」の記入方法や、住所に関する注意点、外国人向けの対応など、疑問を解消するための情報を網羅しています。賢く税金と向き合うためのポイントを解説します。
ダブルワークで扶養控除等申告書はどう書く?注意点と疑問を徹底解説
副業が当たり前になった現代、ダブルワークをされている方も多いのではないでしょうか。しかし、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出や、年末調整・確定申告について、いまいちよく分からない、と悩む声も少なくありません。
特に、2025年度税制改正により扶養控除の要件が変更されるなど、最新情報をキャッチアップすることも重要です。
この記事では、ダブルワークをしている場合の扶養控除等申告書の書き方から、年末調整・確定申告の注意点、さらには気になる「バレない対策」まで、皆さんの疑問を徹底的に解説します。最新の税制改正情報も踏まえて、安心してダブルワークを続けるための知識を身につけましょう。
ダブルワーク(副業)でも扶養控除等申告書は提出すべき?
ダブルワークをしていても、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出は必須です。正しく申告し、適切な税額で働きましょう。
主たる勤務先への提出が原則
この申告書は、最も給与の多い勤務先(主たる給与の支払者)1か所にのみ提出します。複数提出はできません。提出することで、毎月の給与から源泉徴収される所得税が適正になり、年末調整で各種控除が適用されます。忘れずに提出しましょう。
なぜ主たる勤務先でしか提出できないのか?
日本の税法上、所得税計算の公平性を保つため、納税者一人につき一つの扶養控除等申告書しか認められていません。これにより、控除の重複適用を防ぎ、正しい税負担を確保しています。複数の勤務先で提出すると、後の修正申告やトラブルの原因となるため注意が必要です。
提出しないとどうなる?具体的な影響
申告書を提出しないと、給与から源泉徴収される税額が通常よりも高くなります。これは、各種控除が適用されないためです。結果として、年間の所得税を多く払いすぎることになり、確定申告で還付を受ける手間が生じます。年末調整のメリットも受けられず、不利益を被る可能性があります。
扶養控除等申告書の「従たる給与」とは?ダブルワークでどう記入する?
「従たる給与」という言葉はダブルワークをする上で理解しておくべきポイントです。
「従たる給与についての扶養控除等申告書」とは
主たる勤務先に提出する「扶養控除等申告書」に対し、「従たる給与についての扶養控除等申告書」は、原則二重提出はできません。ダブルワークの場合、副業先の給与は「従たる給与」とみなされ、この申告書は提出しないため、高い税率(乙欄)で源泉徴収されるのが一般的です。
ダブルワークにおける記入方法のポイント
主たる勤務先に提出する扶養控除等申告書には、副業の有無を直接記入する欄は通常ありません。扶養親族の情報などを正確に記入しましょう。もし申告書に「従たる給与についての扶養控除等申告書の提出」というチェックボックスがあっても、基本的にはチェックしないのが適切です。副業分の調整は、最終的に確定申告で行います。
2025年度税制改正が扶養控除に与える影響
2025年度税制改正で、扶養控除の要件が緩和されます。
- 配偶者控除:配偶者の合計所得金額が95万円以下(給与収入のみ160万円以下)が対象です。
- 扶養親族の所得基準:従来の48万円以下から58万円以下に引き上げ。
- 特定扶養控除:19~23歳の子どもの年収条件が103万円以下から123万円までに緩和されます。
- 学生の社会保険扶養:19~23歳学生の年収要件が130万円から150万円に引き上げ。
これらの変更点を確認し、自身の状況に合わせて申告書を記入しましょう。
住所欄の記入で困ったら?住民票と違う場合や「同上」の使い方も解説
申告書の住所欄は、正確な情報が必要です。住民票と異なる場合の対処法も知っておきましょう。
住民票の住所と現住所が異なる場合
扶養控除等申告書には、原則として「実際に居住している住所」を記入します。住民票と異なっていても、郵便物や税務署からの通知が確実に届く場所を記載しましょう。住所変更があった際は、速やかに勤務先に報告し、申告書の訂正手続きを行うことが重要です。
「同上」の賢い使い方
扶養控除等申告書では、通常、本人の住所を記入する欄が一つしかありません。そのため「同上」を使う機会はほとんどありません。他の税務書類で複数の住所記入欄がある場合に「同上」と記載するケースはありますが、住所は正確に、省略せずに記入するのが基本です。
提出後の住所変更と年末調整
申告書提出後に住所が変わった場合は、速やかに勤務先に連絡し、訂正手続きを行いましょう。住所情報は年末調整書類の送付先や、翌年の住民税の課税に大きく影響します。情報が古いままでは、重要な通知を見落とすなどのトラブルにつながる可能性があるため注意が必要です。
外国人や外国語での申告について
外国人労働者の方も、日本の税制に沿って適切に申告書を提出する必要があります。
外国人労働者の扶養控除等申告書の注意点
外国人労働者も日本人と同様に申告書を提出します。特に、扶養親族が海外にいる場合は、送金証明など扶養関係を証明する追加書類が必要です。日本の扶養の定義(年齢、所得要件など)を理解し、個人番号(マイナンバー)を忘れずに記入しましょう。
外国語での申告書提出の可否
日本の税務書類は原則として日本語での提出が義務付けられています。申告書も日本語で記入する必要がありますが、多くの企業では外国人従業員向けに、記入サポートや外国語での説明資料を提供しています。不明な点があれば、まずは勤務先の人事・経理担当者に相談しましょう。
相談窓口と活用できるリソース
国税庁ウェブサイトでは多言語での税務情報や外国人向け相談窓口があります。地域の国際交流センターや外国人支援団体もサポートを提供している場合があります。税理士などの専門家への相談も有効です。積極的に情報を収集し、適切なサポートを活用しましょう。
提出時期や目的、バレないための対策まで
申告書の提出は適切な時期に、そして賢い対策で安心してダブルワークを楽しみましょう。
扶養控除等申告書の提出時期と重要性
申告書は、通常、その年の最初の給与支払い前までに勤務先に提出します。年の途中で入社した場合や、扶養親族の状況に異動があった場合は、速やかに提出または変更が必要です。提出が遅れると、毎月の源泉徴収額が不適切になり、年末調整が正確に行われない可能性があります。
ダブルワークが「バレる」のはどんな時?
ダブルワークが勤務先に知られる主な原因は、住民税の通知です。住民税は年間所得に基づいて計算され、複数の勤務先からの給与が合算されて本業の勤務先に通知されることがあります。また、誤って複数箇所で年末調整を行ったり、確定申告の内容から発覚することもあります。
適切な申告で安心してダブルワークをするために
安心してダブルワークを続けるには、正確な申告が不可欠です。
- 年末調整は必ず主たる勤務先1か所のみで行います。
- 副業の所得(収入-経費)が年間20万円を超える場合は、必ず確定申告を。
- 副業所得が20万円以下でも、住民税の申告は必要な場合があります。
- 住民税の徴収方法を「普通徴収」に選択し、副業分の住民税が本業の給与から天引きされないように手続きすることも有効です(対応状況は自治体や勤務先に確認)。
これらのルールを守り、安心してダブルワークを継続しましょう。
注意点:税制は改正されることがあります。この記事の情報は2025年度税制改正に関する内容を含みますが、常に最新の情報を国税庁や税務署のウェブサイトでご確認ください。
まとめ
よくある質問
Q: ダブルワーク(副業)をしていても、扶養控除等申告書は必ず提出する必要がありますか?
A: はい、原則として提出が必要です。特に、本業以外からの給与(従たる給与)がある場合、年末調整で正しく控除を受けるためには、両方の勤務先に扶養控除等申告書を提出することが重要です。ただし、副業の収入が一定額以下であれば、年末調整の対象外となる場合もあります。
Q: 扶養控除等申告書の「従たる給与」欄は、ダブルワークの場合どのように書けばいいですか?
A: 「従たる給与」とは、主たる給与以外の給与のことを指します。ダブルワークをしている場合、給与所得者にとって、より収入が多い方の勤務先を「主たる給与」、もう一方を「従たる給与」として申告します。従たる給与の支払者(副業先の会社)に提出する扶養控除等申告書では、「従たる給与」欄に主たる給与の支払者(本業の会社)から受け取る給与の見込額などを記載します。
Q: 扶養控除等申告書の住所欄で、住民票の住所と違う場合、どう書けばいいですか?
A: 住民票の住所と現住所が異なる場合は、原則として現住所を記入します。ただし、住民票の住所を異動させていない場合は、その旨を明確にするために「住民票と記載の住所は異なります」といった注意書きを添えるか、必要に応じて補足説明を求められることもあります。不明な場合は、勤務先の経理担当者や税務署に確認することをおすすめします。
Q: 外国人でも扶養控除等申告書は同じように記入しますか?
A: 基本的な記入内容は日本人と同様ですが、氏名などの表記方法に注意が必要です。また、扶養親族に関する申告についても、所得税法上の扶養親族の定義に合致するか確認が必要です。必要に応じて、母国語での案内や、外国人向けの相談窓口を利用すると良いでしょう。
Q: 扶養控除等申告書を提出しない、あるいは間違って提出した場合、副業がバレたり、税金が高くなったりしますか?
A: 扶養控除等申告書を提出しない、または間違って提出した場合、年末調整で本来受けられるはずの控除が受けられず、結果的に税金が高くなる可能性があります。また、副業の収入は原則として確定申告が必要になるため、扶養控除等申告書を提出しないことで、税務署に副業が発覚する可能性もあります。副業がバレるかどうかは、情報交換の仕組みなどによって異なりますが、税務上の義務を果たすことが重要です。
