概要: 大手企業を中心に副業禁止の規定が多く見られますが、その背景には様々なリスクや懸念点が存在します。近年、副業を容認する企業も増えており、会社のルールを正しく理解することが重要です。
【徹底解説】大手企業でも副業は禁止?会社のルールを理解しよう
近年、働き方改革の流れもあり、副業を解禁する企業が増加しています。大手企業においても例外ではなく、副業を許可する動きが加速しているのはご存存知でしょうか。しかし、すべての企業が副業を全面的に認めているわけではありません。
安易に副業を始めてしまって、思わぬトラブルに巻き込まれるケースも少なくありません。
そうならないためにも、まずは所属している会社のルールをしっかりと理解することが何よりも重要です。
なぜ多くの企業は副業を禁止しているのか?
かつては多くの企業で「副業禁止」が当たり前でした。この慣習には、企業が従業員に期待する役割や、リスク管理の観点から様々な理由が存在しています。なぜ企業は従業員の副業を制限してきたのか、その背景を深く掘り下げてみましょう。
過去の慣習と企業文化
日本の企業文化において、従業員は会社に全身全霊を捧げ、本業に専念することが美徳とされてきました。終身雇用制度が一般的だった時代には、「会社は家族」という意識が強く、従業員は一つの会社でキャリアを全うするのが普通でした。このような背景から、副業は本業への集中を阻害し、会社の利益を損なうものとして認識されてきたのです。
「滅私奉公」という言葉に代表されるように、個人の活動よりも組織への貢献が重視され、副業が奨励されることはほとんどありませんでした。この根強い企業文化が、長らく副業禁止というルールを維持してきた大きな要因の一つと言えるでしょう。
もちろん時代とともに考え方は変化していますが、古い慣習が残る企業も少なくありません。
本業への集中とパフォーマンス維持
企業が副業を禁止する最も直接的な理由の一つは、従業員の本業への集中力とパフォーマンスの維持を懸念するためです。参考情報にある通り、55.4%もの企業が副業による本業への支障を懸念しています。副業に時間を割くことで、従業員が疲弊し、本業の業務効率が低下したり、ミスが増えたりするリスクを企業側は心配しているのです。
特に、残業の多い業界や業務では、副業が加わることで労働時間が過度になり、心身の健康を損なう可能性も高まります。企業は従業員の健康管理にも責任を負っており、副業によって過労状態に陥ることを避けたいと考えています。結果として、本業の生産性が低下し、企業の業績に悪影響を与えることを避けるために、副業を制限する傾向があるのです。
労務管理とリスクヘッジの観点
副業が許可されると、企業は従業員の労働時間を正確に把握するのが非常に困難になります。40.2%の企業が労務管理の難しさを副業禁止の理由に挙げています。労働基準法には労働時間に関する厳しい規制があり、従業員の総労働時間が過度にならないよう管理する義務が企業にはあります。副業の労働時間が加わることで、この管理が複雑化し、企業が労働基準法に違反してしまうリスクも発生しかねません。
また、情報漏洩のリスクも大きな懸念事項です。36.6%の企業が機密情報流出のリスクを懸念しており、副業先で自社のノウハウや顧客情報が意図せず漏れてしまうことを恐れています。さらに、従業員が副業で事故に遭った場合の労災補償や、競合他社での副業による利益相反など、様々な法的・倫理的なリスクを回避するためにも、企業は副業禁止の姿勢をとることが多かったのです。
副業禁止の背景にあるリスクと懸念点
企業が副業を禁止する背景には、単に「本業に専念してほしい」という思いだけでなく、企業運営上避けたい具体的なリスクや懸念事項が数多く存在します。これらを深く理解することは、副業を検討する従業員にとっても、賢明な判断を下す上で不可欠です。
業務への支障と健康管理の難しさ
副業は、個人の収入増やスキルアップの機会を提供しますが、その一方で本業に悪影響を及ぼすリスクもはらんでいます。最も懸念されるのが、副業による疲労や睡眠不足が、本業の業務パフォーマンスを低下させてしまうことです。参考情報にもあるように、実に55.4%の企業が「本業への支障」を副業禁止の主要な理由として挙げています。
従業員が副業で長時間労働を行うことで、心身の健康を損なう可能性も高まります。企業は従業員の安全配慮義務を負っているため、副業による過労や健康問題が発生した場合の責任問題も浮上します。35.7%の企業が「従業員の健康・メンタルヘルスへの懸念」を示していることからも、この問題が深刻であることがわかります。企業としては、従業員の健康を守り、結果的に本業の生産性を維持するためにも、副業を制限せざるを得ない状況があるのです。
情報漏洩と競争優位性の喪失
現代のビジネスにおいて、企業の機密情報やノウハウは重要な資産であり、その保護は企業存続の鍵を握ります。副業が許可されることで、従業員が意図せず、あるいは悪意を持って、自社の機密情報を副業先に漏洩させてしまうリスクが高まります。36.6%の企業が「情報漏洩のリスク」を副業禁止の理由に挙げており、これは企業にとって非常に大きな懸念事項です。
特に、競合他社での副業や、自社の技術と関連する分野での副業は、企業の競争優位性を直接的に脅かす可能性があります。例えば、開発中の新技術の情報や、顧客リスト、営業戦略などが流出してしまえば、企業は甚大な損害を被るでしょう。企業は、従業員との間で秘密保持契約を結ぶなど対策を講じていますが、副業による情報流出のリスクは、いくら注意してもゼロにはできないため、慎重な姿勢を取らざるを得ないのです。
法的・契約上のトラブル回避
副業が原因で企業が直面するリスクには、法的な問題や契約上のトラブルも含まれます。例えば、従業員が副業で過度な長時間労働を行った結果、過労死や疾病を発生させた場合、本業の企業が労働基準法上の責任を問われる可能性があります。また、副業による労働時間と本業の労働時間を合算した際に、36協定の上限を超えてしまうなどの問題も発生し得るでしょう。
さらに、多くの企業では就業規則に競業避止義務や秘密保持義務が明記されています。副業の内容によっては、これらの義務に違反し、企業から損害賠償請求や懲戒処分を受ける可能性もあります。企業側としては、このような従業員との法的トラブルを未然に防ぐためにも、副業に関する明確なルールを設け、場合によっては禁止とせざるを得ない状況があるのです。従業員側も、自身の労働契約の内容を十分に理解しておく必要があります。
副業OKの企業が増加!最新のトレンドとは?
かつては副業禁止が一般的だった日本企業ですが、近年その状況は大きく変化しています。働き方改革の推進や社会情勢の変化に伴い、副業を容認・推奨する企業が目覚ましく増加しており、特に大手企業においてもこの動きが加速していることがわかります。
時代の変化と働き方改革の波
副業解禁の動きが加速した背景には、国の働き方改革の推進があります。特に、厚生労働省が2018年に「モデル就業規則」から副業禁止の規定を削除し、「副業・兼業を促進」する方向へと改訂したことは、企業が副業解禁に踏み切る大きな後押しとなりました。これにより、「副業は原則禁止」という従来の考え方が、「原則容認」へと転換され始めたのです。
また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによるテレワークの普及も、副業解禁を加速させました。在宅勤務により通勤時間がなくなり、従業員が自己啓発やスキルアップに使える時間が増えたことで、副業への関心が高まったのです。企業も、従業員の多様な働き方やキャリア形成を支援する姿勢を示すことで、優秀な人材の獲得・定着を図るようになっています。
大企業における副業解禁の現状
副業解禁のトレンドは、特に大企業において顕著です。最新の調査データによると、2025年6月時点では、正社員の副業・兼業を「認めている」企業は55.2%と過半数を超えています。さらに、新制度を整備中の企業も含めると、今後解禁する意向の企業は18.8%にのぼり、今後ますます副業を認める企業が増える見込みです。
この割合は、経団連の2020年の調査で22%に留まっていたことを考えると、わずか数年で大きく増加していることがわかります。特に、企業規模との関連では、常用労働者数5,000人以上の大企業では、実に66.7%が副業を「認めている」と回答しており、大企業ほど副業に積極的な姿勢を見せています。これは、大企業が働き方改革の先進的な取り組みを導入し、多様な働き方を許容することで、企業価値を高めようとしている証拠と言えるでしょう。
副業解禁で企業が得られるメリット
企業が副業を解禁することは、従業員だけでなく企業側にも様々なメリットをもたらします。まず、従業員が副業を通じて得た新しい知識やスキル、人脈が本業にも還元される可能性があります。これにより、社内にはない新たな視点やイノベーションが生まれ、企業の競争力向上につながることも期待できるでしょう。
また、副業を認めることで、企業は優秀な人材を惹きつけやすくなります。多様な働き方を求める現代の求職者にとって、副業が許可されていることは企業選択の重要な要因の一つとなります。結果として、採用競争力が向上し、従業員満足度の向上や離職率の低下にも寄与すると考えられます。従業員が自律的にキャリアを形成し、自身の市場価値を高めることを支援する姿勢は、エンゲージメントの向上にもつながるでしょう。
副業を検討する前に確認すべきこと
副業に興味があっても、すぐに始めるのは禁物です。会社に迷惑をかけたり、自分が不利になったりしないよう、事前に確認すべき重要なポイントがいくつかあります。ここを怠ると、思わぬトラブルに発展する可能性があるので、くれぐれも慎重に進めましょう。
自社の就業規則と社内ルールの確認
副業を始める上で最も重要なのは、まず何よりも自社の就業規則を徹底的に確認することです。多くの企業では、副業に関する具体的なルールが就業規則や人事規定に明記されています。例えば、「副業は原則禁止」なのか、「会社への届出が必要」なのか、「許可が必要」なのか、あるいは「完全に自由」なのかといった点が記載されています。
もし就業規則に副業に関する記載がない場合でも、暗黙の了解や過去の事例があるかもしれませんので、念のため人事部や上司に相談することをお勧めします。就業規則に違反して副業を行った場合、懲戒処分や減給、最悪の場合は解雇といった重いペナルティが課される可能性もゼロではありません。まずは、自社の公式なルールを正確に把握することから始めましょう。
会社への事前申請と許可手続き
多くの副業容認企業では、副業を開始する前に会社への「事前申請」と「許可」が必要となります。参考情報にもある通り、「多くの企業では、副業を行う前に会社への申請と許可が必要となります。」申請時には、副業の内容、勤務時間、予想される収入、業務期間などを具体的に申告することが求められるのが一般的です。
これは、会社が副業が本業に支障をきたさないか、情報漏洩のリスクはないかなどを判断するために必要な手続きです。勝手に副業を始めて後から発覚した場合、会社との信頼関係が損なわれたり、就業規則違反として処分されたりするリスクがあります。必ず定められた手続きを踏み、正式な許可を得てから副業を開始するようにしましょう。不明な点があれば、遠慮なく人事部に問い合わせることが賢明です。
本業とのバランスと確定申告の知識
副業を行う上で忘れてはならないのが、本業とのバランスです。副業によって睡眠時間が削られたり、疲労が蓄積したりして、本業の業務に支障が出ないよう、時間管理と体調管理を徹底することが不可欠です。参考情報でも、「本業への影響:副業が本業に支障をきたさないよう、時間管理や体調管理を徹底しましょう」と注意喚起されています。無理のない範囲で副業に取り組むことが、長期的に継続する秘訣です。
また、副業による所得がある場合、税金に関する知識も必要になります。特に、副業による所得が年間20万円を超えると、原則として確定申告が必要になります。所得税だけでなく、住民税にも影響するため、市区町村への届け出が必要になることもあります。副業を始める前に、税理士や税務署の情報を確認するなどして、確定申告のルールを理解しておくことで、後々のトラブルを避けることができるでしょう。
会社の副業ルール、どう理解すればいい?
副業を検討する際、自社のルールが「副業OK」であったとしても、その内容を正確に理解しておくことが非常に重要です。一口に「副業OK」と言っても、企業によってその許可範囲や手続きは千差万別だからです。具体的なルールの違いと、違反した場合のリスクについて解説します。
「許可制」と「届出制」の違いを把握する
副業を認める企業が採用している制度は、大きく分けて「許可制」と「届出制」の2種類があります。
- 許可制: 多くの企業が採用している形式です。従業員は副業を開始する前に、会社に対して申請を行い、内容を審査された上で正式な許可を得る必要があります。会社は副業の内容が本業に支障をきたさないか、競合リスクはないかなどを判断します。許可が下りなければ、その副業は行えません。
- 届出制: 会社に副業を行う旨を通知するだけで良く、原則として会社からの承認は不要な形式です。ただし、会社側は届け出られた副業の内容を確認し、不適切と判断した場合には中止を命じる権利を持つ場合があります。比較的自由度が高いものの、無条件で何でもOKというわけではありません。
あなたの会社がどちらの制度を採用しているのか、また、申請や届出の具体的な手順や提出書類は何なのかを、就業規則で確認するか、人事部に直接問い合わせて明確に把握しましょう。
制限事項と禁止事項の具体例
副業が許可されている場合でも、多くの場合、いくつかの制限事項や禁止事項が設けられています。これは、企業がリスクを回避し、従業員の安全と本業への集中を確保するために不可欠なルールです。参考情報にもあるように、「競合他社での副業や、企業の機密情報が漏洩するリスクのある副業などは、制限または禁止される場合があります。」
一般的な制限・禁止事項には以下のようなものがあります。
- 競合他社での副業: 会社の利益を損なう可能性が高いため、厳しく禁止されることがほとんどです。
- 企業の機密情報やノウハウを流用する副業: 情報漏洩リスクを避けるため、厳しく制限されます。
- 長時間労働や過労につながる副業: 「副業によって長時間労働になったり、健康を害したりすることも避けるべき」とされている通り、従業員の健康管理の観点から制限されます。
- 会社の信用を著しく損なう可能性のある副業: 例えば、反社会的な活動や公序良俗に反する活動などは禁止されます。
- 本業の職務と密接に関わる内容の副業: 利益相反やハラスメントのリスクがあるため、許可されないことが多いです。
これらの具体例を理解し、自分の検討している副業がこれらの条件に抵触しないかを事前に確認することが重要です。
ルール違反のリスクと健全な副業の進め方
会社の副業ルールを無視して副業を行った場合、様々なリスクに直面することになります。最も重いケースでは、就業規則違反として懲戒処分(減給、出勤停止、最悪は懲戒解雇)の対象となる可能性があります。また、会社の信用を損ねたり、情報漏洩が発生したりした場合には、損害賠償を請求される可能性もゼロではありません。
このようなリスクを避けるためにも、副業を始める際は「企業のルールを遵守し、リスク管理をしっかりと行うことが大切です。」と参考情報にもあるように、常に会社に対して誠実な姿勢で臨みましょう。事前申請を徹底し、副業の内容や状況に変化があった場合は速やかに会社に報告するなど、透明性を持ったコミュニケーションを心がけることが、会社との良好な関係を維持しつつ、安心して副業を継続するための鍵となります。健全な副業は、個人の成長と会社の発展、双方にメリットをもたらすはずです。
まとめ
よくある質問
Q: そもそも、なぜ会社は副業を禁止するのですか?
A: 主に、従業員の業務時間外の活動が本業に支障をきたすこと、競合他社との利益相反、企業秘密の漏洩リスク、労災認定の複雑化などを避けるためです。
Q: 副業が禁止されている大手企業にはどのようなところがありますか?
A: ツルハ、NEC、農協、野村證券、野村不動産、能美防災、日立グループ各社(日立、日立建機、日立ソリューションズ)、ヒューマンリソシア、平和堂、マクドナルド、マイナビなど、多くの企業で副業禁止の規定が見られます。
Q: 副業を認める企業が増えているのはなぜですか?
A: 優秀な人材の確保・定着、従業員のスキルアップや多様な働き方の支援、企業イメージの向上などが理由として挙げられます。また、働き方改革の一環として推進されるケースもあります。
Q: 副業を始める前に、具体的に何を調べるべきですか?
A: まずは勤務先の就業規則を確認し、副業の可否、許可申請の有無、兼業範囲などを把握することが最優先です。不明な点は人事部門に確認しましょう。
Q: 副業が禁止されている場合、どのようなリスクがありますか?
A: 就業規則違反となり、懲戒処分(減給、解雇など)の対象となる可能性があります。また、会社からの信頼を失うことも考えられます。