「既卒」と「フリーター」の違いとは?

「既卒」の定義と特徴

学校を卒業したものの、これまでに一度も正規雇用に就いた経験がない人を「既卒者」と呼びます。新卒採用の時期を逃してしまった方や、卒業後も就職活動を続けている方などがこれに該当します。既卒であるという点は、新卒者と同様に社会人経験がないという共通点がありますが、年齢が若いという点で新卒者にアドバンテージがある企業も存在します。また、多くの企業では「卒業後3年以内であれば新卒枠で応募可能」としている場合も少なくありません。この期間内に就職活動を行うことが、既卒者にとっては重要なポイントとなります。

正規雇用とは異なる道を歩む中で、既卒であるという自身の状況を正確に理解し、それに応じた戦略を立てることが求められます。新卒枠での応募が可能である期間を過ぎると、未経験ながらも中途採用枠で戦う必要が出てくるため、より一層の自己PRやスキルアピールが重要になるでしょう。既卒としての期間をどのように過ごしたか、何を学んだか、そして今後何をしていきたいのかを明確にすることが、次のステップへ進むための鍵となります。

「フリーター」の定義と現状

「フリーター」とは、正社員以外の形態、つまりアルバイトやパートなどで生計を立てている人を指します。これは「既卒」や「新卒」「第二新卒」といった学歴や職歴の区分とは異なる、働き方や雇用形態を示す概念です。つまり、学校を卒業後に正規雇用に就かず、アルバイトとして働いている人は「既卒フリーター」ということになります。近年、卒業後も正規雇用に就かず、アルバイトやパートで生計を立てる「フリーター」という働き方を選択する人が増えています。

2024年の調査によると、フリーターの8割以上が「経済的にゆとりがない」と感じていることが示されており、その生活の厳しさが伺えます。アルバイトで働く主な目的は「自分の生活費のため」「貯金をするため」といった、まさに日々の生活を支える金銭的な理由が挙げられます。自由な働き方というイメージがある一方で、多くのフリーターが経済的な制約の中で生活しているのが実情です。

「既卒フリーター」とはどういう状態か

「既卒フリーター」とは、学校を卒業後、正規雇用の経験がないまま、アルバイトやパートで生計を立てている状態を指します。特に、新卒での就職活動がうまくいかず、そのままフリーターとなるケースが少なくありません。新卒者と比較した場合、既卒フリーターも社会人経験がないという点では同じですが、年齢の点で新卒者と比較されることがあります。例えば、同じ未経験者であっても、22歳の新卒と25歳の既卒では、企業が抱く印象が異なる場合があります。

しかし、既卒者であっても卒業後3年以内であれば新卒枠で応募できる場合があり、この期間をいかに有効活用するかが重要です。既卒フリーターという立場は、一度は正規雇用の機会を逃したというレッテルが貼られがちですが、その期間に何を経験し、何を学んだか、そしてこれから何をしたいのかを明確にすることで、十分なアピールポイントとなり得ます。重要なのは、ただ時間を過ごすのではなく、将来を見据えた行動を起こすことです。

既卒者の平均年収と就職の現実

フリーターの平均年収と経済状況

フリーターとして働く人々の平均年収は、一般的に約200万円~250万円とされています。この金額は、正社員の平均年収と比較すると大きく下回る水準です。2024年の調査では、フリーターの8割以上が「経済的にゆとりがない」と感じており、この数字はフリーターの生活が厳しい現実を如実に物語っています。多くのフリーターにとって、アルバイトの主な目的は「自分の生活費のため」や「貯金をするため」といった、まさに生活を維持するための金銭的な理由が上位を占めています。

経済的なゆとりのなさから、趣味や自己投資に回せるお金は限られ、日々の生活をギリギリで回している人が少なくありません。例えば、急な出費や病気、怪我などで一時的に働けなくなると、たちまち生活が困窮するリスクも抱えています。そのため、長期的な視点でのキャリア形成やスキルアップへの投資も難しくなりがちで、現状からの脱却を阻む要因となっています。

正社員になった場合の年収見込み

既卒から正社員として働き始めた場合、年収は大きく改善される可能性があります。例えば、20代前半の正社員の平均年収は約268万円~320万円とされており、既卒から正社員になった場合の年収も、これを参考にすると280万円程度が目安と考えられます。これはあくまで目安であり、職種や業界、個人のスキルや経験によって年収は変動しますが、フリーターの平均年収と比較すると、約30万円~80万円程度の年収アップが見込めることになります。

長期的に見ると、正社員の平均年収が約530万円であることと比較すると、フリーターと正社員の間には生涯賃金において莫大な差が生じます。正社員になることで、昇給やボーナス、退職金など、安定した収入源や福利厚生が確保され、経済的な安定度が格段に向上します。将来のライフプランを考える上でも、この収入差は非常に大きな意味を持つと言えるでしょう。

雇用形態 平均年収(目安) 備考
フリーター 約200万円~250万円 経済的ゆとりがないと感じる人多数
既卒から正社員(20代前半) 約280万円~320万円 職種や経験により変動
正社員(全体平均) 約530万円 安定した収入と福利厚生

長期化するフリーター生活のリスク

フリーター生活が長期化すると、将来への不安は増大するばかりです。経済的な不安定さは最も大きなリスクの一つであり、正社員と比較して昇給の見込みが低いことや、ボーナスがないことなどが原因で、将来設計が非常に立てにくくなります。また、社会保障の面でも不利な点が多いため、老後の年金受給額が低くなる可能性や、病気や怪我の際に十分な保障が受けられないリスクも考慮しなければなりません。

さらに、年齢を重ねるにつれて雇用機会が減少する可能性も無視できません。特に30代以降になると、未経験での正社員採用のハードルは格段に上がります。履歴書の「空白期間」が長引くほど、企業側からの評価は厳しくなる傾向にあり、選考通過が困難になることが予想されます。このような状況は、キャリア形成の停滞だけでなく、精神的な負担となり、自信喪失にも繋がりかねません。

既卒者が「やばい」「やめとけ」と言われる理由

経済的な不安定さと生活の質の低下

既卒フリーターが「やばい」「やめとけ」と言われる最大の理由の一つは、その経済的な不安定さにあります。前述の通り、フリーターの平均年収は正社員と比較して大幅に低く、200万円~250万円程度に留まることがほとんどです。この収入では、日々の生活費を賄うのがやっとで、貯蓄や将来への投資が非常に困難になります。例えば、急な病気や災害、家族の介護など、予期せぬ出費が発生した際に、十分な対応ができないリスクを常に抱えています。

また、正社員であれば受けられる福利厚生(住宅手当、家族手当、交通費支給など)や、社会保障(厚生年金、健康保険、雇用保険)が不十分であるため、生活の質が低下しやすくなります。住宅ローンや車のローンなど、大きな借り入れの審査も通りにくく、マイホームを持つといった人生の大きな計画を立てること自体が困難になる現実があります。これらの経済的な制約は、精神的なストレスや将来への漠然とした不安を増幅させる要因となります。

キャリア形成の停滞とスキル不足

フリーターという働き方では、正社員として得られるような体系的な研修やOJT(オンザジョブトレーニング)の機会がほとんどありません。そのため、専門的なスキルや知識を習得する機会が限られ、キャリア形成が停滞してしまうリスクがあります。アルバイトで得られるスキルは、多くの場合、接客やレジ打ちなど、汎用性はあっても市場価値として評価されにくいものが多いのが実情です。

正社員として働くことで身につく、問題解決能力、マネジメント能力、プロジェクト推進能力などは、アルバイトではなかなか経験できません。結果として、履歴書に書ける職務経歴が乏しくなり、いざ正社員を目指そうとした際に「経験不足」「スキル不足」と判断されやすくなります。年齢を重ねるごとにこの差は広がり、未経験者採用の枠も狭まるため、転職活動が困難になるという悪循環に陥る可能性が高いのです。

将来への不安と精神的な負担

「多くのフリーターが、将来への不安を感じています。」これは単なる感覚ではなく、現実のデータが示す深刻な問題です。経済的な不安定さやキャリア形成の停滞は、漠然とした将来への不安へと繋がり、精神的な負担を大きくします。周囲の友人や同級生が正社員としてキャリアを築き、結婚や出産といったライフイベントを迎える中で、自分だけが立ち止まっていると感じることで、焦りや劣等感を抱くことも少なくありません。

正社員への転換が難しいという現実や、年齢を重ねるにつれて雇用機会が減少する可能性は、フリーターの心理的なストレスを増大させます。就職活動で不採用が続けば、さらに自信を失い、精神的に追い詰められてしまうケースもあります。このように、経済的・キャリア的な側面だけでなく、精神的な健康を維持するという観点からも、フリーターという働き方を長期化させることには大きなリスクが伴うと言えるでしょう。

既卒者がやるべきこと・見つけるべき道

自己分析とキャリアプランの明確化

既卒者が正社員への道を切り開く上で、まず最も重要なのが徹底的な自己分析です。自身の強みや弱み、興味関心、そしてどのような価値観を持って働きたいのかを深く理解することが不可欠です。例えば、「人と接することが好きだが、ルーティンワークは苦手」「新しい技術を学ぶことに抵抗がない」「細かい作業が得意」など、具体的な自己認識を深めることで、自分に合った職種や業界を見つけるヒントが得られます。適職診断ツールやキャリアカウンセリングを活用するのも有効な手段です。

自己分析を通じて、漠然とした「正社員になりたい」という思いから、「将来は〇〇業界で、△△の仕事を通じて、こんなキャリアを築きたい」といった具体的なキャリアプランを描くことが可能になります。目標が明確になれば、それに向けた具体的な行動計画(どのようなスキルを習得するか、どの企業に応募するかなど)を立てやすくなり、モチベーションの維持にも繋がります。

スキルアップと資格取得の戦略

未経験での正社員就職を目指す既卒者にとって、自身の市場価値を高めるためのスキルアップと資格取得は非常に効果的な戦略です。現在のアルバイト経験だけではアピールしにくいと感じる場合でも、企業が求める特定のスキルや資格を身につけることで、採用の可能性を大きく広げることができます。例えば、事務職を目指すのであれば簿記検定やMOS(Microsoft Office Specialist)、IT関連の仕事であればプログラミングスキルや情報処理系の資格などが挙げられます。

これらのスキルを習得するためには、各自治体が実施している職業訓練制度を活用したり、オンライン学習サービスを利用したりする方法があります。2024年の調査では、フリーターの約6割が学び直しの必要性を感じているものの、実際に取り組んでいるのは2割弱にとどまっています。このことから、行動に移すこと自体が他のフリーターとの差別化に繋がると言えるでしょう。収入確保を目的とした学び直しは、単なる勉強ではなく、将来への確実な投資として捉えるべきです。

就職支援サービスの積極的活用

既卒者が一人で就職活動を進めるのは、情報収集や対策の面で困難が伴う場合があります。そこで活用したいのが、ハローワークや就職エージェントなどの専門的な就職支援サービスです。これらのサービスは、求人情報の提供だけでなく、履歴書や職務経歴書の作成サポート、面接対策、さらには非公開求人の紹介など、多角的な支援を受けることができます。特に、既卒者やフリーター向けの就職支援サービスは、未経験者歓迎の求人に強く、キャリア相談にも親身に対応してくれる傾向があります。

就職エージェントを利用することで、自分の希望や適性に合った企業を効率的に見つけられるだけでなく、企業との間に立って条件交渉を行ってくれることもあります。また、定期的な面談を通じて、自身の就職活動の進捗を客観的に見てもらい、フィードバックを受けることで、改善点を見つけやすくなります。これらのサービスを最大限に活用し、専門家の知見を借りながら、効率的かつ効果的に正社員への道を目指しましょう。

既卒者が成功するためのヒントと注意点

アルバイト経験を最大限に活かす方法

現在フリーターとして働いている方も、その経験を正社員へのステップアップに活かす方法は十分にあります。まず考えられるのは、現在のアルバイト先で正社員登用を目指すことです。もし職場の雰囲気や業務内容が自分に合っていると感じるなら、積極的に正社員登用の機会がないか相談してみましょう。長期間の勤務実績や業務への貢献度があれば、正社員として迎え入れてもらえる可能性はゼロではありません。

また、現在のアルバイトで培った経験やスキルは、正社員の就職活動においても強力なアピールポイントになり得ます。例えば、接客業であればコミュニケーション能力や問題解決能力、事務作業であれば正確性やPCスキルなど、どんなアルバイト経験でも工夫次第で「社会で活かせる能力」としてアピールできます。重要なのは、ただのアルバイト経験ではなく、その経験を通じて何を学び、どのようなスキルを身につけたのかを具体的に説明できるようにすることです。

学び直し(リスキリング)の重要性と実践

現代社会では、IT技術の進化やビジネスモデルの変化により、求められるスキルも常に変化しています。既卒フリーターが正社員を目指す上で、学び直し(リスキリング)は非常に重要な要素となります。2024年の調査では、フリーターの約6割が学び直しの必要性を感じているものの、実際に取り組んでいるのは2割弱にとどまっています。この差こそが、行動する人にとってのチャンスと言えるでしょう。

特に需要が高いのは、ITスキル(プログラミング、データ分析など)や語学スキル、デジタルマーケティングに関する知識などです。これらのスキルを身につけることで、未経験でも応募できる職種が増え、キャリアの選択肢が大きく広がります。オンライン学習プラットフォームや専門スクール、職業訓練校などを活用し、自身の興味や将来の目標に合わせた学びを始めることが、成功への近道となります。学び直しの費用が気になる場合は、給付金制度などが利用できないか確認することも重要です。

長期的なキャリア視点と計画的な行動

フリーターという働き方には、時間の自由度が高いというメリットがある一方で、経済的な自立や将来設計において不利になる可能性が潜んでいます。既卒者が成功するためには、目先のメリットだけでなく、長期的なキャリア視点を持って、計画的に行動することが不可欠です。まずは、ご自身の現状(貯蓄、スキル、健康状態など)を把握し、いつまでに正社員になるのか、どのような職種を目指すのかといった具体的な目標を設定しましょう。

そして、その目標達成に向けて、自己分析、スキルアップ、就職活動という一連のプロセスを計画的に進めることが大切です。焦りを感じることもあるかもしれませんが、一つ一つのステップを着実にこなしていくことが、最終的な成功に繋がります。しかし、既卒フリーターであっても、正社員を目指す道は十分にあります。自身の状況を把握し、計画的にキャリアを築いていくことが、明るい未来を掴むための第一歩となるでしょう。