概要: 「既卒」の定義から、年齢や期間の目安、中途採用との違い、そして既卒が就職・転職で不利になる理由と、それを乗り越えるための具体的な戦略までを解説します。経験談も交え、既卒の強みを活かす方法を探ります。
「既卒」とは?定義と対義語、知っておくべき基本
既卒の明確な定義とは?
「既卒」という言葉を耳にするものの、その正確な意味を把握している方は意外と少ないかもしれません。
一般的に既卒とは、高校、専門学校、短大、大学などを卒業したものの、一度も正社員として就職した経験がない人を指します。
明確な法的定義は存在しませんが、多くの場合、卒業後3年以内が既卒として扱われることが多いのが実情です。
この期間は企業が新卒採用の対象を広げる際の一つの目安となっており、既卒者にとっても重要な意味を持ちます。
卒業後すぐに正社員としてのキャリアをスタートさせなかった理由としては、進学や留学、あるいは資格取得のための勉強、さらには思うように就職活動が進まなかったなど、様々なケースが考えられます。
これらの期間を経て、改めて正社員としての就職を目指す方が「既卒者」に該当します。
「新卒」「第二新卒」との違いを理解する
既卒と混同されやすい言葉に「新卒」や「第二新卒」があります。これらの違いを理解することは、自身の立ち位置を把握し、適切な就職戦略を立てる上で非常に重要です。
- 新卒(しんそつ):現在、学校に在籍しており、卒業見込みで就職活動を行っている学生を指します。基本的に卒業と同時に正社員として入社することを前提としています。
- 第二新卒(だいにしんそつ):一度正社員として就職した経験があるものの、おおむね卒業後3年以内に転職活動をしている若手社会人を指します。新卒採用に近いポテンシャルを期待される一方で、短いながらも社会人経験がある点が特徴です。
- 既卒(きそつ):先述の通り、学校を卒業後、一度も正社員として就職した経験がない人です。
企業側の採用枠から見ると、新卒は「新卒採用枠」、第二新卒は「中途採用枠」または「第二新卒枠」、既卒は「中途採用枠」が主ですが、一部企業では既卒者を新卒枠で受け入れるケースも増えています。
それぞれの定義と企業側の受け止め方を理解することが、効果的な就職活動への第一歩となるでしょう。
なぜ既卒になるのか?よくあるパターン
既卒になる理由は人それぞれですが、主なパターンを把握しておくことで、自身の状況を整理しやすくなります。
最も多いのが「就職活動に失敗してしまった」というケースでしょう。厳しい就職戦線の中で、なかなか内定を得られなかったり、希望する企業に入れなかったりすることは珍しくありません。
次いで多いのは、卒業後に「進路変更」を選んだケースです。
- 海外留学で語学力や異文化理解を深めた
- 大学院に進学して専門知識を追求した
- 専門学校で特定の資格取得を目指した
- ボランティア活動やインターンシップを通じて社会経験を積んだ
といった、キャリアアップやスキルアップを目的とした空白期間は、アピールポイントになり得ます。
また、「やりたいことが見つからなかった」「病気や家庭の事情」など、様々な個人的な理由で就職に至らなかったケースもあります。
企業はこれらの「空白期間」をどのように過ごし、そこから何を学んだのかを知りたがります。正直に伝えつつ、前向きな姿勢を示すことが重要です。
空白期間の過ごし方が意欲や成長に繋がっていることを説明できれば、むしろプラスに働く可能性も秘めています。
既卒は何年まで?年齢制限や就活・転職の現実
「既卒3年以内」が重要なライン
既卒で就職活動をする際、非常に重要な目安となるのが「卒業後3年以内」という期間です。
厚生労働省は、企業に対して「卒業後3年以内であれば新卒として応募可能とする」よう要請しており、これを受けて多くの企業が既卒者を新卒採用枠で受け入れるようになっています。
この期間内に就職活動を行えば、新卒と同様にポテンシャルや人柄を重視した選考を受けられる可能性が高まります。
また、入社後に新卒向けの研修を受けられる場合もあり、未経験からでも安心してキャリアをスタートできるメリットがあります。
しかし、卒業後3年を過ぎてしまうと、新卒枠での応募は難しくなり、実務経験が求められる中途採用枠での選考を受ける必要が出てくるため、選考のハードルが一気に上がるのが現実です。
そのため、既卒期間が3年以内である場合は、この期間を最大限に活用した就職活動を心がけましょう。
年齢が上がるにつれて厳しくなる現実
就職活動に年齢制限は設けられていない企業がほとんどですが、既卒者の場合、年齢が上がるにつれて状況が厳しくなる傾向があります。
特に、20代後半で正社員経験がない場合、企業によってはネガティブなイメージを持たれる可能性があります。
企業は若手人材の育成に力を入れることが多く、年齢が若いほどポテンシャルを評価されやすい傾向があるためです。
卒業後の「空白期間」が長くなればなるほど、「この期間に何をしていたのか」「働く意欲はあるのか」といった疑問を抱かれやすくなります。
空白期間の過ごし方を具体的に説明できないと、面接で不利に働くことが少なくありません。
そのため、既卒期間中に何を経験し、何を学び、それをどう活かしたいのかを明確に伝える準備が不可欠です。具体的な経験や学びを語れるかどうかが、年齢の壁を越えるカギとなります。
既卒の就職率と市場の動向
既卒者の就職活動は、新卒と比較して厳しい側面があるのは事実です。
厚生労働省の調査(2023年度)によると、既卒者の内定率は約34.4%~49.3%となっています。これは、2024年卒業者の新卒就職率が98.1%であることを考えると、大きな開きがあることがわかります。
この数字だけを見ると不安に感じるかもしれませんが、近年では既卒者に対する企業の認識も変化しつつあります。
参考情報によると、約70%の企業が既卒者の新卒枠応募を可能としているなど、以前に比べて既卒者の就職環境は改善傾向にあると言えるでしょう。
特に人手不足が深刻な業界や企業では、既卒者も貴重な人材として積極的に採用する動きが見られます。</
大切なのは、自身の状況を理解し、適切な戦略を立てて行動することです。
中途採用との違いを理解する:既卒が抱える不安
既卒と中途採用の決定的な違い
既卒として就職活動を行う際、自身が「中途採用」のカテゴリに属すると考えがちですが、両者には決定的な違いがあります。
中途採用は、基本的に「即戦力」となる実務経験や専門スキルを持った人材を求める採用形態です。
企業は、入社後すぐに業務に貢献できることを期待し、職務経歴書の内容を重視します。
一方、既卒採用(特に卒業後3年以内の新卒扱いの場合)は、新卒採用に近く、ポテンシャルや人柄、学ぶ意欲が重視されます。
実務経験がない既卒者が中途採用枠で応募すると、社会人経験のある第二新卒や転職希望者と競うことになり、不利になる可能性が高いでしょう。
自身の状況がどちらに近いのかを正確に把握し、適切な応募先を見極めることが成功の鍵となります。まずは新卒枠での応募可否を確認することが重要です。
「空白期間」が与える心理的・実質的な影響
既卒者が就職活動で抱える最大の不安の一つが、卒業後の「空白期間」です。
企業側は、この空白期間に対し「働く意欲が低いのではないか」「目的なく過ごしていたのではないか」といったネガティブなイメージを持つ傾向があります。
一方で、既卒者自身も、空白期間への引け目や自信のなさから、本来の力を発揮できないことがあります。
しかし、この期間に何をしていたかが重要です。
例えば、資格取得のための勉強、ボランティア活動、アルバイトで社会経験を積んでいた、など、具体的な活動があればそれは立派なアピールポイントになります。
空白期間を「無駄な時間」ではなく、「自己成長のための準備期間」として前向きに説明する準備をしましょう。
具体的な活動内容とそこから得た学びを語ることで、空白期間に対する企業側の懸念を払拭し、むしろ自身の成長をアピールする機会に変えることができます。
企業側の既卒への一般的なイメージと対策
企業が既卒者に対して持つ一般的なイメージには、残念ながらネガティブな側面が含まれることがあります。
「なぜ新卒で就職しなかったのか」「就職活動を怠っていたのではないか」といった疑問を持たれやすいのは事実です。
このようなイメージを払拭するためには、以下の対策が有効です。
- 「なぜ既卒になったのか」を正直に説明する: 嘘偽りなく、既卒になった理由を明確に伝えましょう。その上で、当時の反省点や、そこから何を学び、今どう改善しようとしているのかを具体的に述べることが重要です。
- 空白期間の活動を具体的にアピールする: アルバイト経験で得たスキル、資格取得に向けた努力、ボランティア活動で培った協調性など、具体的なエピソードを交えて意欲や成長をアピールします。
- 入社への強い意欲を示す: 既卒であるからこそ、入社への熱意や、長く働きたいという意志を強く伝えることが大切です。
これらの対策を通じて、企業側の懸念を払拭し、自身の魅力を最大限に伝える努力をしましょう。
既卒が転職で不利になる理由と、その克服法
企業が既卒採用にためらう理由
既卒者の採用において、企業がためらいを感じる理由はいくつかあります。
まず、「働く意欲が低いのではないか」「社会人としての基礎が身についていないのではないか」という懸念が挙げられます。
正社員経験がないことから、ビジネスマナーや基本的な業務遂行能力が不足しているのではないかと見られがちです。
また、採用にはコストがかかるため、「せっかく採用してもすぐに辞めてしまうのではないか」という定着率への不安も背景にあります。
中途採用枠では、実務経験のあるライバルが多く、経験不足の既卒者が相対的に不利になることも少なくありません。
既卒であること自体が、何らかの問題を抱えているのではないかという漠然としたイメージを持たれる可能性もゼロではありません。
これらの懸念を払拭するためには、徹底した自己分析と効果的なアピールが不可欠です。
空白期間を強みに変えるアピール術
既卒であることの最大の懸念点である「空白期間」は、見方を変えれば自身の「強み」としてアピールすることも可能です。
重要なのは、空白期間を「何もしていなかった期間」ではなく、「意図的に、あるいは結果的に得た貴重な経験期間」と位置づけることです。
- 理由を具体的に説明: 留学、資格勉強、病気療養など、既卒になった理由を具体的に説明し、そこから何を学び、どう成長したかを伝えます。
- 得られたスキルや経験を強調: アルバイトで培ったコミュニケーション能力やチームワーク、資格取得で得た専門知識など、期間中に得られた具体的なスキルや経験を挙げ、それが志望企業でどう活かせるかを結びつけます。
- 反省点と意欲を示す: 新卒時の就職活動がうまくいかなかった場合は、その反省点を踏まえ、「今度はしっかりとキャリアを築きたい」という強い意欲を示すことが重要です。
空白期間を前向きに捉え、自身の成長をアピールするチャンスと捉えましょう。
具体的なエピソードを交えることで、より説得力が増し、あなたの熱意が企業に伝わりやすくなります。
効果的な自己分析と企業研究でミスマッチを防ぐ
既卒での就職活動を成功させるためには、徹底した自己分析と企業研究が欠かせません。
一度就職活動につまずいた経験があるからこそ、改めて「なぜ自分は働きたいのか」「どんな仕事がしたいのか」「どんな企業文化が合っているのか」を深く掘り下げて考える必要があります。
自己分析では、自身の強み、弱み、興味、価値観、そしてこれまでの経験(アルバイト、ボランティア、学業など)を洗い出し、自身のキャリアの軸を明確にします。
企業研究では、興味のある企業について深く調べ、事業内容、企業文化、求める人材像などを把握します。
自身の強みがその企業でどのように活かせるのか、企業文化に本当にマッチするのかを具体的に検討することで、入社後のミスマッチを防ぎ、長く活躍できる企業を見つけることができます。
時間をかけてこれらに取り組むことで、面接での説得力も格段に増し、企業側にもあなたの真剣さが伝わるでしょう。
既卒の強みと体験談から学ぶ、内定への道
既卒だからこそアピールできる「強み」
既卒であることは一見不利に見えますが、実は既卒だからこそアピールできる独自の強みがあります。
- 新卒枠での応募可能性: 卒業後3年以内であれば、多くの企業で新卒枠での応募が可能です。新卒と同じようにポテンシャル採用され、研修を受けられるチャンスがあります。
- 就業開始時期の柔軟性: 卒業後すでに時間を経ているため、企業の採用ニーズに合わせてすぐに就業を開始できる点は、企業にとって大きなメリットとなり得ます。
- 自己成長の機会: 既卒期間中に資格取得、スキルアップ、留学、アルバイトなどに取り組んでいれば、それを具体的にアピールし、自身の成長意欲や行動力を示すことができます。
- 明確な志望動機と高い意欲: 新卒時に比べて、自身のキャリアについて深く考え、企業選びに対するこだわりや「なぜこの会社で働きたいのか」という明確な理由を語れるのは既卒者の強みです。一度失敗を経験しているからこそ、入社後のモチベーションも高いと見なされることもあります。
これらの強みを最大限に活かすことが、内定への近道となります。自信を持って、自身の経験をアピールしましょう。
成功事例に学ぶ!内定を勝ち取った既卒者の戦略
実際に内定を勝ち取った既卒者には、共通する戦略やマインドセットがあります。
ある既卒者は、新卒時の就職活動に失敗した後、1年間ITスキル習得のために専門スクールに通いました。
面接では、新卒時の失敗を正直に認めつつも、その反省から「自身の市場価値を高めるために努力した」ことを熱心にアピール。空白期間を明確な目標達成のための期間として説明し、見事IT企業の内定を獲得しました。
また、別のケースでは、卒業後にフリーターとして様々なアルバイトを経験した既卒者がいます。
彼は、それぞれのアルバイトで培った顧客対応力や問題解決能力を具体的なエピソードと共に語り、「社会経験がないわけではない」ことを強調しました。そして、正社員として安定した環境で長く働きたいという強い意志を伝え、サービス業の内定を掴み取りました。
これらの事例から分かるのは、空白期間を隠すのではなく、むしろ自身の成長の証として前向きに語り、具体的な行動と熱意を示すことが重要だということです。
既卒の就職活動を後押しするサポートとサービス
既卒での就職活動は、一人で抱え込まず、外部のサポートを積極的に活用することが成功へのカギです。
利用できる主なサービスは以下の通りです。
- 転職エージェント: 既卒者向けの求人を豊富に扱い、専門のキャリアアドバイザーがつき、自己分析、履歴書・職務経歴書の添削、面接対策、企業との条件交渉まで一貫してサポートしてくれます。特に、既卒者が抱える不安や疑問に寄り添ったアドバイスが期待できます。
- ハローワーク: 地域に密着した求人情報を提供しており、職業相談や各種セミナーを通じて、就職活動の基礎を学ぶことができます。
- 自治体の就職支援サービス: 各自治体で若者向けの就職支援プログラムや相談窓口を設けている場合があります。地域によっては既卒者特化の支援が行われていることもあります。
これらのサービスを上手に活用することで、一人では見つけにくい求人情報に出会えたり、客観的な視点からアドバイスをもらえたりと、効率的かつ効果的に就職活動を進めることができます。
既卒であることは、確かに就職活動において乗り越えるべきハードルとなる場合があります。
しかし、適切な準備と戦略をもって臨み、自身の強みを最大限にアピールすることで、希望する企業からの内定を勝ち取ることは十分に可能です。
諦めずに、前向きな姿勢で挑戦し続けましょう!
まとめ
よくある質問
Q: 「既卒」とは具体的にどういう意味ですか?
A: 「既卒」とは、学校を卒業したものの、就職せずに現在に至る人を指します。新卒で就職しなかった、あるいは一度就職したが短期間で退職し、再び就職活動をしている人も含まれます。
Q: 既卒と中途採用の違いは何ですか?
A: 一般的に、既卒は学校卒業後の職務経験がない、もしくは非常に少ない状態を指します。一方、中途採用は、卒業後に一定期間以上の職務経験がある人を対象とする採用活動を指します。
Q: 既卒は何年まで、あるいは何歳までが有利ですか?
A: 明確な「何年まで」という定義はありませんが、一般的に学校卒業後3年以内は新卒枠として応募できる場合もあります。年齢も企業によりますが、一般的には若年層ほど有利な傾向があります。しかし、経験やスキルによっては年齢が高くても採用されるケースもあります。
Q: 既卒が転職で不利になりやすいのはなぜですか?
A: 企業側から見ると、職務経験がない、あるいは経験が浅いと判断されやすいため、即戦力としての期待が薄れるからです。また、新卒採用の枠で応募できない場合、中途採用の枠では経験不足と見なされる可能性があります。
Q: 既卒でも内定を得るための強みや対策はありますか?
A: 既卒でも、アルバイトやインターンシップ、ボランティアなどで培った経験や、主体的に学んだスキル、高い向上心や柔軟性などをアピールすることが重要です。また、既卒向けの求人を探したり、キャリアアドバイザーに相談したりするのも有効な手段です。