【離職票】転職先が決まっている場合の手続きと注意点

転職先が決まっている場合、「離職票は必要ない」と思っていませんか?

実は、失業手当の受給資格がない場合でも、後々の手続きで必要になるケースがあります。

この記事では、転職先が決まっている場合の離職票の取り扱いについて、手続きの流れや注意点を分かりやすく解説します。

いざという時に困らないよう、ぜひ参考にしてください。

離職票とは?基本をおさらい

離職票の定義と役割

離職票は、正式名称を「雇用保険被保険者離職票」といい、会社を退職したことを証明する公的な書類です¹⁵⁶⁹⁸。

この書類は主に「離職票-1」と「離職票-2」の2枚で構成されています。

「離職票-1」には、退職者の氏名や住所、被保険者番号などの基本的な情報が記載されており、ハローワークで失業手当の手続きをする際に窓口に提出します。

一方、「離職票-2」には、離職理由や賃金に関する詳細な情報が記載されており、失業手当の支給額や期間を決定するための重要な根拠となります。

失業手当の申請だけでなく、特定の状況下で再就職先への提出を求められることもあるため、その役割は多岐にわたります。

失業手当との関係

離職票の最も主要な役割は、失業手当(基本手当)の受給手続きでハローワークに提出するために必要となることです¹⁵⁶⁹⁸。

失業手当は、雇用保険に一定期間加入しており、現在失業状態で就職を希望している方が受け取れる給付金です。

離職票-2に記載されている「離職理由」は、失業手当の支給開始日や支給期間に大きく影響します。

例えば、自己都合退職の場合は待機期間があり、給付制限が設けられることがありますが、会社都合退職の場合は、そうした制限が緩和される傾向にあります。

また、離職日以前の賃金支払状況も、失業手当の支給額を算定する上で重要な情報となります。

これらの情報が正確に記載されていることが、適切な失業手当を受給するために不可欠です。

転職先が決まっている場合の必要性

転職先が決まっている場合、基本的に失業手当の受給資格はありません¹⁰⁴⁶⁸。そのため、「離職票は不要」と考える方も多いでしょう。

しかし、万が一に備えて離職票は発行してもらうことを強くお勧めします¹²⁷。

その理由としては、以下のようなケースが挙げられます。

  • 転職先から提出を求められた場合: 転職先が雇用保険の加入履歴などを確認するために、離職票の提出を求めることがあります¹²⁷。
  • 万が一、転職できなくなった場合: 採用が取り消しになったり、入社を辞退せざるを得ない状況になったりした場合、予期せぬ失業状態になる可能性があります。そのような場合に備えて、離職票があれば失業手当の手続きができます¹²⁷。
  • 転職した会社を早期退職した場合: 再就職した会社をすぐに退職してしまい、雇用保険の加入期間が短くなった場合、失業手当の受給資格を満たすために前職の離職票が必要になることがあります¹²⁷。
  • 59歳以上の退職者: 退職時の年齢が59歳以上の場合は、本人の希望に関わらず離職票の交付が必要です。これは「高年齢雇用継続給付」の金額を決定するために必要となります¹⁰⁴。

これらのケースを考慮すると、例え転職先が決まっていても、離職票は取得し、大切に保管しておくのが賢明です。

転職先が決まっている場合の離職票手続き

発行を希望する・しないの判断

転職先が決まっている場合でも、離職票の発行を希望するかどうかは、退職者自身で判断し、会社に明確に伝えることが重要です。

前述の通り、失業手当の申請は不要でも、万が一の事態や転職先からの要求に備えて離職票は手元に置いておくことを推奨します。

多くの会社では、退職時に離職票の発行希望の有無を確認してくれますが、もし確認がない場合は、必ず自分から発行を依頼しましょう。

特に、「転職先が決まっているから不要」と安易に判断して発行を希望しなかった場合、後から必要になった際に手続きが煩雑になる可能性があります。

退職時に「発行を希望する」と伝えておけば、会社は発行手続きを進めてくれるため、安心です。

会社からハローワークへの申請プロセス

離職票の発行は、会社がハローワークを通じて行う手続きです。

具体的には、まず会社が退職者の情報を基に「雇用保険被保険者離職証明書」と「雇用保険被保険者資格喪失届」を作成します。

これらの書類は、退職日の翌々日から10日以内に会社から管轄のハローワークへ提出することが義務付けられています⁴⁵⁶⁹⁸。

会社がこの手続きを電子申請システム「e-Gov」を利用して行う場合もあります⁴。

ハローワークでは、提出された書類の内容を審査し、問題がなければ「離職票-1」と「離職票-2」を発行します。

発行された離職票は、会社に郵送され、その後会社から退職者へと送付される流れとなります⁵。

この一連の流れを会社がスムーズに進めてくれるかどうかは、退職者にとっては非常に重要なポイントです。

退職者への交付と確認のポイント

ハローワークから会社へ離職票が届いた後、会社は退職者へ離職票を送付します⁵。

通常、離職票は退職日までに賃金計算などの記載が必要なため、退職日当日に受け取ることはできません¹¹。

一般的には、退職後10日前後で手元に届くとされています¹¹。

離職票が手元に届いたら、すぐに内容を詳細に確認することが大切です¹²。

特に確認すべき項目は以下の通りです。

  • 氏名、住所、被保険者番号などの基本情報が正しいか
  • 離職理由が自己の認識と一致しているか
  • 賃金支払状況(離職日以前2年間の賃金額など)に誤りがないか

もし記載内容に誤りがある場合は、まずは退職した会社に連絡を取り、修正を依頼しましょう。

会社での対応が難しい場合や、離職理由などで会社と意見が異なる場合は、ハローワークに相談してください。

転職先が決まっている場合でも、万が一のために離職票は大切に保管しておくことをお勧めします⁷⁸。

離職票が届く前に再就職した場合の注意点

失業手当の申請は原則不要

離職票が手元に届く前に次の転職先での勤務が始まる場合、すでに「失業状態」ではないため、失業手当(基本手当)の申請は原則として不要となります。

失業手当は、働く意思と能力がありながら職に就けない状態にある方への生活保障を目的とした制度だからです。

そのため、再就職先が決まり、実際に働き始める予定がある場合は、ハローワークで失業手当の申請手続きを行う必要はありません。

しかし、離職票自体は、たとえ失業手当を申請しない場合でも、他の目的で必要になる可能性があるので、引き続き発行してもらい、手元に保管しておくことが賢明です。

転職先から提出を求められるケース

再就職先によっては、入社時に前職の離職票の提出を求めることがあります¹²⁷。

これは、主に雇用保険の加入履歴や前職の在籍期間を確認するためです。

特に「離職票-1」は、新しい会社が雇用保険の資格取得手続きを行う際に参照することがあります。

また、ご自身の年齢が59歳以上で、高年齢雇用継続給付の受給資格がある場合、再就職先での給付額を決定するために前職の離職票が必須となります。

そのため、転職先から求められた際にスムーズに提出できるよう、必ず離職票は取得し、大切に保管しておきましょう。

もし、離職票が手元にない状態で提出を求められた場合は、前職の会社に連絡して発行を依頼するか、ハローワークに相談する必要があります。

早期退職や万が一の事態への備え

「転職先が決まっているから大丈夫」と思っていても、人生には予期せぬ事態が起こり得ます。

例えば、再就職した会社が期待と異なり、すぐに退職してしまうケースも少なくありません¹²⁷。

このような場合、新しい会社での雇用保険加入期間が短く、単独では失業手当の受給資格を満たせない可能性があります。

その際、前職の離職票があれば、前職と再就職先の雇用保険加入期間を合算して、失業手当の受給資格を得られる場合があります¹²⁷。

また、採用が取り消しになるなど、入社が叶わずに再び失業状態に陥る可能性もゼロではありません¹²⁷。

このような「万が一」の状況に備えるためにも、離職票は保険のようなものとして、必ず発行を受けて保管しておくべき重要な書類と言えるでしょう。

手元にあれば、いざという時に迅速に手続きを進めることができます。

離職票はすぐもらえる?退職理由別のケース

発行までの一般的な期間

離職票は、退職日当日に受け取れるものではありません¹¹。

会社が退職者の賃金計算などを確定させ、必要な情報を記入する時間が必要だからです。

会社は、退職日の翌々日から10日以内に「雇用保険被保険者離職証明書」などの書類をハローワークに提出する必要があります⁴⁵⁶⁹⁸。

その後、ハローワークでの審査を経て離職票が発行され、会社に送付されます。

最終的に会社から退職者の手元に届くまでの期間は、一般的に退職後10日前後とされています¹¹。

この期間は、会社の事務処理状況やハローワークの混雑具合によって多少前後することがあります。

もし、この目安期間を過ぎても離職票が届かない場合は、まずは前職の会社に問い合わせてみましょう。

会社からの提出期限

会社には、労働者が雇用保険の被保険者資格を失った日(つまり退職日の翌日)の翌々日から10日以内に、離職証明書をハローワークに提出する義務があります⁴⁵⁶⁹⁸。

この期限は法律で定められており、会社がこれを遵守することは、退職者がスムーズに次の手続きに進む上で非常に重要です。

もし会社がこの期限を過ぎて提出した場合、離職票が退職者の手元に届くのが遅れる原因となります。

特に失業手当を申請する場合、離職票がなければ手続きを開始できないため、生活に影響を及ぼす可能性もあります。

退職する際は、会社が速やかに手続きを進めてくれるよう、事前に確認し、必要であれば協力を依頼しておくことも一つの方法です。

会社側も、従業員の退職手続きを適切に行う責任があります。

離職理由が争点になる場合の期間

離職票の発行が一般的な期間よりも遅れるケースとして、「離職理由」を巡って会社と退職者の認識に相違がある場合が挙げられます。

離職理由(自己都合、会社都合、契約期間満了など)は、失業手当の支給額や支給期間に大きく影響するため、非常に重要な項目です¹。

会社が離職証明書に記載した離職理由に対して、退職者が異議を申し立てる場合、ハローワークで事実確認や調査が行われることがあります。

この調査には時間がかかるため、その間は離職票の発行が保留され、退職者の手元に届くまでに通常よりも長い期間を要することになります。

このような状況を避けるためにも、退職時には会社と離職理由について十分に話し合い、可能な限り合意形成をしておくことが望ましいです。

もし意見の相違がある場合は、早めにハローワークに相談し、適切な手続きを踏むことが重要となります。

離職票に関するよくある質問(Q&A)

Q1: 転職先が決まっているのに発行を拒否されたら?

A: 転職先が決まっている場合でも、会社には離職票を発行する義務があります。

雇用保険法では、被保険者が離職した際に離職票を交付するよう定められています。

もし会社が離職票の発行を拒否した場合、まずはその理由を確認し、改めて発行を依頼しましょう。

それでも会社が応じない場合は、管轄のハローワークに相談してください

ハローワークは、会社に対して離職票の発行を指導することができます。

最悪の場合、ご自身でハローワークに「離職票不交付の申し出」を行うことで、ハローワークが会社に確認し、手続きを進めてもらうことも可能です。

諦めずに、ご自身の権利として離職票の発行を求めましょう。

Q2: 離職票の記載内容に誤りがあった場合

A: 離職票が届いたら、必ず記載内容を確認することが非常に重要です¹²。

特に、「離職理由」や「賃金支払状況」に誤りがないかを慎重にチェックしてください。

もし記載内容に誤りを発見した場合は、以下の手順で対応しましょう。

  1. まずは退職した会社の人事担当者に連絡し、誤りの内容を具体的に伝え、修正を依頼します。
  2. 会社での修正が難しい場合や、会社が対応してくれない場合は、管轄のハローワークに相談してください。

ハローワークでは、誤り内容の調査を行い、必要に応じて会社への指導や離職票の修正手続きを進めてくれます。

特に離職理由の誤りは、失業手当の支給条件に大きく影響するため、速やかに対応することが肝要です。

Q3: 59歳以上で退職する場合の特例

A: 退職時の年齢が59歳以上の場合は、本人の希望に関わらず離職票の交付が必要となります¹⁰⁴。

これは、高年齢雇用継続給付の受給資格や支給額を決定するために、前職の離職票に記載された情報が不可欠だからです。

高年齢雇用継続給付とは、60歳以降も働き続け、賃金が60歳到達時より一定割合以上低下した場合に支給される給付金です。

この給付を受けるためには、雇用保険の加入期間や賃金の状況を証明する書類として離職票が必要になります。

そのため、59歳以上で退職する方は、転職先が決まっているか否かにかかわらず、会社に離職票の発行を依頼し、必ず受け取るようにしてください。

会社側も、この年齢層の退職者に対しては、原則として離職票を発行する義務がありますので、手続きを円滑に進めるよう依頼しましょう。