1. 源泉徴収票の「所得金額」と「課税所得」の違いを理解しよう
    1. 所得金額は「収入から必要経費を引いたもの」
    2. 課税所得は「税金がかかる対象となる最終的な所得」
    3. なぜ違いを知る必要があるのか?税額計算の出発点だから
  2. 給与所得控除後の金額、社会保険料、生命保険料控除額で課税所得はこう変わる
    1. 給与所得控除が所得をどれだけ減らすのか
    2. 社会保険料控除は支払った全額が対象!
    3. 生命保険料控除で賢く節税
  3. 源泉徴収票の各項目の意味を徹底解説!計算方法も紹介
    1. 「支払金額」はあなたの年収の全体像
    2. 「給与所得控除後の金額」から所得控除を引く
    3. 「所得控除の額の合計額」が課税所得を決定づける
  4. 源泉徴収票の計算が合わない?よくある原因と確認方法
    1. 扶養控除の申告漏れや変更忘れ
    2. 医療費控除やふるさと納税などの確定申告が必要な控除
    3. 複数の会社からの収入や副業がある場合
  5. 賢く節税!源泉徴収票を理解して来年の税金に備えよう
    1. 控除の種類を知り、最大限活用する
    2. 年末調整の書類は正確に記入する
    3. 不明点は税務署や専門家に相談する
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 源泉徴収票の「課税所得」はどこで確認できますか?
    2. Q: 源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」とは何ですか?
    3. Q: 源泉徴収票の「社会保険料等の金額」とは具体的に何が含まれますか?
    4. Q: 源泉徴収票の「生命保険料の控除額」はどのように計算されますか?
    5. Q: 源泉徴収票の「所得金額」や「総所得金額」と「課税所得」はどう違いますか?

源泉徴収票の「所得金額」と「課税所得」の違いを理解しよう

所得金額は「収入から必要経費を引いたもの」

源泉徴収票に記載されている「所得金額」という言葉は、実は税法上の様々な所得の計算の出発点となる金額を指します。会社員や公務員のような給与所得者の場合、この「所得金額」とは、年間の給与収入(額面の年収)から、給与所得控除という「みなし経費」を差し引いた後の金額のことです。ビジネスパーソンが収入を得るためには、スーツ代や交通費、書籍代など、様々な経費がかかりますが、それらを一つ一つ証明して申告するのは現実的ではありません。そこで、税法では給与収入に応じて一律に経費とみなして差し引くことができる給与所得控除が設けられています。つまり、この所得金額は、あなたの年収から、国が認める「仕事にかかった費用」を引いた、いわば「儲け」に近い概念だと理解しておくと良いでしょう。この控除額は、収入金額が高くなるほど大きくなる傾向にありますが、上限が定められています。

課税所得は「税金がかかる対象となる最終的な所得」

一方、「課税所得」は、所得税や住民税などの税金が実際に計算される基となる、最終的な所得金額のことです。これは、先ほど説明した「給与所得控除後の金額」(=所得金額)から、さらに様々な「所得控除」を差し引いた後の金額を指します。所得控除には、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除といった保険料に関するものや、配偶者控除、扶養控除、基礎控除など、個人の事情に応じた控除が数多くあります。これらは、納税者それぞれの経済状況や社会的状況を考慮し、公平な税負担を実現するために設けられています。つまり、「課税所得」は、給与収入から「必要経費」と「個人の事情を考慮した控除」の両方を差し引いた、まさに「税金をかけるにふさわしい」と判断された金額なのです。源泉徴収票では、「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を差し引くことで、この課税所得を算出することができます。

なぜ違いを知る必要があるのか?税額計算の出発点だから

源泉徴収票を見る上で、この「所得金額」と「課税所得」の違いを正確に理解することは非常に重要です。なぜなら、実際にあなたが納める所得税額は、この「課税所得」に所得税率を掛けて算出されるからです。所得金額は、あくまで給与所得控除を差し引いた段階の金額であり、そこからさらに各種所得控除を差し引くことで課税所得が確定します。課税所得が低くなればなるほど、適用される所得税率も下がる可能性があり、結果として納める所得税額も少なくなります。
この関係性を理解していれば、自分がどのような所得控除を受けられるのか、あるいは受けられるのに申告を忘れている控除はないかなどを確認する際の重要な手がかりとなります。例えば、年間で多額の医療費を支払った場合、医療費控除を適用することで課税所得を減らし、還付金を受け取れる可能性があります。源泉徴収票の各項目が何を意味しているのかを把握することで、自身の税負担を適切に把握し、場合によっては節税対策に繋がる行動を起こすことができるようになるのです。

給与所得控除後の金額、社会保険料、生命保険料控除額で課税所得はこう変わる

給与所得控除が所得をどれだけ減らすのか

給与所得控除は、会社員にとって税負担を軽減する上で非常に大きな役割を果たす制度です。これは、給与収入を得るために必要な「経費」として、収入額に応じて一律に差し引かれる金額のこと。例えば、年収が480万円の場合、給与所得控除額は140万円となります。これは、収入が480万円あったとしても、税金がかかる対象となる所得が、この段階で340万円に減ることを意味します。控除額は年収によって異なり、令和2年(2020年)から令和6年(2024年)までは、最低55万円(年収162.5万円以下の場合)から、最高195万円(年収850万円超の場合)までと定められています。
この給与所得控除が適用されることで、税金がかかる対象となる所得(課税所得)の基礎が大きく減少するため、個人の税負担が軽減されます。自身の年収がどの範囲に該当し、いくらの給与所得控除が適用されているのかは、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」欄を見れば、その計算結果を確認することができます。

社会保険料控除は支払った全額が対象!

社会保険料控除は、給与所得者にとって最も身近で、かつ影響の大きい所得控除の一つです。健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、介護保険料など、給与から天引きされている社会保険料や、自分で支払った国民健康保険料、国民年金保険料など、その年に支払った金額の全額が所得から控除されます。つまり、支払った社会保険料の金額がそのまま課税所得から差し引かれるため、課税所得を大幅に減らす効果があります。
例えば、年収480万円の人が年間69万円の社会保険料を支払っている場合、この69万円が課税所得から直接差し引かれます。これは、税金がかかる対象の所得が69万円減るということですから、所得税率が10%の人であれば6万9千円、20%の人であれば13万8千円の税負担軽減効果があることになります。年末調整の際には、会社がこの社会保険料の支払い額を把握しているため、特別な手続きなしで控除が適用されていることがほとんどですが、自分で支払った社会保険料がある場合は、年末調整の際に申告が必要です。

生命保険料控除で賢く節税

生命保険料控除は、生命保険や医療保険、個人年金保険などに加入している人が受けられる所得控除です。この控除は、支払った保険料に応じて所得から一定額を差し引くことで、課税所得を減らし、結果として所得税や住民税の負担を軽減する効果があります。生命保険料控除には、「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3種類があり、それぞれに控除限度額が設けられています。
現行制度(新制度)では、それぞれの控除につき最大4万円(合計最大12万円)まで所得税の控除が可能です。旧制度の保険に加入している場合は、控除限度額が異なります。例えば、年間8万円以上の保険料を支払っている場合、控除額は最大の4万円となります。年収480万円で課税所得が223万円の人が、生命保険料控除で4万円の控除を受けられれば、課税所得は219万円に減少します。これは、適用される税率にもよりますが、数千円~1万円程度の税負担軽減に繋がる可能性があります。生命保険料控除は、年末調整時に保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」を添付して申告することで適用されます。

源泉徴収票の各項目の意味を徹底解説!計算方法も紹介

「支払金額」はあなたの年収の全体像

源泉徴収票の一番左上にある「支払金額」という項目は、1月1日から12月31日までの1年間に、あなたが会社から支払われた給与、賞与、各種手当の合計額を示しています。これはいわゆる「額面の年収」に該当し、税金や社会保険料が天引きされる前の総支給額です。ただし、通勤手当など、税法上非課税とされる手当は、この「支払金額」には含まれません。
例えば、基本給が月25万円で、賞与が夏冬合わせて50万円、残業手当が年間20万円だった場合、支払金額は「(25万円 × 12ヶ月) + 50万円 + 20万円 = 370万円」となります。この金額が、あなたの年収の全体像を示す最初の数字であり、ここから様々な控除が差し引かれて、最終的な税額が決定されていきます。自分の年収がいくらだったのかを確認する際に、まずこの「支払金額」を確認すると良いでしょう。

「給与所得控除後の金額」から所得控除を引く

「給与所得控除後の金額」は、その名の通り、上記の「支払金額(年収)」から「給与所得控除」を差し引いた金額のことです。これは、所得税法上の「給与所得の金額」に相当します。会社員の場合、この金額が、各種所得控除を差し引く前の「所得」として認識される重要な数字となります。
具体的な計算方法を見てみましょう。例えば、あなたの支払金額(年収)が480万円だったとします。国税庁の定める給与所得控除額の速算表に照らし合わせると、年収480万円の場合の給与所得控除額は140万円となります。したがって、「給与所得控除後の金額」は、「480万円(支払金額) – 140万円(給与所得控除) = 340万円」となります。この340万円という金額が、次のステップである「所得控除」を適用するための出発点となり、税金計算の基礎となるものです。この項目を理解することで、ご自身の収入に対する「みなし経費」がどれくらい引かれているのかを把握することができます。

「所得控除の額の合計額」が課税所得を決定づける

源泉徴収票の「所得控除の額の合計額」とは、「給与所得控除」以外の、様々な「所得控除」の合計金額を指します。これには、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除といった保険に関する控除のほか、基礎控除(全納税者に適用される基本的な控除)、配偶者控除、扶養控除、医療費控除(確定申告が必要な場合が多い)、iDeCoの掛金などが含まれます。これらの控除は、納税者一人ひとりの事情に合わせて税負担を調整するために設けられています。
課税所得は、この「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を差し引くことで算出されます。例として、年収480万円の場合で考えてみましょう。

項目 金額
支払金額 480万円
給与所得控除 140万円
給与所得控除後の金額 340万円
基礎控除 48万円
社会保険料控除 69万円
所得控除の額の合計額 117万円 (48万円 + 69万円)
課税所得 223万円 (340万円 – 117万円)

このように、所得控除の額が大きければ大きいほど、最終的な課税所得は小さくなり、結果として納める税金も少なくなるため、この項目は節税を考える上で非常に重要な意味を持ちます。

源泉徴収票の計算が合わない?よくある原因と確認方法

扶養控除の申告漏れや変更忘れ

源泉徴収票の計算が思ったより多い、あるいは少ないと感じる場合、最もよくある原因の一つが「扶養控除の申告漏れや変更忘れ」です。扶養控除は、配偶者や子ども、親族などを扶養している場合に受けられる控除で、所得控除の額を増やすことで課税所得を減らし、税負担を軽減する効果があります。しかし、結婚、出産、あるいは子どもの就職など、扶養家族の状況に変化があった際に、会社への申告が間に合わなかったり、変更を忘れてしまったりすることがあります。
例えば、年度の途中で子どもが生まれたのに、扶養控除等(異動)申告書を提出し忘れていたり、扶養していた親が年度途中で亡くなったのに申告を修正していなかったりすると、正しい控除が適用されません。このような場合、年末調整で正しく処理されていないため、源泉徴収税額が適切に計算されていない可能性があります。確定申告をすることで、正しい控除を適用し、過払い分を還付してもらうことが可能です。源泉徴収票の「控除対象配偶者の有無等」や「控除対象扶養親族の数」の欄を確認し、ご自身の家族状況と一致しているか確認しましょう。

医療費控除やふるさと納税などの確定申告が必要な控除

もう一つのよくある原因は、年末調整では対応できない特定の所得控除があることです。代表的なものとして、医療費控除寄付金控除(ふるさと納税など)が挙げられます。これらの控除は、年末調整の対象外であり、適用を受けるためには納税者自身が翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行う必要があります。
例えば、1年間で家族全員の医療費が10万円(または総所得金額等の5%)を超えた場合、医療費控除を受けることで課税所得を減らすことができますが、年末調整ではこの情報は反映されません。また、ふるさと納税を行った場合も、寄付金控除を受けることで所得税の還付や住民税の控除が受けられますが、ワンストップ特例制度を利用しない限り、確定申告が必須です。
これらの控除が適用されていないために源泉徴収票の税額が高く出ていると感じる場合は、確定申告を行うことで税金が還付される可能性があります。該当する控除があるかどうか、過去の領収書や証明書を確認してみましょう。

複数の会社からの収入や副業がある場合

近年増加している副業や、年の途中で転職して複数の会社から給与を受け取っている場合も、源泉徴収票の計算が複雑になり、疑問が生じやすい原因となります。原則として、給与所得者は1社からしか年末調整を受けられません。通常、主たる給与の支払い元(本業の会社)で年末調整が行われ、それ以外の会社からの収入(副業の給与など)は年末調整の対象外となります。
この場合、副業の収入に対する税金は、年末調整では計算されていないため、確定申告で全ての所得を合算して最終的な所得税額を計算し直す必要があります。副業の収入が20万円を超える場合や、年の途中で退職し、転職先の会社で年末調整を受けていない場合は、確定申告が義務付けられています。確定申告を怠ると、税務署からの指摘を受けて追徴課税となる可能性もあるため、注意が必要です。複数の源泉徴収票がある場合は、それらを全て集めて確定申告の準備を進めるようにしましょう。

賢く節税!源泉徴収票を理解して来年の税金に備えよう

控除の種類を知り、最大限活用する

源泉徴収票を理解することは、自身の税負担を把握するだけでなく、来年の節税対策を考える上でも非常に有効です。税金には多くの控除制度があり、それらを賢く活用することで、手元に残るお金を増やすことが可能です。代表的なものとしては、これまで解説した社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、配偶者控除、扶養控除、基礎控除などがあります。
これらに加えて、ご自身の状況に合わせて利用できる控除がないかを確認しましょう。例えば、特定支出控除(会社員が特定支出をした場合)、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛け金は全額が所得控除の対象となります。NISA(少額投資非課税制度)は所得控除ではありませんが、投資で得た利益が非課税になるため、間接的な節税効果があります。これらの制度は、年末調整で申告できるものと、確定申告が必要なものがありますので、それぞれの要件と手続き方法を事前に確認し、最大限活用できるよう計画を立てることが重要です。

年末調整の書類は正確に記入する

毎年秋ごろに会社から配布される年末調整の書類、例えば「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や「給与所得者の保険料控除申告書」などは、非常に重要な書類です。これらの書類に記載された情報に基づいて、あなたの所得税が計算され、源泉徴収票が作成されるからです。
扶養家族の人数や、生命保険料・地震保険料の支払い状況、iDeCoの掛け金などを正確に記入することで、適用されるべき控除が漏れなく反映され、適切な税額が算出されます。特に、保険料控除証明書やiDeCoの年間払込証明書など、添付が必要な書類は忘れずに提出しましょう。もし記載内容に誤りがあったり、添付書類を忘れたりすると、本来受けられるはずの控除が適用されず、結果として税金を多く払ってしまうことになりかねません。提出前に必ず内容を再確認し、不明な点があれば会社の経理担当者や税務署に問い合わせることが大切です。

不明点は税務署や専門家に相談する

税金に関する制度は複雑で、個々の状況によって適用される控除や計算方法が異なるため、すべてを自分で理解するのは難しい場合もあります。源泉徴収票の見方や計算方法、あるいは具体的な節税対策について不明な点や疑問がある場合は、遠慮なく専門家に相談することをおすすめします。
税務署の窓口では、税金に関する一般的な相談を受け付けており、無料でアドバイスを受けることができます。また、より個別の状況に応じた具体的な相談や、複雑な確定申告の手続きについては、税理士のような税務の専門家に依頼することも有効な選択肢です。専門家は、あなたの状況に合わせて最適な節税策を提案してくれたり、適切な書類作成をサポートしてくれたりします。正確な知識に基づいて税務処理を行うことで、過払い金が発生したり、逆に税金を少なく申告してしまい後で問題になったりといったトラブルを防ぐことができます。税金に関する情報は毎年改正されることもあるため、常に最新の情報を確認し、必要に応じて専門家の力を借りながら、賢く税金と向き合っていきましょう。