1. OJTの効果を最大化!同行・期間・内容の疑問を徹底解説
  2. OJT同行の基本と目的:どこまで一緒に行動すべき?
    1. OJTの本質と同行の意義
    2. 効果的な同行で育む実践力
    3. 指導者の役割とコミュニケーション
  3. OJT期間はどれくらい?効果的な期間設定の考え方
    1. OJT期間の決定要因とは?
    2. 短期集中型と中長期型、それぞれのメリット
    3. 効果測定と期間の見直し
  4. 「OJTばかり」の勘違い?学ぶ側・教える側の意識改革
    1. 「OJT」=「丸投げ」ではない!
    2. 学ぶ側の主体性を引き出すには
    3. 教える側のマインドセットとスキル
  5. OJTのばらつきを防ぐ!プログラム・プラン作成のポイント
    1. OJT計画の重要性と現状把握
    2. 具体的なプログラム設計のステップ
    3. 効果測定と継続的な改善サイクル
  6. OJTのタイプ別アプローチとパソコンスキルの習得
    1. 新入社員向けOJTのポイント
    2. 中堅・管理職層向けOJTのポイント
    3. デジタルスキル(パソコンスキル)習得の具体策
  7. まとめ
  8. よくある質問
    1. Q: OJTの同行は、どこまで一緒に行動するのが理想ですか?
    2. Q: OJTの期間は、どれくらいが一般的ですか?
    3. Q: 「OJTばかり」になってしまうのはなぜですか?
    4. Q: OJTのばらつきを防ぐためには、どのようなプログラムやプランが必要ですか?
    5. Q: パソコンスキルのOJTは、どのように進めるのが効果的ですか?

OJTの効果を最大化!同行・期間・内容の疑問を徹底解説

OJT(On-the-Job Training)は、実務を通して社員のスキルアップを図る効果的な育成手法です。

しかし、その効果を最大化するためには、計画的な実施と適切な内容設定が不可欠となります。

本記事では、OJTの同行、期間、内容に関する疑問を、公的機関の情報を基に徹底解説していきます。

OJT同行の基本と目的:どこまで一緒に行動すべき?

OJTの基本は「実際の仕事を通じて学ぶ」こと。その中で「同行」は、学びを深めるための重要な要素となります。

どこまで同行すべきか、その目的と効果を解説します。

OJTの本質と同行の意義

OJTは、職場の上司や先輩が部下や後輩に対し、実際の仕事を通じて必要な知識、技術、技能、態度などを指導・教育することです。

座学研修(Off-JT)と比較して、個々の習熟度に合わせた指導が可能であり、即戦力化や指導者側のマネジメント力向上、教育コスト削減といったメリットが期待できます。

「どこまで一緒に行動すべきか」という疑問に対し、OJTの本質は「実務を通じた指導」にあります。

つまり、単に隣にいるだけでなく、業務のプロセス、顧客対応、判断基準など、実際の業務を間近で観察し、その場で質問やフィードバックを得ることが同行の最大の意義となります。

効果的な同行で育む実践力

効果的な同行とは、単に業務を見せるだけでなく、具体的な業務内容を共有し、実践的なアドバイスを行うことを指します。

例えば、商談への同行であれば、顧客とのやり取りだけでなく、事前準備のポイント、質問の意図、交渉の進め方などを指導します。

最初は指導者が主導し、徐々にOJT対象者が主体的に関わる機会を増やしていく「段階的な独立支援」が重要です。

観察、実践、フィードバックのサイクルを繰り返すことで、座学だけでは身につかない実践的なスキルを効率的に習得できます。

最終的には、見守りながら自律性を促すフェーズへと移行し、対象者が自信を持って業務に取り組めるように支援します。

指導者の役割とコミュニケーション

OJTにおける指導者は、単なる業務の教え役ではありません。

育成対象者の成長をサポートし、その過程で自身のマネジメント力を向上させることも期待されます。

厚生労働省の「人材活用ガイドライン」でも、OJTが指導する側の指導力向上や組織活性化にも期待できるとされています。

効果的なOJTには、定期的なコミュニケーションが不可欠です。

質問しやすい雰囲気を作り、OJT対象者の疑問や不安に寄り添うことで、学びを促進し、エンゲージメントを高めます。

また、育成対象者の習熟度や個性に応じたアプローチを柔軟に変えることも、指導者に求められる重要なスキルです。

OJT期間はどれくらい?効果的な期間設定の考え方

OJTの期間は、一律に決まるものではありません。育成対象者の状況や目標に応じて、最適な期間を設定することが重要です。

ここでは、期間設定の考え方と、その効果を最大化する方法について解説します。

OJT期間の決定要因とは?

OJTの期間や内容は、育成対象者の職務、階層、経験年数、個々の能力によって異なります。

そのため、画一的な期間設定ではなく、事前に育成対象者の現状を正確に把握し、会社が求める人物像や現場で必要なスキルを明確にした上で、計画を立案することが重要です。

例えば、新入社員であれば基本的な業務知識と社内ルール、ビジネスマナーの習得に重点を置き、比較的長期間にわたる計画が必要になるかもしれません。

一方、中途採用者で即戦力を期待される場合は、既存スキルとの差分を埋めるための短期集中型OJTが有効な場合もあります。

短期集中型と中長期型、それぞれのメリット

OJTの期間設定には、大きく分けて短期集中型と中長期型があります。

短期集中型は、特定のスキルや業務の習得に特化し、短期間で即戦力化を目指す場合に有効です。例えば、新しいシステム導入時の操作習得などがこれにあたります。

一方、中長期型は、より専門性の高い業務や、応用力、思考力の育成に適しています。

厚生労働省の「令和5年度能力開発基本調査」によると、正社員に対して実施したOJTの対象としては、新入社員が51.5%で最も多く、この層には基礎固めのための丁寧な中長期型OJTが求められることが多いでしょう。複雑な業務プロセスや、判断力を要する場面では、一定期間の実務経験を積むことが不可欠となります。

効果測定と期間の見直し

OJTの効果を最大化するためには、効果測定が不可欠であり、その結果に基づいて期間や内容を見直すことが重要です。

研修効果の測定には、一般的に「カークパトリックの4段階評価法」が用いられます。特に、以下のレベルでの評価は期間見直しの重要な指標となります。

  • レベル2:学習(Learning): 研修内容の理解度やスキルの習得度を測定します。目標とする学習達成度に至らない場合は、期間の延長や内容の見直しが必要です。
  • レベル3:行動(Behavior): 研修で学んだ知識やスキルが、実務でどの程度活用されているかを測定します。実際の業務での定着度を確認し、不十分であれば追加のOJTやフォローアップを検討します。

定期的なフィードバックと効果測定を計画に組み込み、柔軟にOJT期間を見直すことで、より効果的な人材育成につなげることができます。

(出典: カークパトリックの4段階評価法に関する記述は、一般的な研修評価手法に基づく)

「OJTばかり」の勘違い?学ぶ側・教える側の意識改革

「OJTばかりで放任されている」「OJTが単なる丸投げになっている」といった声は、OJTの誤解や不適切な運用から生じることがあります。

OJTを真に効果的なものとするためには、学ぶ側・教える側の双方に意識改革が必要です。

「OJT」=「丸投げ」ではない!

OJTは、計画的な実施と適切な内容設定が不可欠な育成手法であり、単なる業務の丸投げとは一線を画します。

厚生労働省はOJTを「職場の上司や先輩が部下や後輩に対し、実際の仕事を通じて必要な知識、技術、技能、態度などを指導・教育すること」と定義しています。

つまり、そこには明確な「指導・教育」の意図とプロセスが存在しなければなりません。

もしOJTが「とりあえずやらせてみる」だけの状態になっているなら、それは本来のOJTの目的から逸脱しています。

学ぶ側が放置されたと感じたり、教える側が負担に感じたりしないよう、計画性を持って取り組むことが重要です。

学ぶ側の主体性を引き出すには

OJTを最大限に活用するためには、学ぶ側の主体性が不可欠です。

「教えてもらう」という受け身の姿勢だけでなく、積極的に「学び取る」意識を持つことが重要となります。

具体的には、以下のような行動がOJTの効果を高めます。

  • 積極的な質問: 疑問に思ったことはすぐに質問し、理解を深める。
  • 記録と復習: 教わったことや気づきをメモし、後で振り返る。
  • 目標設定と進捗確認: OJT期間の目標を明確にし、定期的に自身の進捗を確認する。

また、カークパトリックの評価法におけるレベル1(反応)で満足度を、レベル2(学習)で理解度を自己評価し、自らの成長を認識することもモチベーション維持に繋がります。

教える側のマインドセットとスキル

OJTの効果は、指導者のマインドセットとスキルに大きく左右されます。

指導者は、単に業務を教えるだけでなく、育成対象者の成長を促す「コーチ」としての役割を担うべきです。

一方的な指示ではなく、対話を通じて育成対象者自身に考えさせ、問題解決能力を引き出すような指導が求められます。

また、OJTの時間が労働時間に該当するかどうかの認識も重要です。

厚生労働省は「就業時間中のOJTは、原則として労働時間として取り扱われます」としており、指導者側もOJTを正式な業務の一部として位置づけ、そのための時間を確保し、計画的に取り組む必要があります。

指導者自身も、OJTを通じてマネジメントスキルやコミュニケーション能力を向上させる機会と捉えましょう。

(出典: 厚生労働省「労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い」)

OJTのばらつきを防ぐ!プログラム・プラン作成のポイント

OJTの効果を最大化するためには、属人的な指導に頼るのではなく、体系的なプログラムとプランの作成が不可欠です。

ここでは、OJTの質を高めるための具体的な作成ポイントを解説します。

OJT計画の重要性と現状把握

厚生労働省の「令和5年度能力開発基本調査」によると、計画的なOJTを実施した事業所は63.2%でした。

これは逆に、約4割の事業所では計画的なOJTが実施されていないことを示唆しており、OJTのばらつきや効果の低下につながる可能性があります。

OJTプログラム作成の第一歩は、育成対象者の現状を正確に把握することです。

現在持っているスキル、経験、そして個人の学習スタイルを理解した上で、会社が求める人物像や現場で必要となるスキルを明確に定義します。

このギャップを埋めるための具体的なステップを計画に落とし込むことが、成功への鍵となります。

具体的なプログラム設計のステップ

効果的なOJTプログラムを設計するためには、以下のステップを踏むと良いでしょう。

  1. 目標設定: OJT終了時に「何をできるようになるか」を具体的に定義します(SMART原則に基づく)。
  2. カリキュラム作成: 目標達成に向けた学習内容を段階的に分解し、スケジュールに落とし込みます。座学、実践、ロールプレイングなど、多様な学習方法を組み合わせます。
  3. 評価基準とフィードバック方法の明確化: どのような基準で評価するのか、誰が、いつ、どのようにフィードバックを行うのかを定めます。
  4. 資源の準備: マニュアル、チェックリスト、OJT日報などのツールを準備し、指導者とOJT対象者が活用できるようにします。

複数人の指導担当者を立てる、いわゆる「マルチOJT」の導入も、特定の指導者への負担集中を防ぎ、多角的な視点からの指導を可能にします。

効果測定と継続的な改善サイクル

作成したプログラムは一度実施したら終わりではありません。

OJTの効果を定期的に測定し、その結果をプログラム改善に活かす「継続的な改善サイクル」を確立することが重要です。

前述のカークパトリックの4段階評価法を計画段階から組み込み、特にレベル3(行動)で実務への適用状況を、レベル4(結果)で組織全体の業績への貢献度を評価することで、OJTプログラムの投資対効果を検証します。

中小企業の場合、人材育成にはコストやリソースの課題が伴いますが、「人材開発支援助成金」のような公的支援制度を有効活用することで、OJTを含む人材育成の負担を軽減し、効果を最大化することが可能です。

(出典: 厚生労働省「令和5年度「能力開発基本調査」の結果を公表します」、独立行政法人中小企業基盤整備機構「支援機関OJT支援事業」)

OJTのタイプ別アプローチとパソコンスキルの習得

OJTは、対象者の階層や習得したいスキルによって、アプローチを変化させる必要があります。

ここでは、タイプ別のアプローチと、現代ビジネスにおいて不可欠なパソコンスキル習得に焦点を当てて解説します。

新入社員向けOJTのポイント

厚生労働省の調査では、OJTの対象として新入社員が51.5%と最も多い結果が出ています。

新入社員向けのOJTでは、まず業務の基礎、会社の文化、ビジネスマナーといった「土台」をしっかり築くことが重要です。

初めての社会人生活や部署配属で不安を感じやすい時期でもあるため、安心感を提供し、質問しやすい環境を整えることが非常に大切になります。

具体的には、定期的な面談を設定し、日々の業務の振り返りや悩みを聞く時間を設けること、また、メンター制度を導入して、業務以外の相談もできる体制を整えることも有効です。

手厚いサポートを通じて、早期の戦力化とエンゲージメント向上を目指しましょう。

中堅・管理職層向けOJTのポイント

新入社員とは異なり、中堅社員や管理職層向けのOJTは、より高度なスキルやマインドセットの育成に焦点を当てます。

例えば、マネジメント能力、問題解決能力、戦略的思考力、リーダーシップなど、組織の中核を担うためのスキル習得が目標となります。

この層へのOJTでは、既存業務の指導だけでなく、新たなプロジェクトへの参画を促したり、責任ある役割を任せたりすることで、挑戦と成長の機会を提供します。

また、部下を育成する「指導者側」としてのOJTは、自身のマネジメント力向上にも繋がるため、積極的に関与させることで、組織全体の底上げを図ることができます。

より自律的な学習を促し、定期的なコーチングを通じてサポートすることが重要です。

デジタルスキル(パソコンスキル)習得の具体策

現代のビジネスにおいて、パソコンスキルをはじめとするデジタルスキルは不可欠です。

OJTでこれらのスキルを習得させる際には、段階的なアプローチが有効となります。

まずはWordやExcelといった基本的なオフィスソフトの操作から始め、次に業務で頻繁に使用する専門ソフトやクラウドツールの使い方を指導します。

さらに進んで、データ分析やプレゼンテーション作成、情報セキュリティ意識の醸成まで、実務での活用を前提とした指導を心がけましょう。

OJTの際は、単に操作方法を教えるだけでなく、「なぜこの機能を使うのか」「どうすれば効率的か」といった目的意識を持たせることが重要です。

実際の業務データを使って実践的な演習を行ったり、オンライン学習リソースと組み合わせたりすることで、OJTの効果をさらに高めることができます。

(出典: 厚生労働省「令和5年度「能力開発基本調査」の結果を公表します」)