概要: 消費税申告の料金について、税理士に依頼する場合や、freee、マネーフォワードといった会計ソフトを利用する場合の費用を徹底比較します。ご自身の状況に合った最適な方法を見つけましょう。
個人事業主や法人にとって避けて通れない消費税申告。「いくらかかるの?」「自分でできるの?」「税理士に頼むべき?」と、様々な疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、消費税申告にかかる費用を、税理士に依頼する場合と、会計ソフト(freee、マネーフォワードなど)を利用する場合で徹底比較します。
あなたの事業規模や状況に最適な方法を見つけるためのヒントが満載です。ぜひ最後まで読んで、賢い選択をしてくださいね。
消費税申告の料金、いくらくらいかかる?
消費税申告の費用は、その方法によって大きく異なります。主な選択肢は、専門家である税理士に依頼するか、自身で会計ソフトを使って申告するかの2つです。
それぞれの選択肢にかかる料金の概観を把握し、ご自身の事業状況に合った最適な方法を見つけることが重要です。
消費税申告が必要になる条件とは?
消費税申告が必要になるのは、あなたが「課税事業者」となった場合です。原則として、基準期間(個人事業主は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上が1,000万円を超えると課税事業者となります。
また、特定期間(個人事業主は前年1月1日~6月30日、法人は前事業年度開始の日以後6ヶ月間)の課税売上高、または給与支払額が1,000万円を超えた場合も、その課税期間から課税事業者となる可能性があります。
2023年10月に始まったインボイス制度により、免税事業者であっても適格請求書発行事業者として登録した場合は、課税事業者となり消費税申告の義務が生じます。この場合、課税売上高に関わらず申告が必要となるため注意が必要です。
大きく分けて2つの選択肢
消費税申告の方法は、大きく分けて以下の2つがあります。
- 税理士に依頼する: 複雑な申告業務を専門家に任せることで、手間や時間の節約、正確性の確保、税務相談などのメリットがあります。費用は比較的高めですが、専門的なアドバイスを受けられる安心感が得られます。
- 会計ソフトを利用して自分で行う: freeeやマネーフォワードなどの会計ソフトを活用し、ご自身で申告書を作成・提出する方法です。費用を大幅に抑えられるメリットがありますが、経理や税務に関するある程度の知識と、申告作業にかける時間が必要です。
どちらの方法が最適かは、あなたの事業規模、経理スキル、そしてどこまで手間をかけたくないかによって変わってきます。
料金相場の概観
税理士に消費税申告を依頼する場合、顧問契約の有無や売上高によって変動しますが、一般的には2万円~5万円程度が相場とされています。
一方、会計ソフトを利用してご自身で申告する場合、月額または年額の利用料がかかります。多くのソフトが年額1万円~4万円程度で利用でき、税理士に依頼するよりも費用を抑えることが可能です。
ただし、会計ソフト利用の場合、基本料金以外にオプション機能やサポートの有無によって料金が変わることもあります。
次のセクションから、それぞれの具体的な料金体系と特徴を詳しく見ていきましょう。
税理士に依頼した場合の報酬相場
税理士に消費税申告を依頼するメリットは、正確性、時間の節約、税務相談など多岐にわたります。しかし、その分費用がかかるのも事実です。
ここでは、税理士に依頼した場合の料金体系と、ご自身の事業規模に合わせた具体的な費用目安について詳しく解説します。
顧問契約の有無で変わる料金体系
税理士報酬は、顧問契約を結んでいるかどうかで大きく変わります。顧問契約があれば、消費税申告単体での料金が割安になることが多いです。
- 顧問契約ありの場合: 毎月の顧問料に加えて、決算申告料や消費税申告料が加算されるのが一般的です。消費税申告料は、顧問契約がある場合、一般課税で3万円、簡易課税で2万円(税抜)程度で請け負う税理士事務所もあります。
- 消費税申告のみの場合(スポット契約): 顧問契約なしで、消費税申告書の作成・提出だけを依頼する場合、相場は2万円~5万円程度です。年商規模や取引の複雑さによって料金は変動し、事務所によってはより低価格で提供している場合もあります。
顧問契約を結ぶことで、日々の経理相談や節税アドバイスなど、年間を通じて様々なサポートを受けられるため、総合的な費用対効果を考えることが重要です。
年商規模別!具体的な費用目安
税理士報酬は、一般的に事業の売上高に比例して高くなる傾向があります。これは、売上高が大きいほど取引が複雑になり、申告作業にかかる手間が増えるためです。
以下に、年商規模別の消費税申告料と、年間総費用(顧問料+決算料+消費税申告料など)の目安をまとめました。これはあくまで一例であり、個別の契約内容によって変動する可能性があります。
| 年商規模 | 消費税申告料の目安 | 年間総費用目安(顧問契約ありの場合) |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 0円~2.2万円 | 16.5万円~35.2万円 |
| 1,000万円~3,000万円 | 2.2万円~2.75万円 | 37.4万円~46.75万円 |
| 3,000万円~1億円 | 2.75万円~3.3万円 | 46.75万円~56.1万円 |
| 1億円以上 | 4.4万円程度 | 74.8万円程度 |
特に年商1,000万円以下の事業者でも、インボイス制度で課税事業者になった場合は消費税申告料が発生することがあります。年間総費用は、顧問契約やその他のオプションサービスを含んだ概算値です。
税理士に依頼するメリット・デメリット(料金以外の視点)
税理士に依頼することの価値は、単なる申告書の作成代行だけではありません。
【メリット】
- 専門知識と経験: 消費税法は複雑であり、頻繁な改正もあります。税理士は常に最新の税法を把握し、正確な申告をしてくれます。
- 時間と手間の削減: 経理業務や申告作業にかかる時間を大幅に削減でき、本業に集中できます。
- 税務調査への対応: 万が一税務調査が入った際も、税理士が同席し、専門家として対応してくれるため安心です。
- 節税アドバイス: 事業の状況に応じた適切な節税対策や、経営に関するアドバイスを受けられます。
【デメリット】
- 費用がかかる: 会計ソフトを利用するよりも費用は高くなります。
- 経理知識が身につきにくい: 全て任せてしまうと、ご自身の経理や税務の知識が深まりにくい可能性があります。
これらのメリットとデメリットを考慮し、ご自身の事業のフェーズやニーズに合わせて検討することが大切です。
会計ソフト別!料金プランと機能比較(freee、マネーフォワード)
自力で消費税申告を行う場合、会計ソフトの活用は必須です。特にfreee会計とマネーフォワード クラウド確定申告は、個人事業主や法人から高い支持を得ています。
ここでは、それぞれの料金プラン、特徴、そして消費税申告機能に焦点を当てて比較します。
freee会計の料金プランと特徴
freee会計は、その直感的な操作性と自動化機能で人気を集めています。特に、経理初心者でも使いやすい設計が特徴です。
【料金プラン(年額・税抜)】
- スタータープラン: 年額9,800円~(2020年5月1日以降は11,760円)。確定申告に必要な基本機能と消費税申告機能が含まれています。比較的シンプルな経理の方におすすめです。
- スタンダードプラン: 年額23,760円~。スタータープランの機能に加え、より詳細なレポート機能や優先サポートが利用できます。消費税申告もスムーズに行いたい方に適しています。
- プレミアムプラン: 年額39,800円。さらに充実したサポートや多機能が利用でき、事業規模が大きくなってきた方向けです。
また、インボイス制度を機に課税事業者となった個人事業主向けに「消費税申告ライト」も提供されており、4ステップで消費税申告が完了する簡便さが特徴です。簡易課税や2割特例に対応しており、初めての消費税申告でも安心して利用できます。
freee会計は、特許取得済みの完全自動仕訳機能や、月10GBまで無料でレシートを保存できる機能など、手間を省くための機能が充実しています。
マネーフォワード クラウド確定申告の料金プランと特徴
マネーフォワード クラウド確定申告は、幅広い金融機関との連携機能と、複数サービスの連携による業務効率化が魅力です。
【料金プラン(年額・税抜)】
- パーソナルミニプラン: 年額10,800円。最小限の機能で確定申告を済ませたい方向けですが、消費税申告書の作成は利用できません。消費税の申告義務がない方や、税理士に依頼する予定の方におすすめです。
- パーソナルプラン: 年額15,360円。確定申告以外の業務効率化も図りたい方におすすめです。消費税申告書の作成も利用可能です。
- パーソナルプラスプラン: 年額35,760円。電話サポートを受けながら利用したい方向けです。消費税申告書の作成も利用可能です。
マネーフォワードは、2,300以上の金融機関と連携可能で、LINE Payにも対応しているなど、幅広いサービスとの連携が強みです。明細データの自動取得がスムーズで、日々の取引を効率的に管理できます。
レシート取り込み機能は月30件まで無料で、超過分はオプション料金が発生します。
機能比較で見る!どちらを選ぶべきか
freee会計とマネーフォワード クラウド確定申告は、それぞれ異なる強みを持っています。
【自動仕訳機能】
- freee: 取引をAIが推測し、会計ルールに従って自動で仕訳を生成する機能に優れています。銀行口座やクレジットカードとの連携もスムーズです。
- マネーフォワード: 明細データの自動取得が非常にスムーズで、既存の仕訳ルールに基づいて自動仕訳を行います。利用頻度の高い取引は自動で学習します。
【レシート取り込み・保存】
- freee: 月10GBまで無料でレシート画像を保存でき、OCR機能で自動でデータ化します。
- マネーフォワード: 月30件まで無料、それ以上はオプション料金がかかりますが、領収書・レシートのスマホ撮影からのデータ化が可能です。
【連携サービス】
- freee: 多くの決済サービスやECサイトと連携していますが、マネーフォワードほど連携金融機関の数は多くありません。
- マネーフォワード: 2,300以上の金融機関やクレジットカード、電子マネー、ポイントサービスなどとの連携が可能で、特に連携範囲の広さが魅力です。
どちらのソフトもインボイス制度に対応しており、消費税申告機能が充実しています。
初めての会計ソフトで「おまかせ」したいならfreee、既存の金融機関やサービスとの連携を重視するならマネーフォワードが選択肢となるでしょう。
消費税申告を自分で行うメリット・デメリット
会計ソフトを利用して消費税申告を自分で行うことは、大きなメリットと同時にいくつかのデメリットも伴います。これらをしっかりと理解した上で、ご自身の状況に合った選択をすることが重要です。
最大のメリットはコスト削減!
消費税申告を自分で行う最大のメリットは、何と言っても費用を大幅に抑えられる点にあります。税理士に依頼した場合、最低でも数万円の報酬がかかるのに対し、会計ソフトの利用料は年間1万円~4万円程度です。
特に事業を始めたばかりで売上規模が小さい場合や、コストを最大限に抑えたい個人事業主にとっては、この費用削減は非常に大きなメリットとなります。
例えば、freee会計のスタータープランやマネーフォワード クラウド確定申告のパーソナルプランを利用すれば、月額1,000円前後のコストで消費税申告が可能です。この差額を事業の運転資金や広告費などに回すことができます。
インボイス制度で新たに課税事業者になった方も、会計ソフトの簡易的な消費税申告機能を使えば、初期コストを抑えつつ申告義務を果たすことが可能です。
自分でやるからこそ得られる知識とノウハウ
消費税申告を自分で行う過程で、経理や税務に関する実践的な知識とノウハウが自然と身につきます。
日々の取引を会計ソフトに入力し、消費税の課税区分を判断していく中で、「この取引は課税対象なのか」「どの勘定科目を使うべきか」といった理解が深まります。これにより、ご自身のお金の流れをより正確に把握できるようになります。
また、申告書作成を通じて、消費税の計算方法や各種控除の仕組みなどを学ぶことができ、将来的な事業運営や節税対策にも役立つでしょう。
会計ソフトの操作に慣れることで、今後の経理業務全般が効率化され、事業の成長段階に応じて適切な会計処理ができるようになるという長期的なメリットも期待できます。
時間がかかる、ミス発生のリスクも
自分で消費税申告を行うことには、いくつかのデメリットも存在します。</
最も大きな点は、相応の時間と手間がかかることです。特に経理や税務の知識がない場合、学習コストが発生し、申告書の作成に通常よりも多くの時間を要する可能性があります。
また、消費税の計算は複雑であり、誤った課税区分で処理してしまうなど、ミスが発生するリスクもゼロではありません。税法改正への対応も自身で行う必要があり、誤った申告をしてしまうと、後日修正申告や追徴課税の対象となる可能性もあります。
万が一、税務調査が入った際にも、自分で対応しなければならないという不安もあります。このようなリスクを理解し、不安な場合は専門家への相談や、上位プランの会計ソフトでサポートを受けるなどの対策も検討すべきでしょう。
結局、どの方法が一番お得?料金と手間を比較
税理士に依頼する方法と、会計ソフトを使って自分で行う方法、どちらが本当に「お得」なのでしょうか?
最終的な選択は、単に料金の安さだけでなく、あなたの時間、経理スキル、事業の複雑さなど、様々な要素を総合的に考慮して決めるべきです。
ここでは、それぞれのメリット・デメリットを踏まえ、状況別のおすすめの選択肢を提案します。
手間とコストのバランスを見極める
消費税申告において、「お得」の定義は人それぞれ異なります。
費用を最優先するならば会計ソフトの利用が断然安価ですが、それに伴う時間と労力、そして正確性への不安はご自身で引き受けることになります。
一方、税理士に依頼すれば費用はかかりますが、その分、時間的コストを削減でき、申告の正確性や税務調査への対応といった安心感を得られます。これは本業に集中したい方にとっては、非常に価値のある投資と言えるでしょう。
ご自身の「時給換算」で考えてみるのも一つの方法です。もし自分で申告書作成に30時間かかり、その時間を本業に充てれば税理士報酬以上の売上が見込めるなら、税理士に依頼する方が「お得」かもしれません。
また、事業の成長とともに取引が複雑になり、申告内容も煩雑になることが予想される場合は、初期段階から税理士との関係を築いておくことも有効な選択肢です。
ケース別!おすすめの選択肢
あなたの事業規模や状況によって、最適な選択肢は異なります。
- ケース1:開業初期で取引がシンプル、コストを抑えたい
- おすすめ: 会計ソフトを自分で利用
- 理由: freeeの「消費税申告ライト」や「スタータープラン」、マネーフォワードの「パーソナルプラン」など、比較的安価なプランで対応可能です。簡易課税や2割特例であれば、比較的簡単に申告できます。
- 料金目安: 年間1万円~2万円台
- ケース2:事業が拡大し、経理に時間をかけたくない、複雑な取引がある
- おすすめ: 税理士への依頼
- 理由: 複雑な課税仕入れや輸出入取引、多岐にわたる事業展開がある場合、専門家である税理士に任せるのが安心です。本業に集中でき、税務リスクも軽減されます。
- 料金目安: 年間2万円~数万円(顧問契約の有無や売上規模による)
- ケース3:経理が好き、自分で全て管理したい、スキルアップしたい
- おすすめ: 会計ソフトを自分で利用(上位プランも検討)
- 理由: 経理業務を学ぶ良い機会となり、ご自身の事業のお金の流れを詳細に把握できます。freeeやマネーフォワードの上位プランでは、より高度な分析機能やサポートも利用可能です。
- 料金目安: 年間2万円~4万円程度
まずは無料トライアルから始めてみよう
会計ソフトの多くは、数週間から数ヶ月間の無料トライアル期間を提供しています。
この期間を利用して、実際にデータを入力し、消費税申告機能の使い勝手を試してみることを強くおすすめします。
複数の会計ソフトを比較検討することで、ご自身の事業スタイルや好みに最も合ったソフトを見つけることができるでしょう。
最終的な選択は、あなたの事業にとって何が最も重要かを見極めることから始まります。コスト、時間、安心感のバランスを考慮し、最適な消費税申告方法を選びましょう。
まとめ
よくある質問
Q: 消費税申告の料金は、いつ頃支払うのが一般的ですか?
A: 申告書の提出期限までに支払うのが一般的です。税理士に依頼した場合は、契約内容によって前払い、月払い、成果報酬など様々な支払い方法があります。
Q: 令和6年(2024年)の消費税申告から料金は変わりますか?
A: 税制改正により、消費税の計算方法や申告要件が変更される可能性があります。これにより、申告にかかる手間や料金に影響が出ることも考えられます。最新の情報は国税庁や税理士にご確認ください。
Q: 税務署に消費税申告の相談をすると料金はかかりますか?
A: 税務署での消費税申告に関する一般的な相談は無料で行える場合が多いですが、個別の税務相談や複雑な案件については、税理士への相談が推奨されます。正確な情報は、最寄りの税務署にお問い合わせください。
Q: 会計ソフトを利用した場合、消費税申告で税務調査のリスクは減りますか?
A: 会計ソフトは計算ミスを防ぐのに役立ちますが、申告内容の正確性や税務調査のリスク低減は、入力内容や申告書の作成方法に依存します。専門家である税理士のチェックを受けることで、より安心して申告できるでしょう。
Q: 令和5年(2023年)の消費税申告と令和6年(2024年)の申告で、料金に違いはありますか?
A: 前述の通り、税制改正等により料金体系や申告にかかる労務費が変わる可能性はあります。具体的な料金については、利用する税理士や会計ソフトの提供元に直接確認することをおすすめします。
