1. 再雇用後の給与、なぜ減る?現役時代の給与との比較
    1. 多くの企業が導入する「再雇用制度」の背景
    2. 現役時代との給与体系の構造的変化
    3. 勤務時間や年金受給、企業年金が給与に与える影響
  2. 再雇用給与の平均額と減額率の相場:6割・7割減も?
    1. 定年前からの給与減額率の具体的な相場
    2. 政府統計データから見る高齢期の平均年収推移
    3. 「高年齢雇用継続給付金」の仕組みと活用メリット
  3. 給与減額の理由と、企業が考慮する要素とは
    1. 制度設計の背景と企業の人件費戦略
    2. 業務内容・責任範囲の変更と評価基準
    3. 給与減額が「違法」となる具体的なケースと注意点
  4. 再雇用給与の決め方:最低賃金との関係性
    1. 再雇用契約における給与決定プロセスと透明性の重要性
    2. 最低賃金法との関係と労働者の保護
    3. 自身のスキルと経験を適正に評価してもらうために
  5. 給与減額への賢い対応策と補助金制度の活用
    1. 再雇用条件の徹底的な事前確認と交渉準備
    2. 高年齢雇用継続給付金以外の公的支援制度も活用
    3. 不当な減額への対応:社内外の相談窓口の活用
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 再雇用されると給与はどれくらい下がりますか?
    2. Q: 再雇用で給与が減額されるのはなぜですか?
    3. Q: 再雇用給与の決め方で最低賃金は関係ありますか?
    4. Q: 給与減額の相場はどれくらいですか?
    5. Q: 給与減額が違法になるケースはありますか?

再雇用後の給与、なぜ減る?現役時代の給与との比較

多くの企業が導入する「再雇用制度」の背景

日本は世界でも有数の高齢社会を迎えており、定年後も働き続けたいと考える方が増えています。こうした社会背景を受け、2013年の改正高年齢者雇用安定法により、企業には希望する従業員を65歳まで雇用する義務が課せられました。多くの企業がこの義務を果たすために導入しているのが「再雇用制度」です。

企業にとっては、長年の経験を持つベテラン社員の知識やスキル、ノウハウを維持し、若手社員へのスムーズな継承を促すという大きなメリットがあります。また、即戦力として引き続き活躍してもらえるため、新たな人材採用・育成にかかるコストや時間を削減できる利点も少なくありません。

一方、労働者側にとっては、定年後も安定した収入を得られること、社会とのつながりを維持できること、自己実現の場があることなどが大きなモチベーションとなります。再雇用制度は、企業と労働者双方にとって、現代社会において不可欠な制度と言えるでしょう。

しかし、この再雇用制度の下で継続雇用される際、給与が大きく減額されるケースが一般的であり、多くの人が直面する現実でもあります。その背景には、制度特有の給与体系や、役割の変化などが深く関わっています。

現役時代との給与体系の構造的変化

再雇用後の給与が減額される最も大きな理由は、現役時代とは異なる給与体系が適用されることにあります。定年前は役職手当や成果給、家族手当など、様々な手当が含まれた「総合的な」給与が支給されていました。

しかし、再雇用後は「制度上の見直しや役割変更」に伴い、これらの手当が見直されたり、廃止されたりすることが一般的です。特に、管理職から専門職や一般職へと「役職手当などの見直し」が行われることで、給与は大幅に減少する傾向にあります。

また、「雇用形態の変更」も給与減額の大きな要因です。定年前は正社員として雇用されていた方も、再雇用後は契約社員やパートタイマーといった非正規雇用の形態になるケースが多く見られます。これにより、基本給の算出方法が変更されたり、賞与や退職金の支給対象外となったりすることがあります。

企業側は、再雇用後の役割や責任の範囲が定年前と比較して限定的になることを理由に、給与体系を再構築するのです。これは、企業の人件費戦略の一部であり、必ずしも不当な減額とは限りません。

そのため、再雇用制度を利用する際は、現役時代の給与体系と再雇用後の給与体系がどのように異なるのか、事前にしっかりと確認し、理解しておくことが不可欠です。

勤務時間や年金受給、企業年金が給与に与える影響

再雇用後の給与減額には、「勤務時間・労働時間の変化」も大きく影響します。定年前はフルタイムで勤務していた方が、再雇用後は短時間勤務や週〇日勤務など、労働時間が短縮されるケースが少なくありません。当然ながら、労働時間が短くなれば、それに比例して給与も減額されることになります。

また、「年金受給との兼ね合い」も、企業の給与体系に影響を与える重要な要素です。再雇用される労働者が一定の要件を満たすと、老齢厚生年金を受給できる年齢になります。企業は、この年金受給額を考慮して給与を設定することがあります。

特に、給与と年金の合計額が高額になると、年金の一部または全額が支給停止される「在職老齢年金制度」が存在するため、企業によっては年金が支給停止されないように給与額を調整する意図を持つこともあります。これは、再雇用者の総収入を考慮した上での配慮とも言えるでしょう。

さらに、企業年金(確定給付年金や確定拠出年金など)の受給開始時期も、再雇用後の収入設計に影響を与えます。これらの年金制度は、現役時代の給与設計に組み込まれていた場合が多く、再雇用後の給与は、これらの年金収入を補完する形での位置づけとなることもあります。

このように、勤務時間の変更や年金受給の有無は、再雇用後の給与水準を決定する上で企業が考慮する重要な要素であり、労働者側も自身の総合的な収入を考える上で理解しておく必要があります。

再雇用給与の平均額と減額率の相場:6割・7割減も?

定年前からの給与減額率の具体的な相場

再雇用後の給与は、多くのケースで定年前の給与から大幅に減額されることが現実です。その減額率は、企業や個人の状況によって異なりますが、一般的な相場としては「現職時給与の4割減〜6割減」となる場合があるという調査結果も出ています。つまり、定年前の給与が100%だとすると、再雇用後は40%~60%程度になるということです。

「6割・7割減も?」という問いに対しては、まさにその通りで、大幅な役割変更や役職手当の完全廃止、さらに賞与が支給されないケースなどでは、給与が定年前の半分以下になることも珍しくありません。特に、管理職として高額な役職手当を受けていた方は、その手当がなくなることで減額率がより顕著になる傾向があります。

この減額率は、企業の業種、規模、個人の専門性、これまでの経験、そして再雇用後の業務内容によって大きく変動します。例えば、特定の専門スキルを持つ技術者や、引継ぎが不可欠な重要業務を担う方であれば、比較的減額率が抑えられる可能性もあります。

しかし、あくまでこれは平均的な傾向であり、個別の事情によっては減額率がさらに大きくなることもありえます。そのため、再雇用を検討する際には、自身のケースにおける具体的な減額幅をしっかりと把握することが非常に重要です。

政府統計データから見る高齢期の平均年収推移

再雇用後の給与減額の傾向は、政府が公表する統計データからも明らかです。厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、年齢が上がるにつれて平均年収が減少していく傾向が見て取れます。

具体的には、55~59歳の平均年収を1.0とした場合、60~64歳では0.76、65~69歳では0.62と段階的に減少しています。これは、定年を境に給与水準が大きく変化していることを示唆しています。

また、国税庁の「令和4年民間給与実態統計調査」のデータも同様の傾向を示しています。

年齢階級 平均年収
55~59歳 529.0万円
60~64歳 423.0万円
65~69歳 338.0万円

この表からもわかる通り、55~59歳をピークとして、60~64歳では約20%減、65~69歳ではさらに約20%減と、年齢を重ねるごとに年収が減少していく実態が浮き彫りになります。これは、再雇用後の給与が、現役時代の水準とは大きく異なることを裏付ける客観的なデータと言えるでしょう。

これらのデータはあくまで平均値であり、個々のケースではさらに大きな減額となることもあれば、比較的減額が少ないケースもあります。しかし、高齢期の年収が減少傾向にあるという全体像を理解しておくことは、再雇用後のライフプランを考える上で非常に重要です。

「高年齢雇用継続給付金」の仕組みと活用メリット

再雇用後の給与減額は避けられない現実ですが、こうした収入減を補填するための公的制度として、「高年齢雇用継続給付金」があります。これは、高齢者が60歳以降も働き続けることを支援する目的で設けられた雇用保険の給付金制度です。

この給付金を受給するためには、いくつかの要件があります。主な要件は、①60歳以上65歳未満であること②雇用保険の被保険者期間が5年以上あること、そして最も重要なのが③60歳到達時と比較して、再雇用後の賃金が75%未満に低下していることです。

給付金の支給額は、再雇用後の賃金が60歳到達時の賃金の何%に低下したかによって異なります。例えば、賃金が60歳到達時の61%以下に低下した場合、減額後の賃金の15%が支給されます。61%を超え75%未満の場合には、その割合に応じて支給率が段階的に減少します。

この給付金を活用することで、再雇用後の手取り収入の減少をある程度カバーし、生活の安定を図ることができます。企業から提示された再雇用条件で給与が大幅に減額される場合でも、この制度を組み合わせることで、実質的な手取り収入が想像していたよりも増える可能性があります。

申請はハローワークを通じて行いますので、ご自身の状況が受給要件に該当するか、またどの程度の給付が期待できるか、事前に確認し、積極的に活用を検討することが賢明な選択と言えるでしょう。

給与減額の理由と、企業が考慮する要素とは

制度設計の背景と企業の人件費戦略

企業が再雇用制度を設計する上で、給与減額は避けて通れない要素の一つです。その背景には、企業の人件費戦略が深く関わっています。定年前の従業員、特に管理職やベテラン社員は、経験や役職に応じて高額な給与を受け取っていることが一般的です。

しかし、定年を迎え、役割や責任範囲が変化する中で、これまでと同じ給与水準を維持することは、企業にとって大きな人件費負担となります。特に、日本の企業が抱える課題として、終身雇用制度のもとで年齢とともに給与が上昇する「年功序列」型賃金体系が定着しており、これが高年齢者の人件費を押し上げる要因となっています。

再雇用制度は、こうした高年齢者雇用に関する法的義務を果たすとともに、企業の生産性と人件費のバランスを最適化するための手段でもあります。人件費の総額を抑制しつつ、ベテラン社員の知識や経験を有効活用することは、企業経営にとって重要な課題です。

また、若手社員との給与バランスや、組織全体の活性化も考慮されます。高年齢者の給与水準が高いままだと、若手のモチベーション低下につながる可能性もあるため、組織全体の公平性とバランスを保つことも、企業が給与体系を再構築する際の重要な要素となるのです。

このように、再雇用後の給与減額は、単なるコストカットではなく、企業の持続的な成長と組織全体の健全性を保つための戦略的な判断として位置づけられることが多いのです。

業務内容・責任範囲の変更と評価基準

再雇用後の給与減額の主要な理由の一つに、定年前と比べて「業務内容や責任範囲が変更される」ことが挙げられます。多くの場合、再雇用された社員は、定年前の管理職としての役割から外れ、専門職や一般職へと移行します。

管理職としての責任(部下の育成、部門目標の達成、経営判断への参画など)は非常に大きく、それに見合った役職手当や高い基本給が支払われていました。しかし、再雇用後は、これらの管理業務から離れ、特定の業務に集中したり、後進の指導に当たったりするケースが一般的です。

役割が変化すれば、当然ながら企業が期待する貢献度や責任の重さも変わります。それに伴い、給与の評価基準も、従来の年功序列型から、職務給や役割給といった、実際の仕事内容や期待されるパフォーマンスに基づいたものへと移行する傾向があります。

この変化は、賃金決定における「同一労働同一賃金」の原則とも関連します。仕事内容や責任が変わらないにもかかわらず賃金に差をつけることは不当とされる可能性がありますが、仕事内容や責任が変わるならば、賃金が変わることは合理的とみなされる場合が多いのです。

企業は、再雇用後の社員に対して、どのような業務をどの程度の責任範囲で任せるのかを明確にし、それに合わせた給与水準を設定します。このため、再雇用を検討する際には、自身の役割がどのように変化するのか、そしてそれが給与にどう反映されるのかを具体的に把握することが重要です。

給与減額が「違法」となる具体的なケースと注意点

再雇用後の給与減額は多くのケースで合理的とされますが、常に適法であるとは限りません。一部の状況下では、減額が「違法」と判断される可能性があります。労働者としては、自身の権利を守るために、どのような場合に違法となりうるのかを理解しておく必要があります。

一つ目のケースは、「同一労働同一賃金の原則違反」です。これは、再雇用後の仕事内容や責任が、定年前と実質的に変わらないにもかかわらず、年齢や雇用形態だけを理由に不当に低い給与を設定することに該当します。最高裁判所の判例でも、こうしたケースで不合理な賃金格差が違法と判断された事例があります。

二つ目は、「不合理な減額」です。業務内容の変更や本人の事情と結びつかない、あまりにも度を越した減額は、不当とみなされることがあります。例えば、会社側からの十分な説明もなく、一方的に給与を大幅に削減するようなケースがこれに当たります。

三つ目は、「説明責任の欠如」です。企業には、給与減額の根拠について、本人に明確かつ具体的に説明する責任があります。もし企業が十分な説明をせず、労働者が減額の理由を理解・納得できないまま減額が行われた場合、これも不当な減額とみなされる可能性があります。

これらの違法となるケースに該当する可能性があると感じた場合は、諦めずに社内外の専門機関に相談することが重要です。自身が受けている減額が本当に合理的であるのか、客観的な視点で判断してもらうことで、適切な対応策を見つけることができます。

再雇用給与の決め方:最低賃金との関係性

再雇用契約における給与決定プロセスと透明性の重要性

再雇用後の給与は、企業が一方的に決定するものではなく、労働者との合意形成に基づいて決定されるべきものです。一般的な給与決定プロセスでは、まず企業が再雇用後の職務内容、責任、勤務形態などを考慮し、それに基づいた給与水準を提示します。

この際、企業は労働者のこれまでの経験、スキル、貢献度を評価し、適切な賃金を設定する努力が求められます。しかし、実情としては、企業側の制度や方針が強く反映されることが多く、労働者側からの交渉が難しいと感じる場合も少なくありません。

ここで最も重要になるのが、「透明性」です。企業は、提示する給与水準の根拠や、定年前との減額理由について、明確かつ具体的に説明する責任があります。労働者側も、提示された条件を鵜呑みにせず、疑問点があれば積極的に質問し、納得いくまで説明を求めることが大切ですす。

再雇用契約は、労働者にとっても新たなキャリアのスタートです。給与だけでなく、福利厚生、退職金との関連、将来的なキャリアパスなど、多岐にわたる労働条件を総合的に確認し、書面で合意することが、後々のトラブルを避ける上で不可欠となります。

双方にとって公平で納得のいく給与決定プロセスであるために、企業は透明性を、労働者は主体的な確認と合意形成の姿勢を持つことが求められます。

最低賃金法との関係と労働者の保護

再雇用後の給与であっても、日本の「最低賃金法」の適用対象となります。これは、労働者が受け取る賃金が、地域ごとに定められた最低賃金を下回ってはならないということを意味します。この法律は、すべての労働者を保護するための重要な制度です。

最低賃金は、毎年見直されており、地域別最低賃金と特定の産業に適用される特定(産業別)最低賃金があります。企業は、再雇用後の給与を決定する際に、この最低賃金基準を遵守する義務があります。

万が一、提示された再雇用後の給与が、適用される最低賃金を下回っていた場合、それは「違法」であり、労働者は企業に対して差額の支払いを請求することができます。また、労働基準監督署などの公的機関に相談することも可能です。

再雇用後の給与水準が大幅に低下する中で、最低賃金を下回るような条件を提示されるケースは稀かもしれませんが、自身の労働条件を確認する上で基本的な権利として知っておくべき事項です。特に、短時間勤務やパートタイマーとして再雇用される場合など、時給換算で最低賃金との比較が必要になることがあります。

労働者としては、自身の働く地域の最低賃金を事前に確認し、提示された給与がそれを下回っていないか必ずチェックする責任があります。これにより、不当な労働条件から自身を守ることができます。

自身のスキルと経験を適正に評価してもらうために

再雇用後の給与交渉において、自身のスキルや経験を企業に正しく評価してもらうことは非常に重要です。長年にわたるキャリアで培ってきた専門知識、業務経験、人脈、課題解決能力などは、企業の貴重な財産となり得ます。

まずは、自身のキャリアを棚卸し、これまでの業務でどのような成果を出し、どのようなスキルを身につけてきたのかを明確に整理しましょう。具体的なプロジェクトでの成功体験や、後進指導で培ったリーダーシップ、特定の分野での深い専門性など、自身の強みを客観的に言語化することが大切です。

その上で、再雇用後の業務で、これらのスキルや経験をどのように活かせるのか、企業にどのような貢献ができるのかを具体的にアピールする準備をします。単に「経験がある」だけでなく、「私の〇〇の経験は、この業務の〇〇という課題解決に貢献できます」といったように、企業のニーズと自身の強みを結びつけて提示することが効果的です。

交渉の場では、感情的にならず、データや実績に基づいた論理的な主張を心がけましょう。また、必要であれば、関連資格の取得や新たなスキルの習得など、自己研鑽への意欲を示すことも、自身の市場価値を高める上で有効な手段となります。

企業は、単にコストだけで再雇用者を評価するのではなく、その人が持つ価値を適切に評価することが求められます。労働者も、自身の価値を最大限にアピールすることで、より納得のいく給与条件を引き出す可能性を高めることができるでしょう。

給与減額への賢い対応策と補助金制度の活用

再雇用条件の徹底的な事前確認と交渉準備

再雇用後の給与減額に賢く対応するためには、何よりも「事前の確認と準備」が不可欠です。企業から再雇用の打診があったら、まず雇用形態、具体的な業務内容、勤務時間、残業の有無、休日、有給休暇、福利厚生、異動の可能性など、給与以外の労働条件も詳細に確認しましょう。

特に給与に関しては、基本給、各種手当(通勤手当、住宅手当など)、賞与の有無とその算出方法、退職金制度との関連性を細かく確認することが重要です。疑問点や不明な点は、その場で遠慮なく質問し、曖昧な点を残さないようにしましょう。

企業との面談や交渉の際には、自身のこれまでの経験やスキル、会社への貢献度を改めて整理し、どのような業務で今後も貢献できるかを具体的に提示できるように準備しておきましょう。もし提示された給与条件が不当だと感じる場合は、感情的にならず、客観的な根拠に基づいて交渉に臨む姿勢が大切です。

最終的な合意に至る前には、必ず「書面」で労働条件通知書や雇用契約書を受け取り、その内容を隅々まで確認することがトラブル防止の鍵となります。口頭での約束は、後々「言った言わない」の争いになりかねませんので注意が必要です。

十分な情報収集と準備を行うことで、再雇用後の生活設計をより確かなものにし、納得のいく条件で働くことができる可能性が高まります。

高年齢雇用継続給付金以外の公的支援制度も活用

再雇用後の給与減額への対応策として、「高年齢雇用継続給付金」は非常に有効ですが、それ以外にも活用できる公的支援制度がないか情報収集することも賢明です。国や地方自治体は、高齢者の就労支援や生活支援のために様々な制度を設けています。

例えば、ハローワークでは高齢者向けの職業訓練給付金や、再就職支援プログラムが提供されています。これらを活用して新たなスキルを身につけたり、別の企業への再就職を目指したりすることも可能です。また、企業が特定の対象者(高年齢者など)を雇用した場合に助成される「特定求職者雇用開発助成金」のような制度もあり、企業側の採用インセンティブにも繋がり得ます。

自治体によっては、地域の実情に応じた独自の高齢者就労支援事業や、生涯現役支援制度などを実施している場合もあります。これらの情報は、各自治体のウェブサイトや広報誌、窓口で確認することができます。

これらの制度は、直接的な収入減の補填だけでなく、キャリアチェンジの機会を提供したり、再就職を促進したりする側面も持ち合わせています。自身の状況に合わせて、複数の制度を組み合わせることで、再雇用後の生活における経済的な不安を軽減し、より安定したセカンドキャリアを築くことができるでしょう。

積極的に情報収集を行い、活用できる制度を最大限に利用することが、給与減額への賢い付き合い方と言えます。

不当な減額への対応:社内外の相談窓口の活用

もし、再雇用後の給与減額が「不当である」と感じたり、企業との交渉がうまくいかない場合は、一人で抱え込まずに、速やかに社内外の専門家や相談窓口に相談することが重要です。

まず、社内には人事部やコンプライアンス窓口、労働組合など、相談できる部署があるかもしれません。これらの部署に相談することで、社内での解決を図れる可能性があります。特に労働組合は、労働者の代表として企業と交渉する権限を持っていますので、有効な選択肢となり得ます。

社内での解決が難しい場合や、より客観的な意見を求める場合は、社外の専門機関を利用しましょう。例えば、各都道府県に設置されている「労働基準監督署」は、労働基準法違反に関する相談を受け付けています。また、労働問題に詳しい弁護士特定社会保険労務士に相談することで、法的な観点からアドバイスやサポートを受けることができます。

相談する際には、再雇用契約書、労働条件通知書、給与明細、定年前の雇用契約書、業務内容に関する資料など、具体的な状況を説明できる証拠や資料を準備しておくことが大切です。これにより、より的確なアドバイスを受けることが可能になります。

泣き寝入りすることなく、適切な窓口を活用し、自身の権利を守るための行動を起こしましょう。専門家のサポートを得ることで、より有利な形で問題解決へと導かれる可能性があります。