概要: 65歳からの再雇用制度について、企業に義務があるのか、義務化の時期や対象、そして70歳までの雇用延長の可能性について解説します。また、ハローワークで再雇用に関する相談ができることもご紹介します。
65歳からの再雇用制度:義務化や条件、ハローワーク活用法を解説
「再雇用制度」とは?企業に義務はある?
再雇用制度の基本と種類
再雇用制度とは、企業が定年を迎えた従業員を、一度退職させた後に再び雇用する制度です。
これは、定年を延長する「勤務延長制度」とは異なり、新たな雇用契約を結び直す形が一般的です。
高年齢者が希望すれば働き続けられる機会を確保することを目的としており、多様な働き方の一つとして注目されています。
企業に課せられた「高年齢者雇用確保措置」
2025年4月1日より、定年が65歳未満の企業には「高年齢者雇用確保措置」が義務付けられます。
これは、希望する従業員全員に65歳までの雇用機会を確保するためのものです。
具体的には、以下のいずれかの措置を講じる必要があります。
- 定年を65歳まで引き上げる
- 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)を導入する
- 定年制を廃止する
経過措置の終了と全希望者対象化
これまで、企業は継続雇用制度の対象者を限定できる経過措置が設けられていました。
しかし、この経過措置は2025年3月31日をもって終了します。
これにより、2025年4月1日以降は、65歳までの継続雇用を希望する従業員全員が制度の対象となります。
ただし、定年が全国一律で65歳に義務化されるわけではない点に注意が必要です。
65歳からの再雇用義務化について
法改正の背景と目的
高年齢者雇用安定法の改正の背景には、急速な少子高齢化とそれに伴う労働力人口の減少があります。
また、年金支給開始年齢の引き上げにより、高齢者が長く働く必要性が高まっています。
多くの高齢者が「働けるうちはいつまでも働きたい」と考えており、働く意欲のある人々に活躍の場を提供し、社会全体の活力を維持することが目的とされています。
義務化がもたらす変化と影響
この義務化は、企業と労働者の双方に大きな変化をもたらします。
企業は人事制度や賃金体系の見直し、高年齢者に合った職務設計や教育訓練の実施が求められるでしょう。
労働者にとっては、定年後も安定した収入を得られる機会が増え、セカンドキャリアの選択肢が広がります。
自身の経験やスキルを活かし、長く社会に貢献できる道が開かれるでしょう。
高齢者の雇用状況と今後の展望
日本の高齢者の就業率は年々上昇しており、2022年には65歳以上の就業率は25.2%と過去最高を記録しました。
特に65~69歳では50.8%、70~74歳では33.5%が就業しています。
しかし、一方で高齢者の約3人に1人が「働きたくても働く場がない」という課題も指摘されています。
今後は、企業が高齢者の知識や経験を最大限に活かせる多様な働き方を一層推進していくことが重要となります。
再雇用義務化の対象となる企業と条件
義務化の対象となる企業とは
今回の高年齢者雇用確保措置の義務化は、定年が65歳未満の全ての企業が対象となります。
企業の規模に関わらず、大企業から中小企業まで例外なく対応が求められます。
現時点では、義務違反に対する直接的な罰則規定はありませんが、国からの指導の対象となる可能性があります。
企業は早急な対応計画の策定が求められます。
継続雇用制度を導入する際の主な条件
継続雇用制度を導入する際には、最も重要な条件として「希望する従業員全員」を対象とすることが挙げられます。
以前のような対象者限定の基準を設けることは、2025年4月1日以降は認められません。
再雇用時の労働条件については、事前に労働者へ十分に説明し、合意を得ることが必要です。
賃金、労働時間、職務内容などが変更される可能性もあるため、個別面談を通じて丁寧に意思確認を行うことが大切です。
定年引き上げ・定年制廃止を選択する場合
企業が定年を65歳に引き上げる、あるいは定年制を廃止する選択肢を取ることも可能です。
定年引き上げは、現在の雇用関係を継続する形になるため、手続きが比較的シンプルです。
定年制の廃止は、従業員が自身の希望する年齢まで働けるという柔軟性を提供しますが、人事制度や賃金制度の抜本的な見直しが必要となる場合があります。
企業は自社の状況に最も適した措置を選択することが重要です。
70歳までの雇用延長の可能性と留意点
70歳までの就業機会確保努力義務
2021年4月からは、企業に対し「70歳までの就業機会確保努力義務」が課せられています。
これは、65歳までの雇用確保とは異なり、あくまで「努力義務」ではありますが、企業の取り組みが推奨されています。
具体的には、70歳までの定年引き上げや継続雇用制度の導入、さらには業務委託契約や社会貢献事業への参加支援など、多様な選択肢が提示されています。
企業が導入する際の留意点
70歳までの雇用延長を検討する企業は、賃金制度や評価制度をより柔軟に見直す必要があります。
また、高年齢従業員の健康管理や安全衛生への配慮は、これまで以上に重要となるでしょう。
世代間の経験や知識の伝承を促し、多様な人材が協力し合える職場環境を整備することも、企業の持続的な成長には不可欠です。
厚生労働省の助成金なども活用し、制度導入を円滑に進めることが期待されます。
労働者が考慮すべきポイント
70歳まで働き続けることを考える労働者は、自身の健康状態や体力、キャリアプランを総合的に考慮することが重要です。
賃金水準が変更される可能性も考慮し、老後の生活設計をしっかり立てる必要があります。
新しい職務や役割に対応するため、継続的なスキルアップや学習意欲も求められるでしょう。
「働けるうちはいつまでも働きたい」という高い就業意欲に応えるためにも、自身の準備が大切です。
ハローワークで再雇用制度の相談をしよう
ハローワークが提供する高齢者支援サービス
ハローワーク(公共職業安定所)は、高齢者の再雇用や就職活動を強力にサポートする多様なサービスを提供しています。
年齢や経験を問わない求人、シニア層に特化した求人など、幅広い求人情報が入手可能です。
専門の相談員が、個々のスキルや経験、希望に合わせた職業相談や求人紹介をきめ細やかに行ってくれます。
再就職に役立つセミナーやスキルアップのための講習も随時開催されており、活用することで自身の市場価値を高めることができます。
再就職・継続雇用を支える給付金制度
ハローワークでは、高年齢者の雇用を支える給付金制度の申請手続きも受け付けています。
例えば、高年齢雇用継続給付金は、60歳以降も働き続け、賃金が60歳時点より75%未満に低下した場合に、その一部を補填する制度です。
また、60歳以上で離職後、再就職した場合に賃金の低下に応じて支給される高年齢再就職給付金もあります。
これらの給付金を活用することで、経済的な不安を軽減し、安心して働き続けることができます。
相談時の準備と活用メリット
ハローワークで相談する際は、自身の職務経歴やスキル、今後働きたい条件や希望を明確にしておくことが重要です。
履歴書や職務経歴書を準備しておくと、より具体的な相談が可能になります。
専門の相談員は、最新の雇用情勢や企業ニーズに精通しており、非公開求人の紹介や、面接対策のアドバイスなども期待できます。
積極的に複数回相談し、有益な情報を得ることで、再雇用や再就職への道を切り開くことができるでしょう。
まとめ
よくある質問
Q: 再雇用制度とは何ですか?
A: 再雇用制度とは、定年を迎えた従業員が、引き続き同じ会社で働くことができる制度のことです。原則として、希望する意欲と能力のある高齢者について、定年後も継続雇用する機会を確保することが求められます。
Q: 企業には再雇用の義務がありますか?
A: はい、一定の条件を満たす企業には、65歳までの雇用確保措置(定年延長、継続雇用制度の導入、定年制廃止のいずれか)が義務付けられています。また、2021年4月からは、希望者全員を70歳まで雇用する努力義務が課されています。
Q: 65歳からの再雇用義務化はいつからですか?
A: 65歳までの雇用確保措置はすでに義務化されています。2021年4月からは、65歳から70歳までの雇用確保について、事業主には努力義務が課されるようになりました。
Q: 再雇用義務化の対象となる企業や条件は?
A: 原則として、すべての企業が対象となります。ただし、労働条件や業務内容については、企業と個人の合意に基づき、再雇用契約で定められることが一般的です。1年更新の契約となるケースも多いです。
Q: ハローワークでは再雇用についてどのような相談ができますか?
A: ハローワークでは、高齢者の雇用に関する相談窓口を設けており、再雇用制度の利用方法、求職活動の支援、再就職先の紹介など、幅広いサポートを受けることができます。
