概要: 試用期間中の給料や社会保険の加入について、多くの疑問や不安を抱えている方がいるでしょう。本記事では、試用期間中の給与の平均や、社会保険に加入できない場合の理由、そしてその対処法について詳しく解説します。
試用期間中の給料と社会保険、気になる疑問を徹底解説
新しい会社での第一歩となる試用期間。期待とともに、「給料はちゃんと出るの?」「社会保険はいつから加入するの?」といった、様々な疑問や不安を抱く方も多いのではないでしょうか。
ここでは、試用期間中の給与や社会保険について、労働者と企業双方にとって気になる疑問点を、最新の情報と法的な視点から徹底的に解説します。安心して働くためにも、ぜひ最後までお読みください。
試用期間中の給料、いくらが普通?
試用期間の給与は減額されるのが一般的?
「お試し期間」とも呼ばれる試用期間は、企業が労働者の能力や適性を見極めるための大切な期間です。この期間中、企業の多くは給与条件を本採用時と変えることがあります。
法的に見ると、試用期間中の給与が本採用時より減額されることは問題ありません。ただし、その旨は求人票や雇用契約書などで事前に明確に示され、労働者の同意を得ている必要があります。
もし事前に説明がないまま給与が減額された場合は、問題となる可能性がありますので注意が必要です。参考情報によると、およそ4割程度の企業で、試用期間と本採用で給与に差をつけているというデータがあります。
これは、企業がリスクを抑えつつ、候補者の能力や適性を慎重に見極めたいという意図の表れと言えるでしょう。減額幅については一律のルールはありませんが、生活に支障が出ない範囲であるか、自身の経験やスキルに見合っているかを事前に確認することが重要です。
試用期間の給与が減額されることは珍しいことではないため、事前にきちんと条件を把握しておくことが賢明です。
知っておきたい!最低賃金の特例と手当の扱い
試用期間中の給与減額には、「最低賃金の減額の特例」という制度が存在します。これは、都道府県労働局長の許可があれば、最低賃金から最大20%まで減額できるというものです。
しかし、この特例が適用されるケースは非常に少なく、一般的にはほとんど見られないのが実情です。もし試用期間中の給与が最低賃金を下回る場合は、この特例が適用されているか、または違法な減額ではないかを確認する必要があります。
また、ボーナスや家族手当、住宅手当といった会社独自の手当についても、試用期間中は支給されない、あるいは減額されることがあります。これらの手当は、企業の裁量によって支給条件が定められるため、試用期間中は対象外となるケースも少なくありません。
手当の有無や支給条件についても、雇用契約を結ぶ前にしっかりと確認しておくことが大切です。特に、求人票に記載されている給与額が「月給+手当」で構成されている場合、試用期間中に手当が支給されないと、想定していたよりも手取りが大幅に減る可能性があるため注意が必要です。
試用期間中の給与未払い・遅延はNG!
試用期間中であっても、労働者として働いている以上、給与の支払い義務は企業側に発生します。給与が支払われない、あるいは大幅に遅延することは、労働基準法に違反する行為です。
これは、試用期間が「お試し期間」であるとはいえ、れっきとした「解約権留保付きの雇用契約」が成立しているためです。もし給与の未払いや遅延が発生した場合は、すぐに会社に問い合わせ、改善を求める必要があります。
状況が改善されない場合は、労働基準監督署などの公的機関に相談することも検討しましょう。給与の支払い日や計算方法など、具体的な条件は雇用契約書に明記されているはずですので、必ず確認しておきましょう。
特に、試用期間中に退職した場合でも、それまでに働いた分の給与は必ず受け取る権利があります。「試用期間だから給料が出ない」ということは決してありませんので、安心して働くためにも基本的な権利は知っておきましょう。
給料が下がる・出ない?試用期間の給与事情
本採用後の給与、下がることはある?
試用期間を満了し、無事に本採用となった後で給与が下がるケースは、原則として本人の同意なしには認められません。これは、雇用契約で合意した労働条件を、一方的に企業側が変更することはできないためです。
もし本採用後に給与を下げたい場合、企業は労働者に対し、その理由を説明し、同意を得る必要があります。例えば、雇用形態の変更(正社員から契約社員へ、など)を提案し、それに伴う給与条件の変更に労働者が同意すれば可能です。
しかし、単に「試用期間中の評価が悪かったから」といった理由で一方的に給与を減額することは違法となります。本採用時の給与条件については、試用期間が始まる前に、あるいは本採用の意思確認の際に、改めて書面で確認しておくことが大切です。
万が一、同意なく給与が減額された場合は、労働組合や労働基準監督署に相談するなどの対応を検討しましょう。
試用期間延長と給与への影響
企業は、合理的な理由(例えば、能力不足が改善されない、病気で長期欠勤したなど)があれば、試用期間を延長する場合があります。この場合も、延長の理由と期間を明確にし、労働者の同意を得ることが必要です。
試用期間中の給与が本採用時よりも減額されている場合、試用期間が延長されると、その分、減額された給与を受け取る期間が長くなります。これにより、受け取れる給与総額が少なくなるため、経済的な影響を考慮する必要があります。
延長の可能性やその際の給与条件についても、入社前に確認しておくのが理想的です。また、試用期間の延長は、企業が本採用に慎重になっているサインでもあります。
延長を打診された際は、具体的な評価基準や改善点を確認し、本採用に向けて努力を続ける姿勢を示すことが重要です。試用期間は長くても1年以内が基本とされており、無制限に延長できるわけではないことも覚えておきましょう。
退職時の給与と失業手当の注意点
試用期間中であっても、通常の労働者と同様に、労働者には退職する自由があります。民法の規定に基づき、退職の意思表示をしてから2週間が経過すれば雇用契約は終了します。
ただし、就業規則に退職に関する規定がある場合は、それに従う必要があります。退職時には、それまで働いた分の給与は必ず支払われますので、未払いのまま退職を強要されることはありません。
また、試用期間中に退職した場合、失業手当(基本手当)の受給要件に影響が出る可能性があります。失業手当は、原則として離職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヶ月以上あることが条件となります。
試用期間のみで退職した場合、被保険者期間が足りず、受給できないケースも考えられます。しかし、会社都合での退職(試用期間中の解雇など)であれば、特定受給資格者となり、被保険者期間が6ヶ月以上あれば受給できる場合もあります。
退職を検討する際は、ハローワークで失業手当の受給条件を事前に確認しておくことをお勧めします。
試用期間と社会保険:加入は義務?
試用期間でも社会保険加入は必須!
「試用期間だから社会保険はまだ」と考えている人もいるかもしれませんが、これは大きな誤解です。試用期間中であっても、雇用契約が成立し、給与が発生する雇用形態であれば、原則として社会保険(健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険)に加入する義務が生じます。
これは法律で定められた企業の義務であり、労働者が特定の加入要件を満たす場合、入社初日から加入手続きを行う必要があります。社会保険は、病気や怪我、失業、老齢など、人生における様々なリスクに備えるための重要な制度です。
未加入のまま働くことは、将来の年金受給額の減少や、万が一の際の保障が受けられないといった不利益に直結します。企業側も、加入義務を怠ると罰則や追徴金といったリスクを負うことになります。
そのため、試用期間という理由で社会保険への加入を渋る企業があれば、注意が必要です。自身の権利を守るためにも、この原則はしっかり覚えておきましょう。
どんな人が加入対象?具体的な要件を確認
社会保険の加入要件は、雇用形態や勤務時間によって異なります。一般的に、以下の要件を満たす場合に加入が義務付けられます。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 賃金の月額が8.8万円以上
- 2ヶ月を超える雇用の見込みがある(雇用保険)
- 学生ではない
- 従業員101人以上の企業に勤務(2024年10月からは51人以上)
正社員であれば、これらの要件をほぼ満たすため、試用期間中であっても入社初日から加入が義務付けられます。
パートやアルバイトの場合でも、「週の所定労働時間および月の所定労働日数が正社員の4分の3以上」であれば、正社員と同様に加入義務が生じます。また、上記の「5つの要件」を満たす場合は、正社員の4分の3未満の勤務時間であっても加入対象となります。
自身の勤務条件が社会保険の加入要件を満たしているかどうか、事前に確認しておくことが重要です。特に、試用期間が2ヶ月以内と短い場合でも、その後の本採用で継続勤務が見込まれる場合は、最初の雇用契約期間から加入義務が生じるケースもあります。
社会保険未加入のリスクと会社への影響
企業が社会保険の加入義務を怠り、従業員を未加入のまま働かせている場合、様々なリスクが発生します。
従業員個人にとってのリスク:
- 将来受け取れる年金額が減少し、老後の生活設計に影響が出る。
- 病気や怪我で働けなくなった際の傷病手当金や出産手当金が受給できない。
- 失業した際に雇用保険の給付が受けられない。
- 労災事故に遭った際の補償が受けにくい、または企業との交渉が複雑になる。
会社にとってのリスク:
- 年金事務所やハローワークから指導や立ち入り検査を受ける可能性がある。
- 過去に遡って保険料を追徴される(最大2年間)ことになり、多額の費用が発生する。
- 悪質な場合は、罰金や企業イメージの失墜につながる。
- 従業員との間にトラブルが発生し、訴訟に発展するリスクも。
社会保険への加入は、労働者の権利であり、企業の義務です。試用期間中であっても、加入要件を満たしているにもかかわらず企業が加入手続きを行わない場合は、重大な法令違反となります。このような状況に遭遇した場合は、速やかに労働基準監督署や年金事務所、または社会保険労務士などの専門家に相談することが重要です。
「社会保険に入れてもらえない」のはなぜ?弁護士・社会保険労務士の視点
加入要件を満たしているのに未加入の場合
もしあなたが社会保険の加入要件を明らかに満たしているにもかかわらず、「試用期間だから」「まだ本採用じゃないから」といった理由で会社が加入手続きをしてくれない場合、それは不適切な対応である可能性が高いです。
企業が社会保険への加入を渋る背景には、以下のような理由が考えられます。
- 保険料の会社負担分を節約したい。
- 手続きの手間を避けたい。
- 社会保険に関する知識不足。
- 意図的に加入逃れをしようとしている。
しかし、いずれの理由であっても、法律で定められた加入義務を怠ることはできません。特に注意が必要なのは、試用期間中であることを理由に「まだ雇用契約が不安定だから」と説明されるケースですが、これも法律的には誤りです。
試用期間も「解約権留保付きの雇用契約」として、一般的な労働契約と同様に扱われます。もしこのような状況に直面したら、まずは自身の雇用契約書や労働条件通知書を確認し、自身の労働条件(労働時間、賃金など)が加入要件を満たしているかを改めて確認しましょう。
未加入による従業員・企業双方のリスク
社会保険の未加入は、従業員と企業双方に深刻なリスクをもたらします。これを認識しておくことは、自身の権利を守り、また企業が抱える問題点を理解する上で重要です。
従業員側のリスク:
- 病気や怪我で医療費が高額になった際に、健康保険の適用が受けられない。
- 万が一の病気や出産で働けない期間が発生しても、傷病手当金や出産手当金を受け取ることができない。
- 将来の年金受給額が大幅に減少し、老後の生活が不安定になる。
- 雇用保険に入っていないと、退職後に失業手当を受け取ることができない。
- 労災事故に遭っても、労災保険からの補償がスムーズに受けられない可能性がある。
企業側のリスク:
- 法律違反として行政指導や罰則の対象となる。
- 最大2年間に遡って社会保険料を追徴され、その際には延滞金も課される。
- 企業の信用が失墜し、優秀な人材の確保が困難になる。
- 従業員とのトラブルや訴訟に発展し、企業の評判を損ねる。
社会保険への適切な加入は、単なる義務だけでなく、企業が従業員を大切にする姿勢を示すものでもあります。リスクを回避し、安心して働ける環境を整えるためにも、適正な加入は不可欠です。
困った時の相談先と対処法
もし「社会保険に入れてもらえない」という状況に遭遇し、自身で解決が難しいと感じたら、以下の専門機関や専門家への相談を検討しましょう。自身の権利を守るための重要な一歩となります。
- 労働基準監督署: 労働基準法違反に関する相談や指導を行っています。社会保険に関する相談も可能です。企業に対して立ち入り調査を行い、是正勧告を出す権限を持っています。
- 年金事務所: 厚生年金保険や健康保険に関する専門機関です。加入状況の確認や、企業への指導を依頼できます。
- ハローワーク: 雇用保険に関する相談ができます。失業手当の受給資格や未加入に関する相談も受け付けています。
- 弁護士: 法律問題全般にわたり、具体的な法的アドバイスや会社との交渉、訴訟代理などを依頼できます。特に、企業が意図的に加入逃れをしている場合や、損害賠償を求める場合に有効です。
- 社会保険労務士: 社会保険制度の専門家です。加入手続きや制度に関する詳細なアドバイス、企業との間に入って交渉のサポートをしてくれることもあります。
相談する際は、雇用契約書、労働条件通知書、給与明細など、自身の労働条件や状況がわかる資料を準備しておくとスムーズです。泣き寝入りせず、適切な機関に相談することで、自身の権利を守りましょう。
試用期間の不安を解消!知っておくべきこと
入社前の確認がトラブル防止の鍵
試用期間中の不安やトラブルを未然に防ぐためには、入社前の段階でできる限り情報を収集し、疑問点を解消しておくことが最も重要です。特に、以下の項目については、求人票や雇用契約書、労働条件通知書をしっかりと確認し、不明な点は遠慮なく企業に質問しましょう。
- 試用期間の期間: 何ヶ月間なのか、延長の可能性はあるのか。
- 試用期間中の給与: 本採用時と差があるのか、ある場合は具体的にいくらなのか。手当の支給はどうなるのか。
- 社会保険の加入: 入社初日から加入するのか、その手続きはいつ頃になるのか。
- 本採用の基準: どのような評価基準で本採用が決まるのか、具体的な目標はあるのか。
これらの情報は、口頭だけでなく書面で確認することが大切です。万が一、入社後に話が違うと感じた場合でも、書面があれば自身の権利を主張しやすくなります。
求職活動中に複数の企業を比較検討する際も、こうした条件を比較軸にすることで、より自分に合った企業選びができるでしょう。
試用期間中の疑問、遠慮なく質問しよう
試用期間中は、新しい環境に慣れることに加えて、自分の働きが評価されているというプレッシャーも感じやすい時期です。しかし、疑問や不安を抱えたまま働くことは、パフォーマンスにも影響を与えかねません。
「こんなことを聞いたら印象が悪くなるのでは?」と遠慮せず、積極的に質問する姿勢が大切です。特に、自分の業務内容、評価基準、会社独自のルールなど、不明な点は早めに上司や人事担当者に確認しましょう。
例えば、「本採用に向けて、どのような点に注力すれば良いでしょうか?」「この業務の進め方で合っていますか?」といった具体的な質問は、あなたの意欲を示すことにもつながります。質問を通じて、企業側もあなたの理解度や考え方を把握し、適切なフィードバックを与えやすくなります。
コミュニケーションを密にとることで、誤解やすれ違いを防ぎ、スムーズな本採用へとつなげることができます。積極的に関わることで、不安を解消し、自分の存在価値を高めるチャンスに変えましょう。
本採用を見据えた働き方と心構え
試用期間は、企業があなたを見極める期間であると同時に、あなた自身がその企業や仕事が自分に合っているかを見極める期間でもあります。この期間を有効に活用し、本採用を勝ち取るため、そして長期的に活躍するために、以下の点を意識して働きましょう。
- 積極的な姿勢: 新しい仕事や環境に対して前向きに取り組み、自ら学ぶ姿勢を見せる。
- コミュニケーション: 周囲の同僚や上司と良好な関係を築き、報連相を徹底する。
- 結果へのコミットメント: 任された仕事は責任を持って遂行し、期待に応える努力をする。
- 会社の文化への適応: 企業のビジョンや社風を理解し、それに合わせた行動を心がける。
一方で、「もし本採用にならなかったらどうしよう」という過度な心配は不要です。試用期間中に「この会社は自分には合わない」と感じた場合、退職を選択することも可能です。
あくまで「お試し期間」であると捉え、肩の力を抜きつつも、自身の最大限のパフォーマンスを発揮できるよう努めましょう。この期間の経験は、たとえ本採用に至らなくても、あなたのキャリアにとって貴重な財産となるはずです。
まとめ
よくある質問
Q: 試用期間中の給料は、本採用後と比べて下がることがありますか?
A: 企業によりますが、試用期間中の給料が本採用時より低い設定になっているケースはあります。ただし、大幅な減額や「給料なし」というのは一般的ではありません。就業規則や雇用契約書で確認しましょう。
Q: 試用期間中に社会保険に加入してもらえないのはなぜですか?
A: 社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入は、一定の条件を満たせば事業主の義務です。週の労働時間や日数など、加入要件を満たしていない場合や、一時的な短期雇用を想定している場合などに、加入が遅れる、あるいは加入対象外となることがあります。しかし、不当に加入させないことは違法となる可能性があります。
Q: 試用期間中の給料明細は必ずもらえますか?
A: はい、給料明細は労働基準法で交付が義務付けられています。試用期間中であっても、必ずもらう権利があります。明細で、控除額などに間違いがないか確認しましょう。
Q: 試用期間でも社会保険に加入できない場合、扶養に入ることはできますか?
A: 試用期間中でも、社会保険の加入要件を満たさない場合、健康保険の扶養に入ることは可能です。ただし、扶養に入るには収入などの一定の条件を満たす必要があります。配偶者や親族の社会保険制度の確認が必要です。
Q: 試用期間中に給料が低い、あるいは出ないといったトラブルに遭った場合、どうすれば良いですか?
A: まずは雇用契約書や就業規則を確認し、契約内容と相違がないか確認しましょう。それでも解決しない場合は、労働基準監督署や弁護士、社会保険労務士などの専門機関に相談することをおすすめします。
