1. 欠勤による減給、いくら引かれる?給与明細の計算方法と注意点
  2. 欠勤による減給の仕組みと計算方法
    1. 「ノーワーク・ノーペイ」の原則とは?
    2. 給与タイプ別の基本的な計算ロジック
    3. 計算方法選択の注意点とトラブル回避策
  3. 月給・日給別!欠勤が給与に与える影響
    1. 月給制の場合の控除額の算出
    2. 日給・時給制の場合の考え方
    3. 控除対象となる手当とならない手当
  4. 残業代や各種手当への影響は?
    1. 基本給以外の控除対象となる賃金
    2. みなし残業代(固定残業代)と欠勤控除の関係
    3. 控除されない「特別な休み」の理解
  5. 就業規則で定められる「随時改定」とは?
    1. 欠勤控除と就業規則の深い関係
    2. 就業規則における給与規定の確認ポイント
    3. 欠勤による社会保険料への影響(間接的な「改定」の可能性)
  6. 欠勤控除、翌月への影響と税金について
    1. 欠勤控除が給与明細にどう反映されるか
    2. 欠勤控除が社会保険料や所得税に与える影響
    3. 違法な控除から身を守るために
  7. まとめ
  8. よくある質問
    1. Q: 欠勤した場合、給料はどのように減額されますか?
    2. Q: 月給の場合、欠勤1日いくら減給されますか?
    3. Q: 欠勤すると、残業代や住宅手当なども減額されますか?
    4. Q: 「随時改定」とは何ですか?欠勤と関係ありますか?
    5. Q: 欠勤控除は翌月に影響しますか?また、税金はどのように計算されますか?

欠勤による減給、いくら引かれる?給与明細の計算方法と注意点

体調不良や家庭の事情など、やむを得ない理由で会社を休まなければならない時、気になるのが「給与からいくら引かれるのか」ということではないでしょうか。

「欠勤控除」と呼ばれるこの減給の仕組みは、実は会社の就業規則によって計算方法が異なります。うっかり「知らなかった」では済まされない給与計算の基本と注意点について、今回は詳しく解説していきます。

自分の給与明細を見て「あれ?」と思ったことがある方も、これからのために知っておきたい方も、ぜひ参考にしてください。

欠勤による減給の仕組みと計算方法

「ノーワーク・ノーペイ」の原則とは?

欠勤控除の根底にあるのは、労働法の基本的な考え方の一つである「ノーワーク・ノーペイ(働かざる者食うべからず)」の原則です。これは、簡単に言えば「働かなかった時間や日数に対しては、会社は賃金を支払う義務がない」というものです。

この原則は、労働契約における労使双方の公平性を保つための重要な考え方で、雇用主は労働の対価として賃金を支払い、労働者は賃金の対価として労働を提供する、という関係性に基づいています。

そのため、自己都合による欠勤や遅刻、早退などで労働が提供されなかった場合、その分の賃金が差し引かれることになります。ただし、この原則が適用されないケースや、賃金から差し引ける範囲には法的な制約もあるため、会社の運用は就業規則に則って慎重に行われる必要があります。

「ノーワーク・ノーペイ」は、単に賃金を減らすためのものではなく、労働契約の本質を示すものとして理解しておくことが大切です。

給与タイプ別の基本的な計算ロジック

欠勤控除の具体的な計算方法については、法律で一律に定められているわけではありませんが、多くの企業では以下のいずれかの計算式が用いられています。

1. 月給制の場合(日割り計算):
月給 ÷ 所定労働日数 × 欠勤日数
この方法は、1日あたりの給与額を算出し、それに欠勤した日数を掛けて控除額を求めるものです。例えば、月給30万円で、その月の会社の所定労働日数が20日、あなたが2日欠勤した場合を考えてみましょう。

  • 1日あたりの給与:30万円 ÷ 20日 = 15,000円
  • 欠勤控除額:15,000円 × 2日 = 30,000円

この場合、あなたの給与から30,000円が差し引かれることになります。

2. 時間単位での欠勤の場合(時間割り計算):
月給 ÷ 所定労働時間数 × 欠勤時間数
遅刻や早退など、時間単位での欠勤に対して適用されることが多い計算方法です。例えば、月給20万円で、月の所定労働時間が160時間(1日8時間労働×20日)、あなたが1日2時間の早退を2回(合計4時間)した場合。

  • 1時間あたりの給与:20万円 ÷ 160時間 = 1,250円
  • 欠勤控除額:1,250円 × 4時間 = 5,000円

これらの計算方法はあくまで一般的な例であり、具体的な算出方法は会社の就業規則で確認する必要があります。

計算方法選択の注意点とトラブル回避策

欠勤控除の計算方法は、企業によって自由に選択できる部分が多い一方で、いくつかの重要な注意点があります。これらを理解しておくことで、従業員との不要なトラブルを避けることができます。

  • 就業規則への明記: 最も重要なのは、どの計算方法(日割り、時間割り、またはその併用)を採用するのかを、会社の就業規則や給与規程に明確に記載し、従業員に周知徹底することです。これにより、従業員は自分の給与がどのように計算されるかを事前に理解でき、不信感を防ぐことができます。
  • 月による変動への対応: 月の所定労働日数や所定労働時間数は、月によって変動するのが一般的です(例:28日の月と31日の月では日数が異なる)。この変動をそのまま計算に反映させると、同じ1日欠勤でも月によって控除額が変わってしまう可能性があります。これを避けるために、年間平均の所定労働日数や時間数を用いる企業もあります。どちらの方法を採用するかは、公平性と事務処理の簡便性を考慮して決定すべきです。
  • 端数処理の原則: 欠勤控除において、欠勤した時間や日数よりも多く賃金を控除することは法律違反となります。例えば、10分遅刻した従業員に対し、15分単位で切り上げて控除するといった行為は認められません。遅刻や早退の控除額は1分単位で計算するのが原則であり、端数は切り捨てるのが正しい処理です。労働者にとって不利になるような端数処理は避けるべきです。

これらの注意点を踏まえ、透明性のある運用を心がけることが、労使間の信頼関係を築く上で不可欠です。

月給・日給別!欠勤が給与に与える影響

月給制の場合の控除額の算出

月給制の場合、欠勤による控除額の算出は、前述の計算式に基づきますが、その影響はより詳細に見ていく必要があります。

例えば、月給30万円(基本給のみ)で、月の所定労働日数が20日、所定労働時間が160時間(1日8時間労働)のケースを想定します。

  • 1日欠勤の場合:
    1日あたりの給与は15,000円(30万円 ÷ 20日)となり、30万円 − 15,000円 = 285,000円が支給額のベースとなります。
  • 半日欠勤(4時間)の場合:
    1時間あたりの給与は1,875円(30万円 ÷ 160時間)となり、控除額は1,875円 × 4時間 = 7,500円です。支給額は292,500円となります。

このように、月給制であっても欠勤の程度(日数か時間か)によって控除額が変わるため、自分の勤務体系における計算方法を正確に理解しておくことが重要です。

また、月によって所定労働日数や時間数が変動する場合、同じ1日欠勤でも控除額が変わる可能性があるため、注意が必要です。会社が年間平均で算出しているのか、毎月の実日数で算出しているのかも確認しておきましょう。

日給・時給制の場合の考え方

日給制や時給制の働き方をしている場合、欠勤が給与に与える影響は、月給制とは根本的に異なります。

「ノーワーク・ノーペイ」の原則が最も明確に適用されるのが、日給・時給制です。これらの給与形態では、働いた時間や日数に対してのみ賃金が支払われるため、欠勤すればその分だけ直接的に給与が減額されます。つまり、欠勤控除という概念が別途存在するわけではなく、働かなかった分は最初から給与計算の対象とならない、と考えるのが自然です。

  • 日給制の場合:
    1日8,000円の日給制で、月に5日欠勤した場合、単純に8,000円 × 5日 = 40,000円がその月の収入から減ることになります。
  • 時給制の場合:
    時給1,000円で、1日8時間勤務の日に3時間早退した場合、3時間 × 1,000円 = 3,000円がその日の収入から減ります。

月給制のように複雑な計算を必要とせず、働いた分だけが支払われるため、給与の変動が直感的に分かりやすいのが特徴です。しかし、安定した収入を望む場合は、月給制よりも欠勤が直接的な収入減につながりやすいという側面も理解しておく必要があります。

控除対象となる手当とならない手当

欠勤控除の対象となるのは、基本給だけではありません。各種手当についても、就業規則に定めがあれば控除の対象となる場合があります。しかし、手当の種類によっては控除の対象とならない、またはすべきではないとされるものもあります。

<控除の対象となりうる手当>

  • 通勤手当: 出勤しない日は交通費がかからないため、欠勤日数に応じて控除されることがあります。
  • 役職手当: 役職に対する職務遂行がなされないと見なされ、控除対象となる場合があります。
  • 皆勤手当: 欠勤した時点で皆勤の条件を満たさなくなるため、最も影響を受けやすい手当の一つです。

<控除対象外とするのが一般的な手当>

  • 住宅手当・家族手当: これらは「生活保障」としての意味合いが強く、労働の対価というよりも生活を補助する目的で支給されることが多いため、欠勤を理由に控除しないのが一般的です。ただし、就業規則に明確に記載があれば控除対象となりえますが、労使間のトラブルの元になりやすい点でもあります。
  • 単身赴任手当・在宅勤務手当など: 特定の状況や環境に対する手当も、労働時間とは直接結びつかないため、控除対象外とされることが多いです。

重要なのは、これらの手当が控除の対象となるかどうか、またその計算方法が、会社の就業規則や給与規程に明確に記載されているかどうかです。不明な場合は、必ず確認するようにしましょう。

残業代や各種手当への影響は?

基本給以外の控除対象となる賃金

欠勤控除の対象は、基本給だけにとどまらず、会社の規定によっては様々な手当にも及びます。具体的にどのような手当が控除の対象となりうるのかを理解しておくことは、給与明細を確認する上で非常に重要です。

  • 通勤手当: 欠勤日は通勤が発生しないため、その分の交通費が控除されることがあります。定期券の場合は日割り計算が難しい場合もありますが、一般的には支給額から日割り計算で差し引かれます。
  • 役職手当・職務手当: これらは役職や職務内容に対して支給される手当ですが、欠勤によりその職務が遂行されないとみなされる場合、控除の対象となることがあります。
  • 皆勤手当: 欠勤控除の中でも特に注意が必要なのが皆勤手当です。ほとんどの企業で、1日でも欠勤や遅刻・早退があると、その月の皆勤手当が全額支給されないか、減額される規定になっています。これは、皆勤手当の本来の目的が「休まず真面目に働くことへのインセンティブ」だからです。

ただし、これらの手当が控除対象となるかは、すべて会社の就業規則や給与規定によって決まります。手当の性格(労働の対価なのか、生活保障的なものなのか)によっても判断が分かれるため、不明な点があれば必ず規程を確認するか、担当部署に問い合わせるべきです。

みなし残業代(固定残業代)と欠勤控除の関係

近年導入する企業が増えている「みなし残業代(固定残業代)」についても、欠勤控除との関係は複雑で、注意が必要です。

みなし残業代とは、実際に残業するかどうかに関わらず、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支給する制度です。このみなし残業代が欠勤控除の対象となりうるかについては、就業規則にその旨が明確に定められている場合に限られます。

もし就業規則に「欠勤控除は、基本給とみなし残業代を含む総支給額から算出する」といった規定があれば、みなし残業代も控除の対象となり得ます。しかし、その計算方法は慎重に行う必要があり、単に月給全体から割り戻すだけでは不適切となるケースもあります。

特に問題となりやすいのは、欠勤によって実際の労働時間がみなし残業時間枠を下回った場合です。このとき、みなし残業代を全額控除したり、実際の労働時間分を上回って控除したりすることは違法となる可能性があります。あくまで「働かなかった時間分の賃金」以上の控除はできません。

みなし残業代が設定されている場合は、より複雑な計算が必要となるため、自分の給与計算が適正に行われているか、不明な点があれば専門家に相談することも検討しましょう。

控除されない「特別な休み」の理解

全ての「休み」が欠勤控除の対象となるわけではありません。会社から認められた特定の休暇や、法的に保障された休業期間については、欠勤控除が適用されず、場合によっては賃金が支払われたり、手当が支給されたりします。これらを正しく理解しておくことは、労働者として自分の権利を守る上で非常に重要です。

1. 年次有給休暇(有休):
年次有給休暇を取得した場合は、賃金が満額支給されるため、欠勤控除の対象外となります。これは労働基準法によって定められた労働者の権利であり、会社は有休取得を理由に不利益な取り扱いをしてはなりません。2019年4月1日からは、年10日以上有給休暇が付与される従業員に対し、年5日の有給休暇取得が義務化されており、積極的に取得することが推奨されています。

2. 休職・休業期間:

  • 育児・介護休業: 法律で定められた育児休業や介護休業期間中は、原則として給与の支払いは発生しませんが、雇用保険から「育児休業給付金」や「介護休業給付金」が支給されます。欠勤控除とは別の枠組みです。
  • 会社都合による休業: 会社の都合(経営悪化など)で従業員を休業させた場合、会社は労働基準法に基づき「休業手当」(平均賃金の60%以上)を支払う義務があります。これも欠勤控除の対象外です。
  • 私傷病休職: 会社の就業規則に基づく私傷病による休職期間は、原則無給ですが、健康保険から「傷病手当金」が支給される場合があります。

3. 慶弔休暇などの特別休暇:
会社が独自に設けている特別休暇(結婚、出産、忌引きなど)は、就業規則で「有給」と定められていれば、給与が満額支給され欠勤控除の対象外となります。これも会社の福利厚生の一環です。

これらの制度を適切に利用することで、予期せぬ欠勤による収入減を最小限に抑えることが可能です。自分の会社の就業規則で、どのような「特別な休み」が用意されているかを事前に確認しておきましょう。

就業規則で定められる「随時改定」とは?

欠勤控除と就業規則の深い関係

欠勤控除の計算方法や対象範囲は、法律に一律の定めがないため、会社の「就業規則」や「給与規程」にその詳細が明記されていることが不可欠です。

就業規則は、会社と従業員が守るべき職場のルールを定めたもので、給与の計算方法はその中でも特に重要な部分を占めます。労働基準法では、従業員が10人以上の事業場において就業規則の作成・届出が義務付けられており、従業員への周知も求められています。

したがって、欠勤控除がどのように行われるかを知るためには、まず自分の会社の就業規則を確認することが第一歩となります。就業規則には、以下の点が明確に記載されている必要があります。

  • 欠勤控除の計算式(日割りか時間割りか、またはその両方)
  • 控除の対象となる手当の範囲
  • 月々の所定労働日数・時間数の算出方法
  • 遅刻・早退の端数処理に関するルール

これらの情報が不明確であったり、そもそも就業規則が存在しない(10人未満の事業場を除く)場合は、労使間のトラブルの原因となる可能性が高まります。就業規則は、労使双方にとって公平なルールブックであるため、従業員もその内容を理解し、疑問点があれば会社に説明を求める権利があります。

就業規則における給与規定の確認ポイント

自分の給与に影響する欠勤控除について、就業規則のどこを確認すれば良いのか、具体的なポイントを見ていきましょう。

1. 「賃金(給与)規程」の章を確認する:
就業規則は通常、複数の章に分かれています。「賃金」や「給与」といった見出しの章に、給与計算に関する詳細なルールが記載されています。この中に「欠勤控除」や「遅刻・早退控除」といった項目がないか探しましょう。

2. 控除の計算式と対象項目を確認する:
具体的に「月給を所定労働日数で除した額を控除する」といった計算式や、「基本給および役職手当を控除対象とする」といった記載があるはずです。どの手当が控除の対象になるのか、ならないのかを重点的に確認してください。

3. 所定労働日数・時間数の定義を確認する:
控除額の算出に用いられる「所定労働日数」や「所定労働時間数」が、年間平均で算出されているのか、それとも月の実日数・実時間数で算出されているのかも重要なポイントです。これによって、同じ1日欠勤でも控除額が変わる可能性があります。

4. 遅刻・早退の取り扱いを確認する:
時間単位の控除についても、何分単位で計算するのか、端数処理はどうするのかといった規定があるはずです。通常は1分単位で計算され、従業員に不利にならないよう切り捨てるのが原則です。

就業規則は会社に備え付けられており、いつでも閲覧できる環境が整っているはずです。もし見当たらない場合は、人事担当者などに問い合わせて、必ず内容を確認するようにしましょう。

欠勤による社会保険料への影響(間接的な「改定」の可能性)

欠勤によって給与が減額されることは、直接的に社会保険料に影響を及ぼすわけではありませんが、長期的な視点や大幅な給与変動があった場合には、社会保険料の見直し(随時改定)につながる可能性があります。

社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料)は、標準報酬月額という基準に基づいて計算されます。この標準報酬月額は、原則として毎年1回、4月・5月・6月の給与を基に算定され(定時決定)、その年の9月から翌年8月までの保険料が決まります。

しかし、欠勤が原因で給与が大幅に変動し、以下の条件を満たした場合、年に一度の定時決定を待たずに標準報酬月額が改定されることがあります。これが「随時改定」(月額変更届)です。

  • 固定的賃金(基本給や役職手当など)に変動があった場合
  • 変動後の3ヶ月間の平均給与が、以前の標準報酬月額と比べて2等級以上の差が生じた場合
  • その3ヶ月間の支払基礎日数が各月17日以上(短時間労働者は11日以上)ある場合

例えば、長期間の欠勤によって基本給が大幅に減額された結果、上記の条件を満たせば、次回の定時決定を待たずに社会保険料が安くなる可能性があります。しかし、これはあくまで「固定的賃金の変動」が前提であり、単発の欠勤による給与減額は、通常は随時改定の対象とはなりません。

欠勤控除によって給与が変動し、結果として社会保険料の負担が変わることもあるため、自分の給与明細をよく確認し、不明な点があれば社会保険労務士などの専門家に相談することも検討しましょう。

欠勤控除、翌月への影響と税金について

欠勤控除が給与明細にどう反映されるか

欠勤控除が実際に給与明細にどのように記載されるのか、理解しておくことは非常に重要です。正しく理解していれば、不明な控除に対して疑問を呈することも可能になります。

一般的に、給与明細は大きく「勤怠項目」「支給項目」「控除項目」の3つのセクションに分かれています。

  • 勤怠項目:
    このセクションには、その月の勤務実績が記載されます。「出勤日数」「欠勤日数」「遅刻回数」「早退回数」「残業時間」などが具体的に表示されます。ここを見れば、自分が何日(何時間)休んだかが一目でわかります。
  • 支給項目:
    基本給や各種手当(通勤手当、役職手当など)、残業代など、会社から支払われる全ての賃金が記載されます。欠勤控除は、この支給項目の中に「欠勤控除額」や「遅早控除額」として、マイナスの金額で表示されるのが一般的です。これは、本来支払われるべき賃金から差し引かれていることを意味します。
  • 控除項目:
    社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険など)や所得税、住民税などが記載されるセクションです。欠勤控除は、税金や社会保険料とは異なり、「控除項目」ではなく「支給項目」の中で処理される点に注意が必要です。

もし給与明細の記載に不明な点があれば、まずは勤怠項目と支給項目にある欠勤控除額を確認し、人事部や経理部に問い合わせるようにしましょう。

欠勤控除が社会保険料や所得税に与える影響

欠勤による給与の減額は、結果として社会保険料や所得税・住民税の金額にも影響を与える可能性があります。

社会保険料への影響

社会保険料は、前述の通り「標準報酬月額」に基づいて計算されます。この標準報酬月額は、通常年に一度の定時決定で決まるため、単発の欠勤による一時的な給与減額が、すぐに社会保険料に反映されることは稀です。

しかし、長期間の欠勤が続き、固定的賃金(基本給など)が大幅に変動し、かつ一定の条件を満たした場合には、「随時改定」(月額変更届)によって標準報酬月額が見直され、その後の社会保険料が変更されることがあります。この場合、給与が減ったことで社会保険料も安くなる可能性があります。

所得税・住民税への影響

所得税は、その月の給与から社会保険料などを差し引いた課税所得に対して課せられます。そのため、欠勤控除によって給与が減れば、その月の課税所得が減少し、結果として源泉徴収される所得税額も少なくなるのが一般的です。

住民税は、前年の所得に対して課税されるため、欠勤によるその月の給与減額が、直ちに住民税額に影響することはありません。しかし、その年の欠勤が原因で年間所得が減れば、翌年度の住民税額が安くなることになります。

給与計算は複雑であり、各種税金や保険料への影響も多岐にわたります。自分の給与明細を注意深く確認し、不明な点があれば専門家のアドバイスを求めることが賢明です。

違法な控除から身を守るために

欠勤控除は会社のルールに基づいて行われますが、中には労働基準法に違反する「違法な控除」も存在します。自分の権利を守るためにも、どのような控除が違法にあたるのかを知っておきましょう。

1. ペナルティとしての過剰な控除:
「ノーワーク・ノーペイ」の原則は、あくまで「働かなかった時間分の賃金」を支払わないという考え方です。欠勤した時間や日数分の賃金以上に、ペナルティとして多額の金額を控除することは法律違反です。例えば、1日欠勤しただけで基本給の半分を差し引くといった行為は許されません。企業は懲戒処分として減給を行うことはできますが、その上限も労働基準法で厳しく定められています(1回の減給が平均賃金の半額、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない)。

2. 最低賃金割れ:
欠勤控除によって給与が減額された結果、最終的に支払われる賃金が最低賃金を下回ることは、どのような理由であれ許されません。最低賃金は、労働者が生活するために最低限必要な賃金水準を保障するものであり、欠勤控除もこの最低賃金法の範囲内で運用される必要があります。

もし、自分の給与明細を見て「おかしい」「納得できない」と感じた場合は、以下の行動を検討してください。

  • まず会社の就業規則や給与規程を再度確認する。
  • 人事部や経理部に具体的な計算根拠の説明を求める。
  • それでも解決しない、あるいは違法な控除が疑われる場合は、労働基準監督署や社会保険労務士などの専門機関に相談する。

給与は生活の基盤となる大切なものです。不当な減給から自分を守るためにも、正しい知識を身につけておくことが何よりも重要です。