「欠勤」の正しい知識：種類、理由、知っておくべきこと

「会社を休む」と一言で言っても、その種類や意味合いは多岐にわたります。あなたは「欠勤」と「休み」の違いを明確に説明できますか？ また、急な体調不良や家庭の事情、あるいは個人的な用事で会社を休むとき、どのような対応が適切かご存知でしょうか。

この記事では、労働者が知っておくべき「欠勤」の正しい知識に焦点を当てます。種類、正当な理由、会社への伝え方、そして法的な側面まで、あなたが安心して働くために必要な情報を分かりやすく解説します。

「欠勤」と「休み」の違い、あなたは説明できますか？

欠勤の基本概念と「ノーワーク・ノーペイ」原則

「欠勤」とは、労働者が本来出勤すべき日に、正当な理由なく仕事を休むことを指します。労働基準法には明確な定義はありませんが、一般的には「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づいて扱われます。この原則は、「働かなければ賃金は支払われない」という考え方で、欠勤した日には原則として賃金が支払われません。

つまり、会社との労働契約において労働義務があるにもかかわらず、その義務を履行しない状態が欠勤です。単に会社に行かないだけでなく、その分の給与が控除されるという点で、他の「休み」とは大きく異なります。

この原則は、労働者にとっても会社にとっても基本的なルールのひとつです。自分の労働義務を理解し、それが果たせない場合にどのような扱いになるのかを正確に把握しておくことが、トラブルを未然に防ぐ上で非常に重要となります。

有給休暇・公休との明確な違いとは

会社を休む方法には、欠勤以外にも「有給休暇」や「公休」があります。これらは混同されがちですが、その性質は全く異なります。

• 有給休暇（年次有給休暇）：労働基準法で定められた労働者の権利です。一定期間勤続した労働者に与えられ、取得しても賃金が控除されません。労働者が申請すれば、原則として会社は拒否できません。
• 公休：会社が就業規則などで定めた休日です。土日祝日、年末年始休暇、夏季休暇などがこれに該当します。労働義務が最初から存在しないため、当然ながら賃金も控除されません。
• 欠勤：労働義務がある日に、自己都合や体調不良など、有給休暇や公休以外の理由で休むことです。原則として賃金が控除されます。

このように、賃金が支払われるか否か、労働義務の有無という点で、それぞれが明確に区別されます。特に有給休暇は、労働者の権利として賃金を保証された休みであり、欠勤とは最も性質が異なります。

欠勤がもたらす影響：控除と評価

欠勤は、単にその日の賃金が支払われない「欠勤控除」という形で給与に影響するだけではありません。長期的に見ると、従業員の評価やキャリア形成にも影響を及ぼす可能性があります。

「欠勤控除」は「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、欠勤した時間や日数分の賃金が給与から差し引かれることを意味します。月給制の場合でも、その月の所定労働日数から欠勤日数を差し引いて計算されるのが一般的です。これにより、手取り額が減少し、家計に直接的な影響を与えることになります。

さらに、欠勤日数が多い場合、人事評価において「勤怠不良」と見なされることがあります。これは賞与額の決定や昇進・昇格の機会にも影響を与えかねません。特に無断欠勤は、会社への信頼を大きく損ねる行為として、懲戒処分の対象となるだけでなく、場合によっては解雇の理由にもなり得ます。会社の就業規則をよく確認し、欠勤がどのような影響をもたらすのかを事前に理解しておくことが大切です。

「無断欠勤」はNG！正当な欠勤理由とそうでない理由

正当と認められる欠勤理由の例

欠勤には様々な理由がありますが、会社が一般的に正当と認めるものとしては、主に「病気や怪我による欠勤」が挙げられます。

体調不良や怪我により、業務の遂行が困難な状況では、無理に出社して症状を悪化させたり、周囲に影響を及ぼしたりするリスクを避けるためにも、欠勤は適切な判断です。例えば、インフルエンザや発熱、あるいは骨折などの怪我などが典型的なケースです。

また、新型コロナウイルス感染症による欠勤もこれに該当しましたが、感染症法上の位置づけ変更に伴い、対応は変化しています。現在は一般的な感染症と同様の扱いとなることが多いですが、会社の規定を確認することが重要です。さらに、近年増加傾向にあるのがメンタルヘルス関連の欠勤です。ストレスや心身の不調により業務が困難な場合も、医師の診断書があれば正当な欠勤理由として認められます。従業員のライフスタイルや職場環境がメンタルヘルスに影響すると指摘されており、企業側も対応を強化する動きが見られます。これらの場合、診断書の提出を求められることが多いため、受診して書類を用意しましょう。

自己都合欠勤の範囲と注意点

「自己都合による欠勤」とは、個人的な用事や家庭の事情など、本人の都合による欠勤を指します。

これには、例えば以下のようなケースが含まれます。

• 親族の冠婚葬祭（会社に慶弔休暇制度がない、または日数が足りない場合）
• 子供の学校行事や病院への付き添い
• 役所での手続きや金融機関での重要な用事
• 個人的な旅行や趣味のイベント参加（有給休暇が取れなかった場合）

これらの場合、事前に有給休暇の取得を検討するのが一般的ですが、有給残日数がなかったり、取得が難しい状況であれば、自己都合による欠勤となります。自己都合欠勤は原則として賃金が支払われませんが、事前に会社に連絡し、承認を得ていれば問題視されることは少ないでしょう。

重要なのは、「事前に会社に連絡し、承認を得る」というプロセスです。無断での欠勤とは異なり、会社との信頼関係を維持しながら、自身の都合を調整する姿勢が求められます。

絶対に避けたい無断欠勤とその重い代償

欠勤の中でも最も避けなければならないのが「無断欠勤」です。

無断欠勤とは、事前に会社に連絡せずに仕事を休むことを指します。これは、会社との信頼関係を著しく損ねる行為であり、業務に支障をきたすだけでなく、場合によっては非常に重い代償を伴います。

具体的には、無断欠勤は就業規則に違反する行為として、懲戒処分の対象となる可能性が非常に高いです。戒告、減給、出勤停止といった処分に加え、悪質な場合や長期にわたる場合は、最悪の場合解雇理由にもなり得ます。特に、連絡を試みても全く応答がない状態が続くと、「バックレ」として扱われ、会社側も適切な対応を取ることができなくなります。

ただし、事故に遭い意識不明になった、入院を要するほどの急病で連絡が不可能であったなど、やむを得ない事情で連絡ができなかった場合は除かれます。しかし、そのような場合でも、連絡が可能になり次第、速やかに会社に事情を説明し、理解を求める努力が必要です。

どのような状況であっても、会社に連絡を入れるという最低限の義務を果たすことが、自身の立場を守る上で極めて重要です。

当日欠勤を避けるために知っておきたいこと：私用、旅行、ライブなど

私的な予定による欠勤を計画する際のポイント

旅行やライブ、家族のイベントなど、個人的な予定で会社を休みたいと思うことは誰にでもあります。このような私的な理由で仕事を休む場合、最も理想的なのは「有給休暇」を計画的に取得することです。

有給休暇は、賃金の減額なく休める労働者の権利であり、これを活用することで、私的な時間を十分に楽しむことができます。会社の繁忙期を避け、早めに上司に相談し、申請することで、業務への影響を最小限に抑えつつ、スムーズに休みを取ることが可能です。

もし有給休暇の残日数がなかったり、どうしても取得が難しい状況であれば、自己都合による欠勤を検討することになります。この場合も、できる限り早い段階で上司に相談し、業務の調整や引き継ぎについて指示を仰ぎましょう。当日や前日に急な欠勤を申し出るのは、周囲に多大な迷惑をかけることになります。計画的な行動と、会社への事前の配慮が、円滑な働き方を実現する鍵となります。

急な体調不良や家庭の事情への対応

どんなに計画を立てていても、急な体調不良や家族の緊急事態は予測できません。例えば、自分自身の発熱や体調不良、お子様の急な発熱、親の介護など、当日欠勤を余儀なくされるケースは少なくありません。

このような緊急事態においては、まず第一に会社への速やかな連絡が最優先されます。始業時間前、または判明した時点で直属の上司に直接電話で状況を伝えましょう。メールやチャットは補助的な連絡手段として考え、緊急時は必ず電話を用いるのがマナーです。連絡の際には、自身の体調や状況を簡潔に伝え、復帰の目処や業務の引き継ぎについて指示を仰ぎます。

また、病院を受診した際には、会社から診断書の提出を求められる可能性もありますので、準備しておくことをお勧めします。特に、感染症の疑いがある場合や、複数日休む必要がある場合は、今後の対応について会社と密に連携を取りながら進めることが重要です。誠実な対応は、会社からの理解と信頼を得るために不可欠です。

「有給休暇」を賢く使って欠勤を減らす

欠勤による賃金控除や人事評価への影響を避けるためには、有給休暇を賢く活用することが非常に有効です。

近年、年次有給休暇の取得率は上昇傾向にあり、2023年度の取得率は65.3%と過去最高を記録しました。政府も2025年までに取得率70%を目標としており、企業側も取得しやすい環境を整備する動きが進んでいます。労働者には年5日の有給休暇取得が義務付けられていることもあり、計画的に消化することが求められます。

例えば、
私的な用事や予定が事前に分かっている場合は、積極的に有給休暇を申請しましょう。
急な体調不良の場合でも、有給休暇の残日数があれば、それを充てることで欠勤による賃金控除を避けることができます。また、計画的に有給休暇を取得することは、リフレッシュに繋がり、メンタルヘルスの維持にも貢献します。結果として、仕事への集中力やモチベーション向上にも繋がり、生産性の向上にも寄与するでしょう。自身のワークライフバランスを向上させるためにも、有給休暇制度を正しく理解し、積極的に活用することをお勧めします。

会社都合や指示による欠勤、傷病による欠勤について

会社都合による休業：休業手当の支給

労働者が働く意思と能力があるにもかかわらず、会社の都合によって仕事を休まざるを得ない場合があります。これを「休業」と呼び、この場合、会社は労働者に対して「休業手当」を支払う義務があります。

例えば、工場設備の故障で生産ラインが停止した場合、資材の調達が滞り業務ができない場合、あるいは経営不振による一時的な営業停止などがこれに該当します。労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、使用者は休業期間中の平均賃金の60%以上の手当を支払わなければならないと定められています。

これは「ノーワーク・ノーペイの原則」の例外であり、会社側の都合で労働が提供できない場合の労働者の生活保障を目的としたものです。新型コロナウイルス感染症の拡大期には、企業の営業自粛や時短営業により、多くの労働者が休業手当の対象となりました。もし会社から休業を指示された場合は、ご自身の権利として休業手当の対象となるかを確認することが重要です。

病気や怪我で働けない時の心強い味方：傷病手当金

ご自身の病気や怪我で働くことができなくなった場合、会社を休むことになりますが、このとき頼りになるのが健康保険の制度である「傷病手当金」です。

傷病手当金は、業務外の病気や怪我により、療養のために労務不能となり、給与の支払いが受けられない期間に、健康保険組合から支給される手当金です。支給要件としては、以下の点が挙げられます。

1. 業務外の病気や怪我であること
2. 療養のために労務不能であること
3. 連続した3日間（待期期間）の後に、4日目以降も労務不能であること
4. 給与の支払いがないこと（休業手当など他の手当がある場合は調整される）

支給額は、原則として標準報酬日額の3分の2程度です。新型コロナウイルス感染症による療養期間が短縮されたことに伴い、以前のような特別対応ではなく、一般的な傷病手当金のルールが適用されるようになりました。長期にわたる療養が必要な場合、生活を支える上で非常に重要な制度ですので、条件に該当する場合は積極的に申請を検討しましょう。会社の総務部や加入している健康保険組合に相談することをお勧めします。

長期欠勤から休職へ：制度の利用と復職支援

病気や怪我、特にメンタルヘルス不調により、長期にわたって欠勤が続く場合、多くの企業では「休職制度」の利用が検討されます。

休職とは、従業員が病気や怪我などの理由で長期的に労務を提供できない状況において、労働契約は維持したまま、一定期間労働義務を免除される制度です。これは法律で定められたものではなく、各企業の就業規則に規定されています。

休職制度を利用する際には、医師の診断書提出が必須となるのが一般的です。会社によっては、定期的な病状報告や、復職に向けたリハビリテーションプログラム（リハビリ出勤など）の実施を求める場合もあります。近年、メンタルヘルス関連の欠勤が増加傾向にあることから、企業側も復職支援プログラムや相談窓口の設置など、従業員が安心して復帰できるような体制を整えつつあります。長期欠勤が続く場合は、会社の人事担当者や産業医と相談し、休職制度の利用や復職に向けた具体的なステップについて話し合うことが重要です。

欠勤を伝える際の正しいマナーと注意点

欠勤連絡の基本：いつ、誰に、どう伝えるか

欠勤を決めた際、最も大切なのは「会社への適切な連絡」です。その基本マナーをしっかりと押さえましょう。

1. いつ伝えるか：原則として、始業時間前、できるだけ早い段階で連絡することが重要です。早ければ早いほど、上司や同僚は業務の調整や引き継ぎを行う時間を確保できます。
2. 誰に伝えるか：必ず直属の上司に連絡しましょう。上司が不在の場合は、代理の責任者や人事に連絡し、その旨を伝言してもらうように手配します。
3. どう伝えるか：最も推奨されるのは電話です。緊急性や重要性を考慮すると、確実かつ直接状況を伝えられる電話が最適です。メールやチャットは、あくまで電話がつながらない場合の補助的な手段として考え、その場合でも電話で連絡がつかなかった旨を添え、後ほど改めて電話を入れるのが丁寧です。

連絡が遅れる場合や、複数日休む可能性が高い場合は、その旨も併せて伝え、今後の連絡体制についても確認しましょう。無断欠勤と見なされないためにも、この基本を徹底することが不可欠です。

連絡内容に含めるべき情報と伝え方

欠勤の連絡をする際には、以下の情報を簡潔かつ明確に伝えるように心がけましょう。

• 欠勤理由：詳細に語る必要はありませんが、「体調不良のため」「私用のため」「家族の事情のため」など、簡潔に理由を伝えます。例えば、「発熱のため、本日はお休みをいただきます」といった具合です。
• 状況の具体的な説明（必要に応じて）：感染症の疑いがある場合や、緊急を要する家庭の事情など、周囲への影響が大きい場合は、もう少し具体的に伝えると理解が得られやすいでしょう。
• 今後の見込み：「明日には出社できそうです」「病院を受診してから改めてご連絡します」「数日休む可能性があります」など、復帰の目処や今後の連絡について伝えます。
• 業務の引き継ぎ・依頼：緊急性の高い業務があれば、その対応について指示を仰いだり、引き継ぎを依頼したりします。あらかじめ自身でできる範囲で準備しておくと、スムーズです。
• 謝意と配慮の姿勢：欠勤により同僚や会社に迷惑をかけることへの謝罪と、配慮の言葉を添えましょう。「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」「ご対応をお願いできますでしょうか」など。

感情的にならず、落ち着いて、丁寧な言葉遣いを心がけることが重要です。

診断書や書類提出のタイミングと注意点

欠勤の理由によっては、会社から診断書や特定の書類の提出を求められることがあります。これらについても、適切なタイミングで対応することが大切です。

• 診断書の提出：病気や怪我による欠勤が数日に及ぶ場合や、休職制度を利用する際には、医師の診断書提出が求められることがほとんどです。会社によっては、1日の欠勤でも診断書が必要な場合があるため、就業規則を確認するか、上司に確認しましょう。診断書は、欠勤の正当性を証明する重要な書類となります。
• 傷病手当金申請書類：病気や怪我で長期間働けない場合、健康保険の傷病手当金を申請することになります。この申請には、医師の意見書や会社の証明が必要となるため、会社の人事・総務部と連携し、必要な書類を速やかに準備しましょう。
• 書類提出のタイミング：診断書などは、復帰後できるだけ早く提出するのが基本です。遅れる場合は、その旨を会社に伝え、いつまでに提出可能か連絡しましょう。

これらの書類提出は、単なる事務手続きではなく、欠勤理由の透明性を確保し、会社との信頼関係を維持するために重要な要素です。会社からの指示に従い、誠実に対応することが、その後の円滑な復帰にも繋がります。

「欠勤」は、労働者の権利である有給休暇とは異なり、原則として賃金が支払われないものです。しかし、病気や怪我、やむを得ない事情で仕事を休まなければならない状況は誰にでも起こり得ます。

重要なのは、その「欠勤」がどのような種類に該当し、どのような理由が正当と認められるのかを理解すること、そして、会社に伝える際の正しいマナーと手続きを把握しておくことです。特に無断欠勤は、自身の立場を危険に晒す行為であり、絶対に避けるべきです。

この記事でご紹介した知識を参考に、もし欠勤が必要となった際には、速やかに会社に連絡し、適切な対応をとるように心がけましょう。そうすることで、会社との良好な関係を維持し、安心して働き続けることができるはずです。