欠勤・早退が続くのはなぜ?考えられる原因

身体的な不調や病気

欠勤や早退が続く原因として、まず挙げられるのは身体的な不調や病気です。風邪やインフルエンザといった一時的なものから、持病の悪化、慢性的な頭痛や胃腸の不調、さらには睡眠不足による体調不良など、その種類は多岐にわたります。特に、季節の変わり目や疲労が蓄積しやすい時期には、体調を崩しやすくなる傾向があります。

例えば、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、アレルギー性疾患、自律神経失調症など、一見すると仕事に直接関係ないように思える病気が、集中力の低下や倦怠感を引き起こし、結果として業務に支障をきたすケースも少なくありません。自身の身体のサインを見逃さず、少しでも異変を感じたら、早めに医療機関を受診することが重要です。早期発見・早期治療が、症状の悪化を防ぎ、仕事への影響を最小限に抑える鍵となります。

精神的なストレスやメンタルヘルス不調

近年、特に深刻化しているのが精神的なストレスやメンタルヘルス不調による欠勤・早退です。参考情報によると、2024年の調査では「仕事において強いストレスを感じる」と回答した労働者の割合は80%以上に上っています。この高い数値は、多くの人が日常的に仕事に関するプレッシャーや不安を抱えている現実を示しています。

ストレスの要因としては、過大な仕事量、業務上の失敗、複雑な人間関係、ハラスメント(パワーハラスメント、セクシャルハラスメントなど)が挙げられます。これらのストレスが積み重なると、うつ病や適応障害、不安障害といったメンタルヘルス不調を引き起こし、出社が困難になったり、集中力が続かずに早退せざるを得なくなったりします。特に若手従業員の間では、メンタルヘルス不調による休職・退職の傾向が顕著であり、過去3年以内のメンタルヘルス不調経験者のうち、20代では半数近くが休職後に自主退職、あるいは退職しているというデータもあります。精神的な不調は目に見えにくいため、周囲も本人も気づきにくいことがありますが、心身のSOSを見逃さないようにすることが大切です。

私生活の問題やワークライフバランスの課題

仕事以外の私生活における問題も、欠勤や早退が続く大きな原因となり得ます。例えば、育児や介護による時間的な制約、家族の病気や看病、家庭内のトラブル、あるいは自己啓発や資格取得のための学習、趣味活動と仕事の両立の難しさなどが挙げられます。

近年普及したテレワーク(リモートワーク)は、通勤時間の削減やワークライフバランスの向上に繋がる一方で、仕事とプライベートの境界線が曖昧になり、オンオフの切り替えが難しくなるという新たな課題も生んでいます。これにより、結果的に仕事に集中できず、効率が落ちたり、疲労が蓄積したりすることがあります。ワークライフバランスが適切に保てないと、心身の健康を損ない、欠勤や早退に繋がる可能性が高まります。自身の状況を客観的に見つめ直し、必要であれば会社に相談するなど、適切な調整を行うことが求められます。

欠勤・早退が月に何回まで許容される?社会人の目安

法的な基準と企業の就業規則

「月に何回まで欠勤や早退が許容されるか」について、法律で明確な回数が定められているわけではありません。そのため、判断の基準となるのは、まず企業の就業規則です。多くの企業では、遅刻、早退、欠勤に関する規定を設けており、無断での欠勤・遅刻はもちろんのこと、有給休暇を使わない私的な欠勤・早退についても、一定の回数を超えると人事評価に影響を与えたり、場合によっては懲戒処分の対象となったりする旨を明記していることがあります。

重要なのは、自身の会社の就業規則をしっかりと確認し、その内容を理解しておくことです。病気や止むを得ない事情で休む場合であっても、必ず事前に連絡を入れる、診断書を提出するなど、企業の定める手続きに従う必要があります。これらの手続きを怠ると、正当な理由があったとしても、規則違反とみなされる可能性があるので注意が必要です。

一般社会での常識と周囲への配慮

法的な基準がないからといって、自由に欠勤・早退ができるわけではありません。社会人としての常識や、共に働く同僚やチームへの配慮が非常に重要です。たとえ有給休暇を使って休む場合でも、頻繁に欠勤や早退が続けば、周囲からは「責任感がない」「業務に支障が出る」といったネガティブな印象を持たれかねません。月に1回程度の突発的な欠勤であればまだしも、月に複数回、あるいは毎週のように繰り返されると、組織全体の生産性低下や他の従業員への負担増加に直結します。

参考情報でも指摘されているように、欠勤・早退が続くことは「職場環境の悪化」や「周囲の従業員の士気を低下させ、人間関係を悪化させる可能性」があります。自身の業務が滞るだけでなく、カバーに入る同僚の業務負担が増え、残業を強いられるなど、チーム全体の不公平感や不満が高まる原因となります。結果として、チームワークが損なわれ、職場の雰囲気が悪化することも十分に考えられます。

状況に応じた柔軟な対応の必要性

欠勤・早退の許容範囲は、その理由や状況によって柔軟に判断されるべきです。例えば、インフルエンザなど感染症による欠勤、家族の緊急事態、あるいは医師の指示による休養などは、多くの企業で理解を得やすいでしょう。重要なのは、会社に対して正直に状況を伝え、相談する姿勢です。

もしメンタルヘルス不調が原因である場合、無理に出社を続けるよりも、医療機関を受診し、必要であれば診断書を提出して休養を取ることが、長期的な回復につながります。企業側も、従業員の健康管理は「安全配慮義務」としてその責任を負っています。したがって、従業員が自身の不調を会社に相談し、適切な対応を求めることは、決して後ろめたいことではありません。会社と協力し、より働きやすい環境を模索していくことが、問題を乗り越えるための賢明な道と言えます。

欠勤・早退が続くと会社に与える影響とは

生産性の低下と業務負荷の増加

従業員の欠勤や早退が頻繁に発生すると、会社全体にとって最も直接的な影響の一つが「生産性の低下」です。参考情報でも明記されているように、これにより「業務の遅延や、他の従業員への負担増加」が生じます。具体的な例として、あるプロジェクトの担当者が急に休むことで、その日の業務が滞り、納期が遅れるといった事態が挙げられます。

欠員が出た場合、その業務を他の従業員が一時的にカバーすることになりますが、これは既存の業務に加えて新たな負担が加わることを意味します。結果として、カバーする従業員の残業時間が増えたり、本来の業務の質が低下したりする可能性があります。長期的に見れば、これは組織全体の業務効率を著しく低下させ、企業競争力の低下にも繋がりかねません。特に少人数のチームや部署では、一人の欠勤が与える影響は非常に大きいと言えるでしょう。

職場環境の悪化と士気の低下

欠勤や早退が続くことは、目に見えない形で職場の雰囲気を悪化させ、従業員の士気を低下させる原因となります。参考情報にもあるように、「周囲の従業員の士気を低下させ、人間関係を悪化させる可能性」があります。頻繁に特定の従業員が休むことで、他の従業員には「なぜ自分ばかりが頑張っているのか」「不公平だ」といった不満や不信感が募りやすくなります。

このような不満が蓄積すると、チーム内の連携が円滑に行われなくなり、人間関係に摩擦が生じることもあります。また、欠勤・早退が多い従業員が戻ってきた際、周囲が以前と同じように協力的な態度を取りにくくなるなど、コミュニケーションにも悪影響を及ぼす可能性があります。結果として、職場の連帯感が失われ、全体的なモチベーションの低下に繋がり、良い職場環境を維持することが困難になってしまいます。

企業の法的リスクと離職率への影響

欠勤や早退が続く従業員への対応を誤ると、企業は「法的リスク」を負う可能性があります。特に、従業員の健康状態に起因する欠勤が多い場合、企業には「安全配慮義務」があり、従業員の心身の健康を確保するための適切な措置を講じる責任があります。これを怠ると、最悪の場合、安全配慮義務違反として訴訟問題に発展する可能性も否定できません。

また、欠勤・早退が続くことは、最終的に「離職率の増加」にも繋がります。参考情報によると、メンタルヘルス不調が原因で連続1ヶ月以上休業または退職した労働者がいた事業所の割合は2023年の調査で13.5%でした。さらに、2024年の離職者数は719万5千人、離職率は14.2%と依然として高い水準です。特に若手従業員の間では、メンタルヘルス不調による休職後に退職するケースが多いというデータもあります。企業が従業員の心身の健康問題に真摯に向き合い、適切なサポート体制を整えることは、優秀な人材の流出を防ぎ、安定した企業経営を維持するために不可欠な取り組みと言えるでしょう。

欠勤・早退が続く場合の具体的な対処法

自身の状況を正確に把握する

欠勤や早退が続き始めたら、まず自分自身の状況を正確に把握することが重要です。漠然と「体調が悪い」「やる気が出ない」と感じるだけでなく、具体的に何が原因で、いつ、どれくらいの期間、どのような症状が出ているのかを記録してみましょう。例えば、何時に寝て何時に起きているのか、食生活はどうなっているか、仕事でどのようなストレスを感じているのか、私生活で抱えている問題はないかなど、可能な限り詳細にメモを取ることをお勧めします。

この自己観察は、原因が身体的なものなのか、精神的なものなのか、あるいは私生活の問題なのかを特定するための第一歩となります。また、記録は後に医療機関を受診する際や、会社に相談する際に具体的な情報として役立ちます。例えば、特定の曜日に体調を崩しやすい、特定の業務がある日に早退しがち、といったパターンが見えてくるかもしれません。客観的な情報を得ることで、感情的にならずに問題と向き合い、適切な解決策を見つける手がかりとなります。

会社への適切な報告・相談

自身の状況を把握したら、次は会社への適切な報告と相談です。欠勤や早退をする際は、可能な限り早めに、そして正確な情報を伝えることが社会人としてのマナーであり、信頼関係を維持するために不可欠です。無断欠勤は絶対に避け、必ず直属の上司に連絡を入れるようにしましょう。連絡手段は会社の規定に従い、電話が基本となることが多いですが、メールでの補足も有効です。

報告の際には、ただ「休みます」だけでなく、体調や状況について簡潔に説明し、復帰の目安や、急ぎの業務があれば誰に引き継ぐかなどを伝えるように心がけましょう。もし、長期的な不調や精神的な問題が原因である場合は、上司だけでなく、人事担当者や産業医に相談することも検討してください。参考情報でも、欠勤・早退が続く従業員に対しては「まず本人に事情を確認することが重要」とされており、従業員側から積極的に情報提供と相談を行うことで、会社もサポート体制を整えやすくなります。早めの相談が、状況の悪化を防ぎ、会社との建設的な関係を築く鍵となります。

改善に向けた具体的な行動とコミットメント

会社に状況を報告・相談したら、次は改善に向けた具体的な行動を起こすことが重要です。ただ問題を伝えるだけでなく、「どう改善していきたいか」という意思とコミットメントを示すことで、会社もあなたのサポートにより積極的になります。例えば、医師の診断に基づいて治療計画を立て、それを会社に共有する、生活習慣の改善に取り組む、業務内容の調整が可能か相談するなど、具体的なアクションを提示しましょう。

もし、メンタルヘルス不調が原因であれば、産業医面談を通じて専門的なアドバイスを受けたり、必要に応じて業務量の調整や配置転換を検討してもらったりすることも可能です。参考情報に記載されている「セルフケア」は従業員自身が行うストレス管理ですが、これに加えて「ラインケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」といった企業のサポートを活用することも大切です。会社と協力し、自身の健康と業務遂行能力を両立させるための具体的な計画を立て、その実行に努める姿勢が、問題を乗り越え、再び安心して働けるようになるための重要なステップとなります。

心身の健康を守るためのセルフケアと相談先

効果的なセルフケアの実践

欠勤や早退の根本原因に対処するためには、日頃からのセルフケアが不可欠です。セルフケアとは、自分自身でストレスに気づき、対処する方法を身につけることを指します。参考情報でも「セルフケア」は、従業員自身が行うストレス管理として企業の「4つのケア」の一つに挙げられています。具体的な方法としては、まず十分な睡眠の確保が挙げられます。規則正しい生活リズムを心がけ、質の高い睡眠を7~8時間取るように努めましょう。

次に、バランスの取れた食生活も重要です。ビタミンやミネラルを豊富に含む食事を摂り、カフェインやアルコールの過剰摂取は避けることが望ましいです。また、適度な運動はストレス解消に非常に効果的です。ウォーキングやジョギング、ヨガなど、継続できる範囲で取り入れてみましょう。さらに、趣味の時間を持つ、リラックスできる音楽を聴く、瞑想を行うなど、自分なりのリフレッシュ法を見つけ、心身を休ませる時間を作ることも大切です。企業で実施が義務化されているストレスチェック制度も、自身のストレス状況を客観的に把握し、セルフケアに役立てる良い機会です。自分の心と体の声に耳を傾け、無理をしない生活を心がけることが、不調を未然に防ぐ第一歩となります。

社内外の専門機関への相談

一人で問題を抱え込まず、必要に応じて専門機関に相談することも非常に重要です。会社には、参考情報に示されている通り、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」として、産業医や保健師、カウンセラーといった専門家が配置されている場合があります。彼らは守秘義務を負っており、安心して心身の不調について相談できます。業務内容や職場環境の改善について、会社との橋渡し役を担ってくれることもあります。

また、会社に相談しにくい場合や、より専門的な支援が必要な場合は、「事業場外資源によるケア」として、外部の専門機関を利用することも検討しましょう。例えば、EAP(従業員支援プログラム)機関、心療内科や精神科、地域の精神保健福祉センター、こころの健康相談窓口、労働基準監督署の相談窓口などが挙げられます。これらの機関では、カウンセリングや治療、法律相談など、状況に応じた多様なサポートを受けることができます。ハラスメントが原因の場合は、企業内のハラスメント相談窓口や、社外の弁護士などに相談することも有効です。早期に専門家の力を借りることで、問題が深刻化する前に解決の糸口を見つけられる可能性が高まります。

早期発見・早期対処の重要性

心身の不調による欠勤や早退を防ぎ、問題を乗り越える上で最も大切なのは、早期発見と早期対処です。少しでも「いつもと違う」「調子が悪いな」と感じたら、そのサインを見過ごさないことが重要です。初期段階であれば、簡単なセルフケアや生活習慣の見直しで回復することも少なくありません。しかし、そのサインを放置し、無理を重ねてしまうと、症状が悪化し、長期的な休職や最悪の場合、離職に繋がってしまうリスクが高まります。

企業側も、従業員のわずかな変化に気づき、声かけやサポートを行う「ラインケア」が求められています。従業員自身も、不調を感じたら、「これくらいなら大丈夫」と我慢せず、積極的に上司や人事、産業医に相談するようにしましょう。早期に相談することで、企業も適切なサポートを提供しやすくなり、結果として従業員自身の心身の健康を守り、安心して働き続けられる環境を維持することができます。自分自身の健康は、何よりも大切な資本です。日頃から自身の心身の状態に意識を向け、適切なタイミングで行動を起こす勇気を持つことが、健やかな職業生活を送るための鍵となります。