概要: 本記事では、欠勤の定義から、言い換え・英訳、そして具体的な計算方法までを解説します。さらに、最低賃金や公務員における欠勤の取り扱いについても触れ、皆さまの疑問にお答えします。
欠勤の扱い方と計算方法:知っておきたい基本知識
ビジネスパーソンとして、予期せぬ事態で会社を休むことは誰にでも起こりえます。
しかし、その際の「欠勤」がどのように扱われ、給与にどう影響するのかを正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。
本記事では、欠勤に関する法的定義から計算方法、さらには知っておくべき注意点まで、分かりやすく解説していきます。
適切な知識を持つことで、いざという時に慌てず、会社との円滑なコミュニケーションを保つことにも繋がります。
ぜひ、この機会に欠勤の基本をマスターしましょう。
欠勤とは?法律上の定義と「欠勤扱い」になるケース
欠勤の法的定義と「ノーワーク・ノーペイ」原則
「欠勤」とは、従業員が予定された労働日に、正当な理由なく勤務しないことを指します。
労働基準法には欠勤に関する明確な定義は設けられていませんが、日本の労働法における基本的な考え方として「ノーワーク・ノーペイの原則」が適用されます。
これは「働いていない時間や日数分の給与は発生しない」という原則であり、欠勤の場合、その期間の給与は支払われないのが一般的です。
つまり、労働契約において労働者は労働を提供する義務があり、企業はそれに対して賃金を支払う義務があります。
労働者が労働を提供しない限り、企業は賃金を支払う義務がない、というのがこの原則の根幹にあります。
この原則に基づき、欠勤した日数や時間に応じて給与から控除が行われることになります。
この点が、後述する有給休暇との大きな違いとなります。
欠勤と年次有給休暇・その他の休暇との違い
欠勤を理解するためには、他の休暇制度との違いを明確にすることが重要です。
まず「年次有給休暇(有休)」は、労働基準法に基づき、一定期間継続勤務した労働者に与えられる休暇で、取得理由を問わず取得期間中も給与が支払われます。
政府は2025年までに有給休暇の取得率70%を目標としていますが、2023年度の取得率は65.3%と、まだ課題が残されています。
有給休暇は労働者の権利であり、欠勤とは異なり給与控除の対象にはなりません。
次に「休業・休職」は、病気や怪我、またはその他の理由で長期間勤務できない場合に、会社との雇用契約を維持したまま休む制度です。
欠勤とは異なり、給与の取り扱いや復職の手続きが事前に定められている点が特徴です。
そして「公休」は、会社の就業規則などで定められた、会社が休みとして指定する日(例:会社の創立記念日、夏季休暇など)であり、これも従業員の意思による欠勤とは異なります。
これらの休暇は、それぞれ異なる法的根拠や取り扱いを持つため、混同しないよう注意が必要です。
「欠勤扱い」となる具体的なケースとは
どのような状況で「欠勤扱い」となるのでしょうか。
最も典型的なのは、正当な理由なく会社に連絡せず休む「無断欠勤」です。
これは就業規則違反となり、懲戒処分の対象となる可能性が高いです。
また、病気や怪我で会社を休む場合でも、有給休暇の申請をせずに休んだり、有給休暇を使い切ってしまったりした場合は、欠勤扱いとなります。
会社によっては、傷病手当金などの制度がある場合もありますが、基本的には労働していない期間の給与は発生しません。
その他、遅刻や早退も、その時間分の労働が提供されていないため、広義では欠勤の一部として扱われ、給与から控除されることがあります。
例えば、公共交通機関の遅延など、やむを得ない理由であっても、それが会社の定める「正当な理由」に該当しない場合や、事前の連絡が不十分な場合は欠勤扱いになる可能性があります。
重要なのは、どのような理由であっても、事前に会社に連絡し、適切な手続きを踏むことです。
欠勤の言い換え表現と英語での表現(English)
ビジネスシーンでの丁寧な言い換え表現
「欠勤」という言葉は、やや事務的でネガティブな響きを持つことがあります。
ビジネスシーンで上司や取引先に伝える際には、より丁寧で円滑なコミュニケーションを促す言い換え表現を用いることが望ましいです。
例えば、病気や体調不良で休む場合は「体調不良のため、本日はお休みをいただきます」や「本日、休暇を取得させていただきます」といった表現が適切でしょう。
私用で休む場合も「私事で恐縮ですが、本日、お休みをいただきます」など、クッション言葉を加えることで、より丁寧な印象を与えられます。
「欠勤」と直接的に表現するよりも、「休暇」や「お休み」といった言葉を使うことで、相手に与える印象が柔らかくなります。
特にメールでの連絡では、件名に「【〇〇(氏名)】本日休業のご連絡」などと明記し、本文で具体的な理由(差し支えない範囲で)と、業務への影響、そして対応策を簡潔に伝えることがマナーです。
「ご迷惑をおかけいたしますが」といった一言を添えることで、相手への配慮を示すことも大切です。
「欠勤」の英語表現とそのニュアンス
英語で「欠勤」を表す言葉はいくつかあり、それぞれニュアンスが異なります。
最も一般的なのは「absence」で、単に「不在」や「欠席」を意味し、理由を問わない欠勤に使われます。
例えば、「I will be absent from work today. (本日、会社を欠勤します。)」のように使えます。
より常習的な欠勤や、正当な理由に乏しい欠勤を指す場合は「absenteeism」が用いられ、ややネガティブな響きがあります。
具体的な理由がある場合は、その理由に応じた表現を選ぶのが適切です。
病気による欠勤は「sick leave」、私用による欠勤は「personal leave」と表現します。
例えば、「I need to take a sick leave today. (本日、病欠させていただきます。)」や「I’d like to request a personal leave for tomorrow. (明日、私用のためお休みをいただきたいのですが。)」のように表現できます。
これらの表現を使い分けることで、より正確な情報を伝えることができます。
関連するビジネス用語との比較
英語のビジネスシーンでは、「欠勤」と関連するさまざまな用語があります。
「leave of absence」は、長期間の休職や休暇を指し、病気、育児、介護などの理由で数週間から数ヶ月、あるいはそれ以上会社を休む場合に用いられます。
日本の「休職」に近いニュアンスです。
一方、「vacation」は、私的な休暇や旅行のための長期休暇を指し、基本的に給与が支払われる有給休暇に相当します。
計画的に取得するもので、突発的な「欠勤(absence)」とは異なります。
また、「day off」は、週休日や祝日など、労働義務のない「休みの日」を指します。
日本でいう「公休」や、単に「休み」というニュアンスです。
これらの用語は、それぞれ異なる状況や制度を指すため、英語でのコミュニケーションにおいては正確な使い分けが求められます。
日本の「欠勤」のように、理由を問わず給与が控除されるというストレートな概念だけでなく、文化的な背景も考慮した表現選びが重要になります。
欠勤計算の基本:算定基礎と計算式を解説
欠勤控除の基本的な考え方と計算方法
欠勤控除は、従業員が予定された労働日に欠勤した場合、その欠勤日数に応じて給与から控除される金額です。
この控除は、前述の「ノーワーク・ノーペイ」の原則に基づいて行われます。
計算方法は企業ごとに就業規則や給与規定で定められていますが、一般的には以下のいずれかの方法が用いられます。
- 月平均の所定労働日数を用いる: 年間の総所定労働日数を12ヶ月で割った日数で、1日あたりの賃金を算出します。
- 該当月の所定労働日数を用いる: その月の所定労働日数(祝日や休日を除く)で、1日あたりの賃金を算出します。この方法だと、月によって欠勤控除額が変動します。
- 該当月の暦日数を用いる: その月の総日数(休日・祝日含む)で、1日あたりの賃金を算出します。
どの計算方法を採用するかによって、同じ日数欠勤しても控除額が変わる可能性があるため、自身の会社の規定を確認することが重要です。
特に、2番目の方法では、所定労働日数が多い月ほど1日あたりの賃金が低くなり、結果として控除額が少なくなる傾向があります。
具体的な計算例で理解を深める
具体的な計算例を通じて、欠勤控除の仕組みを見てみましょう。
例えば、月給30万円、1ヶ月の所定労働日数20日の従業員が2日欠勤した場合を想定します。
- まず、1日あたりの給与を算出します。
1日あたりの給与 = 月給 ÷ 1ヶ月の所定労働日数
1日あたりの給与 = 30万円 ÷ 20日 = 1万5,000円 - 次に、欠勤控除額を算出します。
欠勤控除額 = 1日あたりの給与 × 欠勤日数
欠勤控除額 = 1万5,000円 × 2日 = 3万円
この場合、給与から3万円が控除され、実際に支払われる給与は27万円となります。
また、遅刻や早退の場合も、基本的には「ノーワーク・ノーペイ」の原則に基づき、労働しなかった時間分だけ給与から控除されます。
計算方法としては、月給額をその月の総労働時間で割って、1時間あたりの賃金を算出し、遅刻・早退した時間分を控除するのが一般的です。
例えば、1時間あたりの賃金が1,875円(30万円 ÷ (20日 × 8時間))の場合、2時間遅刻すれば3,750円が控除されます。
手当やみなし残業代の取り扱いにおける注意点
欠勤控除を行う際には、手当やみなし残業代(固定残業代)の取り扱いにも注意が必要です。
基本的には、欠勤によって労働しなかった日数や時間に比例して発生しない手当(例:通勤手当、皆勤手当など)は控除の対象となり得ます。
しかし、役職手当のように労働日数に関わらず支給される手当は、原則として控除の対象にはなりません。
どの手当が控除の対象となるかは、企業の就業規則や給与規定に明記されている必要があります。
特に複雑なのが「みなし残業代(固定残業代)」です。
固定残業代は、一定時間分の残業を予め見込んで支給されるものですが、就業規則で定められていれば、欠勤控除の対象となることがあります。
ただし、その控除方法が合理的なものでなければなりません。
また、欠勤があった月でも、欠勤と関係なく発生した残業代(固定残業時間を超えた分など)は原則として支払う義務があります。
これらの取り扱いはトラブルに繋がりやすいため、企業は就業規則に詳細を明記し、従業員も内容をしっかり確認しておくことが重要です。
最低賃金、公務員の欠勤処分など、知っておくべき注意点
欠勤控除と最低賃金の関係
欠勤控除を行う上で、企業が絶対に遵守しなければならないのが「最低賃金」のルールです。
労働基準法に基づき定められている最低賃金は、労働者が受け取るべき賃金の最低額を保証するものです。
したがって、欠勤控除を行った結果、従業員に支払われる給与が、労働した時間に対する最低賃金を下回ることは許されません。
例えば、1日欠勤して給与が大幅に減額されたとしても、残りの労働時間に対して最低賃金を割り込むような控除は違法となります。
企業は、欠勤控除後の給与が、最低賃金法に定められた基準を満たしているか、常に確認する義務があります。
特に時給制や日給月給制の従業員の場合、欠勤控除が大きく影響しやすいため、注意が必要です。
万が一、最低賃金を下回る支払いをしてしまった場合、企業は労働基準監督署からの指導や罰則の対象となる可能性があります。
従業員自身も、給与明細を確認し、不当な控除がないかをチェックする習慣をつけましょう。
公務員と一般企業の欠勤処分の違い
公務員と一般企業では、欠勤の取り扱いや処分に違いが見られます。
公務員は、「職務専念義務」という特別な義務を負っており、正当な理由なく勤務しないことはこの義務違反となります。
そのため、欠勤が続くと、服務規律違反として「戒告」「減給」「停職」「免職」といった懲戒処分の対象となることがあります。
処分内容は欠勤の回数や期間、理由、職務への影響度によって異なりますが、一般企業よりも厳しい基準が設けられている場合が多いです。
一方、一般企業においても、度重なる欠勤や無断欠勤は就業規則違反となり、「減給」「出勤停止」「諭旨解雇」「懲戒解雇」などの懲戒処分の対象となり得ます。
ただし、公務員と異なり、個別の労働契約や企業の就業規則に則って対応されます。
いずれの場合も、欠勤が長期にわたる場合は、病気や精神疾患によるものとして、私傷病休職制度の適用や、医療機関への受診が促されるなど、従業員の健康状態にも配慮した対応が求められます。
欠勤が及ぼす会社への影響と法改正の動き
従業員の欠勤は、個人だけでなく会社全体にも大きな影響を及ぼします。
欠勤が増えれば、他の従業員の業務負担が増加し、職場の士気低下や生産性の低下に繋がります。
特に、2024年の調査では、メンタルヘルス関連の欠勤率が全体の平均で1.1%±1.0%と報告されており、心身の健康が欠勤に大きく関わっていることが示唆されています。
また、2024年5月1日時点の欠員率は調査産業計で3.6%と、一部の業界では人手不足が深刻であり、欠勤がさらにその状況を悪化させる可能性もあります。
このような背景から、国は働き方改革を推進しており、2025年には育児や介護のためのテレワーク導入が努力義務化されるなど、柔軟な働き方を促進する法改正が進んでいます。
企業は、従業員が欠勤せざるを得ない状況を減らすため、働きやすい環境整備や福利厚生の充実を図ることが求められています。
従業員もこれらの法改正や会社の制度を理解し、適切に活用することで、欠勤によるリスクを軽減し、自身のキャリアを守る意識を持つことが重要です。
欠勤に関するよくある質問(Q&A)
Q1: 病気で欠勤した場合、有給は使える?
はい、病気で欠勤した場合でも、年次有給休暇(有休)を使うことができます。
有給休暇は、労働基準法によって労働者に与えられた権利であり、その取得理由を会社が問うことは原則としてできません。
そのため、体調不良で会社を休む際に、自身に残っている有給休暇があれば、それを充当して申請することが可能です。
有給休暇として処理されれば、その日の給与は通常通り支払われますので、経済的な不安を軽減できます。
ただし、有給休暇の申請は、会社の定める手続きに従って行う必要があります。
多くの場合、事前に上司への連絡と、所定の申請書提出が求められます。
突発的な病欠であっても、できるだけ早く会社に連絡し、有給休暇として処理したい旨を伝えるようにしましょう。
会社によっては、病気休暇という独自の制度を設けている場合もありますので、就業規則を確認してみるのも良いでしょう。
Q2: 無断欠勤が続くとどうなる?解雇される?
無断欠勤は、就業規則における重大な違反行為であり、会社から懲戒処分を受ける可能性が非常に高いです。
一度の無断欠勤であれば、口頭注意や始末書の提出で済むこともありますが、無断欠勤が複数回続いたり、長期にわたったりすると、段階的に処分が重くなります。
具体的には、「減給」「出勤停止」といった処分を経て、最終的には「諭旨解雇」や「懲戒解雇」に至ることも十分にあり得ます。
会社は、無断欠勤の従業員に対し、電話やメール、書面などで連絡を取り、状況を確認する義務があります。
しかし、一定期間連絡が取れず、出社の見込みがないと判断された場合、就業規則に定められた手続きを経て解雇されます。
特に、2週間以上の無断欠勤で連絡が取れない場合は、多くの会社で懲戒解雇の対象となる基準とされています。
いかなる事情があっても、会社には必ず連絡を入れることが、自身の雇用を守る上で最も重要です。
Q3: 欠勤が多いと評価や賞与に影響する?
はい、欠勤が多いことは、従業員の評価や賞与に直接的、間接的に影響する可能性が高いです。
まず、評価面では、欠勤は「勤務態度」や「貢献度」といった項目にマイナス評価として反映されることが一般的です。
労働を提供できない期間が多ければ、当然ながらその分、業務への貢献度が低く評価されることになります。
特に、チームワークを重視する職場では、他のメンバーへの負担が増えるため、周囲からの評価も下がってしまう可能性があります。
次に賞与ですが、賞与は通常、査定期間中の個人の業績や勤務態度、会社への貢献度に基づいて支給額が決定されます。
欠勤が多いということは、これらの評価指標において不利に働くため、賞与の金額が減額される可能性が高いです。
一部の手当(皆勤手当など)が欠勤によって不支給になることもあります。
長期的な視点で見ても、欠勤が多いと昇進や昇給の機会を逃したり、キャリア形成に悪影響を及ぼしたりする可能性があるため、注意が必要です。
まとめ
よくある質問
Q: 「欠勤」とは具体的にどのような状況を指しますか?
A: 原則として、労働契約に基づき労働義務がある日に、正当な理由なく労働義務を免除された状態を指します。有給休暇などの正当な理由がある場合は、欠勤にはなりません。
Q: 欠勤の計算はどのように行われますか?
A: 欠勤の計算は、一般的に「基本給 ÷ 所定労働日数 × 欠勤日数」という計算式が用いられます。ただし、企業や就業規則によって異なる場合もあります。
Q: 「算定基礎」とは何ですか?
A: 算定基礎とは、社会保険料や賞与などの計算の元となる、従業員の給与や手当などの総額を指します。欠勤によってこの算定基礎額が変動することがあります。
Q: 公務員の場合、欠勤で処分を受けることはありますか?
A: はい、公務員も原則として労働契約に基づき勤怠義務があります。正当な理由のない長期の欠勤などは、懲戒処分につながる可能性があります。国家公務員、地方公務員ともに規則に基づき扱われます。
Q: 欠勤の代わりに使える言葉はありますか?
A: 欠勤の代わりに「休暇」「休務」といった言葉が使われることがあります。英語では「absence」や「absenteeism」などが該当します。
