欠勤と休職の違いを徹底解説!有給・傷病手当・控除についても

「会社を休む」と一言でいっても、そこには「欠勤」と「休職」という、法的な位置づけも影響も大きく異なる2つの概念があります。
それぞれの違いを正しく理解していなければ、給与や手当、さらには社会保険の取り扱いにまで影響が及ぶ可能性があります。

本記事では、この「欠勤」と「休職」の明確な違いから、有給休暇の取得状況、傷病手当金の支給条件、そして欠勤控除の仕組みまで、最新のデータや情報を交えて徹底的に解説します。
自身の権利や会社の制度について正しく認識し、いざという時に困らないための知識を身につけましょう。

欠勤と休職の基本的な違いとは?

会社を休む行為には、大きく分けて「欠勤」と「休職」があります。この二つは、労働者にとっての義務や権利、そして会社からの待遇が大きく異なります。

欠勤の定義と「ノーワーク・ノーペイ」の原則

欠勤とは、労働義務のある日に、正当な理由なく(または有給休暇などを取得せずに)仕事を休むことを指します。
例えば、寝坊して連絡もせずに出社しなかった場合や、体調不良で休んだものの有給休暇を使わなかった場合などがこれにあたります。

日本の労働法においては、労働者が労働を提供し、その対価として会社が賃金を支払うという「ノーワーク・ノーペイの原則」が基本です。
そのため、欠勤した時間や日数分の賃金は、原則として支払われません。これは、労働契約上の労務提供義務の不履行と見なされるためです。
法律上の明確な定義があるわけではありませんが、この原則が欠勤時の賃金控除の根拠となっています。

したがって、単なる連絡不足や個人的な理由で出社しなかった場合、その日の給与が差し引かれることになります。
無断欠勤を繰り返せば、就業規則に基づいて懲戒処分の対象となる可能性もありますので注意が必要です。

休職の定義と雇用契約の維持

一方、休職とは、労働者側の個人的な事情(病気、ケガ、家庭の事情など)により、雇用契約を維持したまま、会社から労働の義務を免除されることを指します。
休職は、会社が従業員の長期的な療養や特別な事情を考慮し、復職を前提として一定期間の労働義務を免除する制度です。

通常、休職は企業の就業規則等で休職事由や手続きが定められており、正式な申請と会社の承認が必要となります。
その期間は数ヶ月から1年以上にも及ぶことがあり、その間は基本的に給与の支払いはありません。
しかし、健康保険の傷病手当金や育児休業給付金など、社会保険制度を利用できる場合があります。

欠勤と異なり、休職期間中は「労務提供義務が免除」されているため、労働者は会社からの労働の要請に応じる必要がありません。
これは、従業員が安心して療養や私的な問題の解決に専念できるよう、会社が配慮する制度と言えるでしょう。

両者の主要な違いを比較表で理解する

欠勤と休職の主な違いを以下の表にまとめました。この比較を通じて、それぞれの特徴をより深く理解しましょう。

項目 欠勤 休職
理由 正当な理由なく(または有給休暇等不使用) 個人的な事情(病気、ケガ、家庭の事情など)
期間 短期間(ほぼ1日単位) 長期間(数ヶ月~1年以上)
手続き 基本的に申請なく勤務しない(事後連絡が多い) 正式な申請と承認が必要(就業規則等に定められる)
給与 原則無給(ノーワーク・ノーペイ) 原則無給(ただし、傷病手当金等の可能性あり)
労務提供義務 不履行 免除
雇用契約 継続(義務不履行) 維持(義務免除)

この表からも分かるように、最も大きな違いは「労務提供義務の有無」と「会社からの承認の必要性」です。
休職は会社の承認を得て義務が免除されるため、その間の雇用契約は維持されますが、欠勤は義務が不履行となるため、従業員側の責任が問われることになります。

有給休暇と欠勤の関係性

労働者の権利である有給休暇は、欠勤を避けるための重要な手段です。有給休暇を適切に利用することで、予期せぬ欠勤を防ぎ、安心して休むことができます。

有給休暇の目的と取得状況の現状

有給休暇(年次有給休暇)は、労働者が心身をリフレッシュし、ゆとりある生活を送るために付与される、賃金が支払われる休暇です。
労働基準法で定められた労働者の権利であり、取得理由を会社に伝える義務はありません。

近年、有給休暇の取得率は着実に上昇しています。
厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、2023年度(令和5年度)の年次有給休暇取得率は62.1%で、これは過去最高を記録しました。
さらに、2024年度(令和6年度)の調査では、取得率が65.3%となり、9年連続で上昇し、こちらも過去最高となっています。

産業別に見ると、2022年度の調査では「複合サービス業」(72.4%)、「電気・ガス・熱供給・水道業」(71.4%)、「情報通信業」(63.2%)の取得率が高かった一方で、「宿泊業、飲食サービス業」(44.3%)、「卸売業、小売業」(49.5%)では低い傾向が見られました。
業種による差は依然として存在しますが、全体としては有給休暇が取りやすい環境が広がりつつあると言えるでしょう。

有給休暇を使わず休むとどうなる?

急な体調不良や家庭の事情などで会社を休む際、もし有給休暇を使わずに休むことを選択した場合、その日は「欠勤」扱いとなります。
前述の「ノーワーク・ノーペイの原則」が適用されるため、その日の賃金は給与から控除されることになります。

例えば、月給30万円で月の所定労働日数が20日の人が、有給を使わずに1日休んだ場合、単純計算で1万5千円(30万円 ÷ 20日)が給与から差し引かれることになります。
さらに、皆勤手当や精勤手当など、出勤率を要件とする手当がある会社では、欠勤によってこれらの手当が不支給となる可能性もあります。

有給休暇の残日数があるにも関わらず、それを消化せずに欠勤を選ぶことは、金銭的な損失に直結します。
そのため、体調不良などで休む際には、まず有給休暇の残日数を確認し、積極的に取得することが賢明な選択と言えるでしょう。

計画的な有給取得が重要な理由

計画的な有給休暇の取得は、労働者自身の心身の健康維持だけでなく、企業全体の生産性向上にも繋がります。
まず、定期的な休暇はストレス軽減やリフレッシュ効果が高く、精神的・肉体的な疲労回復に役立ちます。
これにより、業務への集中力やモチベーションが維持され、結果的に生産性の向上に貢献します。

また、計画的に有給休暇を取得することで、予期せぬ病欠などの「欠勤」を減らすことができます。
突然の欠勤は、業務の滞りや他の従業員への負担増大を招きやすいですが、前もって休暇を申請していれば、会社側も業務調整や人員配置を計画的に行うことが可能です。

2019年4月からは、労働基準法の改正により、企業は年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、年5日の有給休暇を時季を指定して取得させる義務が課せられています。
これは、従業員の心身の健康維持と、企業の労働環境改善を目的としたものです。
労働者自身も、計画的に有給休暇を申請し、この制度を最大限に活用することが重要です。

傷病手当金は欠勤・休職でどう違う?

病気やケガで仕事を休まざるを得ない時に、生活を支える大切な制度が「傷病手当金」です。欠勤と休職、どちらの場合でも適用され得るこの制度について、詳しく見ていきましょう。

傷病手当金の基本的な支給条件

傷病手当金は、健康保険の被保険者が、業務外の病気やケガのために仕事を休んでおり、その期間中に給与の支払いがない場合に、被保険者とその家族の生活を保障するために支給される制度です。
仕事中や通勤途中の災害による場合は、労災保険の対象となるため、傷病手当金の対象外となります。

主な支給条件は以下の通りです。

  1. 業務外の病気やケガであること:仕事や通勤とは無関係の病気やケガが原因である必要があります。
  2. 連続する3日間の休業を含む、4日以上仕事を休んでいること:「待機期間」と呼ばれる連続する3日間(土日祝含む)の休業が必要です。この待機期間は支給対象外ですが、4日目以降の休業が支給対象となります。
  3. 休業期間中に給与の支払いがないこと:会社から給与が支払われないことが原則です。ただし、給与が傷病手当金の額より少ない場合は、その差額が支給されることがあります。
  4. 労務不能であること:医師の意見に基づき、仕事に就くことができない状態であると認められること。

また、退職後でも、一定の条件(資格喪失日までに1年以上の被保険者期間がある、資格喪失時に受給している、または受給条件を満たしているなど)を満たせば受給できる場合があります。
支給期間は、支給開始日から最長1年6ヶ月です。

欠勤期間中に傷病手当金は適用される?

病気やケガで仕事を休んだ場合、それが数日間の「欠勤」であっても、傷病手当金の支給条件を満たせば申請・受給が可能です。
例えば、インフルエンザで連続5日間会社を休み、その期間中に有給休暇を消化せず欠勤扱いになった場合、前述の「待機期間」を含めて4日目以降の休業分について、傷病手当金の対象となります。

重要なのは、あくまで「給与の支払いがないこと」という条件を満たしているかどうかです。
有給休暇を取得して給与が支払われている期間は、傷病手当金は支給されません。
もし有給休暇を使い切ってしまい、その後も病気で休まざるを得ない場合は、欠勤扱いとなり、傷病手当金の申請を検討することになります。

申請には、医師の診断書や事業主の証明などが必要となるため、休業が決まったら速やかに会社や加入している健康保険組合に相談し、手続きに必要な書類を確認しましょう。
適切な手続きを踏むことで、欠勤期間中の経済的な不安を軽減することができます。

休職期間中の傷病手当金の活用

休職は、多くの場合、長期にわたる病気やケガが原因で労働が困難になった際に利用されます。
この休職期間中は、原則として会社からの給与支給がないため、傷病手当金が生活を支える非常に重要な制度となります。
休職が会社の就業規則に基づいて正式に承認されていれば、支給条件を満たしている限り、安心して傷病手当金を受給しながら療養に専念できます。

特に、メンタルヘルス不調による休職が増加傾向にある現代において、この手当金の存在意義は大きいです。
厚生労働省の「労働安全衛生調査」によると、2022年(令和4年)には、メンタルヘルス不調で連続1ヶ月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10.6%にも上ります。
こうした長期休業において、傷病手当金は精神的な安定と回復への専念を可能にする経済的基盤となります。

申請にあたっては、医師の証明が必須となるため、定期的に診察を受け、自身の病状を正確に診断してもらうことが大切です。
また、会社の人事担当者と密に連携を取り、必要書類の提出期限や、休職期間と手当金支給期間の整合性などを確認しながら手続きを進めましょう。
適切な利用により、休職期間を乗り越え、スムーズな職場復帰を目指すことができます。

欠勤控除の仕組みと育休・産休・時短勤務との関係

欠勤控除は「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、給与から欠勤分の賃金を差し引く制度です。しかし、育児休業や産前産後休業、時短勤務とはその性質が異なります。

欠勤控除の基本的な計算方法

欠勤控除とは、従業員が労働義務のある日に欠勤した場合、その日数分(または時間分)の賃金を給与から差し引くことです。
これは、前述の「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づいて行われます。

具体的な計算方法は企業によって若干異なる場合がありますが、一般的には以下のいずれかの方法が用いられます。

  • 月給制の場合:
    月給を1ヶ月の所定労働日数(または年間所定労働日数を12で割った平均日数)で割り、1日あたりの賃金を算出します。
    その1日あたりの賃金に欠勤日数分を乗じて、控除額を計算します。
    例:月給30万円、月の所定労働日数20日の場合、1日あたりの賃金は15,000円。2日欠勤すれば30,000円が控除されます。
  • 時給制・日給制の場合:
    欠勤した時間や日数分の賃金がそのまま差し引かれます。

また、欠勤控除の対象となるのは基本給だけでなく、通勤手当、住宅手当、役職手当、皆勤手当などの各種手当も対象となる場合があります。
どの手当が控除の対象となるかは、企業の就業規則や給与規程に定められていますので、事前に確認しておくことが重要です。
明確な規程がない場合や、不明確な規定は労使トラブルの原因となりかねないため、企業側は従業員への周知を徹底する必要があります。

育児休業・産前産後休業中の賃金と控除

育児休業(育休)産前産後休業(産休)は、子育て支援を目的とした労働者の権利であり、欠勤とは根本的に異なる性質を持ちます。
これらの休業期間中は、労働基準法や育児・介護休業法に基づき、労働義務が免除されます。

休業期間中は、原則として会社からの給与は支払われません。
しかし、これは欠勤による賃金控除とは異なり、そもそも労働の提供がないため給与が発生しないという形になります。
その代わり、労働者の生活保障のため、公的な給付金制度が設けられています。
具体的には、「出産手当金(産休中)」「育児休業給付金(育休中)」などがこれにあたります。

これらの給付金は、雇用保険や健康保険から支給されるもので、企業が給与から控除するものではありません。
育休・産休は、労働者が安心して子育てに専念できるための重要な制度であり、欠勤とは区別されるべきものです。
企業はこれらの休業を理由に従業員に不利益な取り扱いをしてはなりません。

時短勤務と欠勤控除の適用

時短勤務(短時間勤務制度)は、育児や介護を行う労働者が、所定労働時間を短縮して働く制度です。
これは、労働時間を短縮した分、賃金が減額されるというものであり、欠勤控除とは全く異なります。
時短勤務は、労働義務の一部を免除するのではなく、所定労働時間そのものを短縮し、その短縮された時間分の労働に対して賃金が支払われない、という仕組みです。

例えば、1日8時間労働の人が6時間勤務の時短制度を利用した場合、2時間分の賃金が支払われないのは、その2時間は労働義務がないためです。
これは欠勤ではなく、契約に基づく労働時間の変更とそれに伴う賃金変動と理解されます。

ただし、時短勤務の日にさらに休む場合、例えば時短勤務の日に体調不良でまったく出勤しなかった場合は、その日の「欠勤」に対する控除が発生する可能性があります。
この場合も、有給休暇を使えば賃金の控除を避けることができます。
時短勤務中の従業員が、通常の労働者と同様に有給休暇を取得することも可能ですので、適切な制度の利用を心がけましょう。

欠勤・休職の届け出方法と注意点

急な欠勤や長期の休職が必要になった際、適切な手続きを踏むことは、スムーズな対応と自身の権利を守る上で非常に重要です。会社との良好な関係を保つためにも、正しい届け出方法と注意点を理解しておきましょう。

欠勤時の適切な連絡と手続き

急な体調不良や家庭の事情などで欠勤する際は、速やかに会社に連絡することが最も重要です。
無断欠勤は、会社の業務に大きな支障をきたすだけでなく、就業規則違反となり、懲戒処分の対象となる可能性もあります。
「連絡は必ず本人が」「午前〇時までに」といった会社のルールがある場合が多いため、日頃から就業規則を確認しておくことが大切です。

連絡方法は、緊急性に応じて電話が最も望ましいとされていますが、会社の規定によってはメールやチャットツールでも許容される場合があります。
連絡先は、直属の上司が基本ですが、上司が不在の場合は代理の方や人事担当者に連絡しましょう。
連絡時には、「欠勤する旨」「おおよその復帰予定」「業務の引き継ぎ状況」などを簡潔に伝えるように心がけます。

また、欠勤理由によっては、後日診断書の提出を求められる場合もあります。
特に、数日間にわたる欠勤が続く場合は、事前に会社に確認し、必要な書類を準備しておくと良いでしょう。
適切な連絡と手続きは、会社との信頼関係を維持し、自身の評価を守る上で不可欠です。

休職申請の流れと必要書類

休職は、欠勤と異なり、正式な申請と会社の承認が必須となる長期的な制度です。
一般的に、休職申請は以下のような流れで進められます。

  1. 相談・意思表示: まずは直属の上司や人事担当者に、休職を検討している旨を相談します。
  2. 医療機関の受診・診断書取得: 病気やケガが理由の場合、医師の診断を受け、休職の必要性を示す診断書を取得します。診断書には、病名、症状、療養期間の目安、労務不能である旨が記載されている必要があります。
  3. 休職願の提出: 会社の指定する書式で休職願を作成し、診断書などの必要書類を添えて提出します。休職願には、休職理由、希望期間、復職予定日などを記載します。
  4. 会社との面談・審査: 会社側と休職期間、復職後の条件、傷病手当金などの社会保険の申請について面談を行います。会社は提出された書類や面談内容を基に、休職を承認するかどうかを審査します。
  5. 休職命令・承認: 会社が休職を承認した場合、休職命令書や通知書が交付され、正式に休職期間に入ります。

休職期間中も、定期的に会社への状況報告や、場合によっては定期的な医師の診断書提出が求められることがあります。
復職時には、復職可否診断書や産業医との面談が必要になることも多いため、就業規則をよく確認し、計画的に準備を進めることが重要です。

メンタルヘルス不調による休業・休職への対応

近年、メンタルヘルス不調による休業や退職が増加傾向にあります。
厚生労働省の「労働安全衛生調査」によると、2022年(令和4年)には、メンタルヘルス不調で連続1ヶ月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10.6%、退職した労働者がいた事業所は5.9%でした。
2023年(令和5年)の調査でも、休業した労働者がいた事業所の割合は10.4%となっており、依然として多くの企業がこの問題に直面しています。

メンタルヘルス不調は、早期発見と早期対応が非常に重要です。
もし自身や周囲の人が、倦怠感、不眠、食欲不振、気分の落ち込みといった症状に気づいたら、一人で抱え込まず、速やかに専門機関や会社の相談窓口を利用しましょう。
会社によっては、産業医や保健師による面談制度、社外のカウンセリングサービスなどを設けている場合があります。

休職が必要になった場合でも、会社は従業員の心身の健康をサポートする義務があります。
残業時間の削減、休暇取得の促進、相談窓口の設置といった対策は、企業が従業員のメンタルヘルスを守る上で不可欠です。
労働者側も、これらの制度を積極的に活用し、専門家の助言を得ながら安心して療養に専念することが、回復への近道となります。