欠勤すると給料はどうなる?減額計算と知っておくべきこと

「体調が悪くて会社を休んでしまった…」「子供が熱を出して早退したけど、給料ってどうなるんだろう?」

日々の生活の中で、やむを得ず会社を休んだり、遅刻・早退したりすることは誰にでも起こり得ます。そんな時、一番気になるのが「お給料」のことではないでしょうか。

本記事では、欠勤時の給与がどのように減額されるのか、その計算方法や知っておくべき重要なポイントをわかりやすく解説します。あなたの疑問を解消し、安心して仕事に取り組めるよう、ぜひ最後までお読みください。

  1. 欠勤とは?給料との関係性
    1. 欠勤の定義と「ノーワーク・ノーペイの原則」
    2. 給料が減額される理由と法的根拠
    3. 欠勤と混同しやすい休暇・休業の種類
  2. 欠勤控除とは?計算方法と減額される理由
    1. 欠勤控除の基本的な考え方と目的
    2. 一般的な欠勤控除の計算方法を解説
    3. 控除の対象となる給与項目・ならない給与項目
  3. 欠勤控除はいくら減る?具体的な計算例
    1. 月給制の場合の計算シミュレーション
    2. 遅刻・早退の場合の控除計算例
    3. 残業代や手当への影響と注意点
  4. 欠勤しても給料が減らないケースとは?
    1. 最も重要な「年次有給休暇」の活用
    2. 会社都合による休業や特定の休暇制度
    3. 病気や怪我による休業と傷病手当金
  5. 欠勤控除の疑問を解決!よくある質問
    1. Q1: 就業規則に規定がない場合はどうなる?
    2. Q2: 欠勤控除後の給与が最低賃金を下回ってはいけない?
    3. Q3: 税金や社会保険料への影響は?
    4. Q4: 勤怠管理システム導入のメリットは?
    5. Q5: 欠勤控除額の端数処理はどうする?
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 欠勤控除とは何ですか?
    2. Q: 欠勤した場合、給料はどのように計算されますか?
    3. Q: 欠勤控除で給料がいくら減るか知る方法は?
    4. Q: 欠勤しても給料が減らないことはありますか?
    5. Q: 欠勤控除の計算方法について、厚生労働省や法律で定められた基準はありますか?

欠勤とは?給料との関係性

仕事をしていると、どうしても会社を休まざるを得ない状況に直面することがあります。しかし、一口に「休む」と言っても、それが給与にどう影響するかは、その休みの種類によって大きく異なります。

ここでは、欠勤の基本的な定義から、給与が減額される理由の根幹となる考え方、そして混同しがちな他の休暇制度との違いについて解説していきます。

欠勤の定義と「ノーワーク・ノーペイの原則」

「欠勤」とは、労働者が所定の労働日に、会社からの承認を得ずに労働義務を履行しないことを指します。これは、病気や家庭の事情など、様々な個人的な理由で発生するものです。

欠勤は、労働契約で定められた労働義務を履行しなかったと見なされるため、原則として、その分の賃金は支払われません。この考え方の根拠となるのが、労働法の基本的な考え方の一つである「ノーワーク・ノーペイの原則」です。

ノーワーク・ノーペイの原則とは、「労働者が労務を提供しない限り、使用者は賃金を支払う義務がない」という考え方を示します。つまり、働いていない時間や日数に対しては、給与を支払う必要がないという原則です。

ただし、この原則が適用されるのは、基本的に労働者側に原因がある場合です。会社都合による休業や、法的に保障された休暇(年次有給休暇など)は、この原則の対象外となります。

自分の体調不良や家庭の事情で会社を休んだ場合、この原則が適用され、欠勤した分の給与が差し引かれることになります。この点を理解しておくことが、給与計算の仕組みを把握する上で非常に重要です。

給料が減額される理由と法的根拠

欠勤によって給料が減額される最大の理由は、先ほども触れた「ノーワーク・ノーペイの原則」にあります。

企業と労働者は、労働契約を結び、労働者は労働を提供し、企業はその対価として賃金を支払うという関係にあります。この契約に基づき、労働者が労働を提供しない限り、企業は賃金を支払う義務を負わないというのが基本的な考え方です。

法律上、欠勤控除の計算方法について明確な定めはありません。しかし、労働基準法は、賃金は労働の対価であると定めており、働かなかった分の賃金を支払わないことは、この法の趣旨に反しないと解釈されています。

そのため、多くの企業では就業規則において、欠勤した場合の給与の取り扱い(欠勤控除の方法など)を明確に定めています。就業規則は、労働条件に関するルールを定めたものであり、従業員に周知されている限り、法的な効力を持つのが一般的です。

もし就業規則に欠勤控除に関する規定がない場合、原則として企業は一方的に給与を減額することはできません。しかし、実際には多くの企業で「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、欠勤控除が行われています。

自分の会社の就業規則を確認し、欠勤時の給与の取り扱いについて理解しておくことが、思わぬトラブルを避けるためにも非常に重要だと言えるでしょう。

欠勤と混同しやすい休暇・休業の種類

「会社を休む」という状況は様々であり、それが「欠勤」と見なされるかどうかは、その休みの種類によって異なります。特に、給与の扱いに大きな影響を与えるのが、以下の休暇・休業制度です。

  • 年次有給休暇(有給): 労働基準法で定められた労働者の権利であり、取得しても給与が減額されることはありません。労働を提供しなかった日でも、賃金は支払われます。
  • 特別休暇(慶弔休暇など): 法律で定められたものではなく、会社が独自に設ける休暇制度です。結婚や忌引きなど、特定の事由に対して付与されます。給与の有無は会社の就業規則によりますが、有給とすることが多いです。
  • 育児休業・介護休業: 育児介護休業法に基づき、法律で保障された休業期間です。給与は支払われませんが、雇用保険から育児休業給付金や介護休業給付金が支給されます。
  • 病気休暇・生理休暇: 法律で取得が認められていますが、有給とするか無給とするかは会社の就業規則によります。
  • 休職: 長期にわたる病気や怪我、自己都合などにより、労働契約を維持したまま一時的に労働義務を免除される期間です。原則として給与は支給されません。

これらと「欠勤」を混同してしまうと、給与の扱いや自身の権利を正しく理解できなくなってしまいます。

特に年次有給休暇は、給与が保障される唯一の「休み」であるため、積極的に活用することが推奨されます。2023年度の年次有給休暇取得率は65.3%と年々上昇しており、政府も2025年度までに70%以上の取得率を目指しています。自分の権利を正しく理解し、賢く利用することが大切です。

欠勤控除とは?計算方法と減額される理由

欠勤控除は、給与計算において非常に重要な要素です。正しく理解していないと、いざという時に「なぜこんなに給料が少ないんだろう?」と戸惑ってしまうかもしれません。

ここでは、欠勤控除の基本的な考え方から、一般的に用いられる計算方法、そして給与のどの項目が控除の対象となるのかについて詳しく見ていきましょう。

欠勤控除の基本的な考え方と目的

欠勤控除とは、労働者が所定労働日に欠勤、遅刻、早退などによって労働義務を履行しなかった場合に、その分の賃金を差し引く制度のことです。

この制度の根底には、前述の「ノーワーク・ノーペイの原則」があります。企業は、労働者が提供した労働の対価として賃金を支払うため、労働が提供されなかった時間については賃金を支払わないという考え方に基づいています。

欠勤控除の主な目的は、公平な賃金支払いを実現することにあります。労働時間に応じて賃金を支払うことで、労働者間の公平性を保ち、また、企業は実際に提供された労働に対してのみコストを負担するという合理的な経営を行います。

欠勤控除は、法律で具体的な計算方法が義務付けられているわけではありませんが、多くの企業で就業規則にそのルールが明記され、運用されています。これは、労働者と企業の間での賃金に関する認識の齟齬を防ぎ、トラブルを未然に防ぐためにも非常に重要です。

もし、あなたの会社で欠勤控除のルールが不明瞭な場合は、就業規則を確認するか、人事労務担当者に確認してみることをお勧めします。

一般的な欠勤控除の計算方法を解説

欠勤控除の計算方法には、法律上の明確な定めはありませんが、一般的には以下のいずれかの方法が採用されることが多いです。企業によってどの計算方法を用いるかは異なるため、ご自身の会社の就業規則を確認することが最も確実です。

  1. 月給を1ヶ月の所定労働日数で割る方法(日割り)

    計算式:月給 ÷ 1ヶ月の所定労働日数 × 欠勤日数

    この方法は、1日あたりの賃金を算出し、それに欠勤日数を乗じて控除額を求めるものです。最もシンプルで分かりやすい計算方法の一つです。

    例えば、月給30万円、1ヶ月の所定労働日数20日の月に2日欠勤した場合、1日あたりの給与は「30万円 ÷ 20日 = 1.5万円」となります。したがって、欠勤控除額は「1.5万円 × 2日 = 3万円」となります。

  2. 月給を1ヶ月の平均所定労働時間で割る方法(時間割り)

    計算式:月給 ÷ 1ヶ月の平均所定労働時間 × 遅刻・早退した時間

    遅刻や早退など、1日未満の単位で労働時間が不足した場合に用いられます。1時間あたりの賃金を算出し、その時間分を控除します。1ヶ月の平均所定労働時間は、年間の所定労働時間を12で割るなどして算出されます。

  3. 年間日数から年間所定休日数を引いて12で割る方法

    計算式:(365日 - 年間所定休日数) ÷ 12ヶ月 × 月給

    これは、1日あたりの欠勤控除額を算出するための、やや複雑な計算方法です。年間を通じて安定した日割り額を算出するために用いられることがあります。

どの計算方法を採用するにしても、就業規則に欠勤控除に関するルールを明確に記載し、従業員に周知徹底することが企業には求められます。また、労働者側も自身の会社のルールを理解しておくことが重要です。

控除の対象となる給与項目・ならない給与項目

欠勤控除は、すべての給与項目から一律に差し引かれるわけではありません。控除の対象となるものと、ならないものがあります。

【控除の対象となる可能性のあるもの】

  • 基本給: ほとんどの場合、欠勤控除の対象となります。
  • 各種手当(通勤手当、役職手当、精勤手当など): 手当の種類によって控除の対象となるか否かが異なります。
    • 通勤手当: 欠勤した日は通勤が発生しないため、日割りで控除されることがあります。
    • 役職手当・職務手当: 職務の対価として支払われるため、欠勤しても控除されないケースと、欠勤日数に応じて控除されるケースがあります。
    • 精勤手当: 欠勤した場合は、当然ながら支給対象外となるか、減額されます。

【控除の対象にならないもの】

  • 年次有給休暇を取得した日: 有給休暇は、取得しても給与が減額されないため、欠勤控除の対象にはなりません。
  • 休職・休業期間(育児休業、介護休業など): これらの期間は、そもそも給与の支払いが停止されることが多く、欠勤控除という形で減額されるわけではありません(ただし、給付金などで生活が保障される場合があります)。
  • 会社都合による休業: 自然災害や経営判断など、労働者側に責任のない理由で会社が休業した場合、企業は原則として賃金の6割以上の休業手当を支払う義務があります。この場合も、欠勤控除の対象にはなりません。
  • 家族手当、住宅手当など: これらの手当は、生活保障的な意味合いが強いため、欠勤しても控除対象外とする企業が多いです。ただし、これも企業の就業規則によって異なります。

このように、欠勤控除の対象となる項目は一律ではありません。ご自身の給与明細と就業規則を照らし合わせ、どの項目がどのように扱われるのかを把握しておくことが大切です。

欠勤控除はいくら減る?具体的な計算例

欠勤控除の計算方法は理解したものの、実際に自分の給与で計算してみないと、具体的なイメージが湧きにくいかもしれません。ここでは、具体的な数字を挙げて計算シミュレーションを行い、残業代や手当への影響についても見ていきます。

月給制の場合の計算シミュレーション

ここでは、最も一般的な「月給 ÷ 1ヶ月の所定労働日数 × 欠勤日数」の計算方法を例に、具体的な減額シミュレーションを行います。

【例】

  • あなたの月給: 30万円
  • 1ヶ月の所定労働日数: 20日(月の労働日数は企業によって異なりますが、週休2日の場合、約20~22日となることが多いです)
  • 欠勤日数: 2日

【計算手順】

  1. 1日あたりの給与を算出します。
    月給 ÷ 1ヶ月の所定労働日数 = 1日あたりの給与
    30万円 ÷ 20日 = 15,000円
  2. 欠勤控除額を算出します。
    1日あたりの給与 × 欠勤日数 = 欠勤控除額
    15,000円 × 2日 = 30,000円

この場合、あなたの月給から3万円が欠勤控除として差し引かれることになります。つまり、欠勤した月の支給額は、基本給から3万円が引かれた27万円をベースに、他の手当や税金・社会保険料が計算されることになります。

たった2日の欠勤でも、給与への影響は意外と大きいと感じるかもしれません。しかし、これは「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づいた正当な控除であり、企業は労働者が労働しなかった分の賃金を支払う義務がないため、理解しておくことが大切です。

遅刻・早退の場合の控除計算例

欠勤だけでなく、遅刻や早退といった短時間の労働不足も、欠勤控除の対象となります。この場合は、1時間あたりの賃金を算出して控除額を計算するのが一般的です。

【例】

  • あなたの月給: 30万円
  • 1ヶ月の平均所定労働時間: 160時間(これは、例えば年間所定労働時間が1920時間の場合、「1920時間 ÷ 12ヶ月 = 160時間」と算出されます)
  • 遅刻時間: 3時間

【計算手順】

  1. 1時間あたりの賃金を算出します。
    月給 ÷ 1ヶ月の平均所定労働時間 = 1時間あたりの賃金
    30万円 ÷ 160時間 = 1,875円(円未満は就業規則に基づき処理されますが、原則として切り捨て)
  2. 遅刻控除額を算出します。
    1時間あたりの賃金 × 遅刻時間 = 遅刻控除額
    1,875円 × 3時間 = 5,625円

この場合、あなたの月給から5,625円が遅刻控除として差し引かれることになります。

このように、時間単位の欠勤控除も、積み重なると無視できない金額になります。日々の勤怠管理をしっかり行うことが、給与を守る上でも重要です。

最近では、PCやスマートフォン、ICカード、生体認証など多様な打刻方法に対応した勤怠管理システムを導入する企業も増えており、正確な勤怠記録と給与計算の効率化に貢献しています。

残業代や手当への影響と注意点

欠勤した月でも、残業代やその他の手当への影響はどのようなものがあるのでしょうか。いくつか注意すべき点があります。

1. 残業代の支払いについて

欠勤した月であっても、実際に法定労働時間を超えて労働した時間があれば、その分の残業代は支払われます。欠勤控除は、あくまで「労働しなかった時間」に対するものなので、「労働した時間」に対する残業代は、別途計算され支給されます。

ただし、固定残業代(みなし残業代)を導入している企業の場合、注意が必要です。固定残業代を欠勤控除の対象とする場合は、その旨を就業規則に明確に規定しておく必要があります。規定がない場合、トラブルの原因となる可能性があります。

2. 手当への影響

「控除の対象となる給与項目・ならない給与項目」のセクションでも解説した通り、手当の種類によって欠勤控除の対象となるか否かが異なります。

  • 通勤手当: 定期代として支給されている場合は、欠勤によって日割りで控除されることは少ないですが、実費精算の場合は、欠勤した日の交通費は発生しないため支給されません。
  • 精勤手当: 皆勤手当と同様に、欠勤がある場合は支給対象外となるか、減額されるのが一般的です。
  • 役職手当、住宅手当、家族手当など: これらの手当は、職務や生活保障的な意味合いが強いため、欠勤しても控除対象外とする企業が多いですが、これも就業規則に準じます。

このように、欠勤は基本給だけでなく、様々な手当にも影響を及ぼす可能性があります。ご自身の給与体系と就業規則を理解し、不明点があれば積極的に確認するようにしましょう。

欠勤しても給料が減らないケースとは?

「ノーワーク・ノーペイの原則」が基本である欠勤時の給与ですが、中には欠勤しても給料が減らない、あるいは減額されても生活が保障されるケースも存在します。これらを理解しておくことで、いざという時の不安を軽減し、自身の権利を最大限に活用することができます。

最も重要な「年次有給休暇」の活用

欠勤しても給料が減らない、最も身近で重要な制度が年次有給休暇(有給休暇)です。

有給休暇は、労働基準法によって労働者に付与される権利であり、一定期間勤続し、所定の労働日数をクリアすれば、誰もが取得できます。この有給休暇を取得した場合、たとえ労働者が実際に労働を提供しなかった日であっても、企業は通常通りの賃金を支払う義務があります。

つまり、病気や私用で休む必要が生じた際、欠勤ではなく有給休暇として申請すれば、給与から差し引かれることはありません。これは、労働者の心身のリフレッシュを促し、生活を保障するための重要な制度です。

日本の年次有給休暇の取得率は年々向上しており、厚生労働省の調査によると、2023年度の取得率は65.3%となっています。政府は、2025年度までに取得率を70%以上にする目標を掲げており、企業に対しても取得促進の取り組みが求められています。

自分の有給休暇の残日数を確認し、計画的に利用することで、給与減額の心配なく、必要な時に休むことができます。有給休暇は、まさに「ノーワーク・ノーペイの原則」の例外であり、労働者の強い味方となる制度なのです。

会社都合による休業や特定の休暇制度

労働者側に責任がない形で休業した場合も、給料が減らない、または一部が保障されるケースがあります。

1. 会社都合による休業

自然災害や設備の故障、経営判断による生産調整など、労働者側の責任ではない理由で会社が休業した場合、企業は労働者に対し休業手当を支払う義務があります(労働基準法第26条)。

休業手当は、平均賃金の6割以上と定められています。全額ではないものの、全く給与が支払われない欠勤とは異なり、最低限の生活が保障されることになります。これは「ノーワーク・ノーペイの原則」が、会社都合による休業には適用されないためです。

2. 法定の休業制度

  • 育児休業・介護休業: 育児・介護休業法に基づき取得できる休業で、給与は支給されませんが、雇用保険から育児休業給付金や介護休業給付金が支給されます。これにより、休業中の生活を一定程度支えることが可能です。

3. 会社独自の特別休暇

慶弔休暇(結婚、忌引きなど)やリフレッシュ休暇、ボランティア休暇など、企業が就業規則で独自に定めている特別休暇も、給与が支払われる場合があります。これらの休暇は、法律上の義務ではありませんが、従業員の福利厚生の一環として有給扱いとする企業が多いです。ご自身の会社の就業規則で確認してみましょう。

これらの制度は、労働者の生活と権利を守るために非常に重要です。いざという時に困らないよう、制度の内容を把握しておくことが賢明です。

病気や怪我による休業と傷病手当金

私的な病気や怪我で長期にわたり会社を休む場合、会社には基本的に給与を支払う義務はありません。しかし、健康保険には、このような状況で生活を保障するための傷病手当金という制度があります。

【傷病手当金とは】

健康保険の被保険者が、病気や怪我のために会社を休み、賃金がもらえない場合に、生活を保障するために支給される手当金です。私傷病が対象であり、業務上の病気や怪我(労災保険の対象)とは区別されます。

【傷病手当金の支給要件】

  1. 業務外の病気や怪我で療養中であること。
  2. 仕事に就くことができないこと。
  3. 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと(待期期間3日)。
  4. 休業した期間について給与の支払いがないこと(給与が支払われた場合は、傷病手当金と給与の差額が支給される場合もあります)。

【支給期間と支給額】

  • 支給期間: 支給開始日から最長1年6ヶ月間。
  • 支給額: 支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額を平均した額の、おおよそ3分の2相当額。

傷病手当金は、会社からの給与が途絶えた際に、最低限の生活を支える上で非常に重要な制度です。

もし長期的な療養が必要になった場合は、加入している健康保険組合や協会けんぽに相談し、制度の利用を検討することをお勧めします。もちろん、まずは普段から健康管理に努め、病気や怪我を予防することが何よりも大切です。

欠勤控除の疑問を解決!よくある質問

ここまで欠勤控除の基本的な考え方や計算方法、給与が減らないケースについて解説してきました。しかし、実際の運用には、さらに細かな疑問や注意点が多くあります。

ここでは、欠勤控除に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。あなたの疑問を解消し、安心して勤怠管理を行えるよう、ぜひ参考にしてください。

Q1: 就業規則に規定がない場合はどうなる?

A: 欠勤控除の取り扱いについて、就業規則に明確な規定がない場合、原則として企業は従業員の給与を一方的に減額することはできません。

「ノーワーク・ノーペイの原則」は、一般的な法的解釈として広く認識されていますが、賃金は労働契約において重要な要素であるため、減額の根拠となるルールは明確に定められているべきです。

もし就業規則に規定がないにもかかわらず、企業が欠勤控除を行った場合、それは不当な減額として労働基準法に抵触する可能性があります。労働者は、不足分の賃金を請求できる権利を持つことになります。

ただし、過去の労使慣行として長年欠勤控除が実施されており、従業員もそれを容認してきた経緯がある場合など、例外的に控除が認められる可能性もゼロではありません。しかし、これは法的なトラブルに発展しやすいため、企業は速やかに就業規則を整備し、欠勤控除に関するルールを明記し、従業員に周知徹底することが求められます。

労働者としても、入社時や制度変更時に就業規則をしっかりと確認し、疑問があれば人事労務担当者に質問することが重要です。

Q2: 欠勤控除後の給与が最低賃金を下回ってはいけない?

A: はい、その通りです。欠勤控除後の給与が、労働基準法で定められている最低賃金を下回ってはなりません

最低賃金は、労働者が受け取るべき賃金の最低額を保障する制度です。欠勤控除は、労働者が労働を提供しなかった時間の賃金を差し引くものですが、実際に労働した時間に対しては、最低賃金以上の賃金が支払われている必要があります。

計算のポイントは、「実際に労働した時間」に対して支払われる賃金が、最低賃金をクリアしているか、という点です。

例えば、ある月の総労働時間が100時間で、その月の欠勤控除後の賃金総額が最低賃金時間額×100時間を下回る場合、それは最低賃金法違反となります。企業は、欠勤控除によって給与が減額されたとしても、この最低賃金のルールを遵守しなければなりません。

特に、時給制のアルバイトやパートタイマーの場合、欠勤や遅刻が多いと最低賃金を下回ってしまうリスクが高まるため、企業は常に注意を払い、労働者側も自身の賃金が適切に計算されているかを確認することが大切です。

Q3: 税金や社会保険料への影響は?

A: 欠勤控除は、税金や社会保険料の計算にも影響を与えます。

1. 所得税への影響

所得税は、基本的に毎月の給与から控除された「課税所得」に対して計算されます。欠勤控除によって支給額が減少すれば、その分課税所得も少なくなるため、源泉徴収される所得税額も少なくなる可能性があります。

しかし、年末調整や確定申告で年間の所得が確定すると、最終的な税額が調整されます。一時的な欠勤控除が大きく影響することは少ないかもしれませんが、長期にわたる欠勤で年間の所得が大きく減少した場合は、還付金が増えるなどの影響が出ることがあります。

2. 社会保険料への影響

社会保険料(健康保険、厚生年金保険)は、原則として「標準報酬月額」に基づいて計算されます。標準報酬月額は、毎年4月から6月の3ヶ月間の給与の平均額を元に決定され、原則として1年間は固定されます。

そのため、一時的な欠勤控除でその月の給与が減ったとしても、すぐに社会保険料が変動することはありません。ただし、長期の欠勤や休職が続き、報酬が著しく変動した場合は、随時改定が行われ、標準報酬月額が見直されることがあります。

労働保険料(雇用保険、労災保険)は、実際に支払われた賃金総額に保険料率をかけて計算されるため、欠勤控除によって賃金が減少すれば、その分労働保険料も減少することになります。

このように、税金と社会保険料では仕組みが異なるため、混同しないように注意が必要です。

Q4: 勤怠管理システム導入のメリットは?

A: 勤怠管理システムを導入することは、企業にとっても従業員にとっても多くのメリットがあります。特に欠勤控除や給与計算の正確性と効率化において大きな効果を発揮します。

【主なメリット】

  • 労働時間の自動集計: 従業員の出退勤時間を自動で集計し、正確な労働時間を把握できます。手作業による集計ミスや不正打刻のリスクを軽減します。
  • 給与計算の効率化: 欠勤、遅刻、早退、残業などの時間を正確に把握できるため、給与計算ソフトとの連携により、複雑な給与計算業務を大幅に効率化できます。これにより、人事労務担当者の負担が軽減され、計算ミスも防げます。
  • 多様な打刻方法に対応: PC、スマートフォン、ICカード、生体認証(指紋、顔認証)など、様々な打刻方法に対応しているシステムが多く、従業員は自身の状況に合わせて柔軟に打刻できます。テレワークや外出先からの打刻にも対応可能です。
  • 労働基準法遵守の支援: 労働時間の上限規制や休憩時間の確保など、労働基準法に準拠した勤怠管理をサポートします。長時間労働の抑制や、適切な休日取得の促進にも繋がります。
  • 従業員の意識向上: 自身の勤怠状況がリアルタイムで可視化されるため、従業員自身の時間管理に対する意識が向上します。

特に、欠勤控除の計算が複雑になりがちな月給制の企業では、勤怠管理システムを導入することで、正確な日割り・時間割り計算が容易になり、給与計算におけるトラブルを未然に防ぐことができます。企業の規模に関わらず、現代の働き方において、勤怠管理システムは不可欠なツールとなりつつあります。

Q5: 欠勤控除額の端数処理はどうする?

A: 欠勤控除額を計算する際に端数が出た場合、原則として切り捨てを適用します。

例えば、1時間あたりの賃金が1,875.3円といった細かい端数が出た場合、これを切り上げて1,876円として計算すると、労働者が労働しなかった時間以上に賃金を控除してしまうことになります。これは、労働基準法に定められた「賃金全額払いの原則」に反し、労働者にとって不利益となるため、労働基準法違反となる恐れがあります。

そのため、欠勤控除額の計算において端数処理を行う場合は、従業員に不利益とならないよう、切り捨てで処理するのが適切な対応とされています。切り上げや四捨五入は避けるべきです。

ただし、労働者が有利になるように、例えば「1円未満は切り上げ」と就業規則に定めていれば問題ありません。しかし、給与計算においては、従業員に不利益となるような端数処理は原則として認められていません。

正確な給与計算のためにも、就業規則に端数処理に関する規定を明記し、労働基準法の原則を遵守することが重要です。不明な場合は、人事労務担当者や労働基準監督署に確認することをお勧めします。