概要: 稟議書作成に苦手意識を感じていませんか?本記事では、稟議書の基本からエクセル・ワードでの効率的な作成方法、具体的な例文までを網羅的に解説します。もう稟議書作成で迷うことはありません。
【簡単】稟議書作成の基本と例文~エクセル・ワードでの書き方
会社内で何か新しいことを始めたい、高額な備品を購入したい、社内イベントを企画したい――。
そうした際に必要となるのが「稟議書」です。しかし、「書き方がよくわからない」「承認に時間がかかる」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
実は2022年3月の調査では、稟議の申請フローに関して「悩みを感じた経験がある」と回答した人は約8割にものぼると報告されています。
本記事では、稟議書の基本的な書き方から、WordやExcelでの効率的な作成方法、具体的な例文、そしてスムーズな承認を得るためのコツまでを徹底解説します。
この記事を読めば、あなたの稟議書作成に対する苦手意識がきっと解消されるはずです。
稟議書作成で迷わない!基本の書き方と必須項目
そもそも稟議書とは?目的と役割を理解しよう
稟議書とは、企業内において、個人だけでは決定できないような重要な事項について、上司や関係部署の承認を得るために作成される文書のことです。
このプロセスを通じて、意思決定の透明性を確保し、関係者全員が提案内容を理解・納得した上でプロジェクトを進行できるようになります。
「会議を開くほどではないが、正式な承認が必要」といった場合に特に有効で、会議の開催にかかる手間や時間を大幅に削減し、迅速な意思決定を可能にするという重要な役割を担っています。
会社によっては「起案書」や「立案書」といった名称で運用されていることもありますが、その本質的な目的は同じです。
例えば、新しいシステムの導入や高額な備品の購入、大規模な社内イベントの企画など、予算を伴うものや企業戦略に関わる重要な提案は、基本的に稟議書を通して承認を得る必要があります。
稟議書は単なる書類ではなく、企業活動を円滑に進めるための重要なコミュニケーションツールであり、その目的と役割を深く理解することが、スムーズな作成・承認への第一歩となるでしょう。
決裁者が納得する!稟議書の必須項目チェックリスト
決裁者が一目で内容を理解し、納得して承認できる稟議書を作成するには、いくつかの必須項目を網羅することが不可欠です。
これらの項目を漏れなく、かつ簡潔に記載することで、決裁者は提案の全体像を素早く把握し、的確な判断を下すことができます。
主な必須項目は以下の通りです。
- 件名:「〇〇購入の件」「△△導入の件」など、内容が瞬時にわかるように具体的に。
- 起案日・起案部署・起案者:いつ、誰が、どの部署から提案しているかを明確に。
- 宛先(承認者):承認を求める上司や関係部署名を正確に記載。
- 稟議の目的:「なぜこの稟議が必要なのか」を端的に説明。
- 稟議内容:具体的に何を提案しているのかを詳細に記述。
- 理由・必要性:提案に至った背景や、実施する必然性を論理的に説明。
- 期待される効果:この提案が実現した場合に、会社にもたらす具体的なメリット。売上向上、コスト削減、業務効率化など。
- 費用・予算:必要となる費用とその内訳。見積書などの添付も忘れずに。
- 実施期間・スケジュール:いつからいつまで実施するのか、具体的なスケジュール。
- 添付資料:提案の根拠となる見積書、比較表、データ、関連資料など。
これらの項目を網羅し、特に件名と目的は、決裁者が最初に目にする部分であり、その後の読み進める意欲を左右するため、簡潔かつ魅力的に記述することが重要です。
説得力が格段にアップ!根拠とメリットの伝え方
稟議書をスムーズに承認してもらうためには、単に「やりたいこと」を羅列するだけでなく、その提案が「なぜ会社にとって必要なのか」「どのようなメリットがあるのか」を明確な根拠とともに示すことが不可欠です。
説得力を高めるための重要なポイントは以下の通りです。
まず、根拠となるデータを具体的に添付することです。例えば、物品購入であれば「複数社の見積もり比較表」を提示し、なぜその商品・サービスを選んだのかを客観的に示します。
また、システム導入であれば「他社での導入事例」や「データ分析に基づいた効果予測」を添付することで、提案の実現可能性と有効性を裏付けます。
次に、メリットの伝え方です。提案がもたらす効果を具体的に、かつ数値で表現できる場合は積極的に活用しましょう。
「業務効率が20%向上する」「年間〇〇万円のコスト削減が見込める」といった具体的な数値は、決裁者に強いインパクトを与えます。
さらに重要なのが、メリットだけでなく、考えられる課題やリスク、そしてそれらに対する解決策も合わせて記載することです。
例えば「導入費用は高額だが、長期的な視点で見れば十分なROIが見込める」「初期の運用負荷は増えるが、〇〇といった対策でカバーできる」など、リスクを認識し、その上で解決策を提示することで、提案の信頼性が格段に向上します。
決裁者はリスクも考慮して判断するため、これらの情報を事前に提供することは、丁寧で説得力のある稟議書として高く評価されるでしょう。
エクセル・ワードで効率アップ!稟議書テンプレート活用術
無料で手に入る!Word・Excelテンプレートの探し方
稟議書作成において、一からフォーマットを作成するのは非常に手間がかかります。そこで大いに役立つのが、無料で公開されているWordやExcelの稟議書テンプレートです。
これらのテンプレートを活用することで、レイアウト作成の手間を省き、内容の記述に集中できるため、効率的に稟議書を作成できます。
では、具体的にどこでこれらのテンプレートを見つけることができるのでしょうか?
最も一般的なのは、Microsoft社の公式テンプレートギャラリーです。WordやExcelのソフトウェア内からアクセスできるほか、オンラインでも多数のビジネス文書テンプレートが提供されています。
また、ビジネス文書専門のWebサイトや、中小企業向けの支援サイト、SaaS企業のブログなどでも、無料でダウンロードできるテンプレートが多数公開されています。
検索エンジンで「稟議書テンプレート Word 無料」「稟議書 Excel ダウンロード」といったキーワードで検索すると、多種多様なテンプレートが見つかるでしょう。
テンプレートを選ぶ際は、自社の業務内容や必要な項目が含まれているか、編集しやすい形式かなどを確認することが重要です。
最初は複数のテンプレートを試してみて、最も使いやすいもの、自社に合ったものを見つけることをお勧めします。
これらのテンプレートは、標準的なビジネスシーンで利用される項目が網羅されているため、基本的な稟議書を作成する上で非常に心強い味方となるはずです。
WordとExcel、どちらを使うべき?それぞれの特徴と選び方
稟議書を作成する際にWordとExcelのどちらを選ぶかは、その内容や目的に応じて使い分けるのが賢明です。
それぞれに異なる特徴があり、適切に選択することで稟議書作成の効率と品質を向上させることができます。
Wordテンプレートは、主に文章や説明が主体となる稟議書に適しています。
例えば、企画書の要素が強い新規事業の提案、詳細な背景説明が必要な制度変更の稟議、または自由記述欄が多い人事関連の稟議書などです。
Wordは文書作成に特化しているため、豊富な文字装飾やレイアウト機能を使って、読みやすい文章構成や視覚的に分かりやすい表現が可能です。
また、提出先や内容に合わせて編集・カスタマイズしやすいというメリットがあります。
一方、Excelテンプレートは、数値やデータ、表形式での情報整理が重要な稟議書に最適です。
例えば、物品の購入費用を複数社の見積もりで比較する際や、予算の内訳、経費精算、プロジェクトの進捗管理など、計算や集計が必要な場合にその真価を発揮します。
Excelのセル機能を活用すれば、数量と単価から合計金額を自動計算させたり、グラフを作成して視覚的にデータを提示したりと、情報の正確性と分かりやすさを向上させることができます。
最終的には、稟議内容に最も適したツールを選ぶことで、決裁者により的確な情報を伝えることができるでしょう。
テンプレートを最大限に活かすカスタマイズのコツ
ダウンロードした稟議書テンプレートは、そのまま利用するだけでなく、自社の状況や稟議内容に合わせてカスタマイズすることで、その効果を最大限に引き出すことができます。
単なる汎用テンプレートではなく、「自社専用の使いやすい稟議書」へと進化させるためのコツをご紹介します。
まず、自社の承認フローに合わせて項目を調整することです。
例えば、承認者が複数部門にわたる場合は、各承認者のサイン欄や確認欄を追加したり、回覧順序を明記する欄を設けることで、稟議の経路が明確になり、承認漏れや滞留を防ぐことができます。
次に、必須項目や注意事項を明記することです。
テンプレートにコメント機能や注釈を使い、「この項目は必ず入力してください」「添付資料は〇〇形式で」といったガイドラインを設けることで、稟議書作成者の迷いをなくし、記入ミスを減らすことができます。
また、自社のロゴやコーポレートカラーを取り入れることも有効です。
テンプレートに自社のブランド要素を盛り込むことで、プロフェッショナルな印象を与え、社内文書としての統一感を高めることができます。
さらに、よく使う文言や定型的な挨拶文などを「定型文」としてテンプレート内に埋め込んでおくことで、毎回入力する手間を省き、作成時間の短縮にも繋がります。
これらのカスタマイズは一度行えば、その後の稟議書作成において大きな効率化をもたらすでしょう。
悩みがちな稟議書の内容別例文集(費用・飲み会など)
費用発生を伴う稟議(物品購入・システム導入)の例文
費用発生を伴う稟議書は、その金額の大小に関わらず、会社にとって重要な意思決定となります。決裁者が最も重視するのは、「なぜこの費用が必要なのか」という根拠と、「投資に見合う効果が得られるのか」という費用対効果です。
以下に、物品購入とシステム導入の例文におけるポイントを示します。
物品購入(例:高性能PCの購入)
件名:〇〇部向け高性能PC購入の件
目的:老朽化したPCの性能不足による業務効率低下を解消し、デザイン業務の品質向上と納期短縮を実現するため。
内容:〇〇部に所属するデザイナー2名分の高性能PC(メーカー:△△、型番:□□)を計2台購入。
理由・必要性:現行PCは導入から5年以上が経過し、グラフィック処理に多大な時間を要しています。特に近年増加している3Dデザイン案件では、処理速度の遅延により残業が増加し、生産性が著しく低下しています。新PC導入により、これらの課題を解消します。
期待される効果:
- デザイン作業時間が平均20%短縮されることにより、残業時間の削減と年間約〇〇万円の人件費削減が見込めます。
- 高負荷作業のボトルネック解消により、高品質なアウトプットをより迅速に提供できるようになり、顧客満足度の向上に貢献します。
費用:PC本体代 〇〇円 × 2台 = △△円、初期設定費用 〇〇円、合計 □□円(見積書添付)
添付資料:複数社見積もり比較表、製品カタログ、業務改善シミュレーション
システム導入(例:クラウド型CRMシステム導入)
件名:営業部門向けクラウド型CRMシステム導入の件
目的:顧客情報の一元管理と営業活動の可視化により、営業効率と顧客満足度を向上させるため。
内容:クラウド型CRMシステム「▲▲」を営業部門(10名)に導入し、顧客管理・商談管理・営業レポート機能を活用。
理由・必要性:現状、顧客情報は各営業担当者が個別に管理しており、情報共有の遅延や属人化が課題となっています。これにより、機会損失や顧客対応の品質低下が発生しています。
期待される効果:
- 顧客情報や商談履歴のリアルタイム共有により、営業担当間の連携が強化され、顧客対応速度が向上します。
- 営業活動のデータ可視化により、ボトルネックを特定し、戦略的な営業施策の立案が可能となります。
- 年間約〇〇時間のデータ入力作業が削減され、営業担当者が顧客との対話に集中できる時間が増加します。
費用:初期費用 〇〇円、月額利用料 〇〇円 × 10ユーザー = □□円(年間)
添付資料:システム比較表、デモンストレーション資料、ROI予測シート
これらの例文はあくまで一例ですが、共通して言えるのは、客観的なデータと具体的な効果予測を示すことで、決裁者の納得感を得やすくなるという点です。
費用以外でも活用!企画・イベント実施の例文
稟議書は費用が発生する案件だけでなく、新しい企画の立ち上げや社内イベントの実施など、会社の方針や従業員に影響を与える可能性のある非金銭的な提案においても必要となります。
こうした稟議書では、特に「目的」と「期待効果」を明確にすることが重要です。
企画実施(例:社内向け新規事業アイデアコンテストの開催)
件名:社内向け新規事業アイデアコンテスト開催の件
目的:全従業員から革新的な事業アイデアを募り、企業文化の活性化と将来の成長ドライバー創出を目指すため。
内容:社内イントラネットを通じて新規事業アイデアを募集し、一次審査、プレゼンテーション大会を経て、優秀アイデアを表彰するコンテストを実施。
理由・必要性:既存事業の成長が鈍化する中、新たな収益源の探索は喫緊の課題です。従業員一人ひとりの創造性を刺激し、ボトムアップでのイノベーションを促進することで、企業の持続的成長に貢献します。
期待される効果:
- 従業員のイノベーション意識が高まり、新たな視点や発想が生まれるきっかけとなります。
- 優秀なアイデアが事業化に繋がり、企業の将来的な成長を加速させる可能性があります。
- 部門間の交流を促進し、社内のコミュニケーション活性化に貢献します。
費用:広報費用 〇〇円、表彰品費用 〇〇円、会場設営費用 〇〇円、合計 □□円
実施期間:募集期間:〇月〇日~〇月〇日、審査・発表:〇月〇日~〇月〇日
添付資料:コンテスト実施要項案、広報計画案
イベント実施(例:社員向けリフレッシュ休暇制度導入)
件名:社員向けリフレッシュ休暇制度導入の件
目的:従業員のワークライフバランス向上と心身のリフレッシュを促進し、長期的なエンゲージメントと生産性向上を図るため。
内容:勤続5年以上の社員を対象に、通常の有給休暇とは別に連続5日間のリフレッシュ休暇を付与する制度を導入。
理由・必要性:近年の従業員アンケートにおいて、長期休暇取得の希望が多数寄せられています。仕事へのモチベーション維持、ストレス軽減のためにも、定期的な心身のリフレッシュ機会を提供することが重要と考えます。
期待される効果:
- 従業員満足度とエンゲージメントの向上に繋がり、離職率の低下が期待できます。
- 心身のリフレッシュにより、業務への集中力や創造性が向上し、生産性アップに貢献します。
- 企業イメージの向上に繋がり、優秀な人材の獲得にも寄与します。
費用:特になし(人件費の変動は考慮済)
実施開始日:〇月〇日~
添付資料:社員アンケート結果、他社導入事例調査
これらの例文からわかるように、費用が直接発生しない企画や制度変更の稟議書でも、その背景にある課題、提案によって期待できる具体的な「価値」を明確に伝えることが、承認を得るための鍵となります。
【番外編】「飲み会」の稟議書ってどう書く?
「会社の飲み会の稟議書なんて大げさな」と思うかもしれませんが、規模や予算によっては正式な稟議が必要となる場合があります。
特に、全社的な懇親会や慰労会、特定のプロジェクトの打ち上げなどで会社からの費用補助を求める場合は、目的と費用対効果を明確に伝えることが重要です。
ここでは、「単なる飲み会」ではない、「会社にとって価値のあるイベント」として稟議を通すためのポイントと例文をご紹介します。
件名:〇〇プロジェクト打ち上げ懇親会開催の件
目的:難航した〇〇プロジェクトの完了を労い、チームメンバーの士気向上と今後の連携強化を図るため。
内容:〇〇プロジェクトメンバー(計15名)を対象に、プロジェクト完了慰労を目的とした懇親会を下記内容で開催します。
- 日時:〇月〇日(金)19:00~21:00
- 場所:△△飲食店(貸切)
- 参加費:一人あたり5,000円(うち会社補助3,000円、自己負担2,000円)
理由・必要性:〇〇プロジェクトは、納期が厳しく、多くの困難を乗り越えて無事に完了しました。プロジェクトメンバーは精神的・肉体的に大きな負担を経験しており、その労をねぎらい、達成感を共有する場を設けることは、今後のモチベーション維持に不可欠です。
期待される効果:
- プロジェクトメンバー間の連帯感を深め、今後のチームワーク強化に繋がります。
- 苦労を共にした経験を振り返り、達成感を共有することで、今後の業務への士気を高めます。
- 非公式な場でのコミュニケーションを通じて、部門を超えた新たなアイデアや協力関係が生まれる可能性があります。
費用:
| 項目 | 単価 | 数量 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 飲食代 | 5,000円 | 15名 | 75,000円 |
| 会社補助 | 3,000円 | 15名 | 45,000円 |
| 自己負担 | 2,000円 | 15名 | 30,000円 |
総費用:75,000円(会社補助:45,000円)
添付資料:飲食店のコースメニュー、参加予定者リスト
この例文のように、飲み会であっても「会社にとってどのような意味があるのか」「どのような良い影響を及ぼすのか」を具体的に述べることで、単なる福利厚生ではなく、人材育成やチームビルディングの一環として承認されやすくなります。
知っておきたい!稟議書の「標記の件」や「つきましては」の使い方
「標記の件」で本題へスムーズに導入するテクニック
ビジネス文書、特に稟議書のような正式な書類では、読み手がスムーズに本題に入れるよう、導入部分の表現が非常に重要です。
そこで役立つのが「標記の件」という表現です。
この言葉は、文書の冒頭に記載された「件名」を指し示す際に使われます。
例えば、件名が「営業部用PC一式購入の件」である場合、本文の導入で「標記の件につきまして、下記の通りご承認いただきたく、稟議いたします。」のように使用します。
これにより、改めて件名を繰り返す手間が省けるだけでなく、読み手は「今から件名に書かれている内容について詳細が説明されるのだな」とスムーズに理解することができます。
「標記の件」を使う際のポイントは、簡潔さと明確さです。
この一文で、本文が件名と直結していることを示し、無駄な前置きを排除して効率的な情報伝達を促します。
特に、多忙な決裁者は文書を読む時間を短縮したいと考えているため、件名と本文の接続をスムーズにすることは、稟議書の承認スピードを速める上でも非常に有効なテクニックと言えるでしょう。
ただし、件名が非常に長く複雑な場合や、複数の件名を指すような状況では、別の表現(例:「下記の件につきまして」など)を検討するなど、状況に応じた使い分けも大切です。
「つきましては」で明確な提案と依頼を伝える
稟議書において、背景説明や現状分析が終わった後、いよいよ具体的な提案や承認依頼へと繋ぐ際に効果的に使われるのが「つきましては」という接続詞です。
この言葉は、それまでの説明や状況を踏まえて、「だからこそ、このような対応をお願いしたい」という、明確な結論やアクションを求める意図を示す役割を果たします。
例えば、「現状のシステムでは業務効率が著しく低下しており、早急な改善が求められます。つきましては、新システムの導入についてご承認いただきたく、本書を提出いたします。」といった形で使用します。
「つきましては」を用いることで、読み手はそれまでの経緯が結論にどう結びつくのかを明確に理解し、提案の意図をスムーズに把握できます。
この表現の強みは、論理的な流れを構築し、決裁者に具体的なアクション(承認など)を促すための強い誘導性を持っている点にあります。
単に情報を並べるだけでなく、「この情報に基づいて、あなたに〇〇を判断してほしい」という作成者の意図を明確に伝えることができるため、特に承認を得たい稟議書においては非常に有効な表現と言えるでしょう。
使用する際は、その前段で述べた理由や背景が、続く「つきましては」の後の提案内容としっかりと結びついているかを確認し、論理的な飛躍がないように注意することが大切です。
読み手を意識した、わかりやすい文章表現のポイント
稟議書は、最終的に決裁者に内容を理解してもらい、承認を得るためのものです。そのため、読み手の立場に立った、分かりやすい文章表現を心がけることが何よりも重要です。
以下に、そのための具体的なポイントを挙げます。
- 結論から先に述べる(PREP法):まず結論(Point)、次に理由(Reason)、具体例(Example)、そして再度結論(Point)を述べるPREP法は、ビジネス文書において非常に有効です。これにより、読み手は最初に何が言いたいのかを把握でき、その後の詳細説明も理解しやすくなります。
- 簡潔で具体的な表現:冗長な表現や抽象的な言葉は避け、一文一文を短く、具体的に記述しましょう。専門用語を使用する場合は、補足説明を加えるか、平易な言葉に言い換える配慮が必要です。
- 箇条書きや表の活用:情報量が多い場合や、複数の項目を比較検討する際は、箇条書き(
)や番号付きリスト()、表()を積極的に活用しましょう。これにより、視覚的に情報が整理され、複雑な内容でも素早く理解できるようになります。
- 重要な箇所は強調する:特に伝えたいキーワードや、決裁者に注目してほしい点は、
タグやタグで強調表示しましょう。ただし、多用しすぎると逆効果になるため、ここぞというポイントに絞って使用することが大切です。- 丁寧かつ適切な敬語:ビジネス文書として適切な丁寧語や敬語を使用し、相手への敬意を示すことで、スムーズなコミュニケーションを促進します。
これらのポイントを意識することで、決裁者がストレスなく内容を読み解き、的確な判断を下せるような、質の高い稟議書を作成することができるでしょう。
読み手の時間を奪わない配慮こそが、迅速な承認への近道です。
稟議書作成の苦手意識を克服!作成時の3つのポイント
承認スピードを劇的に上げる「事前調整(根回し)」の重要性
「稟議書の承認までに時間がかかる」という悩みは、多くのビジネスパーソンが経験することでしょう。実際、2022年3月の調査でも、稟議フローにおける最も多い悩みは「承認までに時間がかかる」(60.5%)と報告されています。
この問題を解決し、承認スピードを劇的に上げるために最も効果的なのが、「事前調整」、いわゆる「根回し」です。
稟議書を提出する前に、承認者や関係部署の担当者と事前に相談し、内容について合意を得ておくことで、スムーズな承認に繋がる可能性が飛躍的に高まります。
事前調整のメリットは多岐にわたります。
- 懸念点の解消:事前に相談することで、承認者が抱くであろう疑問や懸念点を把握し、稟議書にその回答を盛り込んだり、具体的な解決策を提示したりすることができます。
- 関係者の理解促進:提案の意図や背景、期待される効果について直接説明することで、関係者の理解を深め、協力体制を築きやすくなります。
- 手戻りの減少:一度提出した稟議書に修正指示が入ると、承認プロセスが大幅に遅延します。事前調整で問題点を洗い出し、事前に修正しておくことで、手戻りを最小限に抑えられます。
- 心理的ハードルの低下:承認者からすると、全く知らない内容の稟議書が突然回ってくるよりも、事前に話を聞いていた方が承認への心理的ハードルが低くなります。
特に、影響範囲の広い稟議や、費用が高額になる稟議ほど、この事前調整の重要性は増します。
単なる「お願い」ではなく、関係者全員が納得できる解決策を共に探る姿勢で臨むことが、成功への鍵となります。
稟議の進捗が把握できない…を解消する「情報共有」
稟議書作成におけるもう一つの大きな悩みとして、「稟議の進捗が把握しづらい」(55.8%)という声も多く聞かれます。稟議書が今誰の手元にあるのか、どこで止まっているのかが分からないと、不安を感じるだけでなく、業務の停滞にも繋がります。
この課題を解消するための鍵は、「情報共有の徹底」です。
現代では、この情報共有を効率的に行うための様々なツールやシステムが存在します。
最も効果的なのは、「ワークフローシステム」の導入です。
参考情報でも、企業における稟議の形式としてワークフローシステムが41.3%を占め、Word・Excel記入・印刷(37.6%)を上回っていることからも、その有効性が伺えます。
ワークフローシステムを導入すれば、稟議書の申請から承認までの全プロセスがシステム上で可視化され、現在の承認者が誰なのか、どこで滞留しているのかを一目で確認できます。
これにより、申請者は進捗状況をリアルタイムで把握でき、必要に応じて承認者に催促することも容易になります。また、過去の稟議書もシステム上で効率的に検索・管理できるため、参照の手間も大幅に削減されます。
もしワークフローシステムの導入が難しい場合でも、共有フォルダでの管理ルールを徹底したり、進捗状況を共有する専用のチャットグループを作成したりするなど、アナログな方法でも情報共有の改善は可能です。
重要なのは、「稟議書がどこにあるのか分からない」という状況をなくすための仕組みを構築することです。
決裁者の視点に立つ!「メリット・課題・解決策」の徹底記述
稟議書がスムーズに承認されるか否かは、「決裁者が何を求めているか」を理解し、その視点に立って記述されているかにかかっています。
決裁者は、提案が会社全体にどのような影響を与えるか、そしてそれに伴うリスクはないか、といった視点で稟議書を読み込みます。
そのため、稟議書には「メリット」だけでなく、「課題」と「解決策」を徹底的に記述することが不可欠です。
これは、参考情報でも「メリットだけでなく課題や解決策も記載すると、より丁寧な稟議書になる」と強調されているポイントです。
具体的には、以下の3つの要素をバランスよく盛り込みましょう。
- 具体的なメリット:この提案が会社にもたらすポジティブな効果を明確に示します。売上向上、コスト削減、業務効率化、リスク低減など、数値で表せるものは積極的に記載しましょう。決裁者は投資対効果を重視します。
- 想定される課題・リスク:提案には必ず何らかの課題やリスクが伴います。例えば、導入費用、導入後の運用負荷、技術的な問題、社員の適応期間、失敗した場合の影響などです。これらの課題を正直に、かつ具体的に明示することで、決裁者に対して「この起案者は状況を冷静に分析できている」という信頼感を与えます。
- 課題・リスクに対する解決策:想定される課題やリスクを提示するだけで終わらせず、それらをどのように克服し、解決していくのかという具体的な対策をセットで記述します。例えば「導入費用は高額だが、リース契約や助成金活用で初期費用を抑える」「運用負荷増大には、研修プログラムを導入し、段階的に移行する」などです。
決裁者は、提案のポジティブな側面だけでなく、ネガティブな側面とその対処法まで含めて全体を把握したがっています。
これらの情報を網羅することで、決裁者は安心して承認印を押せるようになり、あなたの稟議書は「会社のことを深く考えられた、信頼に足る提案」として評価されるでしょう。
まとめ
稟議書作成は、基本を押さえ、ツールを上手に活用することで、誰でも効率的に作成できます。本記事で紹介したポイントや例文を参考に、自信を持って稟議書を作成しましょう。よくある質問
Q: 稟議書に必ず含めるべき「必要事項」は何ですか?
A: 稟議書には、提案の目的、具体的な内容、予算、承認者の確認、承認年月日などの必要事項を記載する必要があります。これにより、内容が明確になり、スムーズな承認へと繋がります。
Q: エクセルとワード、どちらで稟議書を作成するのがおすすめですか?
A: 表形式での予算記載や計算が必要な場合はエクセルが便利です。一方、文章中心で記述する場合はワードが適しています。どちらのツールもテンプレートを活用すれば、手軽に作成できます。
Q: 稟議書の「表題の件」と「標記の件」に違いはありますか?
A: どちらも「件名」を意味しますが、「標記の件」の方がより一般的で、フォーマルな文書でよく使われます。文脈に合わせて使い分けるのが良いでしょう。
Q: 稟議書の「つきましては」はどのような場面で使いますか?
A: 「つきましては」は、前述の内容を受けて、具体的な依頼や提案を行う際の接続詞として使われます。「前段の内容を踏まえ、これから何をするか」を明確に伝える際に役立ちます。
Q: 飲み会費用の稟議書を作成する際のポイントは何ですか?
A: 飲み会費用の稟議書では、目的(例:懇親会、慰労会)、参加予定人数、一人あたりの予算、総費用、開催日時・場所などを具体的に記載しましょう。目的を明確にすることで、承認を得やすくなります。
- 重要な箇所は強調する:特に伝えたいキーワードや、決裁者に注目してほしい点は、
