概要: 会社を辞める際に必要となる離職票。その書き方や、遅延理由書、労働保険番号など、発行に関わる疑問点を詳しく解説します。雇用保険の制度を理解し、スムーズな手続きを行いましょう。
離職票の書き方と注意点:雇用保険の疑問を解決!
会社を退職する際に発行される「離職票」は、失業手当(基本手当)を受給するために不可欠な公的書類です。その重要性にもかかわらず、書き方や手続きに不安を感じる方は少なくありません。
この記事では、2025年時点の最新情報に基づき、離職票の基本から具体的な書き方、注意点までを詳しく解説します。あなたの雇用保険に関する疑問を解消し、スムーズな手続きをサポートします。
離職票とは?発行までの流れと必要書類
離職票の基本と種類:なぜ必要なのか?
離職票(正式名称:雇用保険被保険者離職票)は、会社を退職した方が雇用保険の失業手当(基本手当)を受け取るために、ハローワークに提出する最も重要な書類です。
この書類がなければ、原則として失業手当の手続きを進めることができません。
離職票は「離職票-1」と「離職票-2」の2種類で構成されています。
- 離職票-1(雇用保険被保険者資格喪失届):主にハローワークが手続きに使用する書類で、退職者の基本情報や退職日、離職理由などが記載されます。失業手当の振込先口座を記入する欄も設けられています。
- 離職票-2(雇用保険被保険者離職証明書):退職理由の詳細や、離職前6ヶ月間の賃金、賃金支払基礎日数などが詳細に記載されます。失業手当の受給資格の有無や給付額を計算する根拠となる非常に重要な書類です。退職者本人が離職理由に関する意思表示を記入する欄も設けられています。
近年、入職率と離職率は活発に推移しており、例えば2024年には入職率14.8%、離職率14.2%と、多くの人が転職や退職を経験しています。このような状況下で、離職票の適切な手続きは、次のステップへ進むための大切な準備と言えるでしょう。
離職票が手元に届くまで:会社とハローワークの手続き
離職票は、退職者自身が直接発行するものではなく、以下の流れで手元に届きます。
- 会社での手続き:退職者が会社を退職すると、会社は「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を作成します。
- ハローワークへの提出:会社はこれらの書類を退職日の翌日から10日以内に、管轄のハローワークへ提出します。
- ハローワークでの処理:ハローワークは提出された書類を審査し、問題がなければ「離職票-1」と「離職票-2」を発行します。
- 会社から退職者への交付:ハローワークから会社に離職票が送付された後、会社は退職者本人へ離職票を郵送または手渡しで交付します。
一般的に、退職日から約2週間程度で手元に届くことが多いですが、会社の事務処理状況やハローワークの混雑状況によって前後する場合があります。
なお、2025年1月20日からは、マイナポータルを通じて離職票を電子的に受け取れるサービスも開始されており、手続きの利便性が向上しています。このサービスを利用するには、マイナンバーの登録やマイナポータル利用手続き、事業所による電子申請などの条件を満たす必要があります。
離職票と一緒に確認すべき他の書類
離職票は失業手当の手続きに必須ですが、他にもいくつかの書類が必要になります。
手続きをスムーズに進めるためには、離職票の内容を正確に確認するとともに、以下の書類も準備しておきましょう。
- マイナンバーカード(個人番号確認書類)
- 運転免許証やパスポートなどの身元確認書類
- 写真(縦3.0cm×横2.5cm)2枚
- 印鑑(シャチハタ不可)
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード(失業手当の振込先口座情報)
特に離職票の記載内容については、会社が作成した離職理由や離職前6ヶ月間の賃金に関する項目を、退職者本人がしっかりと確認することが非常に重要です。
これらの情報が不正確であると、本来受け取れるはずの失業手当が減額されたり、給付開始が遅れたりする可能性があります。不明な点があれば、すぐに会社やハローワークに問い合わせましょう。
離職票(様式第4号)の書き方:基本項目から離職理由コードまで
退職者本人が記入する重要項目
離職票には会社が記入する項目と、退職者本人が記入する項目があります。
特に「離職票-1」において、退職者本人が記入すべき主な項目は以下の通りです。
- 失業手当の振込先金融機関指定届:失業手当の振り込みを希望する金融機関の口座情報(金融機関名、支店名、預金種別、口座番号、口座名義)を記入します。正確な情報が求められるため、通帳などを確認しながら慎重に記入しましょう。不明な場合は、ハローワークの窓口で確認しながら記入することも可能です。
- 個人番号(マイナンバー):自身のマイナンバーを記入する欄があります。個人情報保護の観点から、ハローワークの窓口で確認を受けながら記入することが推奨されています。
これらの項目は、失業手当を確実に受け取るために非常に重要です。
誤りがあると手続きが滞る原因となりますので、記載内容に不安がある場合は、自己判断せずに必ずハローワークの担当者に確認するようにしてください。
会社が記入する項目:退職者が確認すべきポイント
離職票-2の大部分は会社が記入しますが、退職者本人がその内容を必ず確認する必要があります。
特に注意して確認すべき項目は以下の通りです。
- 被保険者番号・事業所番号・離職年月日:これらは退職者の雇用保険加入情報と会社の基本情報を示す重要な項目です。正確な記載がされているか確認しましょう。
- 賃金支払対象期間と基礎日数:離職日以前の11日以上の賃金支払基礎日数がある期間が、失業手当の計算期間となります。この期間と日数が正しく記載されているか、自身の給与明細と照らし合わせて確認が必要です。失業手当の給付額に直接影響するため、少しでも疑問があれば会社またはハローワークに問い合わせましょう。
- 賃金額:基本給だけでなく、家族手当や残業手当など、労働の対償として支払われた全ての賃金が対象となります。ただし、賞与や3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金は除かれます。ここも給付額に直結する項目なので、実際の給与明細と相違ないか細かく確認してください。
これらの項目に記載ミスや疑問点がある場合、失業手当の給付額が減額されたり、給付開始が遅れる可能性があります。
不備を見つけたら、速やかに会社に訂正を求めるか、ハローワークに申し出て対応を依頼しましょう。
離職理由コードの理解と異議申し立て
離職票-2で最も重要な項目の一つが「離職理由」です。会社は退職理由を記載し、それに対応する離職理由コードが付けられます。
この離職理由は、失業手当の給付開始時期や支給日数に大きく影響するため、記載内容が事実と異なる場合は必ず異議を申し立てるべきです。
主な離職理由は大きく分けて以下のようになります。
- 自己都合退職:自己の意思で退職した場合。原則として失業手当の給付は7日間の待期期間後、2ヶ月(特定理由離職者の場合は期間短縮)の給付制限期間を経て開始されます。
- 会社都合退職:会社の倒産や解雇、早期退職優遇制度の適用など、会社側の都合で退職した場合。特定受給資格者となり、7日間の待期期間後、給付制限なく失業手当が支給されることが多いです。
- 特定理由離職者:期間満了、疾病、家庭の事情など、やむを得ない理由で退職した場合。自己都合退職でも特定理由離職者に該当すれば、給付制限が適用されないことがあります。
会社が記載した離職理由に異議がある場合、離職票-2の「離職者本人の判断」欄に異議の有無を記入し、具体的な事情を補足欄に詳しく記載しましょう。
その後、ハローワークの窓口で事情を説明し、給与明細や雇用契約書、退職勧奨に関する書類など、事実関係を裏付ける資料を提出して申し立てを行います。
雇用保険の遅延理由書や不明な場合の対処法
離職票の交付が遅れる場合の対応策
通常、離職票は退職日の約2週間後に会社から郵送などで届きますが、会社側の事務手続きの遅れやハローワークの混雑などにより、交付が遅れることがあります。
もし目安の期間を過ぎても離職票が届かない場合は、以下の手順で対応しましょう。
- 会社への問い合わせ:まず、会社の人事・総務担当者に連絡し、離職票の発行状況や送付予定日を確認します。催促することで、早急な対応を促せる場合があります。
- ハローワークへの相談:会社に催促しても状況が進展しない、または会社と連絡が取れない場合は、管轄のハローワークに相談しましょう。ハローワークは会社に対して離職票の発行を指導する権限を持っています。
退職者本人が希望した場合、会社は離職票を発行する義務があります。特に59歳以上の退職者については、本人の希望にかかわらず会社は離職票の発行が必要です。交付が遅れても諦めずに、粘り強く対応することが重要です。
場合によっては、ハローワークの指示のもと、遅延理由書や申請書を提出することで、仮手続きを進められる可能性もありますので、早めに相談しましょう。
記載ミスや内容に疑問がある場合の訂正方法
離職票の内容に記載ミスや疑問点がある場合は、そのまま放置せず、必ず訂正を求める必要があります。特に賃金や離職理由の誤りは、失業手当の受給資格や給付額に大きく影響するため、迅速な対応が求められます。
訂正を求める手順は以下の通りです。
- 会社への確認・訂正依頼:まずは会社の人事・総務担当者に連絡し、記載ミスの内容を伝え、訂正を依頼します。会社が発行した書類であるため、原則として会社を通して訂正手続きを行うことになります。
- ハローワークへの申し立て:会社が訂正に応じない場合や、会社と連絡が取れない場合は、ハローワークに直接申し立てを行います。この際、事実関係を裏付ける証拠書類(給与明細、雇用契約書、労働時間記録、退職勧奨の証拠など)を複数用意しておくと、手続きがスムーズに進みます。
ハローワークは提出された資料を基に事実確認を行い、必要であれば会社に調査・指導を行います。自身が不利にならないよう、気になる点があれば臆することなく申し立てを行いましょう。
ハローワークへの相談をためらわないで!
離職票に関する手続きは複雑に感じることも多く、一人で解決しようとすると時間がかかったり、誤った判断をしてしまう可能性もあります。
このような時には、ハローワークの専門家を積極的に頼ることが最も確実な方法です。
例えば、失業手当の振込先口座を記入する際、「不明な場合はハローワークで確認しながら記入しましょう」と参考情報にもあるように、細かな疑問であっても丁寧に教えてくれます。
ハローワークでは以下のような相談が可能です。
- 離職票の記入方法や記載内容の確認
- 離職票が届かない、または記載内容に不備がある場合の対処法
- 失業手当の受給資格や給付額、給付期間に関する質問
- 求職活動に関するアドバイスや情報提供
専門の職員が個別の状況に応じて具体的なアドバイスを提供してくれるため、安心して手続きを進めることができます。疑問や不安を感じたら、まずは最寄りのハローワークに相談の予約を入れるか、窓口を訪れてみましょう。
離職票作成でよくある疑問とその回答
月の途中退職でも離職票の書き方は変わる?
月の途中で退職した場合でも、離職票の基本的な記入方法や退職者本人が記入する欄に大きな変更はありません。
しかし、会社が記入する項目である「賃金支払対象期間」や「基礎日数」については、日割り計算されるなど注意が必要です。
例えば、月末締めの給与で月途中に退職した場合、その月の給与は日割り計算となることが一般的です。離職票の賃金計算期間も、実際に賃金が支払われた期間に基づいて記載されます。
この日数の違いが、結果として失業手当の給付額に影響を及ぼす可能性があります。
したがって、退職日直前の給与明細や会社から発行される賃金関係の書類と、離職票の記載内容をしっかりと照らし合わせ、相違がないか確認することが重要です。
疑問があれば、遠慮なく会社やハローワークに質問し、正確な情報を把握するようにしましょう。
電子交付のメリットと利用条件
2025年1月20日からは、マイナポータルを通じて離職票を電子的に受け取れるサービスが開始されました。これはデジタル化の進展に伴い、手続きの利便性を高めるための重要な取り組みです。
電子交付の主なメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 迅速な受取:郵送によるタイムラグがなくなり、より早く離職票を受け取れる可能性があります。
- 紛失リスクの低減:紙の書類を管理する手間や紛失のリスクが軽減されます。
- アクセス性の向上:マイナポータルにアクセスできる環境があれば、いつでもどこでも離職票を確認できます。
ただし、このサービスを利用するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
- 自身のマイナンバーカードを登録していること。
- マイナポータルの利用手続きを完了していること。
- 退職した事業所が、電子申請によって離職証明書を提出していること。
これらの条件が揃っている場合、電子交付という新たな選択肢を活用することで、よりスムーズに失業手当の手続きを進めることができるでしょう。
離職票がないと失業手当はもらえない?
原則として、離職票が手元になければ、雇用保険の失業手当(基本手当)の手続きを進めることはできません。
離職票は、失業手当の受給資格の有無、給付額、給付期間などを決定するための重要な情報源となるため、ハローワークでの申請には不可欠な書類とされています。
しかし、会社が離職票を発行してくれない場合や、紛失してしまった場合など、特別な事情がある場合は、ハローワークに相談することで解決策が見つかることもあります。
- 会社が発行してくれない場合:ハローワークに相談すれば、会社に対して離職票の発行を指導してくれます。必要に応じて、ハローワークから会社に督促状が送付されることもあります。
- 離職票を紛失した場合:会社に再発行を依頼するか、ハローワークに相談することで、再発行の手続きについて案内を受けることができます。
いずれの場合も、自分で判断せずに速やかにハローワークに相談することが重要です。離職票の交付は会社の義務であり、退職者の権利を守るためにも、適切な対応を求めるようにしましょう。
まとめ
よくある質問
Q: 離職票とはどのような書類ですか?
A: 離職票は、雇用保険の被保険者であった方が離職した際に、ハローワークから発行される書類です。失業手当(基本手当)の申請や、再就職手当の受給資格の証明などに必要となります。
Q: 離職票(様式第4号)の主な記入項目を教えてください。
A: 離職票(様式第4号)には、被保険者期間、賃金、離職理由などを記入します。特に離職理由コードは、失業手当の給付日数に影響するため、正確な記載が重要です。
Q: 離職票の発行が遅れた場合、どうすればよいですか?
A: 離職票の発行が遅れた場合は、会社からハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届等遅延理由書」を提出してもらう必要があります。不明な点があれば、ハローワークに相談しましょう。
Q: 雇用保険の労働保険番号や郡市区符号がわからない場合は?
A: 労働保険番号は、会社に確認するか、過去の雇用保険関係書類に記載されている場合があります。郡市区符号は、郵便番号や役所の所在地から調べることができます。不明な場合はハローワークに問い合わせてください。
Q: 離職票の連記式とは何ですか?
A: 連記式とは、複数の雇用保険加入期間がある場合に、それらをまとめて記載する形式のことです。履歴や累計などの情報を正確に把握するために用いられます。
