雇用保険、入ってる?アルバイトでも確認すべき重要ポイント

アルバイトであっても、一定の条件を満たせば加入が義務付けられている「雇用保険」。失業時や育児休業中などに給付を受けられる、労働者にとって非常に重要な保険制度です。

この記事では、雇用保険の最新情報、加入条件、保険料、そしてアルバイトの方が確認すべきポイントについて解説します。いざという時のセーフティネットとなる雇用保険について、しっかり確認していきましょう。

雇用保険の加入状況、どうやって確認する?

自分が雇用保険に加入しているかどうかは、意外と知られていないケースも多いです。給与明細や雇用契約書を見ても分からず、不安を感じている方もいるかもしれません。ここでは、あなたの雇用保険加入状況を確認するための具体的な方法を3つご紹介します。

給与明細をチェックする

雇用保険に加入している場合、原則として毎月の給与から雇用保険料が控除されています。まずは、お手元の給与明細を確認してみましょう。「雇用保険料」や「雇用保険」といった項目があるか探してみてください。この項目があり、金額が記載されていれば、あなたは雇用保険に加入していることになります。

ちなみに、2025年度(令和7年度)の一般の事業における労働者負担の雇用保険料率は0.55%(賃金総額の5.5/1000)です。例えば、月給20万円であれば約1,100円が控除されているはずです。もし給与明細にそのような項目が見当たらない場合や、金額が不自然だと感じた場合は、次の確認方法を試してみましょう。

給与明細は、雇用保険の加入状況だけでなく、正しい保険料が徴収されているかを確認する上でも非常に重要な書類です。必ず毎月確認する習慣をつけることをおすすめします。

ハローワークに問い合わせる

最も確実な方法の一つが、管轄のハローワークに直接問い合わせることです。ハローワークでは、個人の雇用保険加入履歴を管理しています。本人確認のために、身分証明書(運転免許証やマイナンバーカードなど)と、可能であれば雇用保険被保険者証(会社から交付される場合がある)を持参するとスムーズです。

窓口で「自分の雇用保険の加入状況を確認したい」と伝えれば、担当者があなたの情報を調べてくれます。また、過去に勤務していた事業所での加入状況についても確認できる場合があります。個人情報に関わるため、電話での問い合わせでは十分な情報が得られないことがあるため、直接窓口へ行くことをお勧めします。

もし会社が雇用保険の手続きを怠っていた場合でも、ハローワークで相談することで適切なアドバイスや手続きの案内を受けることができます。自分の権利を守るためにも、積極的に活用しましょう。

雇用主に直接確認する

最も手軽で迅速な方法は、やはり勤務先の雇用主に直接確認することです。上司や人事担当者に「雇用保険に加入しているか」「被保険者番号を知りたい」と尋ねてみましょう。雇用主は労働者の雇用保険に関する情報を提供する義務があります。

加入条件を満たしているにも関わらず、会社が雇用保険に加入させていない場合、それは労働基準法違反にあたる可能性があります。この場合、事業主には罰則が科されることもあります。もし確認の結果、未加入であった場合は、加入条件を満たしていることを伝え、手続きを進めてもらうよう依頼しましょう。

会社によっては、雇用保険の手続きが遅れているだけのケースもありますが、加入を拒否されるような場合は、前述のハローワークや労働基準監督署に相談することも検討してください。あなたの雇用保険加入は、法で定められた権利です。

アルバイトでも雇用保険に加入できる?

「アルバイトだから雇用保険は関係ない」と思っていませんか?実は、アルバイトやパートタイマーといった雇用形態に関わらず、一定の条件を満たせば雇用保険への加入が義務付けられています。ここでは、アルバイトの方が雇用保険に加入できる条件と、その重要性について解説します。

加入条件を再確認しよう

雇用保険の加入条件は、以下の3つをすべて満たす場合に適用されます。これはアルバイトであっても正社員であっても同じです。

  1. 雇用契約が31日以上あること: 契約期間が30日以内の短期雇用は、原則として加入対象外です。例えば、短期のイベントスタッフなどでは加入対象外となることが多いでしょう。
  2. 所定労働時間が週20時間以上あること: 労働契約で定められた週の所定労働時間が20時間以上である必要があります。残業などで一時的に週20時間を超えても、所定労働時間が20時間未満の場合は加入対象外となります。例えば、週5日、1日4時間勤務のアルバイトであれば、週20時間となり加入対象となります。
  3. 学生ではないこと: 原則として昼間学生は加入対象外ですが、夜間学生、通信制学生、休学中の学生、卒業後も同じ事業所で継続勤務する予定のある学生などは加入対象となる場合があります。

ご自身の雇用契約書や労働条件通知書を確認し、これらの条件を満たしているか、今一度チェックしてみましょう。少しでも疑問があれば、雇用主に確認することが大切です。

雇用形態に関わらず「実態」が重要

「アルバイト」という名称にとらわれず、実態として上記の加入条件を満たしていれば、雇用保険の加入義務が発生します。つまり、週20時間以上働き、31日以上の雇用見込みがある限り、あなたは雇用保険の被保険者となるべき労働者なのです。

たとえ会社が「うちはアルバイトは雇用保険に入れない方針だ」と言ったとしても、法的には加入させなければなりません。もし会社が条件を満たしているあなたを雇用保険に加入させていない場合、それは事業主の義務違反となり、後から加入を求められた際に過去に遡って保険料を納付しなければならない可能性があります。また、労働者側も、本来受けられるはずの給付を受けられなくなるという不利益を被ることになります。

あなたの働き方が雇用保険の加入条件を満たしているか、冷静に判断することが重要です。

加入するメリットと加入しないデメリット

雇用保険に加入することの最大のメリットは、万が一の時にセーフティネットとなる給付金が受けられることです。例えば、

  • 失業した際の生活保障(失業手当)
  • 育児休業中や介護休業中の所得補償(育児休業給付金・介護休業給付金)
  • スキルアップのための教育訓練支援(教育訓練給付金)

といった制度を利用できるようになります。特にアルバイトは正社員に比べて離職率が高い傾向にあり、2022年度のアルバイトの離職率は23.8%と報告されています。失業のリスクが比較的高い中で、こうした保障があることは非常に心強いでしょう。

一方、雇用保険に加入しないデメリットは、上記の給付を一切受けられないことです。もし突然失業してしまったり、育児や介護で仕事を休まざるを得なくなった場合、経済的に大きな困難に直面する可能性があります。わずかな保険料を負担するだけで、将来への大きな安心を得られるのが雇用保険です。ぜひ加入を検討し、ご自身の権利を守ってください。

雇用保険の二重加入はNG!罰則とリスク

「複数のアルバイトを掛け持ちしているから、それぞれの職場で雇用保険に入っておけば安心なのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、雇用保険は原則として一人の労働者につき、一つの事業所でしか加入できません。複数の職場で二重に加入することは禁じられており、発覚した場合には様々なリスクやペナルティが発生します。

なぜ二重加入は禁止されているのか

雇用保険制度は、労働者が失業した際などに、安定した生活を送りながら再就職活動ができるよう支援することを目的としています。この目的を果たすため、雇用保険は「一人の労働者に対して、主たる賃金を受けている一つの事業所」で加入することが原則とされています。

二重加入が禁止されている主な理由は、不正受給の防止と、制度運用の公平性を保つためです。もし複数の職場で雇用保険に加入できてしまうと、失業時にそれぞれの職場から二重に失業手当を受け取るといった不正が可能になってしまいます。このような不正行為は、雇用保険制度そのものの信頼性を損ない、公正な運営を妨げることにつながるため、厳しく制限されているのです。

また、行政手続きの煩雑化を避けるためにも、一つの事業所で管理されるのが効率的であるという側面もあります。

二重加入が発覚した場合のペナルティ

もし意図的であれ不注意であれ、雇用保険の二重加入が発覚した場合、以下のようなペナルティが課される可能性があります。

  • 給付金の返還命令と延滞金: もし二重加入の状態で失業手当などの給付を受けていた場合、その全額または一部の返還を命じられます。さらに、返還までの期間に応じて延滞金が加算されることもあります。
  • 悪質な場合は詐欺罪に問われる可能性: 意図的に二重加入し、不正に給付金を受け取っていたと判断された場合は、詐欺罪として刑事罰の対象となる可能性も否定できません。
  • 事業主への影響: 労働者だけでなく、加入手続きを行った事業主側にも、雇用保険法の規定に基づく罰則や指導が入る可能性があります。

このように、二重加入は労働者自身にとっても、雇用主にとっても大きなリスクを伴う行為です。絶対に避けなければなりません。

複数の職場で働く場合の注意点

複数のアルバイトやパートを掛け持ちしている場合、どちらの職場で雇用保険に加入すべきか迷うかもしれません。この場合、原則として主たる賃金を受けている事業所で雇用保険に加入することになります。つまり、最も多くの労働時間働き、最も多くの給料をもらっている職場で加入するということです。

新しい職場で働き始める際、以前の職場の雇用保険加入状況を正確に伝えることが非常に重要です。特に、雇用保険被保険者証の提出を求められた場合は、現在加入している職場、または以前加入していた職場の被保険者証を提出し、状況を説明しましょう。もし誤って二重加入となってしまった場合は、速やかにハローワークや事業主に相談し、適切な手続きを行うことが大切です。

二重加入は意図しないところで発生することもありますが、自己責任として適切な対応が求められます。不明な点は放置せず、積極的に確認する姿勢が重要です。

雇用保険を抜けることは可能?メリット・デメリットと手続き

雇用保険は、一度加入したら基本的にずっと加入し続けるものという認識の方も多いかもしれません。しかし、特定の条件下では雇用保険から脱退することが可能です。ここでは、雇用保険から脱退できるケースや、脱退に伴うメリット・デメリット、そして具体的な手続きについて解説します。

雇用保険から脱退できるケース

雇用保険は、労働者の生活と雇用を安定させるための社会保険制度であるため、原則として自己都合で任意に脱退することはできません。雇用保険から脱退できるのは、以下のようなケースに限られます。

  • 退職(離職)する場合: 会社を辞める場合、その時点で雇用保険の被保険者資格を喪失します。
  • 加入条件を満たさなくなった場合: 例えば、
    • 週の所定労働時間が20時間未満になった。
    • 雇用契約期間が31日未満の短期雇用に変更になった。
    • 昼間学生になった(原則として加入対象外となるため)。

    といった、前述の加入条件のいずれかを満たさなくなった場合、雇用保険の被保険者資格を喪失します。

これらのケース以外で「保険料を払いたくないから」といった理由で雇用保険を抜けることは、基本的にできないことを理解しておきましょう。雇用保険は、労働者の権利であり義務でもあるため、条件を満たす限り加入義務が発生します。

脱退のメリット・デメリット

雇用保険から脱退することには、一見メリットがあるように見えても、長期的に見れば大きなデメリットを伴います。

【メリット】

  • 保険料の負担がなくなる: 毎月の給与から控除されていた雇用保険料を支払う必要がなくなります。手取り額はわずかに増えるでしょう。

【デメリット】

  • 失業手当が受けられない: 離職した場合に、再就職までの生活を支える失業手当を受け取ることができません。
  • 育児休業給付金・介護休業給付金が受けられない: 育児や介護で休業する際に支給される給付金を受けられなくなり、収入が大きく減少する可能性があります。
  • 教育訓練給付金が受けられない: スキルアップのための資格取得などで利用できる教育訓練給付金も対象外となります。
  • セーフティネットの喪失: 万が一の事態に備える保障がなくなるため、経済的なリスクが格段に高まります。

目先の保険料負担がなくなるという小さなメリットと引き換えに、将来の大きな安心を失うことになる点を十分に考慮する必要があります。特に、アルバイトの離職率が2022年度で23.8%と比較的高い現状を考えると、いざという時のセーフティネットは非常に重要だと言えるでしょう。

脱退手続きと必要な書類

雇用保険の脱退手続き(被保険者資格の喪失手続き)は、原則として雇用主(事業主)が行います。労働者自身がハローワークに出向いて手続きをする必要はほとんどありません。

事業主は、労働者が退職したり、雇用保険の加入条件を満たさなくなった場合、ハローワークに対して「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出します。この際、離職証明書なども添付されます。

手続きが完了すると、ハローワークから「雇用保険被保険者資格喪失確認通知書」が事業主を通じて交付され、労働者には「離職票」が発行されます(失業手当の申請をする場合)。この離職票には、雇用保険の加入期間や離職理由などが記載されており、失業手当の受給手続きに必要となります。

あなたが雇用保険を抜ける(資格を喪失する)場合は、会社が適切に手続きを進めてくれているかを確認し、離職票などの必要な書類を必ず受け取るようにしましょう。

育休や離職票との関係:雇用保険を抜けた後の影響

雇用保険は、失業手当だけでなく、育児休業給付金や介護休業給付金といった、ライフイベントを支える重要な役割も担っています。雇用保険から抜けてしまうと、これらの給付金を受け取れなくなるだけでなく、離職後の手続きにも大きな影響が出ます。ここでは、雇用保険を抜けた後の具体的な影響について詳しく見ていきましょう。

育児休業給付金への影響

育児休業給付金は、雇用保険から支給される非常に重要な手当の一つです。出産後の一定期間、育児のために仕事を休む際に、生活を支えるために支給されます。しかし、この給付金を受け取るためには、雇用保険の被保険者期間が一定以上あることが条件となります。

具体的には、「育児休業を開始した日以前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あること」などが受給要件とされています。もし雇用保険を抜けてしまうと、当然ながらこの被保険者期間が途切れてしまい、要件を満たせなくなる可能性があります。

例えば、妊娠が分かってから雇用保険を抜けてしまえば、育児休業を取得する際に給付金を受け取れず、収入が大幅に減少して子育て世帯の家計を圧迫することになります。将来的に育児休業の取得を考えている方は、雇用保険の継続加入は必須と言えるでしょう。

離職票発行と失業手当への影響

会社を退職した際に発行される「離職票」は、失業手当(基本手当)を受給するために不可欠な書類です。しかし、この離職票は、雇用保険に加入していた期間がなければ発行されません。つまり、雇用保険から抜けた状態で退職した場合、離職票は発行されず、失業手当も受け取れないということになります。

失業手当の受給要件も、育児休業給付金と同様に「離職日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上あること」(特定理由離職者・特定受給資格者の場合は1年間に6ヶ月以上)などが定められています。

前述の通り、アルバイトの離職率は2022年度で23.8%と、正社員に比べて離職する可能性が高い傾向にあります。もし雇用保険に加入していなければ、失業した際に全く収入がない状態で再就職活動を強いられることになり、大きな経済的・精神的負担を負うことになります。雇用保険は、まさに「いざという時の命綱」なのです。

再就職・転職活動への影響

雇用保険に加入していたかどうかは、直接的に再就職や転職活動の合否に影響を与えるものではありません。しかし、失業手当を受け取れないことは、あなたの転職活動に間接的ながら大きな影響を及ぼす可能性があります。

失業手当があれば、生活費の心配をすることなく、じっくりと自分に合った職場を探すことができます。スキルアップのための時間を確保したり、納得のいく条件の求人を選んだりする余裕も生まれるでしょう。しかし、失業手当がなければ、経済的なプレッシャーから焦ってしまい、本来望まない条件で就職せざるを得なくなるかもしれません。

雇用保険は、単なる給付金制度ではなく、労働者が安心してキャリアプランを設計し、ライフイベントを乗り越えていくための基盤となる制度です。特にアルバイトで不安定な雇用状況にある方こそ、雇用保険の重要性を理解し、ご自身の加入状況をしっかりと管理していくことが賢明だと言えるでしょう。