概要: 雇用保険の加入条件は、雇用形態や勤務時間によって異なります。パートやアルバイトでも、一定の条件を満たせば加入できる可能性があります。本記事では、雇用保険の加入条件から、退職後の受給資格までを分かりやすく解説します。
雇用保険の加入条件を徹底解説!アルバイトや短期間勤務でも受給できる?
「もしも」の時に備える雇用保険。失業した際の強い味方である「失業手当」は、正社員だけが受け取れるものだと思っていませんか?
実は、パートやアルバイト、短期間の勤務者でも、一定の条件を満たせば雇用保険に加入でき、いざという時に手当を受け取ることが可能です。
この記事では、雇用保険の基本的な加入条件から、パート・アルバイトの方々が気になる具体的な条件、さらに受給資格や知っておきたい注意点まで、分かりやすく徹底解説します。
あなたの働き方が雇用保険の対象になるのか、ぜひ一緒に確認していきましょう。
雇用保険の基本:加入条件を理解しよう
雇用保険って何?その目的と対象
雇用保険とは、労働者の生活と雇用の安定を図り、再就職を支援することを目的とした、国の公的な保険制度です。
私たちが安心して働き続けられるよう、もしもの時に備えてセーフティネットの役割を担っています。
失業した際に支給される「基本手当(いわゆる失業保険)」が最もよく知られていますが、実はそれだけではありません。
育児休業給付や介護休業給付、教育訓練給付など、働く人のキャリアアップやライフステージの変化にも寄り添う様々な給付制度があります。
「正社員だけのもの」と思われがちですが、実はパートやアルバイト、短期間の勤務者も、一定の条件を満たせば加入対象となります。
日本の雇用環境全体を支える重要な制度と言えるでしょう。
加入するための3つの基本条件
雇用保険に加入するためには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。これらは非常に重要なポイントですので、しっかりと確認しておきましょう。
- 雇用期間の見込みが31日以上であること
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 学生でないこと(原則)
雇用契約が31日以上継続される見込みがある場合に加入対象となります。具体的には、雇用期間の定めがない場合や、31日以上の期間を定めて雇用される場合です。また、契約更新の予定が明確にある場合も含まれます。
週の労働時間が20時間未満の場合、たとえ雇用期間が長くても雇用保険の加入対象にはなりません。この「週20時間」という基準は、現在の制度において非常に大きなポイントです。
原則として、昼間部(全日制)の学生は加入対象外とされています。これは、雇用保険が「生計の維持」を目的としているため、学業が本分とされる学生は除外されるためです。
ただし、学生であっても夜間部や通信制の学生、休学中の学生、卒業見込みで卒業後も同じ事業所で継続勤務する予定がある学生は、例外的に加入できる場合がありますので、後ほど詳しく解説します。
雇用保険料は誰が負担する?
雇用保険は、労働者と事業主が共に保険料を負担する「労使折半」の形で成り立っています。ただし、正確には折半ではなく、事業主の方が労働者よりも多くの割合を負担しています。
この保険料は、給与から天引きされる形で徴収されるため、労働者が改めて手続きをする必要はありません。
保険料率は毎年見直されますが、例えば2025年の雇用保険料率は、一般の事業で労働者負担分が0.55%(事業主負担分0.85%)となっています。
もしあなたの月給が20万円であれば、労働者負担分の保険料は月に「20万円 × 0.0055 = 1,100円」となります。
このわずかな負担が、いざという時の大きな安心につながるのです。
保険料は賃金の総額に対して計算されるため、残業代や各種手当なども含まれます。自身の給与明細を確認して、雇用保険料がきちんと天引きされているか確認することも大切です。
パート・アルバイトでも加入できる?具体的な条件とは
パート・アルバイトでも加入義務が生じるケース
「雇用保険は正社員だけ」という誤解を持っている方も多いかもしれません。しかし、これは間違いです。
前述の加入条件を満たしていれば、パートタイマーやアルバイトの方でも、雇用保険への加入は義務となります。
事業主は、これらの条件を満たす従業員を雇用保険に加入させる義務があり、もし加入させなかった場合は罰則の対象となることがあります。
つまり、あなたが週20時間以上働き、31日以上の雇用見込みがあるなら、会社はあなたを雇用保険に加入させなければならないのです。
加入していれば、万が一失業してしまった際に「基本手当(失業手当)」を受給できる可能性があります。
これは、一時的に収入が途絶える不安を軽減し、次の仕事を見つけるまでの生活を支える大切な制度です。
自分の働き方が加入条件に合致しているかどうか、一度確認してみましょう。不明な点があれば、勤務先の人事担当者やハローワークに相談することをお勧めします。
「週20時間以上」の壁と2028年からの変更点
現在の雇用保険制度では、「週の所定労働時間が20時間以上であること」という条件が、パートやアルバイトが加入できるかどうかの大きな壁となっています。
週20時間未満の勤務の場合、たとえ雇用期間が長くても、残念ながら雇用保険の対象にはなりません。
これにより、短時間で働く多くの方が制度の恩恵を受けられない状況がありました。
しかし、このような状況が大きく変わる予定です。2028年10月からは、雇用保険の適用範囲がさらに拡大され、週の所定労働時間が10時間以上の場合でも加入対象となる見込みです。
この改正により、より多くの短時間労働者が雇用保険に加入できるようになり、セーフティネットが広がることになります。
例えば、現在は週15時間勤務で雇用保険に加入できなかった方も、2028年10月以降は加入対象となる可能性が出てきます。
今後の法改正の動向に注目し、ご自身の働き方と照らし合わせて準備を進めることが大切です。
学生でも加入できる例外パターン
原則として、雇用保険は「昼間部(全日制)の学生」は加入対象外とされています。これは、学業が本分であり、失業給付の目的である「生活の安定」とは異なるという考え方に基づいています。
しかし、学生であっても、特定の条件を満たせば例外的に雇用保険に加入できる場合があります。
主な例外は以下の通りです。
- 夜間部や通信制の学生:学業と並行して働き、生計を立てているとみなされるため。
- 休学中の学生:学業から離れており、生計を維持するために働いているとみなされるため。
- 卒業見込みの学生で、卒業後も同じ事業所で継続勤務する予定がある場合:卒業後に常用労働者となることが確実なため、卒業前の期間も対象となることがあります。
これらの例外に該当するかどうかは、個別の状況によって判断が異なります。もしご自身が学生で、雇用保険への加入について疑問がある場合は、勤務先の人事担当者や最寄りのハローワークに詳細を確認することをお勧めします。
短期間の勤務や退職でも雇用保険は受け取れる?
短期間勤務でも受給は可能?加入の要件再確認
「短期間の勤務だから、雇用保険なんて関係ないだろう」と思われがちですが、これも一概には言えません。
もしあなたが「雇用期間の見込みが31日以上」かつ「週の所定労働時間が20時間以上」という加入条件を満たしていれば、たとえ勤務期間が比較的短かったとしても、雇用保険に加入する義務が生じます。
実際に雇用保険に加入していれば、その後失業してしまった場合でも、失業手当(基本手当)を受給できる可能性があります。
大切なのは「加入していたかどうか」であり、その後の受給資格の有無は、加入期間と求職活動の状況によって判断されます。
日雇い労働者や超短期間の単発バイトなど、非常に短い期間の勤務では加入対象外となることが多いですが、上記の条件を満たすパートやアルバイトであれば、勤務期間の長短に関わらず、まずは加入対象となり得ることを理解しておきましょう。
失業手当(基本手当)を受け取るための2つの大原則
雇用保険に加入していたからといって、無条件で失業手当が受け取れるわけではありません。失業手当(基本手当)を受給するためには、主に以下の2つの大原則を満たす必要があります。
- 積極的に求職活動を行っていること
- 雇用保険の被保険者期間が一定以上あること
単に失業しているだけでなく、ハローワークに求職の申し込みを行い、「働く意思と能力があり、積極的に仕事を探しているにもかかわらず就職できない状態」であることが必要です。具体的には、ハローワークが指定する回数の職業相談や求人への応募などを行う必要があります。
離職日以前に、雇用保険の被保険者であった期間が一定以上必要です。この期間の長さは、退職理由によって異なります。
これらの条件を満たした上で、ハローワークで所定の手続きを行うことで、失業手当の受給が開始されます。失業手当は、次の仕事を見つけるまでの貴重な生活資金となるため、条件をしっかり把握しておくことが重要です。
自己都合退職と会社都合退職で何が違う?
失業手当(基本手当)を受給するための被保険者期間は、退職理由によって大きく異なります。
| 退職理由 | 必要な被保険者期間 | 給付制限期間※ |
|---|---|---|
| 自己都合退職 (転職、家庭の事情など) |
離職日以前2年間で、 被保険者期間が通算12ヶ月以上 |
原則2ヶ月※ |
| 会社都合退職 (倒産、解雇、契約満了など) |
離職日以前1年間で、 被保険者期間が通算6ヶ月以上 |
なし |
※自己都合退職の場合、給付制限期間が設けられていますが、2025年4月からは原則2ヶ月に短縮される予定です。
会社都合退職の方が、より短い期間の加入で手当を受け取れるのは、労働者の意思に反して職を失ったため、より手厚い保護が必要とされているからです。
また、自己都合退職の場合でも、傷病、妊娠、出産、育児などの理由で30日以上働けなかった期間は、受給期間に算入される特例があるため、該当する場合はハローワークに相談しましょう。
知っておきたい!雇用保険の受給資格と注意点
受給期間の延長や特例について
雇用保険の基本手当には、受給できる期間が原則として離職日の翌日から1年間と定められています。しかし、病気やけが、妊娠、出産、育児など、やむを得ない理由で30日以上働けなかった期間がある場合、この受給期間を延長できる特例があります。
例えば、産休や育休で会社を休職し、その後退職した場合、本来の受給期間では手当を受け取れる期間が短くなってしまう可能性があります。
このような場合、申請を行うことで、最大3年間(離職日翌日から最長4年間)まで受給期間を延長することが可能です。
該当する可能性のある方は、速やかにハローワークに相談し、必要な手続きを確認しましょう。申請には期限があるため、注意が必要です。これにより、本当に手当が必要な時に、安心して生活を立て直すサポートを受けることができます。
掛け持ち勤務(マルチジョブホルダー)の注意点
複数のアルバイトやパートを掛け持ちしている方もいるでしょう。その場合、どの事業所で雇用保険に加入するのか、あるいは両方で加入できるのか、疑問に思うかもしれません。
基本的に、雇用保険は「主たる生計を維持している」方の事業所で加入することになります。つまり、最も賃金が高い、または労働時間が長い事業所で加入するのが一般的です。
ただし、2022年1月からは「マルチジョブホルダー制度」が導入されており、複数の事業所で雇用保険の加入条件を満たさない短時間労働者であっても、それぞれの事業所の労働時間を合算することで、雇用保険の被保険者となることができるようになりました。
この制度は、複数の仕事で生計を立てている方のセーフティネットを強化するものです。
ご自身の勤務状況が複雑な場合や、掛け持ち勤務における雇用保険の加入について不明な点がある場合は、必ず勤務先の人事担当者やハローワークに詳細を確認するようにしてください。
加入漏れはなぜ危険?事業主と労働者の義務
雇用保険の加入条件を満たしている従業員がいる場合、事業主にはその従業員を雇用保険に加入させる義務があります。
これは法律で定められた義務であり、加入漏れがあった場合は、事業主が罰則の対象となる可能性があります。
具体的には、過去に遡って保険料を徴収されたり、追徴金が課されたりすることもあります。
労働者にとっても、加入漏れは大きなリスクです。本来受け取れるはずの失業手当や育児休業給付などが受け取れなくなる恐れがあるからです。
そのため、労働者自身も、自身の雇用状況が加入条件を満たしているかを確認し、もし加入していない場合は勤務先に確認を求めることが重要です。
自分の権利を守るためにも、給与明細で雇用保険料が天引きされているか、またはハローワークで被保険者期間を確認するなど、積極的に情報収集を行いましょう。
適切な加入は、いざという時の安心と安定を保障する重要なセーフティネットです。
まとめ
よくある質問
Q: 雇用保険に加入するための一般的な条件は何ですか?
A: 原則として、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用される見込みがある方が加入対象となります。
Q: アルバイトでも雇用保険に加入できますか?
A: はい、アルバイトでも週20時間以上の勤務が見込まれ、31日以上雇用される見込みがあれば加入義務が生じます。20時間未満の勤務であっても、条件によっては任意で加入できる場合もあります。
Q: 学生でも雇用保険に加入できますか?
A: 原則として、学校教育法で定められた学校の正規課程に在籍する学生は、アルバイトであっても雇用保険の被保険者とはなりません。ただし、卒業見込みで就職活動のためにアルバイトをしている場合など、例外もあります。
Q: 雇用保険の加入期間が短くても、失業給付はもらえますか?
A: 失業給付(基本手当)を受給するためには、離職日以前2年間に被保険者期間が12か月以上必要です。ただし、倒産・解雇など会社都合での離職の場合や、特定受給資格者・特定理由離職者の場合は、離職日以前1年間に被保険者期間が6か月以上あれば受給資格を得られます。
Q: 雇用保険の加入期間が4年や5年以上だと、給付額や期間に影響はありますか?
A: 雇用保険の基本手当の受給額は、離職前の賃金日額と被保険者期間によって決まります。被保険者期間が長いほど、受給できる日数が長くなる傾向があります。また、45歳以上で被保険者期間が5年以上ある場合など、特定の条件を満たすと、より手厚い給付を受けられる場合があります。
