年末調整の時期が近づくと、多くの人が「扶養控除等申告書」の記入に頭を悩ませるかもしれません。特に、学生、パート、独身、共働き、別居の親を持つ方など、働き方や家族構成によって書き方が変わるため、不安に感じることも少なくないでしょう。

この記事では、2025年(令和7年)の最新情報を踏まえ、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の書き方を、ケース別にわかりやすく解説します。正確な申告で、賢く税金を納めるための参考にしてください。

  1. 扶養控除等申告書とは?基本を理解しよう
    1. 扶養控除等申告書の役割と提出の重要性
    2. 提出が必要な人と主な申告内容
    3. 最新の税制改正ポイント(2025年・令和7年)
  2. 学生・大学生・バイト・パートの扶養控除等申告書
    1. 学生・大学生の申告書の書き方と勤労学生控除
    2. パート・アルバイトの申告書提出のメリット
    3. 特定扶養親族の所得基準変更と親への影響
  3. 独身・妻・源泉控除対象配偶者の扶養控除等申告書
    1. 独身者の扶養控除等申告書の記入ポイント
    2. 共働き夫婦における配偶者と扶養親族の申告
    3. 源泉控除対象配偶者とは?最新の基準
  4. 別居親・同居老親等・別居の書き方
    1. 別居している親を扶養親族とする条件と記入方法
    2. 同居老親等を扶養親族とする場合の注意点
    3. 16歳未満の扶養親族の申告と住民税への影響
  5. 業務委託・自営業・個人事業主の注意点
    1. 業務委託・自営業者が扶養控除等申告書を提出しない理由
    2. 副業としての給与所得と扶養控除等申告書
    3. 個人事業主が家族を従業員とする場合の注意点
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 扶養控除等申告書は誰が書く必要がありますか?
    2. Q: 学生(大学生)がアルバイトをする場合、扶養控除等申告書はどうなりますか?
    3. Q: パートやアルバイトでも扶養控除等申告書を提出した方が良いですか?
    4. Q: 独身ですが、扶養控除等申告書はどのように書けば良いですか?
    5. Q: 別居している親を扶養に入れることはできますか?

扶養控除等申告書とは?基本を理解しよう

扶養控除等申告書の役割と提出の重要性

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、会社員やパート・アルバイトなど給与をもらっている方が、扶養控除などの所得控除を受けるために勤務先に提出する重要な書類です。通称「マル扶」とも呼ばれています。

この書類を提出することで、毎月の給与から天引きされる源泉所得税が正しく計算され、年末調整で最終的な所得税額が確定します。提出しないと、適用されるはずの控除が受けられず、毎月の税金が高くなってしまう可能性があります。

また、年末調整の対象からも外れるため、確定申告を自分で行う手間が生じることになります。この申告書は、給与所得者にとって節税と事務手続きの簡素化に欠かせない、まさに「税金の手引き」とも言える存在なのです。

正確な情報を記入し、期日までに提出することが、賢い税金対策の第一歩となります。書類の内容は個人情報が多く含まれるため、記入漏れや誤りがないよう細心の注意を払いましょう。

提出が必要な人と主な申告内容

扶養控除等申告書は、雇用形態に関わらず、給与所得のあるすべての従業員が提出する必要があります。たとえ扶養親族が一人もいない独身の方であっても、この書類の提出は必須です。

提出期限は原則として、その年の最初の給与が支払われる前日までと定められています。年の中途で入社した場合は、入社後速やかに提出が必要です。

この申告書で申告できる主な所得控除には、以下のようなものがあります。

  • 源泉控除対象配偶者: 配偶者控除や配偶者特別控除の対象となる配偶者がいる場合。
  • 控除対象扶養親族: 16歳以上の扶養親族がいる場合。
  • 障害者控除: 本人、配偶者、扶養親族に障害者がいる場合。
  • 寡婦控除・ひとり親控除: 寡婦またはひとり親である場合。
  • 勤労学生控除: 学生であり、一定の所得要件を満たす場合。
  • 16歳未満の扶養親族: 所得税の扶養控除対象外ですが、住民税の計算に必要なため記入します。

これらの控除を適切に申告することで、納めるべき税金を正しく計算し、払いすぎを防ぐことができます。

最新の税制改正ポイント(2025年・令和7年)

2025年(令和7年)には、扶養控除等に関する重要な税制改正がいくつか実施されます。これらの変更点を把握しておくことは、自身の税負担だけでなく、家族の扶養にも大きく影響するため非常に重要です。

まず、配偶者が税法上の扶養に入る際の年収上限が、給与収入のみの場合で123万円に引き上げられます。これは、従来の「103万円の壁」「130万円の壁」と並び、配偶者控除や配偶者特別控除の適用条件に影響を与えるポイントです。

次に、19歳から22歳までの「特定扶養親族」に関する年間の給与収入上限も、従来の103万円から150万円に引き上げられます。さらに、150万円を超えて188万円までの収入の場合でも、段階的に控除を受けられるようになります。これは、大学生などの子供を持つ親にとって、扶養控除を受けやすくなる朗報と言えるでしょう。

また、勤労学生控除の所得要件も、年間合計所得金額が85万円以下(給与所得のみの場合、年収150万円以下)に引き上げられました。ひとり親控除の要件となる子どもの所得上限も、58万円(旧48万円)に引き上げられました。これらの変更は、特に学生やパート・アルバイトで働く方々、そしてその扶養者にとって、税額計算に直接的な影響を及ぼします。最新の情報を確認し、適切に申告することが肝心です。

学生・大学生・バイト・パートの扶養控除等申告書

学生・大学生の申告書の書き方と勤労学生控除

学生や大学生の方でも、アルバイトなどで給与を得ている場合は、扶養控除等申告書を提出する必要があります。特に、「勤労学生控除」の適用を受けるためには、この申告書への正しい記入が不可欠です。

勤労学生控除とは、特定の条件を満たす学生が受けられる所得控除で、自身の所得税負担を軽減できる制度です。適用条件は、合計所得金額が85万円以下(給与所得のみの場合は年収150万円以下)であること、特定の学校の生徒であることなどがあります。

2025年(令和7年)からは、勤労学生控除の所得要件が年収150万円以下に引き上げられ、より多くの学生が控除の対象となる可能性が高まりました。申告書には、勤労学生控除の欄にチェックを入れ、学校名などを記入します。

また、親の扶養に入っている学生の場合、自身の年収が一定額を超えると親の扶養控除から外れてしまい、親の税金が高くなる可能性があります。特に19歳から22歳までの特定扶養親族の給与収入上限が150万円(2025年改正)に引き上げられたことを踏まえ、自身の収入と親への影響をよく確認しましょう。年収123万円以下(19歳~22歳の場合は150万円まで)であれば、親の税金への影響は少ないですが、それを超えると影響が出る可能性があるため注意が必要です。

パート・アルバイトの申告書提出のメリット

パート・アルバイトとして働く方も、給与所得者であるため、扶養控除等申告書の提出が必要です。この書類を提出することで、年末調整の対象となり、払いすぎた所得税が還付される可能性があります。

もし申告書を提出しなかった場合、「乙欄」と呼ばれる高い税率で源泉徴収されてしまいます。この状態が続くと、毎月の手取り額が少なくなり、年末調整も受けられないため、後から確定申告をして税金を取り戻す手間が発生します。

扶養内で働きたいと考えている方にとっても、この申告書の提出は非常に重要です。2025年(令和7年)の税制改正により、配偶者が税法上の扶養に入る際の年収上限が、給与収入のみの場合で123万円に引き上げられました。この新しい「壁」を意識しながら、自身の収入を調整し、申告書を提出することで、家族全体の税負担を最適化できます。

年末調整の際に適切な控除を受けるためにも、パート・アルバイトの方も忘れずに扶養控除等申告書を提出し、必要事項を正確に記入するようにしましょう。

特定扶養親族の所得基準変更と親への影響

2025年(令和7年)の税制改正で、特に重要なのが19歳から22歳までの「特定扶養親族」に関する所得基準の変更です。これまで親の扶養控除対象となるための年間の給与収入上限は103万円でしたが、これが150万円に大幅に引き上げられます。

この改正により、大学生などがアルバイトでより多くの収入を得ても、親が受けられる特定扶養控除の対象から外れにくくなります。例えば、大学生の子供が年収140万円のアルバイトをした場合でも、親は特定扶養控除(63万円)を受け続けることができるようになるのです。

さらに、給与収入が150万円を超えて188万円までの範囲でも、段階的に控除を受けられる制度も導入されます。これにより、親の税負担が急激に増えることを避けることができます。

この変更は、子供が成長し、学費や生活費のためにアルバイトをする家庭にとって、非常に大きなメリットをもたらします。親御さんは、子供の収入状況を把握し、新しい基準に合わせて適切な扶養控除を申告することが重要です。

独身・妻・源泉控除対象配偶者の扶養控除等申告書

独身者の扶養控除等申告書の記入ポイント

「自分は独身で扶養家族もいないから、扶養控除等申告書は関係ない」と考えている方もいるかもしれませんが、それは誤解です。独身の方で扶養親族が一人もいない場合でも、給与所得者である限り、この申告書の提出は必須です。

申告書には、まずご自身の氏名、個人番号(マイナンバー)、住所、生年月日などの基本情報を正確に記入します。扶養親族がいない場合は、「控除対象扶養親族」の欄や「源泉控除対象配偶者」の欄などは空欄のまま提出して問題ありません。

この書類を提出しないと、会社はあなたが扶養親族を申告していないものとみなし、「乙欄」という高い税率で源泉徴収を行います。結果として、毎月の給与から多めに税金が引かれてしまい、手取り額が減少します。

また、年末調整の対象外となるため、払いすぎた税金を取り戻すためにはご自身で確定申告を行う必要が生じます。独身の方も、忘れずに本人情報欄を記入して提出することで、適切な源泉徴収を受け、年末調整による還付の機会を確保することができます。

共働き夫婦における配偶者と扶養親族の申告

共働きのご夫婦の場合、夫だけでなく妻も給与所得者であれば、それぞれが自身の勤務先に扶養控除等申告書を提出する必要があります。たとえ、妻が夫の扶養に入っている場合であっても、自身の給与を受け取る会社には提出が必要です。

扶養親族がいる場合、ご夫婦のどちらか一方のみが扶養控除を申告できますが、特定の状況下では、夫婦で扶養親族を分担して申告することも可能です。例えば、夫が長男を扶養親族として申告し、妻が次男を扶養親族として申告するといったケースも考えられます。

ただし、同一の扶養親族について、夫婦が重複して扶養控除を申告することはできません。どちらが扶養控除を申告するかは、夫婦の所得金額などを考慮して、税金が最も有利になるように判断することが推奨されます。

2025年(令和7年)からは、配偶者が税法上の扶養に入る際の年収上限が123万円(給与収入のみの場合)に引き上げられます。この新しい基準を踏まえ、配偶者控除や配偶者特別控除の適用条件を確認し、夫婦それぞれが適切に申告することが重要です。

源泉控除対象配偶者とは?最新の基準

扶養控除等申告書には「源泉控除対象配偶者」という項目があり、配偶者控除や配偶者特別控除の適用を受けるために記入が必要です。この「源泉控除対象配偶者」とは、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下で、かつ配偶者の合計所得金額が133万円以下(給与収入のみの場合、201万円以下)である場合に該当する配偶者を指します。

特に2025年(令和7年)の税制改正で注目すべきは、配偶者が税法上の扶養に入る際の年収上限が123万円(給与収入のみの場合)となる点です。これまでの「103万円の壁」よりも緩やかになったことで、配偶者控除や配偶者特別控除を受けられる対象者が増える可能性があります。

源泉控除対象配偶者に該当すると、納税者本人の所得から配偶者控除(最大38万円)または配偶者特別控除が差し引かれ、所得税の負担が軽減されます。そのため、配偶者の収入状況を正確に把握し、申告書に正しく記入することが、節税の鍵となります。

配偶者が複数の勤務先から給与を受け取っている場合や、給与以外の所得がある場合は、合計所得金額を正確に計算する必要があります。誤った申告は、追徴課税の対象となる可能性もあるため、不明な点があれば税務署や勤務先の担当者に相談しましょう。

別居親・同居老親等・別居の書き方

別居している親を扶養親族とする条件と記入方法

親と別居している場合でも、一定の条件を満たせば、親を自身の扶養親族として申告し、扶養控除を受けることが可能です。その最も重要な条件が、「生計を一にしている」と認められることです。

「生計を一にする」とは、必ずしも同居している必要はありません。例えば、あなたが親に対して生活費、学費、療養費用などを定期的に送金し、親の生活を経済的に支えている状態であれば、「生計を一にしている」と判断されます。

扶養控除等申告書には、別居している親の氏名、生年月日、個人番号(マイナンバー)、そして現在の住所を正確に記入します。さらに、摘要欄に「生計を一にしている」旨を記載し、仕送りの事実があることなどを具体的に明記すると良いでしょう。

会社によっては、事実確認のために、銀行の送金記録や振込明細などの提示を求められる場合があります。そのため、仕送りをする際は、振込履歴が残る方法を利用し、証拠となる書類を保管しておくことが賢明です。

同居老親等を扶養親族とする場合の注意点

同居している親(同居老親等)を扶養親族として申告する場合も、同様に扶養控除等申告書に記入します。同居老親等とは、納税者またはその配偶者の直系尊属(父母や祖父母など)で、納税者またはその配偶者と同居している、その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の者を指します。

同居老親等を扶養親族として申告すると、一般の扶養親族の控除額(38万円または48万円)に加えて、扶養親族が70歳以上の場合はさらに控除額が加算され、税負担が軽減されます。これは、高齢の親と同居して扶養している家庭への優遇措置です。

申告書には、親の氏名、生年月日、個人番号(マイナンバー)を記入し、扶養親族の区分で「同居老親等」に該当する旨を選択します。正確な情報記入はもちろんのこと、もし年の途中で同居を開始したり、同居を解消したりした場合は、その状況を適切に反映させる必要があります。

特に、介護を必要とする高齢の親と同居しているケースでは、控除額が大きくなる可能性があるため、漏れなく申告するようにしましょう。

16歳未満の扶養親族の申告と住民税への影響

扶養控除は、原則として16歳以上の扶養親族に対して適用されます。そのため、16歳未満の子供や親族を扶養している場合、所得税上の扶養控除は適用されません。これは、児童手当の支給が始まったことに伴い、税制が見直されたためです。

しかし、扶養控除等申告書には、16歳未満の扶養親族についても忘れずに記入する必要があります。その理由は、所得税の控除対象ではないものの、住民税の計算においては扶養親族と見なされ、住民税額に影響を与えるためです。

申告書では、16歳未満の扶養親族の氏名、生年月日、個人番号(マイナンバー)を記入し、「16歳未満の扶養親族」の欄にチェックを入れます。この情報を勤務先が年末調整の際に把握することで、地方自治体に正確な情報が伝わり、翌年度の住民税が適切に計算されます。

記入漏れがあると、住民税の計算が正しく行われず、結果的に住民税が高くなってしまう可能性があります。子供が幼い家庭では特に、この項目を見落とさないよう注意し、正確に記入することが大切です。

業務委託・自営業・個人事業主の注意点

業務委託・自営業者が扶養控除等申告書を提出しない理由

業務委託契約で働く方、または自営業や個人事業主として活動している方は、原則として扶養控除等申告書を勤務先に提出する必要がありません。その理由は、これらの働き方は「給与所得者」ではないためです。

扶養控除等申告書は、あくまで会社から給与を受け取る人が、毎月の源泉徴収額を調整し、年末調整を受けるために提出する書類です。業務委託による報酬や、事業による所得は、給与所得とは異なる扱いになります。

したがって、業務委託や自営業で収入を得ている方は、これらの所得に対して自分で税金を計算し、原則として毎年確定申告を行う必要があります。確定申告の際には、所得から適用可能な各種所得控除(扶養控除を含む)を自分で申告することになります。

もし、業務委託の仕事と並行して、パートやアルバイトとして給与所得も得ている場合は、給与所得を得ている勤務先にのみ扶養控除等申告書を提出することになります。複数の収入源がある場合は、それぞれの収入の性質を理解し、適切な手続きを取ることが重要です。

副業としての給与所得と扶養控除等申告書

本業は会社員として給与を得ており、副業として別の会社でアルバイトやパートをして給与を得ている場合、扶養控除等申告書の提出方法に注意が必要です。原則として、扶養控除等申告書は「主たる給与の支払先」、つまり最も収入の多い勤務先にのみ提出することができます。

副業として給与を得ている勤務先には、この申告書を提出することはできません。そのため、副業先からの給与については、「乙欄」と呼ばれる高い税率で源泉徴収されることになります。これは、複数の勤務先で控除が重複して適用されるのを防ぐための措置です。

副業先で乙欄が適用されると、毎月の税金が多めに天引きされるため、結果的に多くの人が年末調整だけでは税金を精算しきれず、確定申告が必要になるケースが多くなります。確定申告を行うことで、副業で払いすぎた税金を取り戻すことができます。

主たる勤務先と副業先の両方で扶養控除等申告書を提出してしまうと、重複申告となり、後で税務署から指摘を受ける可能性があります。ご自身の収入状況を正確に把握し、正しい方法で申告を行いましょう。

個人事業主が家族を従業員とする場合の注意点

個人事業主の方が、ご自身の家族(配偶者や子供など)を事業専従者として雇用し、給与を支払う場合、その家族も給与所得者となります。この場合、家族は個人事業主であるあなたの「従業員」として扱われるため、扶養控除等申告書を提出する必要があります。

家族従業員が扶養控除等申告書を提出することで、その給与に対する源泉所得税が適切に計算され、年末調整の対象となります。もし提出されなければ、他の従業員と同様に「乙欄」で源泉徴収され、税負担が大きくなってしまいます。

ただし、家族を従業員とする場合は、「青色事業専従者給与」または「白色申告者の事業専従者控除」の適用を受けるかどうかの選択が重要です。これらの制度を利用して家族への給与を経費とすると、その家族は配偶者控除や扶養控除の対象から外れることになります。

どちらの制度を利用するかは、家族全体の所得状況や税額を考慮して、最も有利な方を選ぶ必要があります。複雑なケースであるため、税理士などの専門家に相談し、適切な申告方法を選択することをおすすめします。