2025年度の税制改正により、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」および関連する控除制度に、多くの変更点が導入されます。これらの変更点を理解し、ご自身の状況に合わせて正しく申告することで、税負担を効果的に軽減することが可能です。

特に、配偶者や扶養親族の有無、その所得状況によって、申告書の書き方や受けられる控除額が大きく変動するため、最新の情報を把握しておくことが重要です。この記事では、新しい制度の主要なポイントと、様々なケースにおける申告の注意点を詳しく解説し、あなたの税負担最適化をサポートします。

  1. 扶養控除等申告書の基本:配偶者と扶養親族について
    1. 扶養控除等申告書とは?制度の基本を理解する
    2. 2025年税制改正の大きな変更点:基礎控除・給与所得控除の引き上げ
    3. 特定親族特別控除の新設と扶養者の手取りへの影響
  2. 共働きの場合や配偶者が別居している場合の申告
    1. 共働き夫婦における配偶者控除・配偶者特別控除の適用条件
    2. 別居している配偶者を扶養に入れる際の注意点
    3. 複数人で扶養控除を受けることは可能か?
  3. 扶養親族がいない、または扶養者がいない場合の申告
    1. 扶養親族がいない場合の扶養控除等申告書提出の意義
    2. 自身が誰かの扶養に入っている場合の申告方法
    3. 扶養控除とその他の控除(基礎控除、社会保険料控除など)
  4. ひとり親や一人暮らし、扶養内パートの申告
    1. ひとり親控除の適用条件と申告
    2. 一人暮らしの場合の申告:基礎控除とその他の控除活用
    3. 扶養内パートの「123万円の壁」と働き方の調整
  5. 非居住者、老人扶養親族、他の所得者が控除を受ける扶養親族等について
    1. 非居住者である扶養親族の扱い
    2. 老人扶養親族の特例と控除額
    3. 複数の所得者が控除を受ける場合の扶養親族の選択
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 扶養控除等申告書で「配偶者」に関する項目はどう記入すればいいですか?
    2. Q: 共働きで配偶者も働いている場合、扶養控除等申告書はどうなりますか?
    3. Q: 扶養親族が一人もいない場合、扶養控除等申告書はどうすればいいですか?
    4. Q: ひとり親や一人暮らしの場合、扶養控除等申告書で特別な申告はありますか?
    5. Q: 海外に住む親族を扶養している場合、申告できますか?

扶養控除等申告書の基本:配偶者と扶養親族について

扶養控除等申告書とは?制度の基本を理解する

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、会社員やパート・アルバイトなど給与所得者が、勤務先を通じて税務署に提出する非常に重要な書類です。

この書類を提出することで、毎月の給与から源泉徴収される所得税額が適切に計算され、年末調整で正確な所得税額が確定します。扶養親族がいるかどうかに関わらず、原則としてすべての給与所得者が勤務先に提出する義務があります。

提出しない場合、税率の高い「乙欄課税」が適用され、本来徴収されないはずの所得税が余計に徴収されてしまう可能性があるため、必ず提出しましょう。

2025年分からは様式も変更され、「控除対象扶養親族」の記載欄が「源泉控除対象親族」に名称変更されました。また、新たに「源泉控除対象親族」が「特定親族」に該当するかどうかをチェックする欄が設けられています。

申告の際には、「収入」(額面)ではなく、「合計所得」(収入から必要経費などを差し引いた金額)を記入することにも注意が必要です。給与所得者の場合、最低65万円の給与所得控除額を差し引いた金額が合計所得となります。

2025年税制改正の大きな変更点:基礎控除・給与所得控除の引き上げ

2025年度の税制改正で最も注目すべき変更点の一つは、配偶者控除の対象となる年収上限が引き上げられたことです。これにより、長らく基準とされてきた「103万円の壁」が「123万円の壁」へと変更されました。

この変更は、基礎控除額が従来の48万円から58万円に、そして給与所得控除額の最低保障額が55万円から65万円に、それぞれ10万円ずつ引き上げられたことによるものです。これにより、配偶者が以前よりも約20万円多く稼いでも、引き続き配偶者控除の対象となる範囲が広がりました。

例えば、これまで年収103万円を超えると配偶者控除が受けられなくなっていたケースでも、2025年からは年収123万円までであれば控除が適用されるようになります。これは、共働き世帯や扶養内パートで働く方にとって、働き方の選択肢を広げる朗報と言えるでしょう。

同様に、扶養親族の合計所得金額の要件も、これまでの48万円以下から58万円以下に引き上げられました。給与収入のみの場合、年収103万円以下から123万円以下となります。これらの変更点を理解し、ご自身の家族構成や働き方に合わせて適切に申告することが、税負担を軽減する上で非常に重要です。

特定親族特別控除の新設と扶養者の手取りへの影響

今回の税制改正では、19歳以上23歳未満の扶養親族(特定扶養親族)に対して、「特定親族特別控除」が新設されました。これは、子どもの進学などでアルバイト収入が増え、扶養から外れることによって扶養者の手取りが急激に減少する事態を防ぐための重要な制度です。

この新しい控除制度により、子の年収が123万円(合計所得金額58万円)を超えた場合でも、年収188万円以下であれば段階的に控除を受けられるようになりました。具体的には、19歳以上23歳未満の特定親族に該当する場合で、その年間合計所得が58万円超123万円以下であれば、3万円から63万円の控除が受けられます。

例えば、大学生の子どもがアルバイトで年間150万円を稼いだ場合、従来の制度であれば扶養控除の対象外となり、親の税負担が増大していました。しかし、特定親族特別控除が適用されることで、親は一定の控除を受け続けることができ、家計への影響を緩和できます。

この控除は、特に大学や専門学校に通う子どもを持つ家庭にとって大きなメリットとなります。申告書の様式変更に伴い、「源泉控除対象親族」が「特定親族」に該当するかどうかをチェックする欄が新設されていますので、忘れずに確認し、該当する場合は適切に記入しましょう。

共働きの場合や配偶者が別居している場合の申告

共働き夫婦における配偶者控除・配偶者特別控除の適用条件

共働き夫婦の場合、配偶者の所得状況によって「配偶者控除」または「配偶者特別控除」のどちらかが適用される可能性があります。2025年からは、配偶者の合計所得が58万円(給与収入123万円)以下であれば、納税者は配偶者控除(最大38万円)を受けることができます。

もし配偶者の合計所得が58万円超133万円(給与収入123万円超201.5万円)以下であれば、その所得に応じて段階的に控除額が減額される「配偶者特別控除」が適用されます。

どちらの控除を受けるべきかは、夫婦の所得状況によって異なりますが、一般的には所得が多い方が控除を受けることで、より大きな節税効果が期待できます。これは、所得税の税率が所得額に応じて高くなるためです。

参考として、配偶者の所得と控除額の関係を以下の表にまとめました。

配偶者の年間合計所得金額 給与収入のみの場合 控除の種類 控除額(納税者の合計所得900万円以下の場合)
48万円以下 103万円以下 配偶者控除 38万円
48万円超〜58万円以下 103万円超〜123万円以下 配偶者控除 38万円
58万円超〜63万円以下 123万円超〜128万円以下 配偶者特別控除 38万円
133万円超 201.5万円超 控除なし 0円

2025年分からは、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に、特定親族特別控除に関する事項が追加された様式が使用されますので、これらの変更点を踏まえて正確に申告しましょう。

別居している配偶者を扶養に入れる際の注意点

配偶者控除や配偶者特別控除は、必ずしも同居している配偶者に限定されるわけではありません。たとえ別居していても、納税者と配偶者が「生計を一にしている」と認められれば、控除の対象となります。

「生計を一にしている」とは、単に同居しているかどうかにかかわらず、生活費や学費などを常に送金しているなど、一体として生活していると認められる状態を指します。

そのため、別居している配偶者を扶養に入れる際には、生活費や教育費などを継続的に送金している証明が必要となります。具体的には、銀行の振込明細や送金証明書、またはクレジットカードの家族カードの利用明細などで、経済的な援助をしていることを客観的に示す書類を準備しておきましょう。

また、病気療養や単身赴任などのやむを得ない事情での別居であれば認められやすいですが、単なる別居だけでは認められないケースもあります。事実婚や内縁関係の配偶者は原則として扶養控除の対象外となりますので、この点も注意が必要です。

不明な点があれば、事前に勤務先の人事・経理担当者や税務署に相談し、適切な手続きを行うようにしてください。

複数人で扶養控除を受けることは可能か?

扶養控除は、一人の扶養親族について、複数の納税者が重複して受けることはできません。例えば、夫婦に子どもが一人いる場合、夫と妻の両方がその子どもを扶養親族として申告することは認められていません。

このような場合、夫婦のどちらか一方のみが扶養控除を受けることになります。一般的には、所得税率が高い方(つまり、所得が多い方)が扶養控除を受ける方が、家族全体の税負担を軽減できるため有利とされています。

例えば、夫の年収が妻よりも大幅に高い場合、夫が扶養控除を受けることで、夫の所得税額がより多く減少し、家計全体の節税効果が最大化されます。これは、所得税が累進課税制度を採用しているためです。

同様に、親を扶養に入れる場合でも、兄弟姉妹の中で誰か一人しか扶養控除を受けることはできません。家族間で事前に話し合い、それぞれの所得状況を考慮した上で、誰が扶養控除を受けるかを決定することが重要です。

年末調整の申告時には、この点を踏まえて適切な納税者が扶養控除を申告するようにしましょう。これにより、余計な税金を支払うことなく、最大限の控除を受けることが可能になります。

扶養親族がいない、または扶養者がいない場合の申告

扶養親族がいない場合の扶養控除等申告書提出の意義

「扶養控除等申告書」という名前から、扶養親族がいない場合は提出不要だと誤解されがちですが、これは間違いです。独身の方やDINKS(夫婦共働きで子供がいない)世帯など、扶養親族が一人もいない場合でも、この申告書は勤務先に必ず提出する必要があります

この申告書は、扶養控除の有無を決定するだけでなく、毎月の給与から源泉徴収される所得税額を計算するための基礎情報となるからです。この書類を提出しないと、税法上「扶養親族がいないこと」を会社が把握できないため、高い税率が適用される「乙欄課税」で所得税が徴収されてしまいます。

例えば、本来であれば毎月5,000円程度の所得税で済むはずが、乙欄課税によって10,000円以上徴収されてしまうケースも珍しくありません。もちろん、年末調整で過払い分は還付されますが、毎月の手取りが減ってしまうのは避けたいところです。

扶養親族がいなくても、納税者全員が受けられる「基礎控除」(2025年からは58万円)は適用されます。この基礎控除が適用される前提で源泉徴収されるためにも、扶養控除等申告書は忘れずに提出するようにしましょう。

自身が誰かの扶養に入っている場合の申告方法

ご自身が親の扶養に入っている学生アルバイトの方や、配偶者の扶養に入っているパートタイマーの方でも、ご自身の勤務先には「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出する必要があります。

これは、ご自身の勤務先での源泉徴収において、乙欄課税を避けるために不可欠な手続きです。ご自身の申告書では、扶養親族の欄は空欄とするか、「扶養親族なし」として提出します。

一方、ご自身を扶養に入れている親や配偶者は、ご自身の年間合計所得が58万円(給与収入のみなら123万円)以下である場合に、ご自身を扶養親族として申告できます。ここで重要なのは、あくまで「合計所得」が基準となる点です。

例えば、学生アルバイトで年収が120万円の場合、給与所得控除65万円を差し引くと、合計所得は55万円となり、親の扶養に入り続けることができます。しかし、年収が130万円になると、給与所得控除後でも合計所得が65万円となり、親の扶養から外れることになります。

ご自身が扶養内であるかどうかは、納税者本人だけでなく、扶養者側の税金にも影響を与えるため、双方で所得状況を正確に把握しておくことが大切です。

扶養控除とその他の控除(基礎控除、社会保険料控除など)

扶養親族がいない場合でも、所得税の負担を軽減できる控除は多数存在します。最も基本的なものが、納税者全員に適用される「基礎控除」(2025年からは58万円)です。この控除は、所得税計算の土台となるため、扶養控除の有無にかかわらず誰もが恩恵を受けられます。

次に、多くの人が適用を受けるのが「社会保険料控除」です。健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料など、給与から天引きされている社会保険料は、支払った全額が所得から控除されます。これは年末調整で自動的に適用される場合がほとんどですが、国民健康保険料などを自分で支払っている場合は、領収書や証明書を提出する必要があります。

その他にも、以下のような控除を活用できます。

  • 生命保険料控除:生命保険や個人年金保険の保険料に応じて一定額が控除されます。
  • 地震保険料控除:地震保険の保険料に応じて一定額が控除されます。
  • 医療費控除:年間10万円(または所得の5%)を超える医療費を支払った場合に適用されます。
  • iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金:全額が所得控除の対象となります。
  • ふるさと納税:寄付金控除の一種で、自己負担額2,000円を除いて所得税・住民税が軽減されます。

これらの控除は、年末調整や確定申告を通じて適用されます。各種控除に必要な書類(保険料控除証明書、医療費の領収書など)を大切に保管し、申告漏れがないように注意しましょう。扶養控除がなくても、これらの控除を最大限に活用することで、効果的に税負担を軽減できます。

ひとり親や一人暮らし、扶養内パートの申告

ひとり親控除の適用条件と申告

「ひとり親控除」は、特定の条件を満たすひとり親家庭に対して適用される税制優遇措置です。この控除は、婚姻歴の有無にかかわらず、未婚、離婚、死別などで、現在婚姻をしていない納税者が対象となります。

適用条件は以下の通りです。

  • 納税者と生計を一にする子がいること(子の年間合計所得金額が58万円以下であること)。
  • 納税者本人の年間合計所得金額が500万円以下であること。
  • 納税者が住民票に記載されている「未届の夫」または「未届の妻」に該当しないこと。

この控除の目的は、ひとり親家庭の経済的負担を軽減することにあります。控除額は35万円と大きく、所得税や住民税の軽減に大きく寄与します。

ひとり親控除を適用するには、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の所定の欄、具体的には「ひとり親」のチェックボックスに印を付けることで申告します。

従来の寡婦控除や寡夫控除とは異なり、未婚のひとり親も対象となる点が大きな特徴です。ご自身がこれらの条件を満たしている場合は、忘れずに申告を行い、適切な控除を受けるようにしましょう。不明な点があれば、勤務先や税務署に相談してください。

一人暮らしの場合の申告:基礎控除とその他の控除活用

一人暮らしの場合、一般的に扶養親族がいないため、扶養控除を適用することはできません。しかし、だからといって税金面での優遇が全くないわけではありません。納税者全員に適用される「基礎控除」(2025年からは58万円)は、一人暮らしの方でも必ず受けられます。

さらに、一人暮らしの方でも積極的に活用できる控除は多数存在します。これらを適切に申告することで、税負担を効果的に軽減することが可能です。

活用を検討したい主な控除は以下の通りです。

  • 社会保険料控除:健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料など、支払った全額が控除対象です。給与天引きされているものは年末調整で自動適用されますが、国民健康保険料などを自分で支払っている場合は証明書の提出が必要です。
  • 生命保険料控除・地震保険料控除:加入している保険の種類に応じた控除を受けられます。
  • 医療費控除:年間で多額の医療費(10万円超、または所得の5%超)を支払った場合に適用されます。
  • iDeCo(個人型確定拠出年金):積み立てた掛金の全額が所得控除の対象となり、将来の資産形成と節税を両立できます。
  • 住宅ローン控除:マイホームを住宅ローンで購入した場合に、年末のローン残高に応じて所得税額から控除されます。

これらの控除は、年末調整や確定申告で手続きが必要です。特にiDeCoや生命保険料控除などは、ご自身で申告しなければ適用されません。関連書類をしっかり保管し、忘れずに申告を行うことで、賢く税金を節約しましょう。

扶養内パートの「123万円の壁」と働き方の調整

配偶者の扶養に入って働くパート・アルバイトの方にとって、「年収の壁」は非常に重要なキーワードです。2025年度の税制改正により、所得税の扶養控除に関する「103万円の壁」が「123万円の壁」に引き上げられました

これは、配偶者控除の対象となる配偶者の給与収入上限が103万円から123万円になったことを意味します。つまり、パート収入が123万円までであれば、引き続き所得税法上の扶養から外れることなく、配偶者が配偶者控除を受けることができます。

この変更は、扶養内で働く方の働き方の自由度を高めるものですが、注意すべきは「社会保険の壁」です。社会保険の扶養に関するルールは、所得税の扶養とは異なる基準で運用されています。

  • 106万円の壁:勤務先の規模(従業員101人以上、2024年10月からは51人以上)や労働時間(週20時間以上)などの条件を満たす場合、年収約106万円を超えると、パート自身が社会保険(厚生年金・健康保険)に加入義務が生じます。
  • 130万円の壁:上記106万円の壁の条件に該当しない場合でも、年収が130万円を超えると、配偶者の社会保険の扶養から外れ、自身で国民健康保険や国民年金に加入するか、勤務先の社会保険に加入する必要があります。

したがって、税制上の扶養(123万円)と社会保険上の扶養(106万円または130万円)は別物として理解し、ご自身の働き方や家計への影響を考慮しながら、年収を調整することが賢明です。

非居住者、老人扶養親族、他の所得者が控除を受ける扶養親族等について

非居住者である扶養親族の扱い

海外に居住する親族を扶養に入れる場合、国内に居住する親族とは異なる条件や書類が必要になります。原則として、「生計を一にしている」ことが条件となり、扶養していることの証明として、生活費や教育費などを継続的に送金している証明が不可欠です。

送金証明としては、金融機関の振込明細や送金依頼書の控えなどが有効です。また、親族関係を証明する書類(戸籍謄本や外国政府が発行した親族関係公証書など)の提出も求められます。

特に重要な変更点として、2023年からは30歳以上70歳未満の非居住者親族に対する扶養控除が厳格化されました。以下のいずれかに該当しない場合、扶養控除の対象外となります。

  1. 留学のため日本国外に居住していること
  2. 障害者であること
  3. 扶養義務者から年間38万円以上の送金を受けていること

これに該当しない30歳以上70歳未満の親族は、たとえ生計を一にしていても扶養控除の対象外となるため、海外に親族を持つ方は注意が必要です。これらの条件を満たしているかを確認し、必要な書類を揃えて申告するようにしましょう。

老人扶養親族の特例と控除額

扶養親族が70歳以上の場合、「老人扶養親族」として、通常の扶養控除額に加えてさらに控除額が加算されます。これは、高齢の親族を扶養している納税者の負担を軽減するための特例です。

老人扶養親族の控除額は、同居しているかどうかで異なります。

  • 同居老親等:納税者または配偶者の直系尊属(父母、祖父母など)で、常に同居している場合は、控除額が58万円となります。
  • 同居老親等以外:上記に該当しない老人扶養親族(例えば、別居している父母や祖父母、同居しているが直系尊属ではない親族など)の場合、控除額は48万円となります。

老人扶養親族も、他の扶養親族と同様に年間合計所得金額が58万円以下である必要があります。この特例を適用することで、特に高齢の親御さんなどを扶養している家庭の税負担を大きく軽減できる可能性があります。

年末調整や確定申告の際には、扶養親族の年齢や同居の有無を正確に確認し、適切な控除額を申告するようにしましょう。複数の扶養親族がいる場合、どの親族を誰が扶養に入れるかを検討する際にも、この老人扶養親族の特例は重要な要素となります。

複数の所得者が控除を受ける場合の扶養親族の選択

家族の中に、扶養控除の対象となる親族(例えば子どもや親)がいて、その親族を扶養控除の対象にできる所得者が複数いる場合(例えば夫婦や兄弟姉妹など)、いずれか一人しか扶養控除を受けることはできません

このようなケースでは、家族全体としての所得税や住民税の負担を最も軽減できる方法を選択することが重要です。一般的には、所得税率が高い(つまり、合計所得金額が多い)納税者が扶養控除を受けるのが最も有利とされています。

例えば、夫と妻で子どもを扶養に入れる場合、夫の所得税率が妻よりも高いのであれば、夫が子どもを扶養に入れることで、夫の所得税額がより多く減少します。これにより、夫婦全体の税金が最も安くなる可能性が高まります。

今回の税制改正で新設された特定親族特別控除(19歳以上23歳未満の特定扶養親族に関する控除)も考慮に入れる必要があります。子のアルバイト収入状況によっては、扶養から完全に外れるのではなく、特定親族特別控除を適用することで、納税者の手取りが急激に減少するのを防げます。

事前に家族間で話し合い、それぞれの所得状況や税率を把握した上で、誰がどの扶養親族の控除を受けるかを調整し、年末調整で適切な申告を行うことが、賢い節税につながります。

2025年度の税制改正は、扶養控除等申告書の内容に大きな影響を与えます。特に「123万円の壁」への変更や「特定親族特別控除」の新設は、多くの家庭の税負担に直結する重要な変更点です。

この記事で解説したポイントを踏まえ、ご自身の家族構成や働き方に合わせて、正確な申告を行いましょう。適切な税控除を受けることは、家計の負担を軽減し、より豊かな生活を送る上で非常に重要です。

もし不明な点や、ご自身のケースで判断に迷うことがあれば、遠慮なく勤務先の人事・経理担当者や最寄りの税務署、または税理士などの専門家に相談することをお勧めします。正しい知識と適切な手続きで、税負担の最適化を図りましょう。