2025年(令和7年)の税制改正を控え、年末調整の制度は変化の時を迎えています。所得税や住民税を賢く節税するためには、最新の控除制度や手続きを正確に理解し、適切に活用することが不可欠です。

特に、2025年分の年末調整からは、基礎控除や給与所得控除、扶養親族の所得要件が大きく変更されるため、これまで対象外だった方も控除を受けられるチャンスが増えるかもしれません。

この記事では、年末調整で知っておきたい主要な控除や、持ち家・リフォーム、離婚・別居、扶養家族に関する疑問、さらにはiDeCoやふるさと納税といったその他の節税対策まで、幅広く解説します。賢く節税して、手元に残るお金を増やしましょう。

  1. 住宅ローン控除で節税!持ち家購入者は必見
    1. 住宅ローン控除の基本と申請の流れ
    2. 2025年以降の住宅ローン控除の動向と注意点
    3. 控除額を最大化するための賢い利用法
  2. リフォーム控除で賢く節税!知っておくべきポイント
    1. リフォーム控除の種類と適用条件
    2. 適用されるリフォーム工事と必要書類
    3. 確定申告による申請手順と注意点
  3. 離婚・別居の場合の年末調整、養育費や扶養控除はどうなる?
    1. 離婚・別居時の扶養控除の考え方
    2. 養育費と所得税・住民税の取り扱い
    3. 子どもを扶養に入れる際の注意点と手続き
  4. 扶養控除の対象は?高齢者や療育手帳を持つ家族がいる場合
    1. 扶養控除の基本と2025年の変更点
    2. 高齢の親を扶養に入れる場合の条件とメリット
    3. 療育手帳を持つ家族の扶養控除と障害者控除
  5. 年末調整でよくある疑問を解決!名義変更やルームシェアについても
    1. 住宅の名義変更や共有名義と年末調整
    2. ルームシェアと年末調整、家賃や光熱費の扱い
    3. iDeCoやふるさと納税、その他の控除の賢い活用法
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 住宅ローン控除を受けるために必要な書類は何ですか?
    2. Q: リフォーム費用も年末調整で控除できますか?
    3. Q: 離婚した場合、年末調整で養育費や配偶者控除はどうなりますか?
    4. Q: 高齢の親を扶養に入れていますが、療育手帳を持っています。扶養控除の対象になりますか?
    5. Q: 年末調整で「基配特所」や「基 配 所」とありますが、これは何ですか?

住宅ローン控除で節税!持ち家購入者は必見

持ち家を購入した方にとって、住宅ローン控除(正式名称:住宅借入金等特別控除)は非常に大きな節税効果をもたらす制度です。しかし、その仕組みや適用条件は複雑で、最新の情報に常にアンテナを張っておく必要があります。

特に、居住を開始した時期によって控除率や控除期間が異なるため、ご自身のケースに合わせた理解が求められます。この控除を最大限に活用し、税負担を軽減しましょう。

住宅ローン控除の基本と申請の流れ

住宅ローン控除は、住宅ローンの残高に応じて所得税が軽減される制度で、住宅取得者の経済的負担を和らげることを目的としています。控除の対象となる住宅には、新築住宅、中古住宅、増改築などが含まれますが、それぞれに床面積や築年数、耐震基準などの要件が定められています。

控除期間は、原則として入居した年からの10年間(一部のケースでは13年間)です。控除額は、年末時点での住宅ローン残高の一定割合が所得税から控除され、控除しきれない場合は住民税からも一部控除される仕組みです。ただし、控除される額には上限がありますので注意が必要です。

初めて住宅ローン控除を受ける場合は、入居した年の翌年の3月15日までに、税務署で確定申告を行う必要があります。この際、「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」や「源泉徴収票」、金融機関から発行される「残高証明書」、住民票の写しなど、多くの書類が必要になります。

無事に初年度の確定申告が完了すれば、2年目以降は年末調整で控除を受けられるようになります。勤務先から配布される「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や「住宅借入金等特別控除申告書」に必要事項を記入し、金融機関から送られてくる残高証明書を添付して提出するだけで済みます。万が一、提出を忘れてしまっても、5年以内であれば確定申告で還付申告が可能です。

2025年以降の住宅ローン控除の動向と注意点

住宅ローン控除の制度は、社会情勢や政策に応じて度々改正が行われます。2025年以降も、住宅ローン控除に関しては様々な議論が交わされており、制度内容が変動する可能性を常に考慮しておく必要があります。

特に、住宅の種類(省エネ住宅、ZEH水準省エネ住宅、認定長期優良住宅など)によって借入限度額や控除期間が異なる点が重要です。例えば、一般住宅に比べて環境性能の高い住宅ほど、控除の上限額が高く設定される傾向にあります。

2024年の制度では、新築の省エネ基準を満たさない住宅に対する住宅ローン控除は原則として受けられなくなっており、今後はますます環境性能が重視される方向にあります。住宅購入を検討されている方は、将来の制度変更も見据え、環境性能の高い住宅を選ぶことが、控除を最大限に享受するための賢い選択となるでしょう。

また、住宅ローン控除とふるさと納税を併用する場合にも注意が必要です。ふるさと納税による寄附金控除を適用すると、住民税の控除限度額が先に使われるため、住宅ローン控除で控除できる住民税の金額が減少してしまう可能性があります。特に、所得税から控除しきれなかった分が住民税から控除される「住宅ローン控除の住民税からの控除」の部分に影響が出やすいです。

多額のふるさと納税を行う予定がある方は、ご自身の所得額や住宅ローン残高、ふるさと納税の寄附額を総合的に考慮し、どちらの控除を優先させるか、あるいはバランスを取るかを事前にシミュレーションしておくことをおすすめします。

控除額を最大化するための賢い利用法

住宅ローン控除の控除額を最大化するには、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。特に、夫婦で住宅を購入する場合の共有名義や、連帯債務の場合の申請方法によって、控除額が変わってくる可能性があります。

夫婦で共有名義として住宅ローンを組む場合、それぞれの持分割合に応じて住宅ローン控除を別々に申請することが可能です。この場合、夫婦それぞれの所得から控除を受けることができるため、所得税・住民税の合計額が大きくなる夫婦にとっては、一人で控除を受けるよりも全体的な節税効果が高まる可能性があります。ただし、それぞれが控除を受けるためには、個別に確定申告を行う必要があります。

また、住宅ローン控除の対象となる借り入れは、新築住宅や購入の場合で最大4,500万円(省エネ基準達成住宅の場合)とされています。この上限額を超えてローンを組んでいても、控除の対象となるのは上限額までです。

繰り上げ返済を検討する際には、住宅ローン控除の残り期間と、繰り上げ返済による利息軽減効果を比較検討することが重要です。ローン控除の期間がまだ残っている場合は、早期に繰り上げ返済をしてしまうと、控除を受けられるはずだった税金が減ってしまう可能性があります。一方で、控除期間が残りわずかである場合や、金利が高いローンを組んでいる場合は、繰り上げ返済によって将来の利息負担を大きく軽減できるメリットがあります。

金融機関によっては、繰り上げ返済に関する相談窓口を設けているところもありますので、専門家のアドバイスを受けながら、ご自身の状況に最適な繰り上げ返済のタイミングを見極めることが賢明です。住宅ローン控除は長期にわたる制度であるため、将来的なライフプランと合わせて慎重に計画を立てることが、最大の節税効果を得るための鍵となります。

リフォーム控除で賢く節税!知っておくべきポイント

自宅のリフォームは、快適な住環境を整えるだけでなく、税制上の優遇措置を受けることで節税にもつながる可能性があります。住宅ローン控除が「住宅の購入」を対象とするのに対し、リフォーム控除は既存住宅の「改修」に特化した税制優遇です。適切なリフォームを行うことで、所得税や固定資産税の負担を軽減できることがあります。

特に、耐震、バリアフリー、省エネといった特定の目的を持ったリフォームは、国の政策として推奨されており、手厚い控除が用意されています。これらの控除を賢く活用し、より良い住まいと節税の両方を実現しましょう。

リフォーム控除の種類と適用条件

リフォームに関する税制優遇措置は複数あり、一般的に「リフォーム減税」や「特定増改築等住宅借入金等特別控除」などと呼ばれます。これらは、住宅ローン控除とは別の制度として位置づけられており、特定の要件を満たすリフォーム工事が対象となります。

主なリフォーム控除には、以下のような種類があります。

  • 耐震リフォーム控除: 旧耐震基準の住宅を新耐震基準に適合させるための改修工事が対象。
  • バリアフリーリフォーム控除: 高齢者や障害を持つ方が安全に暮らせるよう、段差の解消、手すりの設置、浴室の改修などを行う工事が対象。
  • 省エネリフォーム控除: 窓の断熱改修、高効率給湯器の設置、太陽光発電システムの設置など、省エネルギー性能を高める工事が対象。
  • 同居対応リフォーム控除: 親との同居を目的とした増改築工事(キッチンや浴室の増設など)が対象。

これらの控除を受けるためには、それぞれに細かな適用条件が定められています。例えば、工事費用の総額が50万円を超えていること(耐震改修は100万円超)、居住部分の床面積が50平方メートル以上であること、一定の省エネ基準やバリアフリー基準を満たす工事であることなどです。

また、これらの控除は、ローンの有無によって適用される制度が異なる場合があります。ローンを利用してリフォームを行った場合は「特定増改築等住宅借入金等特別控除」が、ローンを利用しない場合は「特定の改修工事に係る住宅特定改修特別税額控除」が適用されることが多いです。ご自身のリフォーム内容と資金調達方法に合わせて、どの控除が適用されるかを確認することが重要です。

適用されるリフォーム工事と必要書類

リフォーム控除が適用される工事は、その種類によって具体的に定められています。例えば、省エネリフォームであれば、

  • 窓の断熱改修: 複層ガラスへの交換、内窓の設置など。
  • 天井、壁、床の断熱改修: 断熱材の充填など。
  • 太陽光発電設備の設置: 一定の要件を満たすもの。
  • 高効率給湯器の設置: エコキュート、エコジョーズなど。

といった工事が挙げられます。単なる内装の模様替えや設備の交換だけでは対象とならないケースが多いので注意が必要です。

控除を申請する際には、工事内容を証明する様々な書類が必要となります。主な必要書類は以下の通りです。

  • 工事請負契約書: 工事内容、費用、工期などが明記されているもの。
  • 領収書: 工事費用を支払ったことを証明するもの。
  • 増改築等工事証明書: 建築士や指定の機関が、工事が控除の要件を満たしていることを証明する書類。特に省エネ、バリアフリー、耐震リフォームなどで必要となります。
  • 住宅借入金等特別控除額の計算明細書: ローンを利用した場合に必要。
  • 住民票の写し: リフォームした住宅に居住していることを証明。

これらの書類は、税務署への提出時に必要となるだけでなく、将来的な税務調査などにも備えて、工事完了後も大切に保管しておく必要があります。リフォーム工事を依頼する際には、あらかじめ控除申請に必要な書類について工事業者と確認し、作成・発行を依頼しておくことがスムーズな手続きの鍵となります。

確定申告による申請手順と注意点

リフォーム控除は、年末調整では手続きできません。原則として、リフォームが完了し、入居した年の翌年の3月15日までに、ご自身で確定申告を行う必要があります。確定申告の手続きは、税務署の窓口で行うこともできますが、国税庁のウェブサイト「e-Tax」を利用すれば、自宅からオンラインで申告することも可能です。

確定申告の際には、前述の必要書類を揃え、所得税の確定申告書に添付して提出します。また、所得税から控除しきれなかった金額は、翌年度の住民税から控除される場合があります。

リフォーム控除を検討する上での注意点としては、複数の控除との併用可否が挙げられます。例えば、住宅ローン控除とリフォーム控除を同時に適用できるかどうかは、リフォームの種類や状況によって異なります。一般的に、住宅ローン控除と「特定の改修工事に係る住宅特定改修特別税額控除」などのリフォーム控除は、それぞれ別の制度であるため併用が可能です。

しかし、同じリフォーム工事に対して二重に控除を受けることはできません。例えば、省エネリフォームの費用を住宅ローン控除の対象に含める場合と、省エネリフォーム控除として申告する場合では、どちらか一方を選択することになります。どちらがご自身の節税に有利か、事前に税理士や税務署に相談して確認することをおすすめします。

また、リフォーム工事の契約時期や完了時期によって適用される税法が異なる場合があるため、最新の情報を確認し、正確な手続きを行うことが重要です。リフォームによって住まいを快適にするだけでなく、税制優遇も賢く活用して、お得にリフォームを実現しましょう。

離婚・別居の場合の年末調整、養育費や扶養控除はどうなる?

離婚や別居は、家族構成の変化だけでなく、税金に関わる扶養控除や養育費の取り扱いにも大きな影響を及ぼします。特に年末調整においては、扶養親族の状況を正確に申告することが、適切な税額を計算するために非常に重要です。

「生計を一にする」という税法上の概念が、同居していなくても適用されるケースがあるため、離婚や別居の状況に応じて、扶養控除の対象となるか否か、また養育費の税務上の取り扱いについて正しく理解しておく必要があります。

離婚・別居時の扶養控除の考え方

年末調整における扶養控除の適用には、「生計を一にする」という要件が非常に重要になります。この「生計を一にする」とは、必ずしも同居していることだけを指すわけではありません。

例えば、単身赴任や病気療養、あるいは子供が学校に進学するために別居している場合など、生活費や学費などを送金していれば、「生計を一にする」関係にあるとみなされ、扶養控除の対象となることがあります。離婚や別居の場合でも、この考え方が適用されることがあります。

具体的には、離婚後に子どもが親権を持つ親(一般的には母親)と同居し、元配偶者(父親)がその子どもに対し、生活費や教育費として相当額の養育費を定期的に送金している場合、その子どもは元配偶者の扶養親族として認められる可能性があります。この場合、子どもは「扶養親族」として元配偶者の所得から扶養控除を受けることができます。

ただし、どちらの親が扶養控除を適用するかは、原則として「実際に生計を維持している者」が判断基準となります。通常は、子どもと同居し、かつ経済的に主要な負担を担っている親が扶養控除を適用することが多いですが、養育費の金額や負担割合によっては、元配偶者側が適用することも可能です。

もし両親がそれぞれ扶養控除を申請した場合、どちらか一方のみにしか適用されませんので注意が必要です。事前にどちらが扶養控除を適用するか話し合い、トラブルを避けることが賢明です。

養育費と所得税・住民税の取り扱い

養育費は、子どもの養育に必要な費用を非監護親(子どもと同居しない親)が監護親(子どもと同居する親)に対して支払うものです。この養育費の税務上の取り扱いについては、重要なポイントがあります。

原則として、養育費は支払い側(非監護親)にとっても、受け取り側(監護親)にとっても、所得税や住民税の課税対象にはなりません。これは、養育費が扶養義務を履行するためのものであり、所得や贈与とは性質が異なるためです。

支払い側は、養育費を支払ったとしても、その金額を所得から控除することはできません。一方で、受け取り側も、養育費を受け取ったことで所得が増えたとみなされ、税金が課されることはありません。

しかし、いくつかの例外や注意点も存在します。例えば、養育費としてあまりにも高額な金額が支払われ、それが「養育費」という名目を利用した実質的な贈与であると税務署に判断された場合、受け取った側に贈与税が課される可能性があります。

一般的には、社会通念上相当と認められる範囲内の金額であれば問題ありませんが、極端に高額な養育費の取り決めをする際には、税理士などの専門家に相談し、贈与税のリスクがないか確認することをおすすめします。

また、養育費の支払いが「金銭」ではなく、不動産や株式といった「現物」で行われた場合も、その現物の評価額によっては贈与税の対象となる可能性があるので、慎重な対応が求められます。

子どもを扶養に入れる際の注意点と手続き

離婚や別居後、子どもを扶養に入れる際には、いくつかの注意点と手続きがあります。まず、最も重要なのは、「生計を一にする」という条件を満たしているかどうかです。前述の通り、同居していなくても、送金によって生計を維持していれば扶養親族と認められます。

次に、扶養親族となる子どもの合計所得金額にも注意が必要です。2025年(令和7年)の税制改正により、扶養親族の合計所得金額の要件は48万円以下から58万円以下に引き上げられます。これにより、パートやアルバイトで収入があるお子さんでも、新たに扶養控除の対象となる可能性が広がります。

年末調整で扶養控除を申告する際には、勤務先から配布される「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に、扶養親族となる子どもの氏名、生年月日、マイナンバー、所得の見込み額などを正確に記入する必要があります。特に、別居している場合は、仕送りの状況などを証明できる書類の提出を求められる場合がありますので、送金記録などを保管しておくと良いでしょう。

また、子どもが19歳以上23歳未満の「特定扶養親族」に該当する場合、控除額が大きくなります。この特定扶養親族の所得要件も、年収123万円以下に緩和されます(従来の所得要件は48万円以下)。大学などでアルバイトをしているお子さんをお持ちの方は、この変更点も確認して、控除の適用漏れがないように注意しましょう。

離婚や別居というデリケートな状況だからこそ、税務上の手続きは特に慎重に行う必要があります。疑問点があれば、税務署や税理士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが大切です。

扶養控除の対象は?高齢者や療育手帳を持つ家族がいる場合

年末調整における扶養控除は、家族構成によって適用される控除額が大きく変わるため、非常に重要な項目です。特に、高齢の親や、障害を持つ家族がいる場合、一般的な扶養控除だけでなく、特別な控除が適用される可能性があります。

2025年の税制改正では、扶養親族の所得要件が緩和されるため、これまで扶養対象外だった親族が新たに控除対象となる可能性もあります。最新の情報を踏まえ、ご自身の家族がどの控除に該当するかを正確に把握し、最大限の節税効果を得ましょう。

扶養控除の基本と2025年の変更点

扶養控除とは、納税者に扶養親族がいる場合に受けられる所得控除で、扶養している家族が多いほど税負担が軽減される仕組みです。扶養親族として認められるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 納税者と「生計を一にする」親族であること。
  • 年間の合計所得金額が一定額以下であること。
  • 青色申告者の事業専従者として給与の支払いを受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと。

特に重要な変更点として、2025年(令和7年)分の年末調整から、扶養親族の合計所得金額の要件が大きく緩和されます。これまでの「48万円以下」から「58万円以下」に引き上げられるため、パートやアルバイトで一定の収入がある扶養親族も、新たに控除対象となる可能性が広がります。

さらに、19歳以上23歳未満の大学生などを対象とした「特定扶養親族」については、その所得要件が年収123万円以下に緩和されます。これは、子育て世代の教育費負担軽減や、学生のアルバイト収入による扶養外れ問題への対応策として導入されるものです。

これらの変更は、特に低・中所得者層の税負担軽減を目的としており、多くの家庭に影響を与える可能性があります。年末調整の際には、ご家族の所得状況を改めて確認し、これらの新たな要件に合致するかどうかをチェックすることが重要です。

高齢の親を扶養に入れる場合の条件とメリット

高齢の親を扶養親族とすることも可能です。親を扶養に入れる場合、年齢によって控除額が変わります。

  • 一般の扶養親族: 70歳未満の親族で、控除額は38万円。
  • 老人扶養親族: 70歳以上の親族で、控除額は48万円。

さらに、70歳以上の親族が納税者またはその配偶者の直系尊属(父母、祖父母など)で同居している場合は、「同居老親等」として控除額が58万円に増額されます。別居していても、仕送りなどで「生計を一にする」と認められれば扶養控除の対象となりますが、この場合は「同居老親等」には該当せず、老人扶養親族(48万円)としての適用となります。

親を扶養に入れることのメリットは、納税者自身の所得税・住民税が軽減される点です。特に、親が年金収入のみで生活している場合、年金には公的年金等控除が適用されるため、合計所得金額が58万円以下に収まるケースが多く、扶養親族としやすい傾向にあります。

親を扶養に入れる際には、親の年間所得が58万円以下であること(2025年以降)を確認することが最も重要です。また、別居の場合は、仕送りの事実を証明できる銀行の振込記録などを保管しておくと、税務署からの問い合わせがあった際にスムーズに対応できます。

複数の兄弟姉妹がいる場合は、誰が親を扶養に入れるか、事前に話し合って決めておくことがトラブル防止になります。扶養控除は一人につき一人の納税者しか適用できませんので、二重に申請しないよう注意しましょう。

療育手帳を持つ家族の扶養控除と障害者控除

障害を持つ家族がいる場合、扶養控除に加えて「障害者控除」という特別な控除を受けることができます。療育手帳を持つ家族(知的障害者)も、この障害者控除の対象となります。

障害者控除には以下の種類があります。

  • 一般の障害者控除: 扶養親族が障害者である場合に適用され、控除額は27万円
  • 特別障害者控除: 扶養親族が特に重度の障害者である場合に適用され、控除額は40万円。療育手帳で「A」(最重度・重度)と記載されている方が該当することが多いです。
  • 同居特別障害者控除: 扶養親族が特別障害者であり、かつ納税者またはその配偶者と同居している場合に適用され、控除額は75万円

療育手帳の等級(A、Bなど)によって、一般の障害者か特別障害者かが判断されます。手帳に記載されている情報を確認し、適切な控除区分を適用しましょう。

障害者控除は、扶養控除と併用して適用することができます。例えば、70歳以上の親が療育手帳を持つ特別障害者であり、かつ同居している場合、「同居老親等(58万円)」の扶養控除と「同居特別障害者控除(75万円)」を合わせて、合計133万円もの控除を受けることが可能になります。

年末調整で障害者控除を申請する際には、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の障害者控除の欄にチェックを入れ、手帳の種類や等級、障害の状況を記載します。勤務先から手帳の写しの提出を求められる場合もありますので、事前に準備しておきましょう。

障害者控除は、対象となる家族がいる家庭の税負担を大きく軽減するための重要な制度です。適用漏れがないよう、毎年確認し、適切に申告することが大切です。

年末調整でよくある疑問を解決!名義変更やルームシェアについても

年末調整は、毎年必ず行う手続きですが、住宅の名義変更やルームシェアといった特定の状況下では、どのように申告すれば良いのか迷うことも少なくありません。また、iDeCoやふるさと納税など、年末調整だけでは完結しない節税対策についても、その手続き方法を正確に理解しておくことが重要です。

ここでは、年末調整でよくある疑問点や、見落としがちな節税のポイントについて解説します。適切な知識を身につけ、賢く税金を納めましょう。

住宅の名義変更や共有名義と年末調整

住宅の名義変更は、相続や贈与、財産分与などの理由で行われることがありますが、この手続き自体は年末調整に直接関係するものではありません。名義変更は、不動産の所有権が移転することであり、税務署ではなく、法務局での登記手続きが必要です。

しかし、名義変更によって住宅ローンの債務者が変わったり、共有名義から単独名義、あるいはその逆になったりすると、住宅ローン控除の適用に影響が出る可能性があります。例えば、夫婦で共有名義だった住宅を一方の単独名義にした場合、これまで二人で受けていた住宅ローン控除を、今後は単独名義人だけが受けることになります。

また、住宅ローンの借り換えによって債務者が変わった場合も、再度住宅ローン控除の適用条件を確認する必要があります。新たに債務者となった人が控除を受けるためには、改めて所定の要件を満たす必要がありますし、初年度は確定申告が必要になることもあります。

共有名義の住宅で、夫婦それぞれが住宅ローンを組んでいる場合(連帯債務やそれぞれが独立してローンを組んでいるケース)は、それぞれが自身の負担割合に応じて住宅ローン控除を申請します。この場合、年末調整の際には各自の勤務先に、自身の住宅ローン残高証明書を提出することになります。

名義変更や共有名義の変更は、複雑な税金問題(贈与税や不動産取得税など)も発生し得るため、事前に税理士や司法書士などの専門家へ相談し、影響を十分に理解した上で手続きを進めることが賢明です。

ルームシェアと年末調整、家賃や光熱費の扱い

ルームシェアをしている場合、年末調整に直接影響するような特別な控除はありません。年末調整は個人の所得に対する税金を計算するものであり、住居形態によって税額が変わることは基本的にありません。

家賃や光熱費は、個人の生活費とみなされるため、会社員が年末調整でこれらの費用を所得控除として申告することはできません。仮に、ルームシェアをしている部屋の一部を仕事に使用していたとしても、会社員の場合は原則として経費として認められることはありません。

ただし、フリーランスや個人事業主としてルームシェアをしながら仕事をしている場合は、状況が変わってきます。この場合は、家賃や光熱費の一部を事業の必要経費として計上できる可能性があります。例えば、仕事専用のスペースがある場合は、そのスペースの割合に応じて家賃や光熱費を按分し、経費として計上することができます。

しかし、これは年末調整ではなく、確定申告の際に「家事按分」として申告する項目です。フリーランスの方が経費計上する場合は、賃貸契約書や領収書、光熱費の請求書などを保管し、家事按分の合理的な説明ができるようにしておく必要があります。

また、ルームシェアをしていても、住民票は各自が居住している住所で登録し、勤務先にも正確な住所を申告することが重要です。住所が異なると、住民税の計算や、年末調整書類の送付に支障をきたす可能性があります。

結論として、一般的な会社員がルームシェアをしている場合、家賃や光熱費が年末調整に影響することはありませんが、フリーランスの方は確定申告時に経費計上の可能性を検討することができます。

iDeCoやふるさと納税、その他の控除の賢い活用法

年末調整では、様々な控除を申告することで節税効果を得られますが、中には確定申告が必要なものもあります。それぞれの制度を理解し、賢く活用することが重要です。

iDeCo(個人型確定拠出年金)の活用

iDeCoの掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象となります。これにより、所得税と住民税が軽減されます。年末調整で控除を受けるためには、国民年金基金連合会から送付される「小規模企業共済等掛金払込証明書」を「給与所得者の保険料控除申告書」に添付して勤務先に提出する必要があります。

注意点として、11月以降にiDeCoに加入した場合、払込証明書が年末調整の提出期限に間に合わないことがあります。その場合は、翌年の確定申告で対応するか、翌々年の年末調整でまとめて申告する(一部のケース)などの対応が必要です。忘れずに控除を受けましょう。

ふるさと納税の注意点

ふるさと納税は、寄附金控除として所得税や住民税から控除されますが、年末調整では控除の対象となりません。控除を受けるには、以下のいずれかの方法を取る必要があります。

  • ワンストップ特例制度: 確定申告が不要な給与所得者で、寄附先の自治体が5つ以内であれば利用できます。申請期限は寄附した翌年の1月10日です。
  • 確定申告: ワンストップ特例制度の対象外の場合や、医療費控除などで確定申告を行う場合は、翌年3月15日までに確定申告を行う必要があります。

ふるさと納税には、自己負担額2,000円や控除上限額があります。また、住宅ローン控除と併用する場合、ふるさと納税の控除額によっては住宅ローン控除の住民税からの控除額が減る可能性があるため、注意が必要です。

その他の節税対策

  • 生命保険料控除・地震保険料控除: これらの保険料も年末調整で控除の対象となります。保険会社から送付される控除証明書を添付して申告します。
  • 医療費控除: 年間の医療費が一定額(原則10万円、または所得の5%)を超えた場合に受けられる控除ですが、年末調整では適用されず、確定申告が必要です。家族全員の医療費を合算できます。

そして最も重要なのが、2025年からの基礎控除・給与所得控除の変更です。基礎控除が最大95万円に、給与所得控除の最低額が65万円に引き上げられることで、特に低・中所得者層の税負担がさらに軽減される見込みです。これらの変更点を把握し、自身の所得にどのように影響するかを確認しておきましょう。

年末調整は、1年間の所得税額を確定させる重要な手続きです。これらの情報を活用し、賢く節税して、手元に残るお金を増やしていきましょう。