概要: 複数の会社で働いている場合、年末調整の仕組みは複雑になりがちです。この記事では、給与所得別の注意点から、賢い節税対策までを分かりやすく解説します。年末調整で損をしないための必須知識が満載です。
2箇所以上から給与を得ている場合の年末調整の基本
メイン勤務先での年末調整の原則
複数の勤務先から給与を得ている場合、年末調整は原則として最も収入が多い1か所で行われます。この「メイン」となる勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出することで、年末調整の対象となります。他の勤務先ではこの申告書を提出しないため、個別の年末調整は行われません。
この仕組みを理解することは、年末調整を正しく行う上で非常に重要です。特に複数のアルバイトやパートを掛け持ちしている方も、この基本原則に従う必要があります。
複数勤務先で誤って年末調整をした場合のリスク
もし複数の勤務先で誤って年末調整を受けてしまった場合、注意が必要です。控除が重複して適用されることで、所得税や住民税の計算が正しく行われず、結果的に税金を少なく納めすぎたり、後で追徴課税の対象となったりするリスクがあります。
このような事態を避けるためにも、ご自身の所得状況を正確に把握し、メインとなる勤務先を明確にして手続きを進めることが大切です。万が一誤って重複してしまった場合は、速やかに税務署に相談し、確定申告で修正するようにしましょう。
確定申告が必要になるケースとそのメリット
副業の所得が年間20万円を超える場合、原則として確定申告が必要です。これは、年末調整では対応できない所得があるため、ご自身で税額を計算し申告する義務が生じるためです。また、医療費控除や住宅ローン控除など、年末調整では適用できない控除を受ける場合も確定申告が必要になります。
確定申告をすることで、払いすぎた税金の還付を受けられたり、年末調整では適用できない控除を最大限に活用できたりするメリットがあります。自身の所得状況に応じて、積極的に確定申告を検討しましょう。
収入別の年末調整の注意点:アルバイト・パートでも必見!
複数のアルバイト・パート掛け持ちの場合
アルバイトやパートを複数掛け持ちしている方も、年末調整の基本原則は変わりません。最も給与収入が多い勤務先で年末調整を行います。他の勤務先からの給与については年末調整が行われないため、確定申告が必要になるケースがあることを覚えておきましょう。
特に、それぞれの勤務先からの源泉徴収票をすべて集め、それらの合計所得金額を確認することが重要です。合計所得が一定額を超える場合は、ご自身で確定申告をして税額を精算する必要があります。
副業収入と給与収入がある場合の注意点
給与収入以外に、フリーランスとしての事業所得や原稿料などの雑所得がある場合、その所得の種類によって取り扱いが異なります。特に、これらの副業所得が年間20万円を超えると、給与収入とは別に確定申告が必須となります。
副業の所得が20万円以下であっても、医療費控除やふるさと納税などの控除を受けるために確定申告をした方が有利になる場合があります。自身の収入源を総合的に見て、適切な手続きを選択しましょう。
2025年からの給与所得控除・基礎控除変更点
2025年度の税制改正により、給与所得控除と基礎控除が見直されます。これにより、多くの納税者に影響が出る可能性があります。
- 給与所得控除: 最低保障額が55万円から65万円に引き上げられます。年収190万円程度まで、一律65万円の控除が受けられるようになります。
- 基礎控除: 合計所得金額に応じて、控除額が最大95万円まで引き上げられます。特に、合計所得金額が132万円以下(給与収入のみの場合は約200万円以下)の場合、控除額は95万円になります。
これらの変更は、2025年12月実施の年末調整から適用されます。
年収別!所得税・住民税・社会保険料のシミュレーション
年収と所得税率の関係
日本の所得税は、課税される所得金額に応じて税率が上がる「累進課税」が採用されています。税率は5%から最高45%までの7段階に区分されており、所得が上がるほど高い税率が適用されます。
具体的な税率は以下の通りです(※2024年11月時点)。
| 課税される所得金額 | 税率 |
|---|---|
| 195万円以下 | 5% |
| 195万円超 330万円以下 | 10% |
| 330万円超 695万円以下 | 20% |
| … | … |
| 4,000万円超 | 45% |
この税率表を参考に、自身の年収から課税所得を計算し、どれくらいの税率が適用されるか把握しましょう。
年収ごとの住民税の仕組み
住民税は、所得税と同様に所得に応じた「所得割」と、所得に関わらず定額で課される「均等割」で構成されます。所得割の税率は、一律10%(都道府県民税4%、市区町村民税6%)が適用されることが一般的です。
年収が高くなるほど、所得割の負担も大きくなります。住民税は前年の所得に対して課税されるため、急な収入の増減があった場合は、翌年の住民税に影響が出ることを考慮に入れておきましょう。
社会保険料の負担と扶養の壁
年収が増えると、所得税や住民税だけでなく社会保険料(健康保険、厚生年金など)の負担も大きくなります。特に、扶養に入っている方がパートやアルバイトで働く場合、「年収の壁」に注意が必要です。
例えば、年収が106万円や130万円を超えると、配偶者の扶養から外れて自身で社会保険料を負担することになり、手取り額が一時的に減る可能性があります。これらの壁を意識した働き方を検討し、将来的な収入プランを立てることが重要です。
年末調整で損しないための賢い節税対策
各種所得控除を最大限活用する
年末調整や確定申告では、さまざまな所得控除を活用することで、課税所得を減らし税負担を軽減できます。例えば、生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除などは、加入している保険や支払っている社会保険料に応じて適用されます。
また、2025年度からは扶養親族等の所得要件が引き上げられ、これまで控除対象外だった親族が対象になる可能性もあります。自身の状況で利用できる控除は、漏れなく申告しましょう。
ふるさと納税で賢く地域を応援
「ふるさと納税」は、応援したい自治体に寄附をすることで、寄附額のうち2,000円を超える部分について所得税と個人住民税から控除が受けられる制度です。実質2,000円の負担で、地域の特産品などのお礼の品を受け取れるのが魅力です。
控除上限額は年収や家族構成によって異なりますので、ふるさと納税サイトのシミュレーションなどを活用して、ご自身の限度額を確認することが重要です。上限額を超えて寄附しても控除は受けられないため注意しましょう。
2025年新設!特定親族特別控除とは
2025年の税制改正では、「特定親族特別控除」が新設されます。これは、19歳以上23歳未満の親族を扶養している場合に、一定の条件下で扶養親族の所得要件を超えていても控除を受けられる制度です。
これまでは、扶養親族の所得要件が厳しく、アルバイトをしている大学生などが扶養から外れてしまうケースがありました。この新設された控除により、該当する家庭の税負担が軽減される可能性があります。
よくある質問:複数勤務の年末調整Q&A
複数の会社から給与明細をもらっている場合の確認点
複数の会社から給与明細をもらっている場合、まず確認すべきは「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」をどの会社に提出しているかです。この申告書を提出している会社が、あなたのメイン勤務先となり、年末調整を行います。
また、各社の源泉徴収票に「年末調整済」と記載されているかどうかも重要な確認ポイントです。年末調整が済んでいない源泉徴収票がある場合は、確定申告で合算する必要があります。
年末調整漏れや間違いがあった場合の対処法
もし年末調整の申告を忘れてしまったり、記載内容に誤りがあったりした場合は、確定申告で修正が可能です。年末調整後に払いすぎた税金がある場合は、確定申告を行うことで還付を受けることができます。
確定申告は、通常2月16日から3月15日の間に行われますが、還付申告であればその期間に関わらず提出できます。税務署や税理士に相談し、適切な手続きを取りましょう。
税制改正や最新情報の確認方法
税制は毎年のように改正されるため、常に最新情報を確認することが大切です。特に複数勤務の場合、税制改正がご自身の税負担に大きく影響を与える可能性があります。
最新の情報は、国税庁のウェブサイトで常に公開されています。また、個別の状況については、税務署の窓口相談や税理士に相談することで、より正確なアドバイスを得ることができます。不明な点があれば、自己判断せずに専門家に確認するようにしましょう。
まとめ
よくある質問
Q: 2箇所以上から給与をもらっている場合、年末調整はどうなりますか?
A: 原則として、年末調整は主たる給与の支払者で行います。副業などの従たる給与については、年末調整の対象外となるため、確定申告が必要になります。ただし、一定の要件を満たす場合は、従たる給与でも年末調整を受けられることがあります。
Q: アルバイト・パートを掛け持ちしている場合、年末調整は必要ですか?
A: アルバイト・パートであっても、給与収入がある場合は年末調整の対象となります。ただし、複数の勤務先から給与を得ている場合は、上記同様に主たる給与の支払者で年末調整を行い、それ以外の収入については確定申告が必要になるのが一般的です。
Q: 年収が850万円を超えると、年末調整で何か変わりますか?
A: 年収850万円を超えると、所得税や住民税の計算方法に一部変更が生じます。特に、住宅ローン控除などが適用される場合、控除額の上限が変わることがあります。また、給与所得控除後の金額によっては、扶養控除等が見直される可能性もあります。
Q: 年収500万円程度ですが、年末調整で注意すべき点はありますか?
A: 年収500万円程度であれば、基本的な年末調整の対象となる場合が多いですが、扶養家族の状況や、生命保険料控除、iDeCoなどの所得控除をしっかり申告することで、税金が軽減される可能性があります。ご自身の控除対象となるものを漏れなく確認しましょう。
Q: 年末調整で還付金を受け取るにはどうすれば良いですか?
A: 還付金を受け取るためには、生命保険料控除、地震保険料控除、iDeCo(小規模企業共済等掛金控除)、扶養控除、医療費控除(確定申告が必要な場合が多い)など、適用できる控除を正確に申告することが重要です。年末調整の書類に漏れなく記入し、必要な証明書類を提出しましょう。
