概要: 退職を決意した際に必要となる「辞表」。その意味や正しい書き方、提出方法、さらには退職の意思を伝えるメッセージの例文まで、円満退職に向けた辞表の全てを解説します。役職の有無による違いや、よくある疑問にもお答えします。
円満退職は、これまでの会社への感謝を示し、新たなスタートを切るために非常に重要です。その第一歩となるのが、適切な辞表(退職届)の提出です。本記事では、辞表の書き方、送り方、そして円満退職のためのマナーについて、最新の情報やデータも交えて詳しく解説します。
「辞表」とは?その意味と持つべき心構え
辞表・退職願・退職届の明確な違い
退職を考える際、多くの人が「辞表」という言葉を耳にしますが、実は一般の会社員が提出する書類は「辞表」ではありません。日本では、退職に関する書類は主に「退職願」「退職届」「辞表」の3種類に分類され、それぞれ意味合いと用途が異なります。
まず、「退職願」は、文字通り会社に対して退職を「願い出る」書類です。これはまだ退職が確定していない段階で、自分の退職の意思を伝え、会社と退職日などの条件を交渉するための書類と言えます。会社側が退職願を受理し、承認するまでは、原則として撤回が可能です。例えば、「〇月〇日をもって退職させていただきたく、お願い申し上げます」といった形式で提出されます。
次に、「退職届」は、退職が会社に承認され、退職日などの条件が合意に至った後、正式に労働契約の解除を届け出るための書類です。これは一方的な意思表示となるため、一度提出すると原則として撤回することはできません。会社員が自己都合で退職する際に最も一般的に使用されるのがこの「退職届」です。
そして、「辞表」は、会社の役員や公務員、または雇用契約ではなく「委任契約」を結んでいる職務(例えば弁護士や会計士など)にある人が、その役職や職務を辞する際に用いる書類です。一般の会社員が労働契約を解除する際には「退職届」を使用するのが適切であり、「辞表」は本来の使われ方とは異なります。この違いを正確に理解しておくことが、スムーズな退職手続きの第一歩となります。
円満退職のための「辞表」の心構え
退職の意思を伝える際、形式的な書類作成だけでなく、そのプロセス全体における心構えが円満退職を左右します。たとえ使用する書類が「退職届」であったとしても、その提出に至るまでの姿勢は「辞表」という言葉が持つ重みに通じるものがあると言えるでしょう。
最も重要なのは、これまでの会社への感謝の気持ちを忘れないことです。退職は個人のキャリアにおける新たな一歩ですが、その過程で育ててくれた会社や共に働いた同僚への敬意は不可欠です。退職の意思を伝える際には、ネガティブな理由や不満を前面に出すのではなく、あくまで「一身上の都合」として伝えるのが一般的であり、社会人としてのマナーです。これにより、後任者や他の社員との関係性を悪化させることなく、円滑な引き継ぎへと繋がります。
また、退職を申し出てから実際に会社を去るまでの期間、自分の業務に対する責任を全うする心構えも重要です。業務の引き継ぎは丁寧に行い、後任者が困らないよう、必要な情報や資料を十分に準備することが求められます。これは、あなたのプロフェッショナリズムを示す最後の機会であり、あなたの会社に残す良い印象に直結します。もし、あなたが退職後に新しい職場で働くことになったとしても、前の会社との良好な関係は、将来的なビジネスチャンスや人脈形成に役立つ可能性があります。辞表(退職届)は、単なる紙切れではなく、あなたのキャリアにおける一つの区切りを、ポジティブな形で締めくくるための重要な手段であると認識しましょう。
法的な側面から見る退職の意思表示
退職は個人の自由であり、憲法で保障された「職業選択の自由」に基づいています。民法第627条では、雇用期間に定めがない場合、労働者はいつでも解約の申し入れ(退職の意思表示)ができ、申し入れから2週間が経過すれば雇用契約は終了すると定められています。これは会社側の承諾を必要としない、労働者の一方的な意思表示で退職できる権利です。
しかし、実際には多くの会社で「就業規則」が定められており、退職の申し出期間についても規定されていることがほとんどです。例えば、「退職の1ヶ月前までに申し出ること」といった条項が一般的です。この就業規則の規定は、会社が後任者の手配や業務の引き継ぎを円滑に行うための合理的な期間として設定されていることが多く、法的な効力も持ちます。そのため、退職を検討する際には、まず自社の就業規則を確認し、それに従うことが円満退職への近道です。
口頭での退職の意思表示も法的には有効とされますが、後々のトラブルを避けるためにも、書面(退職届)での提出が強く推奨されます。書面で提出することで、退職の意思表示があった事実と、その日付が明確になり、双方にとって誤解が生じるリスクを減らすことができます。特に、会社が退職を認めないなどの問題が発生した場合には、書面での証拠が非常に重要になります。また、自己都合退職と会社都合退職では、失業給付の受給条件や期間、退職金などにも影響があるため、自身の退職がどちらに該当するのかを正確に理解しておくことも大切です。法的な側面を理解した上で、適切な手続きを踏むことが、あなたの権利を守り、スムーズな退職を実現します。
辞表の正しい読み方と、退職の意思を伝えるためのメッセージ例文
正しい「辞表(退職届)」の構成要素
退職届の作成は、あなたの意思を正確かつ丁寧に伝えるための重要なステップです。適切な形式と内容で作成することで、会社への敬意を示し、スムーズな手続きを促すことができます。まず、使用する用紙は、白無地の便箋(B5またはA4サイズ)が一般的です。手書きの場合は、黒のボールペンまたは万年筆を使用し、楷書で丁寧に記入します。パソコンで作成する場合は、明朝体やゴシック体など、ビジネス文書に適したフォントを選びましょう。用紙のサイズは、便箋を三つ折りにして封筒に収まるサイズが望ましいです。
封筒は、便箋の色に合わせて白無地のもの(長形3号または長形4号)を選びます。茶封筒は事務的な書類に使用されることが多く、退職届のような重要な書類には不向きです。封筒の表面には、中央に「退職届」と明記し、裏面の左下には所属部署名と氏名を記載します。封はせず、糊付けせずに上司に手渡すのが一般的です。
退職届の具体的な内容は、以下の要素を含みます。
- 日付:提出する日付を記載します。
- 宛名:会社名、代表取締役社長の氏名を正式名称で記載します。「代表取締役社長〇〇様」が一般的です。
- 所属・氏名:自分の所属部署名と氏名を記載し、氏名の下には捺印します。
- 本文:「私儀、この度、一身上の都合により、来る〇年〇月〇日をもちまして、退職いたします。」と簡潔に記載します。
- 退職日:就業規則で定められた期間(通常は退職の1ヶ月前まで)を確認し、明確に記載します。
これらの要素を正確に記載することで、退職届として法的に有効なだけでなく、あなたの真摯な姿勢を伝えることができます。
退職の意思を伝えるメッセージ例文とポイント
退職届の本文は、簡潔かつ明確であることが最も重要です。具体的な例文としては、以下のようなものが挙げられます。
【退職届 本文 例文】
私儀
この度、一身上の都合により、
来る令和〇年〇月〇日をもちまして、
退職いたします。
以上
この例文のポイントは、「一身上の都合」という表現を用いることです。これは、退職理由を詳細に語る必要がない場合に用いられる一般的な表現であり、個人的な事情による退職であることを示します。会社への不満や具体的な退職理由を記載してしまうと、その後の引き継ぎや円満退職に支障をきたす可能性があり、避けるべきです。もし上司から退職理由を尋ねられた場合でも、「一身上の都合」として通すか、あるいはポジティブな理由(例:新たな分野への挑戦、キャリアアップのためなど)に留めておくのが賢明です。
また、「来る令和〇年〇月〇日をもちまして、退職いたします。」と、退職日を明確に記載することも極めて重要です。この日付は、事前に上司と相談し、就業規則で定められた退職申し出期間を考慮した上で決定した最終的な退職日である必要があります。曖昧な表現や日付の誤りは、会社側との認識のズレを生じさせ、円滑な退職手続きを妨げる原因となります。口頭で退職の意思を伝える際も、「〇月〇日をもって退職させていただきたく、ご相談申し上げます」のように、具体的な日付を念頭に置いて伝えることで、話がスムーズに進みやすくなります。形式に則った簡潔なメッセージは、あなたの退職の意思が固いことを示すと同時に、会社への配慮をも表現するものです。
誤解を避けるための表現とマナー
退職届や口頭での退職の意思表示においては、誤解を避けるための適切な表現とマナーが求められます。特に重要なのは、曖昧な表現を避け、明確な意思表示をすることです。「辞めたいと思っています」といった相談のような表現ではなく、「〇月〇日をもって退職させていただきます」という確定した意思を伝える言葉を選びましょう。これにより、会社側も具体的な手続きに進むことができます。
また、退職届には、会社への批判や個人的な不満、他の社員への言及など、ネガティブな内容は一切記載しないのが鉄則です。退職届は、契約解除の事実を通知する公的な書類であり、感情を書き綴るものではありません。もし、会社に対する感謝の気持ちを伝えたいのであれば、退職届とは別に、口頭での挨拶やメール、手紙などで伝える機会を設けるのが適切です。退職届に感謝の言葉を記載しても問題はありませんが、あくまで簡潔に留め、主要な目的である退職の意思表示を妨げないようにしましょう。
上司への配慮も、円満退職には不可欠なマナーです。退職の意思を伝えるタイミングは、直属の上司が比較的落ち着いており、じっくりと話ができる時間帯を選ぶべきです。例えば、会議中や他の社員がいる場所、あるいは上司が多忙を極めている時期は避けるべきです。可能であれば、事前にアポイントメントを取り、「少しお話ししたいことがあるのですが、お時間をいただけますでしょうか」と切り出すのが丁寧です。このような配慮は、上司の理解を得やすくし、その後の手続きもスムーズに進めることに繋がります。退職はあなた自身の選択ですが、最後の最後までプロフェッショナルな態度を保つことが、あなたのキャリアに良い影響を残します。
役職者・役員・理事、それぞれの辞表の書き方と注意点
一般社員と役職者の辞表の違い
一般の会社員が提出する書類は「退職届」であると先に述べましたが、会社によっては課長や部長といった役職者が退職する際に「辞表」という言葉を使うケースも存在します。これは、役職者が「役職を辞する」という意味合いで「辞表」を用いるためです。しかし、法的な分類上は、役職者であっても会社との間には雇用契約が存在するため、通常は「退職届」を提出するのが適切です。重要なのは、会社が定める就業規則や退職に関する規定を確認し、それに従うことです。多くの企業では、役職者であっても退職の手続きは一般社員と大きく変わらないことが多いでしょう。
ただし、役職者であることによって、退職に伴う注意点が増えることがあります。例えば、業務の引き継ぎ範囲が広範になるため、より詳細かつ綿密な計画が必要となります。自身の担当業務だけでなく、部下やチーム全体の業務進捗状況、取引先との関係性、過去のプロジェクト履歴など、多岐にわたる情報を整理し、後任者がスムーズに引き継げるよう準備することが求められます。また、役職手当やそれに伴う退職金の算定方法など、金銭的な側面も事前に確認しておくことが賢明です。
さらに、役職者としての退職は、組織全体に与える影響も大きいため、退職の意思を伝えるタイミングや伝え方には細心の注意が必要です。まずは直属の上司、そしてその上の役員など、適切な順序で情報共有を行い、組織への影響を最小限に抑える努力が求められます。自分の部署やチームに動揺を与えないよう、冷静かつ責任ある態度で臨むことが、役職者としての最後の務めと言えるでしょう。
役員・理事の辞任届の特殊性
会社の役員(取締役、監査役など)や理事がその職を辞する際には、一般社員や役職者とは異なり、「辞任届」を提出します。これは、役員や理事と会社との関係が「雇用契約」ではなく「委任契約」に基づくものであるためです。委任契約は、互いの信頼関係によって成り立つものであり、辞任届は、この委任関係を解消するための意思表示となります。
辞任届の提出先は、一般的には代表取締役や取締役会、あるいは株主総会となります。特に取締役の場合、辞任の効力は辞任届が会社に到達した時点で発生するのが原則ですが、定款に定めがある場合や、後任者の選任が伴う場合など、手続きが複雑になることもあります。任期満了前の辞任の場合、正当な理由がない限り、会社に損害を与えた場合にはその責任を問われる可能性も考慮しなければなりません。これは、役員が会社の経営に対する重い責任を負っていることの証です。
辞任届の書き方自体は、退職届と似ていますが、記載する内容は「役員を辞任する」旨を明確にすることです。例えば、「私儀、この度、一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもちまして、貴社取締役の職を辞任いたしたく、お届け申し上げます。」といった形式になります。辞任後は、法務局での役員変更登記が必要となるため、会社側との連携を密にし、手続きが滞りなく進むよう協力することが求められます。役員や理事の辞任は、会社の経営体制にも影響を与える重要な事項であるため、慎重かつ適切な手続きが不可欠となります。
公務員の辞表提出プロセス
公務員が職を辞する際には、一般的に「辞表」という言葉が用いられ、そのプロセスは国家公務員法や地方公務員法といった特別法に基づいて定められています。公務員の退職は、個人の意思だけでなく、公益性や職務の継続性も考慮されるため、一般企業の退職とは異なる点が多く存在します。
公務員の場合、退職の意思表示は、原則として退職希望日の1ヶ月前までに、任命権者(各省庁の大臣や地方公共団体の長など)に辞表を提出して承認を得る必要があります。この「承認」が必要である点が、民法の原則(2週間で退職可能)と大きく異なる部分です。ただし、実際に承認が得られないケースは稀であり、ほとんどの場合、通常の手続きを経て退職が認められます。辞表の書式は、各官公庁や自治体で規定されている場合が多いので、まずは所属部署の人事担当者に確認し、指定の様式に従って作成することが重要です。
辞表の本文も、一般企業と同様に「一身上の都合により、〇年〇月〇日をもちまして退職したい」という内容が基本となります。公務員という職務の特性上、退職理由を詳細に問われることは少ないですが、もし聞かれた場合でも、職務内容や組織への不満を述べることは避け、ポジティブな理由や個人的な事情に留めるのが賢明です。また、懲戒免職など、本人の意思によらない退職の場合には、辞表ではなく別途処分が下されることになります。公務員の退職は、組織の安定的な運営にも関わるため、法に基づいた適切な手続きと、責任ある態度が求められることを理解しておく必要があります。
辞表の提出方法:封筒の書き方から郵送マナーまで
直属の上司への手渡しが原則
退職届(辞表)は、まず直属の上司に直接手渡しするのが、最も丁寧で円満な方法とされています。退職の意思を伝える最初のステップとして、口頭で上司に退職の意向を伝え、その上で退職日や引き継ぎについて話し合い、合意が得られてから退職届を提出するのが一般的な流れです。このプロセスを踏むことで、上司との信頼関係を維持し、会社への配慮を示すことができます。
手渡しする際は、他の社員の目が届かない、落ち着いた場所と時間帯を選ぶことが重要です。例えば、上司の個室や会議室、あるいは業務終了後など、二人きりでじっくり話せるタイミングを設定しましょう。これは、退職というデリケートな話題を、周囲に不必要に広めることを避け、上司の立場にも配慮するためです。退職届はそのまま渡すのではなく、必ず封筒に入れ、封はせずに提出します。これは、上司が内容を確認しやすいようにするためであり、後から正式に提出する際に糊付けすれば問題ありません。
退職届を提出する際は、単に書類を渡すだけでなく、これまでの指導への感謝や、会社への貢献への言葉を添えることも大切です。例えば、「この度、一身上の都合により退職させていただきたく、退職届をご用意いたしました。〇年間大変お世話になり、ありがとうございました」といった言葉を添えることで、より円滑なコミュニケーションを図ることができます。このように、形式だけでなく、心を込めて対応することが、円満退職への道を開きます。
封筒の正しい書き方と宛名
退職届を入れる封筒は、退職届の内容と同様に、丁寧な印象を与えるように配慮が必要です。使用する封筒は、白無地のもの(長形3号または長形4号)を選びます。茶封筒は事務的であり、フォーマルな退職届には適しません。退職届は、三つ折りにして封筒に収まるサイズにすることが一般的です。
封筒の表面には、中央に「退職届」と明記します。これにより、封筒を見ただけで内容が何であるかを明確に伝えることができます。裏面の左下には、自分の所属部署名と氏名を記載します。この際、ボールペンや万年筆で丁寧に、楷書で記入することを心がけましょう。封筒の糊付けは、上司に手渡しする段階では行わないのが一般的です。上司が内容を確認した後、必要に応じて正式に提出する際に糊付けします。ただし、郵送する場合は必ず糊付けし、封をします。
宛名に関しては、退職届の本文に記載する宛名と基本的に同じですが、封筒に直接書く場合は少し異なります。一般的には、会社名と役職、氏名を記載します。例えば、「株式会社〇〇 代表取締役社長 〇〇様」といった形です。しかし、直属の上司に手渡しする場合、封筒の表には「退職届」のみを書き、宛名は書かないことも多いです。これは、手渡しされる相手が書類の内容を把握しているためと、簡潔さを重視するためです。もし宛名を書く場合は、会社名と役職名を省略し、直属の上司の氏名と「様」だけを記載することもあります。どちらの方法を選ぶかは、会社の慣習や上司との関係性によっても変わりますが、迷った場合は「退職届」のみを記載し、裏面に自分の情報を書くのが無難です。また、より丁寧な印象を与えたい場合は、二重封筒を使用することも検討できます。
郵送する場合の注意点とマナー
退職届は原則手渡しが推奨されますが、やむを得ない事情(病気、遠隔地への転居、上司が長期間不在など)により、郵送せざるを得ない場合もあります。郵送する際には、手渡しの場合以上に細心の注意とマナーが求められます。
まず、郵送する前には必ず直属の上司に電話やメールで一報を入れ、退職届を郵送する旨を伝えておきましょう。無断で郵送することは、上司への配慮を欠き、円満退職を難しくする可能性があります。上司の了承を得た上で郵送の手続きを進めるのが賢明です。郵送の宛名には、会社名と直属の上司の氏名を記載し、封筒の左下に「親展」と赤字で明記します。「親展」は、名宛人本人に開封してほしいという意思表示であり、重要な書類であることを示します。これにより、他の社員が誤って開封することを防ぎます。
郵送方法には、普通郵便ではなく、「内容証明郵便」や「簡易書留」を利用することを強く推奨します。内容証明郵便は、送付した文書の内容と、いつ誰が誰に送ったかを郵便局が証明してくれる制度であり、退職の意思表示が確実に会社に到達したことの証拠となります。簡易書留は、郵便物の引き受けと配達を記録するサービスで、紛失のリスクを減らし、追跡も可能です。これらの方法を利用することで、万が一、会社側から「届いていない」と言われた場合でも、法的な証拠を提示することができます。
また、退職届を郵送する際には、退職届の他に簡単な送付状(添え状)を同封することがマナーです。送付状には、退職届を送付する旨と、これまでの感謝の言葉、そして退職日などを記載し、より丁寧な印象を与えましょう。書類はクリアファイルなどに入れ、折れ曲がらないように配慮することも大切です。郵送での手続きは、手渡しよりも手間がかかりますが、トラブルを避けるためにも丁寧な対応を心がけましょう。
円満退職のために!辞表に関するよくある疑問を解決
退職の意思を伝える最適なタイミングと事前準備
退職の意思を伝える最適なタイミングは、円満退職を実現する上で非常に重要な要素です。まず、自社の就業規則を必ず確認しましょう。多くの企業では、「退職希望日の1ヶ月前まで」といった退職の申し出期間が定められています。この規定を遵守することは、会社への配慮であり、スムーズな引き継ぎ期間を確保するためにも不可欠です。もし、就業規則に違反して直前に退職を申し出ると、会社に損害を与えるとして損害賠償を請求されるリスクもゼロではありません。
また、転職活動の期間も考慮に入れるべきです。近年の調査では、転職活動にかかる期間の目安は3ヶ月から6ヶ月程度とされています。もし転職先が決まってからの退職を考えているのであれば、この期間を見越して逆算し、十分な余裕を持って退職準備を進めることが大切です。新しい職場への入社日が決まったら、そこから逆算して退職希望日を設定し、就業規則の期間も考慮して、直属の上司に退職の意思を伝えましょう。
退職の意思を伝える前の事前準備も怠ってはいけません。自分の担当している業務の現状を把握し、引き継ぎが必要な項目をリストアップするなど、「見える化」しておくことが有効です。また、進行中のプロジェクトや取引先との関係性、過去の業務資料の所在なども整理しておくと、上司との面談時やその後の引き継ぎがスムーズに進みます。退職はあなた自身のキャリアにとって大きな決断ですが、会社への最大限の配慮と周到な準備を行うことで、円満な形で次のステップへと進むことができるでしょう。
退職理由を伝える際の注意点とNG行動
退職理由を上司に伝える際、最も安全で一般的な方法は「一身上の都合」として簡潔に済ませることです。これは、具体的な退職理由を詳しく述べないことで、会社との関係を悪化させず、余計な摩擦を避けるための社会人としてのマナーです。特に、会社や上司、同僚への不満、給与への不満、人間関係の悪化といったネガティブな理由は、絶対に直接伝えないようにしましょう。これらの不満を正直に伝えてしまうと、感情的な対立を生み出し、引き継ぎや最終出社日までの期間が非常に居心地の悪いものになってしまう可能性があります。
もし上司から具体的な退職理由を執拗に聞かれた場合でも、ポジティブな理由に変換して伝えるのが賢明です。例えば、「新しい分野に挑戦したい」「スキルアップのため、他社で経験を積みたい」「家庭の事情により、働き方を変えたい」といった理由であれば、会社側も理解を示しやすくなります。重要なのは、会社や現職を否定するような言葉を使わず、あくまで自分の将来やキャリアアップのためという前向きな姿勢を伝えることです。
参考情報にあるように、近年の主な退職理由として「職場の人間関係が悪い」(35%)、「給与が低い」(34%)、「会社の将来性に不安を感じた」(28%)などが上位に挙がっています。これらの「本音の退職理由」があったとしても、それをそのまま伝えることはNG行動です。最終的に会社を去るまで、円滑な人間関係を維持することが、あなたのプロフェッショナルとしての評価を守り、将来のキャリアにも良い影響をもたらします。退職理由を伝える際は、慎重な言葉選びと冷静な態度を心がけましょう。
円満な引き継ぎと最終日のマナー
退職の意思を伝えてから実際に会社を去るまでの期間は、円満退職を実現するための非常に重要なフェーズです。特に、業務の引き継ぎは、後任者や会社が困らないように、誠意をもって丁寧に行う必要があります。引き継ぎは、以下のポイントを押さえて実施しましょう。
- 業務内容の可視化:自分の担当業務をリストアップし、それぞれの業務内容、進め方、使用ツール、必要な情報などを詳細に文書化します。マニュアルやフローチャートを作成すると、後任者が理解しやすくなります。
- 顧客・取引先情報:担当している顧客や取引先の連絡先、担当者、過去の経緯、今後の対応方針などを整理し、引き継ぎ資料にまとめます。必要に応じて、後任者と一緒に挨拶回りを行うことも検討しましょう。
- 進捗状況の共有:現在進行中のプロジェクトやタスクの進捗状況、課題、今後の見込みなどを明確に伝えます。
- 質問対応:引き継ぎ期間中に後任者から質問があった場合は、丁寧に分かりやすく回答し、疑問点を解消するよう努めます。
最終出社日には、感謝の気持ちを伝えることが何よりも大切です。お世話になった上司や同僚、関係部署の方々には、直接口頭で挨拶し、これまでの感謝を伝えましょう。もし、全員に直接挨拶することが難しい場合は、部署内や社内全体へのメールで感謝のメッセージを送るのも良い方法です。メッセージには、退職の挨拶と、在職中にお世話になったことへの感謝を簡潔に記し、今後の会社の発展を願う言葉を添えると良いでしょう。
また、会社貸与品(PC、携帯電話、社員証、制服など)の返却や、健康保険証、年金手帳、雇用保険被保険者証などの必要な書類の受け取りも忘れずに行いましょう。最後まで責任感を持って丁寧に対応することで、会社を円満に去ることができ、あなたのプロフェッショナルとしての評価を高めることにも繋がります。円満退職は、あなたの次のキャリアを素晴らしいものにするための、最後のそして最も重要なステップなのです。
まとめ
よくある質問
Q: 「辞表」とは具体的にどういう意味ですか?
A: 「辞表」とは、役職にある者がその役職を辞める意思を表明するために、所属する組織に提出する書類のことです。単に会社を辞める意思表示だけでなく、役職を辞退する意味合いが強いです。
Q: 辞表の正しい読み方は?
A: 辞表は「じひょう」と読みます。単に「退職届」とは異なり、役職を辞める際に用いられることが多い言葉です。
Q: 役職がない場合でも辞表は必要ですか?
A: 役職がない場合は、一般的に「退職願」や「退職届」を提出します。辞表は役職を辞める意思表示ですので、役職がない場合は不要です。
Q: 辞表の提出は、どのような方法で行うのが一般的ですか?
A: 直属の上司に直接手渡しするのが一般的です。郵送する場合は、封筒の書き方や送付方法にマナーがあります。郵便局に持ち込むことで、確実に届けることができます。
Q: 辞表に顔文字やLINEで送ることはマナー違反ですか?
A: はい、辞表は正式な書類ですので、顔文字やLINEでの連絡はマナー違反となります。手書きまたはPCで作成し、丁寧な言葉遣いを心がけましょう。
