概要: 雇用契約書と雇入通知書は、どちらも雇用関係における重要な書類ですが、その役割と内容には違いがあります。本記事では、これらの書類の違いを明確にし、履歴書や離職票、さらにはリモートワークなど、様々なケースにおける雇用契約書の活用法を解説します。
雇用契約書と雇入通知書:あなたの権利を守るために
会社に入社する際、私たちは「雇用契約書」や「労働条件通知書」といった書類を目にします。これらは、あなたの働き方や権利を守る上で極めて重要な書類ですが、「何が違うの?」「どんな意味があるの?」と疑問に感じる方も少なくないでしょう。
近年、働き方が多様化し、法改正も進む中で、これらの書類の役割はますます重要になっています。この記事では、雇用契約書と雇入通知書(労働条件通知書)の基本から、2024年の法改正、電子化の動向、そしてあなたの権利を守るための活用術まで、分かりやすく解説します。
雇用契約書と雇入通知書、何が違う?基本を理解しよう
法的性質と義務の違いを明確に
雇用契約書と雇入通知書(正式には労働条件通知書)は、いずれも雇用に関する重要な書類ですが、その法的性質と企業側の義務において明確な違いがあります。
雇用契約書は、使用者(会社)と労働者の間で労働条件について合意が形成されたことを証明する「契約書」です。民法上の「契約自由の原則」に基づき、その作成は義務ではありません。また、書面で作成しなくても口頭の合意でも契約は成立します。しかし、後にトラブルが生じた際の証拠となるため、作成が強く推奨されています。
一方、労働条件通知書は、労働基準法第15条に基づき、使用者(会社)が労働者に対して、給与や労働時間などの主要な労働条件を「通知する義務」を果たすための書類です。これは企業に交付が義務付けられており、記載すべき内容も法律で細かく定められています。もし通知内容に不備があったり、交付しなかったりした場合は、労働基準法違反となる可能性があります。
つまり、雇用契約書は「双方が合意した証拠」であり、労働条件通知書は「企業が一方的に労働条件を通知する義務の履行」という点で異なると言えるでしょう。
労働条件通知書兼雇用契約書とは
近年、これらの書類の作成・交付をより効率的かつ実用的にするために、「労働条件通知書兼雇用契約書」として一体型で作成されるケースが増えています。
この一体型の書類は、労働基準法で義務付けられている労働条件の明示事項を網羅しつつ、同時に使用者と労働者双方の署名捺印を求めることで、その内容に双方の合意があったことを証明する役割も果たします。これにより、企業側は二度手間を省くことができ、労働者側も一つの書類で自身の労働条件と合意内容を確認できるメリットがあります。
特に、2024年4月の法改正により、労働条件通知書に記載すべき事項が追加・明確化されたことで、より詳細な情報の明示が求められるようになりました。一体型であれば、これらの義務を確実に果たしつつ、将来的な労使間のトラブル防止にもつながりやすくなります。ただし、どちらの形式であっても、記載内容が法律で定められた要件を満たしているかどうかが最も重要です。
交付のタイミングと重要性
これらの書類が交付されるタイミングは、原則として労働契約を締結し、実際に働き始める前、または入社と同時です。
労働条件通知書については、労働基準法により「速やかに」交付することが義務付けられています。これは、労働者が自身の働く条件を明確に理解した上で業務に就くことができるようにするためです。入社前に内容を十分に確認することは、後に「話が違う」「聞いていなかった」といった誤解やトラブルを防ぐ上で非常に重要となります。
例えば、給与体系、労働時間、休日、残業の有無、異動の可能性など、具体的な労働条件は、労働者の生活設計やキャリアプランに直結するものです。これらの情報が事前に明確に提示されることで、労働者は安心して新しい職場でのスタートを切ることができます。
企業側にとっても、正確かつタイムリーな交付はコンプライアンス遵守の証となります。入社時の適切な書類交付は、円滑な労使関係を築くための第一歩であり、双方にとってメリットが大きいと言えるでしょう。
「労働契約書」との関係性:雇用契約書とどう違う?
労働契約の成立と書面化の意義
「労働契約」とは、労働者が使用者の指揮命令に従って労働に従事し、使用者がその対価として賃金を支払うことについて、両者の間で合意が成立した状態を指します。
実は、労働契約は必ずしも書面で締結する必要はなく、口頭の合意のみでも法的には成立します。しかし、口頭での合意だけでは、後になって「言った」「言わない」の認識の違いや、「聞いていた内容と違う」といったトラブルが生じやすくなります。そこで、労働条件を明確にし、紛争を未然に防ぐために書面化が非常に重要になります。
「労働契約書」という言葉は、まさにこの書面による労働契約の証拠を指す一般的な表現と言えるでしょう。
書面化することで、労働者も企業も、どのような条件で働くのか、どのような義務や権利があるのかを客観的に確認することができます。これは、双方にとって安心して働く、あるいは雇用関係を維持するための基盤となります。
「労働契約書」という表現のニュアンス
「労働契約書」という言葉は、法的に厳密に定義された特定の書類名を指すものではなく、広義で労働に関する契約書全般を指す慣用的な表現として使われることが多いです。
多くの場合、「雇用契約書」や「労働条件通知書兼雇用契約書」が実質的な「労働契約書」としての役割を担っています。つまり、雇用契約書は労働契約の具体的な書面の一つであり、労働契約書という広い概念の中に雇用契約書が含まれる、と理解するのが適切でしょう。
重要なのは、その書類の名称が何であるかではなく、どのような内容が記載され、それが労働基準法などの関連法規に準拠しているか、そして労働者と企業の双方の合意を明確にしているかという点です。もし「労働契約書」というタイトルの書類を提示された場合でも、その中身が雇用契約書としての役割と、労働条件通知書としての明示義務を満たしているかを確認することが肝心です。
合意形成とトラブル防止の観点から
雇用契約書やそれに類する労働契約書は、使用者と労働者双方の合意が記載されている点に大きな意義があります。
労働条件通知書が一方的な通知であるのに対し、雇用契約書に署名・捺印するという行為は、記載された労働条件について労働者も同意したという証拠になります。この合意形成のプロセスこそが、将来的なトラブルを防止する上で極めて重要な役割を果たします。
例えば、業務内容、就業場所、賃金、労働時間、休暇、退職に関する事項など、労働条件は多岐にわたります。これらの事項について書面で確認し、双方の認識を一致させておくことで、後から「こんなはずではなかった」といった認識の齟齬を防ぐことができます。
特に、試用期間中の解雇や、異動・配置転換の条件など、労働者の権利に大きく関わる事項については、事前に十分に確認し、納得した上で契約を締結することが不可欠です。万が一、契約内容について疑問や不明な点があれば、署名・捺印の前に必ず会社に確認し、明確な回答を得るようにしましょう。
知っておきたい!雇用契約書にまつわる様々なケース
2024年4月からの法改正:明示義務の拡充
2024年4月1日より、労働基準法施行規則が改正され、労働条件通知書に明示が義務付けられる事項が追加・明確化されました。これは、労働者がより安心して働き、キャリア形成ができるようにするための重要な改正です。
主な変更点としては、まず「就業場所・業務内容の変更の範囲」の明示が義務付けられました。これは、雇入れ直後の勤務地や業務内容だけでなく、将来的に配置転換や異動などで変更される可能性のある範囲についても具体的に示すことを求めるものです。例えば、転居を伴う転勤の有無、国内外への異動の可能性、テレワークの導入可能性などが含まれます。これにより、労働者は自身のキャリアプランやライフプランを立てやすくなります。
次に、有期雇用契約においては、「更新上限の有無と内容」の明示が義務付けられました。契約更新に回数や通算期間の上限がある場合、それを明確に提示することで、労働者は自身の雇用期間の見通しを立てやすくなります。さらに、「無期転換申込機会」と「無期転換後の労働条件」の明示も必須となりました。これは、有期雇用労働者が通算5年を超えて契約を更新した場合に無期雇用に転換できる権利(無期転換ルール)があることを伝え、その際の労働条件をあらかじめ示すことで、労働者の権利保護を強化するものです。
また、短時間・有期雇用労働者に対しては、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」、そして「相談窓口」の明示が義務付けられました。これにより、正社員との待遇差をより明確にし、相談しやすい環境を整えることを目指しています。これらの改正は、企業にとっては正確な情報提供が求められる一方で、労働者にとっては自身の権利や将来の働き方をより具体的に知るための重要な情報源となります。
電子化の現状とメリット・デメリット
近年、雇用契約書や労働条件通知書の作成・交付において、電子化の動きが加速しています。2019年4月からは、一定の要件を満たせば労働条件通知書も電子メールやPDFファイルなどでの交付が可能となりました。
電子契約サービスの普及率は急速に伸びています。2024年1月時点の調査では、電子契約サービスの利用企業は74.0%に達しており、2024年6月時点では日本企業の電子契約普及率は77.9%と報告されています。雇用契約に限定しても、2023年10月時点の調査では、完全に電子化している企業が約2割(20.8%)、一部導入を含めると57.6%の企業が電子化済みであることが示されており、この流れは今後も加速するでしょう。
電子化の最大のメリットは、業務効率化とコスト削減です。書類の作成、印刷、郵送、保管にかかる手間や時間を大幅に削減でき、印刷代や郵送費、保管スペースのコストも削減できます。また、契約締結までのスピードアップやヒューマンエラーの防止により、コンプライアンス強化にも繋がります。リモートワークや遠隔地からの応募者にもスムーズに対応できるため、働き方改革を推進する上でも有効です。
ただし、電子化には要件があります。労働者が電子交付を希望していること、受信者を特定できる電気通信手段を用いること、そして労働者が記録を出力して書面を作成できることが条件です。また、セキュリティ対策やデータ保管の信頼性など、新たな課題も存在します。デジタルデバイドによる格差や、電子契約システムの導入・運用コストなども考慮すべきデメリットと言えるでしょう。
フリーランスとの契約形態の違い
働き方の多様化が進む中で、「フリーランス」として企業と契約するケースも増えています。しかし、フリーランスは企業に雇用される「労働者」とは契約形態が大きく異なります。
フリーランスは通常、企業と「業務委託契約」(請負契約や委任契約)を結びます。これは、仕事の完成や特定の業務の遂行に対して報酬を支払う契約であり、雇用契約とは異なり、原則として労働基準法や最低賃金法などの労働者保護法規の適用を受けません。そのため、労働時間、休日、残業代、社会保険、雇用保険といった労働者の権利に関する規定は適用されず、契約内容のすべてが自己責任となる傾向が強いです。
このような背景から、フリーランスの保護を目的とした「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(通称「フリーランス新法」)が2024年11月1日に施行されます。この法律では、企業がフリーランスに業務を委託する際に、SNS等で募集を行う場合に氏名、報酬、業務内容などを明示することが義務付けられるなど、取引の公正性を確保し、フリーランスが安心して働ける環境を整備することが目指されています。
一方で、契約書上は業務委託となっていても、実態として企業から強い指揮命令を受けていたり、労働時間や場所が拘束されていたりするなど、「労働者性」が高いと判断される場合は、「偽装請負」とみなされるリスクがあります。この場合、企業は労働基準法に基づく責任を負うことになるため、契約形態と実態が乖離しないよう注意が必要です。フリーランスとして働く場合は、自身の権利と義務をより深く理解し、契約内容を十分に精査することが不可欠となります。
雇用契約書は誰が、どこに保管する?会社控えの重要性
従業員と会社、それぞれの保管義務
雇用契約書や労働条件通知書は、従業員と会社双方にとって非常に重要な書類であるため、それぞれが適切に保管する義務と重要性があります。
まず、労働者側は、自身の労働条件を証明する最も基本的な書類として、これらの書類を大切に保管するべきです。給与、労働時間、休日、異動の範囲、退職に関する事項など、労働条件に関するあらゆる情報が記載されているため、後に会社との間に認識の齟齬が生じた場合や、労働に関する相談をする際に、具体的な証拠として提示することができます。紛失してしまった場合、自身の権利を主張するのが難しくなる可能性もあるため、コピーを取るなどして複数箇所に保管しておくことも有効です。
次に、会社側も、これらの書類の保管は法的な義務を伴います。労働基準法第107条では、労働者名簿や賃金台帳などと並び、労働条件に関する重要な書類(労働契約書、労働条件通知書など)を原則として3年間(賃金に関する書類は5年間)保管するよう定めています。これは、労働者との間でトラブルが発生した際に、会社が適切な労働条件を明示し、双方の合意を得ていたことを証明するため、また労働基準監督署からの監査に対応するためにも不可欠です。
会社における保管場所としては、一般的に人事部や総務部が担当し、機密文書として厳重に管理されます。紛失や漏洩は、会社のコンプライアンス違反だけでなく、個人情報保護の観点からも大きな問題となるため、適切な保管体制の構築が求められます。
個人情報保護と適切な管理体制
雇用契約書や労働条件通知書には、労働者の氏名、住所、生年月日、賃金情報、扶養家族の情報など、極めて詳細な個人情報が記載されています。そのため、これらの書類の保管・管理には、個人情報保護法に基づく厳格な対応が求められます。
企業は、個人情報保護の観点から、以下の点に留意した管理体制を構築する必要があります。
- アクセス権限の限定: 雇用契約書にアクセスできるのは、人事担当者や責任者など、業務上必要最小限の従業員に限定するべきです。
- 物理的セキュリティ: 紙媒体で保管する場合、鍵のかかるキャビネットや部屋に保管し、部外者の侵入や不正な持ち出しを防ぐ措置を講じます。
- 技術的セキュリティ: 電子データで保管する場合、パスワード設定、アクセスログの監視、暗号化、ファイアウォールの導入など、不正アクセスやデータ漏洩を防ぐための技術的な対策が必要です。
- 保管期間の遵守: 法令で定められた保管期間(原則3年間)を超えて不必要に保管しないこと。期間終了後は、個人情報が特定できないように適切に破棄する義務があります。
- 教育・研修: 従業員に対し、個人情報保護に関する定期的な教育・研修を実施し、情報管理の重要性を周知徹底することも欠かせません。
これらの措置を怠ると、個人情報漏洩という重大な事態を招き、会社の信用失墜や法的な責任を問われるリスクがあるため、細心の注意を払った管理が求められます。
電子保管におけるセキュリティとアクセス
雇用契約書などの電子化が進む中で、電子保管におけるセキュリティとアクセス管理は、紙媒体とは異なる視点での対策が求められます。
電子化された書類は、物理的なスペースを必要とせず、検索性も高まるというメリットがありますが、同時にサイバー攻撃やシステム障害による情報漏洩・データ損失のリスクも増大します。そのため、電子保管においては、真正性(データが改ざんされていないこと)、見読性(いつでも内容を確認できること)、検索性(必要な情報を速やかに見つけられること)、そして機密性(不正なアクセスから保護されていること)の確保が不可欠です。
具体的な対策としては、以下の点が挙げられます。
- アクセス制御: 各従業員の役割に応じた厳格なアクセス権限を設定し、不要な情報の閲覧を制限します。
- 暗号化: 機密性の高いデータは、保存時および通信時に暗号化し、傍受による情報漏洩を防ぎます。
- バックアップと復旧計画: 定期的なデータバックアップを実施し、災害やシステム障害発生時の復旧計画を策定しておくことが重要です。
- 監査ログ: 誰がいつ、どのデータにアクセスしたか、どのような変更を行ったかといったログを記録し、不正行為の監視や追跡を可能にします。
- クラウドサービス利用時の注意: クラウドサービスを利用する場合、プロバイダのセキュリティ対策、データが保管される場所(データ所在地)、SLA(サービス品質保証)などを十分に確認し、自社のセキュリティポリシーに合致しているかを見極める必要があります。
リモートワークが普及する現代においては、従業員がどこからでも安全にデータにアクセスできるよう、VPN(仮想プライベートネットワーク)の利用や多要素認証の導入など、アクセス経路のセキュリティ強化も不可欠です。
賢く活用!雇用契約書で働き方を明確にするヒント
変更の範囲明示でキャリアプランを具体化
2024年4月の法改正で、労働条件通知書への「就業場所・業務内容の変更の範囲」の明示が義務付けられたことは、労働者にとって自身のキャリアプランを具体的に描く上で非常に重要な情報となります。
この情報は、入社後にどのような異動や配置転換の可能性があるのか、転居を伴う転勤は発生するのか、将来的にどのような業務に携わる可能性があるのかといった、自身の働き方の将来像を事前に把握するための手がかりを与えてくれます。例えば、「就業場所の変更の範囲:会社の定める全ての事業所(海外を含む)」と記載されていれば、将来的に海外赴任の可能性があることを示唆していますし、「業務内容の変更の範囲:会社の定める全ての業務」とあれば、幅広い職種への異動があり得ることを意味します。
この情報を参考に、自身のキャリア目標と会社の求める方向性が合致しているか、許容できる範囲内であるかを検討することができます。もし、提示された変更の範囲が自身の希望やライフプランと大きく異なる場合は、入社前に会社に具体的な異動実績や育成方針について質問し、詳細を確認することが賢明です。納得できない点があれば、交渉の余地を探ることも重要です。この明示義務の活用は、自身のキャリアパスをより明確にし、後悔のない選択をするための強力なツールとなるでしょう。
無期転換ルールと有期雇用者の権利
有期雇用契約で働く方にとって、雇用契約書(労働条件通知書)に明示される「無期転換申込機会」と「無期転換後の労働条件」は、自身の雇用安定に直結する重要な情報です。
「無期転換ルール」とは、有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、労働者からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるという制度です。2024年4月の法改正により、企業は有期雇用契約を更新するたびに、この無期転換申込権が発生する機会と、その権利を行使した場合の労働条件を労働者に書面で明示することが義務付けられました。
この明示により、有期雇用労働者は、自身がいつ無期転換権を行使できるのか、そして無期転換後の給与、労働時間、業務内容などがどうなるのかを事前に把握できるようになります。これは、将来の生活設計やキャリア形成を考える上で非常に大きな安心材料となります。自身の契約期間と更新回数を確認し、無期転換権の発生時期を意識しながら働くことが大切です。
また、中小企業においては、非正規雇用者の待遇改善や人材確保の観点から、「任意特定適用事業所制度」などを活用し、パート社員などにも健康保険・厚生年金が適用されるよう、制度導入を検討する企業が増加しています。自身の働き方が、このような社会保険の適用対象となるかどうかも、雇用契約書や会社の就業規則を通じて確認すると良いでしょう。
疑問点は積極的に確認し、納得して締結
雇用契約書や労働条件通知書は、あなたと会社との間で交わされる最も基本的な約束事です。そのため、記載されている内容を十分に理解し、納得した上で署名・捺印することが何よりも重要です。
多くの方が、入社時に提示された書類を深く読み込まずにサインしてしまう傾向がありますが、これは避けるべき行為です。もし、提示された書類の中に、理解できない文言や曖昧な表現、あるいは自身の認識と異なる点があった場合は、決してその場で安易にサインせず、積極的に質問し、明確な回答を求めるべきです。
例えば、「みなし残業」の具体的な計算方法、「業務内容」のどこまでが職務範囲なのか、「退職金」制度の有無とその計算方法など、疑問点は多岐にわたるでしょう。遠慮せずに担当者や人事に問い合わせ、不明点をクリアにすることが、後々のトラブル防止に繋がります。
場合によっては、労働条件の一部について交渉の余地があることもあります。例えば、入社日、担当業務、福利厚生など、会社との話し合いを通じて、より良い条件を引き出せる可能性もゼロではありません。入社前の最終確認の時間を設け、自身の権利と義務を理解し、納得のいく形で雇用契約を締結することが、安心して長く働くための第一歩となるでしょう。
まとめ
よくある質問
Q: 雇用契約書と雇入通知書は、法的にどちらがより重要ですか?
A: どちらも法的に重要ですが、雇用契約書は労働条件の合意を明確にするためのもので、紛争が発生した場合の証拠となります。雇入通知書は、労働条件の通知義務を果たすための書類です。
Q: 「労働契約書」という言葉を聞いたことがありますが、雇用契約書とはどう違うのですか?
A: 一般的に、「雇用契約書」と「労働契約書」はほぼ同義で使われます。どちらも、労働者と使用者の間で交わされる、労働条件などを定めた契約書を指します。
Q: 業務委託契約の場合も、雇用契約書は必要ですか?
A: 業務委託契約は、雇用契約とは異なります。業務委託契約では、請負者・委託者間の契約内容に基づき業務が行われるため、雇用契約書は原則として必要ありません。
Q: リモートワークの場合、雇用契約書の内容は通常と異なりますか?
A: リモートワークの場合も、基本的な雇用契約書の内容は同様ですが、勤務場所、情報セキュリティ、通信費の負担など、リモートワーク特有の事項が追加されることがあります。
Q: 雇用契約書は、会社側と従業員側でそれぞれ保管義務がありますか?
A: 会社側は、労働基準法に基づき、労働条件に関する書類を一定期間保管する義務があります。従業員側も、自身の権利を守るために、受け取った雇用契約書は大切に保管することが推奨されます。
