概要: コアタイムとは、フレックスタイム制において、従業員が必ず勤務しなければならない時間帯のことです。この記事では、大東建託、第一生命、デンソー、防衛省、パーソルキャリア、パナソニック、パソナ、ベイカレントといった様々な企業でのコアタイム導入事例を紹介し、そのメリット・デメリットを解説します。
コアタイムとは?企業ごとの活用事例とメリット・デメリットを徹底解説
コアタイムとは?定義と目的
フレックスタイム制とコアタイムの基本
「コアタイム」とは、フレックスタイム制において、従業員が必ず勤務しなければならない時間帯を指します。
フレックスタイム制自体は、従業員が総労働時間の中で自身の裁量で始業・終業時刻を決められる制度です。しかし、コアタイムを設けることで、チーム内のコミュニケーションや共同作業を円滑に行うという重要な目的があります。
近年、働き方改革の流れで導入企業は増えていますが、2023年時点の導入割合はまだ6.8%に留まっています。
スーパーフレックスタイム制との違い
コアタイムを設けない働き方は「スーパーフレックスタイム制」と呼ばれます。この制度では、従業員は始業・終業時刻を完全に自分の裁量で決定でき、より一層の自由度を享受できます。
アサヒビール株式会社やソフトバンク株式会社などがスーパーフレックスタイム制を導入している代表例です。
コアタイムの有無は、働き方の自由度やチーム連携のスタイルに大きく影響を与えるため、企業文化や業務内容に合わせて選択されます。
コアタイムが果たす役割
コアタイムは、チームメンバー全員が揃う時間を確保することで、会議や情報共有、共同作業を効率的に行うための基盤となります。
これにより、偶発的なコミュニケーション不足を防ぎ、プロジェクトの進捗をスムーズにすることができます。また、緊急時の対応や指導・育成の機会も確保しやすくなります。
制度を導入する際は、労使協定や就業規則で明確なルールを定めることが不可欠です。
企業別!コアタイム導入事例と特徴
コアタイムなし「スーパーフレックス」導入事例
コアタイムを設けないスーパーフレックスタイム制は、従業員の最大限の裁量を尊重する働き方です。
例えば、アサヒビール株式会社はテレワークや直行直帰制度と組み合わせ、労働生産性やワークライフバランス向上を図っています。味の素株式会社も健康経営と働き方改革を背景に、早朝勤務促進の仕組みとテレワークで多様なライフスタイルを支援。ソフトバンク株式会社は2017年から全社導入し、クラウド勤怠管理で社員間の勤務状況共有を円滑にしています。
これらの企業は、従業員が自律的に働き方を設計できる環境を提供し、高いパフォーマンスを引き出しています。
コアタイムありの活用事例とその効果
コアタイムを設ける企業は、チームの結束力やコミュニケーションの質を重視する傾向にあります。
例えば、午前中の数時間をコアタイムと設定し、定例会議やプロジェクトの進捗確認を集中して行うことで、それ以外の時間は各自が業務に集中できるように配慮するケースがあります。
新入社員の育成期間や、特定の部署で密な連携が必要な場合に、コアタイムを有効活用することで、コミュニケーション不足を防ぎつつ柔軟な働き方を両立させています。
多様な働き方に対応する制度設計
コアタイム制度は、企業の文化や業務内容に合わせて柔軟に設計されるべきです。
例えば、部署ごとにコアタイムの長さを変えたり、完全にコアタイムを設けずスーパーフレックス制とするなど、選択肢は多岐にわたります。製造部門ではコアタイムを長く設定し、企画部門では短くするといった工夫も可能です。
従業員の意見を定期的に募り、制度を継続的に見直すことで、より実態に即した働きやすい環境を構築できます。
コアタイム導入のメリット
ワークライフバランスの向上
コアタイム制度は、従業員が自身のライフスタイルに合わせて勤務時間を調整できるため、ワークライフバランスの向上に大きく貢献します。
育児や介護との両立、通院、自己啓発のための時間確保など、個人の事情に応じた柔軟な働き方が可能になります。これにより、通勤ラッシュを避けることができ、ストレス軽減にもつながります。
結果として、従業員満足度が向上し、離職率の低下にも良い影響を与えると期待されます。
生産性の向上
従業員は、自身の集中できる時間帯に業務を進められるため、業務効率と生産性の向上が期待できます。
例えば、朝型の人も夜型の人も、最もパフォーマンスを発揮できる時間帯にコア業務を行うことで、質の高い成果を生み出しやすくなります。また、通勤ラッシュを避けることで、体力的な負担も軽減され、業務に集中できる時間が増えます。
自律的にスケジュールを管理する能力も養われ、従業員の成長にも繋がります。
優秀な人材の確保
柔軟な働き方を導入している企業は、現代の多様なニーズを持つ求職者にとって非常に魅力的です。
特に、ワークライフバランスを重視する優秀な人材や、遠隔地に住むプロフェッショナル層にもアプローチできるようになります。これにより、採用活動において有利になり、企業の競争力強化に寄与します。
多様なバックグラウンドを持つ人材が集まることで、組織全体のイノベーション力も高まるでしょう。
コアタイム導入のデメリットと注意点
勤怠管理の複雑化と連携の課題
従業員それぞれの勤務時間が多様化するため、勤怠管理が煩雑になる可能性があります。正確な労働時間や残業時間の把握が難しくなることもあります。
また、コアタイムがない、または短い場合は、従業員同士の偶発的なコミュニケーションが減少し、情報共有が滞るリスクがあります。
チーム内の連携不足や情報共有の遅延は、プロジェクトの遅延や生産性低下につながる可能性があるため、注意が必要です。
適切なコアタイム設定の難しさ
全従業員に共通する「最適な」コアタイムを設定することは非常に難しい課題です。
部署や職種、個人のライフスタイルによって必要な勤務時間帯は異なるため、一部の従業員にとっては負担になったり、不公平感が生じたりする可能性もあります。
制度を導入する際は、労使協定や就業規則で明確なルールを定め、従業員との協議を丁寧に行い、全員が納得できる形を目指すことが重要です。
制度運用における対策
デメリットを克服するためには、適切な対策が不可欠です。
勤怠管理の複雑化には、勤怠管理システムの導入が有効です。コミュニケーション不足には、定例ミーティングの義務化や部署ごとの出社推奨日を設けることが考えられます。また、チャットツールやオンライン会議システムを活用し、非同期コミュニケーションを促進することも重要です。
マネジメント層が柔軟な働き方への理解を深め、成果主義的な評価制度へ移行することも、制度を円滑に運用する上で不可欠です。
コアタイムの将来性と柔軟な働き方
働き方改革とコアタイム制度の進化
働き方改革の推進により、フレックスタイム制の導入は今後も増加していくと予想されます。特にコロナ禍を経て、リモートワークが浸透したことで、働く場所と時間の柔軟性がより重視されるようになりました。
コアタイム制度も、画一的なものから、企業の業務特性や従業員のニーズに合わせてより多様で柔軟な形へと進化していくでしょう。
企業は、従業員一人ひとりのライフスタイルを尊重しつつ、組織としての生産性を最大化する制度設計が求められます。
テクノロジーが支える柔軟な働き方
テクノロジーの進化は、柔軟な働き方を強力に後押しします。
クラウドベースの勤怠管理システムやプロジェクト管理ツール、ビデオ会議システム、チャットツールなどは、従業員がどこにいても連携し、業務を進めることを可能にします。
今後、AIやRPAなどの導入が進めば、定型業務の自動化が進み、従業員はより創造的で集中力を要する業務に時間を割けるようになり、さらなる柔軟な勤務が実現するでしょう。
これからの企業が目指すべき姿
これからの企業には、「時間」ではなく「成果」で評価する文化への転換が強く求められます。
従業員が自身のパフォーマンスを最大限に発揮できるよう、自律性を尊重し、エンゲージメントを高める制度設計が不可欠です。
コアタイム制度は、単なる勤務形態の一つではなく、従業員満足度の向上、生産性の最大化、優秀な人材の確保、そして持続可能な企業成長を実現するための戦略的な選択肢として、その重要性を増していくでしょう。
まとめ
よくある質問
Q: コアタイムとは具体的にどのようなものですか?
A: コアタイムとは、フレックスタイム制において、従業員が必ず勤務しなければならない時間帯のことです。この時間帯は、会議やチームでの情報共有など、円滑な業務遂行のために設定されることが多いです。
Q: コアタイムを導入するメリットは何ですか?
A: コアタイムを導入するメリットとしては、チーム内での連携が取りやすくなる、急な問い合わせにも対応しやすくなる、従業員同士のコミュニケーションが活性化するといった点が挙げられます。
Q: コアタイムを導入するデメリットや注意点はありますか?
A: コアタイムを導入するデメリットとしては、コアタイムに業務が集中しやすくなる、コアタイム外の自由な時間が減る、コアタイムの設定によっては従業員の希望と合わない場合があるといった点が考えられます。設定時間や対象範囲を慎重に検討する必要があります。
Q: ゲーム業界でコアタイムはどのように活用されていますか?
A: ゲーム業界では、開発の進行状況やプロジェクトの性質によってコアタイムの設定が異なります。リリース前の集中期間や、チームでの密な連携が必要な開発フェーズで設定されることが多いようです。ただし、クリエイティブな業務の性質上、柔軟な働き方を重視する企業も増えています。
Q: コアタイムがないフレックスタイム制はありますか?
A: はい、コアタイムがないスーパーフレックスタイム制という働き方もあります。この場合、勤務時間の自由度が非常に高く、従業員は自分の都合に合わせて柔軟に働くことができます。ただし、コミュニケーションの取り方など、個々の工夫がより重要になります。
