概要: 教員や消防士、地方公務員の副業解禁に関する最新情報と、それに伴う総務省のガイドラインについて解説します。宅建士など他の職種との比較や、副業を始める際の注意点も網羅します。
教員・消防士の副業解禁はいつから?最新情報と背景
1. 公務員の副業解禁、その歴史と現在の状況
近年、「働き方改革」の波は、これまで副業が厳しく制限されてきた公務員の世界にも押し寄せています。
公務員の副業解禁に向けた動きは、2017年の神戸市が試験的に副業を許可したことを皮切りに、少しずつ全国へと広がりを見せています。
当初は地域貢献を目的としたNPO活動などが中心でしたが、2024年には大阪府が営利目的の副業を正式に許可するなど、その範囲は着実に拡大しています。
国家公務員においても、兼業許可基準が明確化されるなど、制度の見直しが進められており、副業を検討する動きは活発化しています。
人事院の調査によると、国家公務員で兼業を行ったことがある職員は6.2%に留まるものの、今後兼業を希望する職員の割合は32.9%に上るとされており、潜在的なニーズの高さが伺えます。
「新しい知見やスキル・人脈を得たい」「自分の趣味や特技を活かしたい」といった前向きな理由が、彼らを副業へと向かわせる原動力となっています。
2. 教員・消防士の副業規制、なぜ厳しかったのか?
教員や消防士は、地方公務員法に基づき、原則として副業が禁止されています。この厳しい規制の背景には、いくつかの重要な理由が存在します。
最も大きな理由の一つは、公務員が職務専念義務を負っていることです。
本業に支障をきたさず、常に公務に専念することが求められるため、副業によって職務がおろそかになることを防ぐ目的があります。
また、「信用失墜行為の禁止」も重要な要素です。公務員としての品位や信用を損なうような活動は認められません。
さらに、「守秘義務」により、職務上知り得た秘密情報を副業で利用することも厳しく禁じられています。
これらの規定は、公務の公正性や中立性を保ち、国民からの信頼を維持するために不可欠とされてきました。
私立学校の教員の場合は、学校ごとの規定に従うことになりますが、公立の教員や消防士はこれらの公務員法による制限を強く受けてきたのです。
3. 最新の動き:2025年総務省ガイドラインと各自治体の対応
公務員の副業解禁の動きを決定的に加速させるものとして注目されているのが、2025年6月に総務省から全国の自治体に通知される予定の「地方公務員の兼業・副業を後押しするためのガイドライン」です。
このガイドラインにより、公務員の副業規制が大幅に緩和される可能性が高まっています。
これまで不明確だった副業の許可基準が明確化され、手続きの簡素化も進むと期待されています。
ガイドラインの通知後、各自治体はこれに準じて条例や規則の見直しを進めることになりますが、その具体的な対応には時間差が生じる見込みです。
そのため、教員や消防士が副業を検討する際には、まずは所属する教育委員会や自治体の人事担当部署に最新のルールを確認することが不可欠です。
株式会社フクスケの調査(2024年10月)によると、副業制度が「設定あり」の職場で副業を「知らせている」割合は34.7%でしたが、今後はこの割合がさらに増加し、よりオープンな形で副業が行われるようになるでしょう。
地方公務員の副業解禁:総務省ガイドラインと実情
1. 総務省ガイドラインが示す「兼業・副業」の新たな定義
2025年6月に総務省から発出される予定のガイドラインは、地方公務員の兼業・副業に対する国の姿勢を大きく転換させるものです。
このガイドラインは、公務員の副業を単なる例外的な許可ではなく、「後押しする」という明確なメッセージを打ち出しており、兼業・副業を個人のスキルアップや地域貢献、そして組織全体の活性化に資するものとして積極的に評価する方針を示しています。
具体的な内容としては、これまで原則禁止とされてきた営利目的の活動についても、一定の条件を満たせば許可される範囲が広がる可能性があります。
例えば、勤務時間外に行われ、本業に支障がなく、公務の信用を損なわない範囲であれば、報酬を伴う事業や事務への従事が認められやすくなるでしょう。
これにより、公務員が自身の専門知識や特技を活かし、地域社会に貢献したり、新たな知見を獲得したりする機会が飛躍的に増加することが期待されています。
2. 営利目的の副業はどこまで可能に?具体例と基準
総務省ガイドラインの導入により、これまで厳しく制限されてきた営利目的の副業についても、許可を得ることで可能となる範囲が拡大することが予想されます。
具体的に認められやすい副業としては、以下のようなものが挙げられます。
- 講師・講演活動:自身の専門知識を活かし、学校や地域で講義を行う。
- 執筆活動:書籍や記事の執筆、監修など。
- 資産運用:株式投資、FX、小規模な不動産投資(ただし、規模や管理業務によっては許可が必要)。
- 家業の手伝い:無報酬であれば、これまでも比較的認められやすかった。
特に、不動産投資に関しては、規模が拡大し、賃貸経営が事業的規模と判断される場合には許可が必要になります。
インターネット通販やアフィリエイト、クリエイティブ活動なども、本業に支障がなく、公務の信用を損なわない範囲であれば、許可される可能性が出てくるでしょう。
ただし、いずれのケースにおいても、任命権者の許可が大前提であり、営利目的の場合は特に詳細な審査が行われることになります。
3. 各自治体の現状と今後の見込み:進む多様な働き方
総務省のガイドライン通知後も、地方公務員の副業解禁は、各自治体の判断に委ねられる部分が大きいため、その進展には地域差が生じると考えられます。
一部の先進的な自治体(例:神戸市、大阪府)では既に柔軟な副業制度を導入していますが、多くの自治体ではこれから具体的な条例改正や規則策定に着手することになります。
そのため、ガイドラインが通知されても、すぐに全ての公務員が自由に副業を開始できるわけではないことに注意が必要です。
しかし、長期的に見れば、公務員の副業はより一層多様な働き方として定着していくと予想されます。
副業を希望する公務員の割合が高いことから、自治体側も人材確保や職員のモチベーション向上といった観点から、前向きに制度整備を進める圧力がかかるでしょう。
今後、各自治体がどのような副業をどこまで認めるのか、その動向を注視し、自身のキャリアパスを検討していくことが重要になります。
副業解禁で注目される宅建士など、他の職種との比較
1. 公務員が始めやすい副業の具体例:講師、執筆、資産運用
公務員の副業解禁が進む中で、比較的許可を得やすく、かつ自身のスキルや経験を活かせる副業が注目されています。
その代表的な例として挙げられるのが、講師・講演活動や執筆活動です。
公務員としての専門知識や経験は、教育機関での講義やセミナー、専門分野の記事執筆などで非常に価値を発揮します。
これらの活動は、本業に直結する知見を深めながら、社会貢献にもつながるため、自治体からの理解も得やすい傾向にあります。
また、資産運用も公務員が始めやすい副業の一つです。株式投資やFX、小規模な不動産投資などは、勤務時間外に行うことができ、原則として本業に支障をきたしにくいと考えられています。
ただし、不動産投資の規模が大きくなり、事業的とみなされる場合には、許可が必要となる点には注意が必要です。
その他にも、不用品販売や家業の手伝い(無報酬の場合)など、営利性が低く、本業への影響が少ないものは、比較的許可を得やすいとされています。
2. 教員・消防士が着目すべきスキルや資格
教員や消防士といった専門職は、それぞれの職務で培った特別なスキルや知識を活かせる副業があります。
教員の場合、教育関連の執筆や講演活動はもちろん、家庭教師、教育系ブログの運営などが考えられます。
特に、教員採用試験の対策指導や、自身の得意科目を活かしたオンライン指導などは、需要が高い分野です。
消防士は、救命講習のインストラクターやフィットネス指導、ライター、インターネット通販、クリエイティブ活動などが候補に挙がります。
また、宅建士(宅地建物取引士)などの資格取得も有効な選択肢です。
不動産投資の知識を深めるだけでなく、将来的に不動産関連の副業や、退職後のキャリアパスにもつながる可能性があります。
これらの副業は、本業の経験を活かしつつ、新たなスキルや人脈を得る機会となるため、積極的に検討する価値があるでしょう。
3. 他の民間企業との比較:公務員ならではの制限とメリット
民間企業の多くでは、既に副業が広く認められており、比較的自由に活動できる環境があります。
これに対し、公務員の副業には、公務員法に基づく様々な制限が依然として存在します。
特に、「公務の信用を損なわない」「職務専念義務を遵守する」といった点で、副業の内容にはより一層の配慮が求められます。
例えば、公務員としての地位を利用した不当な利益供与や、職務上の秘密を利用した副業などは厳しく禁じられます。
しかし、公務員ならではのメリットもあります。安定した給与と身分が保証されているため、副業で新しい分野に挑戦する際のリスクを低減できます。
また、公務員の副業は、地域貢献や社会課題解決につながる活動に対しては、比較的許可が得やすい傾向にあります。
これにより、自身の専門性を地域のために役立てる機会が増え、個人のスキルアップだけでなく、社会全体の活性化にも寄与できるという、公務員ならではのやりがいを見出すことも可能になるでしょう。
教員・公務員が副業を始める際の注意点とリスク管理
1. 副業の承認プロセスと事前申請の重要性
公務員や教員が副業を始める上で最も重要なのは、適切な承認プロセスを踏むことです。
営利目的か非営利目的か、規模の大小に関わらず、基本的には任命権者(自治体の長や教育委員会など)の許可を得る必要があります。
許可なく副業を行った場合、後述する懲戒処分の対象となる可能性が高いため、必ず事前に申請を行いましょう。
申請には、副業の内容、期間、報酬、勤務時間外であることなどを具体的に記載した書類の提出が求められます。
不明な点があれば、まずは所属部署の上長や人事担当部署に相談し、詳細なルールや手続きを確認することが不可欠です。
自治体によっては、副業に関するガイドラインやQ&Aが整備されている場合もあるため、それらを参考にしながら慎重に進めるようにしてください。
事前の確認と許可申請こそが、トラブルなく副業を行うための第一歩となります。
2. 信用失墜行為、守秘義務、職務専念義務の厳守
公務員法には、公務員が遵守すべき重要な義務が定められており、副業を行う際にもこれらの義務を厳守しなければなりません。
- 信用失墜行為の禁止:公務員としての品位を損なう行為や、社会的な信用を失墜させるような副業は厳禁です。例えば、反社会的な活動や過度な営利追求、職務と関連して不当な利益を得るような活動は認められません。
- 守秘義務:職務上知り得た秘密情報を副業で利用したり、漏洩したりすることは絶対に許されません。公務の過程で得た情報を個人的な利益のために利用することは、法律で厳しく罰せられます。
- 職務専念義務:副業が本業に支障をきたさないことが大前提です。勤務時間外に行うことはもちろん、疲労によって本業のパフォーマンスが低下することも避けなければなりません。
- 利益相反:本業の職務と副業が競合したり、利害関係が生じたりするような副業は認められません。公正な職務遂行が妨げられる可能性があるためです。
これらの義務は、公務員としての責任と倫理の根幹をなすものであり、常に意識して行動することが求められます。
3. 許可なく副業を行った場合のリスクとペナルティ
もし、公務員や教員が任命権者の許可を得ずに副業を行った場合、その行為は公務員法違反となり、懲戒処分の対象となります。
懲戒処分の種類は、その内容や程度によって異なりますが、具体的には以下のものが挙げられます。
- 戒告:口頭または書面で注意し、反省を促す。
- 減給:一定期間、給与を減額する。
- 停職:一定期間、職務に従事させない。その間の給与は支給されない。
- 免職:公務員の職を解く。最も重い処分。
実際に、許可なく副業を行い、懲戒処分を受けた事例は少なくありません。
例えば、勤務時間中に副業を行っていたケースや、公務の信用を損なうような副業を行っていたケースなどがあります。
懲戒処分は、個人のキャリアに大きな傷をつけるだけでなく、今後の昇進や人事評価にも悪影響を及ぼします。
最悪の場合、職を失うことにもなりかねないため、副業を検討する際は、法律や規則を十分に理解し、常に慎重に行動することが極めて重要です。
副業解禁時代のキャリアパス:教員・消防士・公務員の可能性
1. 副業がもたらす個人のスキルアップと人脈形成
副業解禁は、公務員、教員、消防士といった人々にとって、自身のキャリアパスを大きく広げる新たな可能性を秘めています。
副業を通じて、本業だけでは得られない新しい知見やスキルを獲得できる機会が大幅に増加します。
例えば、Webデザインのスキルを身につけて地域団体の広報を手伝ったり、マーケティングの知識を活かして地元の特産品販売を支援したりするなど、多岐にわたる分野での挑戦が可能です。
また、副業は人脈形成の絶好の機会でもあります。
異なる業界や分野の人々と交流することで、本業の組織内では得られない多様な視点や考え方に触れることができます。
これは、個人の成長を促すだけでなく、将来的には本業への良いフィードバックとなり、より多角的な視点で職務を遂行する力を養うことにもつながるでしょう。
自身の趣味や特技を活かした副業は、仕事へのモチベーション向上にも寄与し、豊かなキャリア形成を後押しします。
2. 地域貢献や専門性向上への貢献
公務員の副業は、個人のスキルアップだけでなく、地域社会への貢献という側面も強く持っています。
特に、地方公務員の場合、地域が抱える課題に対して、自身の専門知識やスキルを活かした活動を行うことで、本業とは異なる形で地域活性化に寄与できます。
例えば、教員が地域の学習支援活動に参加したり、消防士が防災教育のボランティア活動を行ったりするなどが挙げられます。
副業を通じて得られた経験や知識は、本業の専門性をさらに高めることにもつながります。
例えば、公務員が行政書士の資格を取得し、地域住民の相談に乗ることで、法務知識を深めるとともに、現場のニーズを直接把握できるようになります。
このような経験は、自身の職務遂行能力の向上はもちろんのこと、公務員組織全体のサービス向上にも寄与する可能性を秘めているのです。
3. 公務員の未来像:柔軟な働き方と多様なキャリア
副業解禁は、これまでの「安定した終身雇用」という公務員のイメージを刷新し、より柔軟で多様な働き方を実現する大きな一歩となるでしょう。
公務員という職業が、個人の多様な価値観やライフスタイルに対応できる魅力的な選択肢として、さらに多くの人材を引きつける可能性を秘めています。
若手職員にとっては、自身の将来的なキャリアパスを描く上で、本業以外のスキルを磨き、選択肢を増やす重要な機会となります。
2025年以降、総務省ガイドラインの本格運用によって、公務員の副業に関するルールはさらに明確化され、多くの自治体で制度整備が進むと予想されます。
これにより、公務員は「公務」という枠に捉われず、自身の能力や情熱を社会の様々な場所で発揮できる時代へと突入します。
「公務員だから」という固定観念にとらわれず、自身のキャリアを主体的にデザインし、社会に貢献していく新しい公務員像が、これからの時代には求められることでしょう。
まとめ
よくある質問
Q: 教員の副業解禁はいつから始まりましたか?
A: 教員の副業解禁は、2022年4月1日から施行された地方公務員法および地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部改正により、原則として可能となりました。
Q: 地方公務員の副業解禁に関する総務省のガイドラインはどのような内容ですか?
A: 総務省は、地方公務員の副業について、原則として許可制とし、職務専念義務に支障がない範囲で、国等の利益を損なわないものに限定するガイドラインを策定しています。具体的な許可基準や手続きについても示されています。
Q: 消防士も副業は可能になりますか?
A: 消防士も地方公務員の一種であり、上記ガイドラインに沿って副業が原則可能となります。ただし、職務の性質上、許可される副業の種類には一定の制約がある場合があります。
Q: 宅建士の資格を持っている場合、副業しやすくなりますか?
A: 宅建士のような専門資格は、その専門性を活かせる副業(例:不動産関連のコンサルティングなど)として、許可を得やすい場合があります。ただし、こちらも本業に支障がないことが前提です。
Q: 教員や公務員が副業を始める際に、最も注意すべき点は何ですか?
A: 最も注意すべき点は、副業が本業の職務遂行に支障をきたさないことです。また、公務員としての信用を失墜させるような行為や、利益相反にあたる副業は厳しく制限されます。必ず所属機関の規定を確認し、許可を得る必要があります。
