概要: 企業年金の受給開始年齢は、早くも遅くもできます。どの年齢から受け取ると、将来受け取れる年金額がどのように変わるのか、具体的な年齢や受給形態と合わせて解説します。
企業年金、受給開始年齢で受け取る金額はどう変わる?
企業年金は、退職後の生活を支える大切な柱の一つです。しかし、いつから受け取り始めるかによって、将来受け取る年金額が大きく変わることをご存じでしょうか。
この記事では、企業年金の受給開始年齢による金額の変動メカニズムや、繰り上げ・繰り下げ受給のメリット・デメリットを具体的に解説します。ご自身のライフプランに合った最適な選択をするために、ぜひ参考にしてください。
企業年金、いつから受け取れる?基本をおさらい
公的年金との関係性
公的年金である国民年金や厚生年金は、原則65歳から受給開始となります。企業年金の多くも、この公的年金の受給開始年齢と連動する形で設計されています。
公的年金と同様に、企業年金も受給開始を早めれば減額され、遅らせれば増額されるのが一般的です。将来の生活設計において、この連動性を理解することは非常に重要です。
企業年金の種類と受給年齢
企業年金には確定給付企業年金(DB)や確定拠出年金(DC)など複数の種類があります。DBでは規約で繰り下げ受給の増額率を定められますが、繰り上げ制度はありません。
一方、DCは60歳から75歳までの間で自由に受給開始時期を選択可能です。企業年金連合会からの年金も、国の老齢厚生年金に準じて繰り下げ受給が可能だったり、通算企業年金では60歳からの繰り上げ減額ができたりと、制度ごとに柔軟性が異なります。
繰り上げ・繰り下げの基本ルール
公的年金に準じたルールとして、企業年金でも繰り上げ受給は1ヶ月あたり0.4%(※)の減額が、繰り下げ受給は1ヶ月あたり0.7%の増額が適用されることが多いです。この減額・増額率は生涯にわたって影響します。
一度繰り上げ受給の手続きをすると取り消しはできません。ご自身の企業年金制度の規約を必ず確認し、将来設計と照らし合わせて慎重に検討することが大切です。
55歳・60歳から受け取る場合のシミュレーション
繰り上げ受給の仕組みと減額率
多くの企業年金制度では、公的年金と同様に、本来の受給開始年齢(一般的には65歳)よりも早く年金を受け取る「繰り上げ受給」が可能です。しかし、この選択をすると、年金額は生涯にわたって減額されます。
公的年金では、原則として1ヶ月あたり0.4%減額されます。この減額率は、企業年金にも準用されるケースが多いため、早期受給を検討する際は注意が必要です。
早期受給のメリット・デメリット
早期受給の最大のメリットは、必要に応じて早い段階で年金を受け取れることで、資金計画に柔軟性を持たせられる点です。例えば、早期退職後の生活費や病気・介護などの緊急費用に充てることができます。
一方で最大のデメリットは、年金額が生涯にわたり減額され続けることです。例えば60歳から繰り上げると、65歳までの5年間(60ヶ月)で、最大24%(0.4%×60ヶ月)も年金額が減ってしまいます。
具体的な減額事例
仮に、本来65歳から月額10万円受け取れるはずの企業年金を60歳から繰り上げて受け取る場合を考えてみましょう。60ヶ月の繰り上げ期間に対し、月0.4%の減額率が適用されると、年金額は約24%減額されます。
その結果、月々の受給額は7.6万円にまで減少します。この減額された年金額は、その後何十年も続くため、総受給額に与える影響は非常に大きいことを理解しておく必要があります。
63歳・65歳から受け取るメリット・デメリット
基準年齢での受給
公的年金の本来の受給開始年齢は65歳であり、多くの企業年金制度もこの年齢を基準としています。65歳から受け取り始めることで、年金が減額されることなく、計画通りの金額を受給することが可能です。
これは、年金額を最大化するための基本的な選択肢と言えるでしょう。定年が65歳である企業に勤めている方にとっては、働き続けた後に年金を受け取る自然な流れとなります。
一般的な受給開始年齢の選択
近年は60代前半でリタイアを検討する方も増えています。公的年金では、65歳より早く受給する「繰り上げ受給」を選択した場合、1ヶ月あたり0.4%減額されますが、63歳から受け取る選択肢も存在します。
この場合、24ヶ月の繰り上げとなり、年金額は9.6%減額されます。一部減額を受け入れつつ、早期に年金生活に入ることを可能にする選択肢ですが、その影響を考慮する必要があります。
ライフプランとの兼ね合い
企業年金の受給開始年齢は、ご自身のライフプランと密接に関わってきます。65歳まで働くことで、年金以外の収入を確保できるだけでなく、年金受給開始を遅らせて増額させる選択肢も広がるでしょう。
健康状態、家族構成、退職金や他の資産の有無などを総合的に判断し、最も自分に合った受給開始時期を見極めることが、豊かな老後生活を送るための鍵となります。
65歳以降・70歳以降に繰り下げるとどうなる?
繰り下げ受給の仕組みと増額率
企業年金も公的年金と同様に、65歳以降に年金の受給開始を遅らせる「繰り下げ受給」を選択できます。この場合、1ヶ月あたり0.7%の増額率が適用されるのが一般的です。
年金を受け取るのを待つ期間が長ければ長いほど、将来の年金額が増えていく仕組みであり、長期的な視点で見ると非常に有利な選択となりえます。
長期的なメリットと注意点
繰り下げ受給の最大のメリットは、生涯にわたる年金額の増加です。特に長生きするほど総受給額が増え、長寿リスクへの有効な備えとなります。年金額が40%以上増える可能性もあります。
ただし、繰り下げ期間中は年金を受け取れないため、その間の生活費を自分で賄う必要があります。また、繰り下げ期間によっては加給年金などが支給されなくなるケースや、遺族年金・障害年金を受給している場合は繰り下げができないケースがあるため注意が必要です。
公的年金と企業年金の連携
公的年金の繰り下げ受給は、70歳までで42%増、75歳まででは最大84%増額されます。企業年金連合会の基本年金や代行年金も、国の老齢厚生年金と連動しており、この増額率に準じて最大84%増額される可能性があります。
例えば、月額10万円の年金を75歳まで繰り下げると、月額18.4万円を受け取れる計算になります。大きな増額が期待できるため、健康状態や貯蓄額などを考慮し、検討する価値は十分にあります。
「20年保証終身」とは?企業年金の受給形態を理解しよう
受給形態の種類
企業年金は、年金として定期的に受け取る以外に、一時金としてまとめて受け取る、あるいはその両方を併用する選択肢があります。年金として受け取る場合も、様々な形態があるため、ご自身のライフプランに合ったものを選ぶことが重要です。
主な形態として、生涯にわたって受け取る「終身年金」や、一定期間だけ受け取る「有期年金」があります。
終身年金と有期年金
終身年金は、受給者が生きている限り年金が支払われるため、長生きリスクに備えたい方に適しています。もし長生きした場合、総受給額は非常に大きくなる可能性があります。
有期年金は、例えば10年や15年といった、あらかじめ決められた期間だけ年金が支払われる形態です。退職後の一定期間に集中して資金を確保したい場合などに有効な選択肢となります。
保証期間付終身年金とは
「20年保証終身」とは、終身年金の一種で、受給開始から一定の保証期間(この場合は20年間)が設けられているものです。もし保証期間中に受給者が亡くなった場合でも、残りの期間は遺族が年金を受け取ることができます。
これにより、長生きリスクへの備えと、万一の際の遺族保障の両方を兼ね備えることができます。ご自身の家族構成や資産状況、将来への不安などを考慮し、最適な受給形態を選びましょう。不明な点は、勤務先や専門家に相談することをお勧めします。
まとめ
よくある質問
Q: 企業年金はいつから受け取れますか?
A: 一般的に、企業年金の受給開始時期は60歳または65歳から選べる場合が多いですが、制度によっては55歳から、あるいは75歳まで繰り下げられる場合もあります。具体的な開始年齢は、お勤めの会社の制度によって異なります。
Q: 55歳から企業年金を受け取ることは可能ですか?
A: 会社によっては、55歳から受給開始を選択できる企業年金制度も存在します。ただし、早く受け取る場合は、その分1回あたりの受給額は少なくなります。
Q: 65歳から受け取るのと、60歳から受け取るのでは、金額はどれくらい変わりますか?
A: 一般的に、60歳から受け取るよりも65歳から受け取る方が、据え置かれた期間の利息や運用益が加算されるため、1回あたりの受給額は増額されます。具体的な増額率は制度によって異なります。
Q: 企業年金を70歳や75歳まで繰り下げると、どのくらい増えますか?
A: 65歳から繰り下げる場合も同様に、繰り下げた期間に応じて受給額は増額されます。70歳や75歳まで繰り下げると、その分受給総額も多くなる可能性があります。ただし、長生きしないと元が取れない可能性も考慮が必要です。
Q: 「20年保証終身」とはどのような年金ですか?
A: 「20年保証終身」とは、契約者が亡くなった場合でも、最低20年間は年金が支払われる終身年金のことです。例えば、受給開始から15年で亡くなった場合でも、残りの5年間は遺族に年金が支払われます。これにより、長生きしても安心、万が一早く亡くなっても家族に一定の保障が残るというメリットがあります。