通勤にかかる費用、会社から手当として支給されている「通勤手当」。あなたはご自身の通勤手当について、その仕組みや非課税になる上限額をきちんと理解していますか?

意外と知られていない非課税限度額のルールや、社会保険料への影響、さらには2025年、2026年に予定されている法改正まで、最新情報を交えながら徹底的に解説します。

この記事を読めば、あなたの通勤手当がいくらまで非課税になるのか、そして今後どのように変わっていくのかが丸わかり。賢く通勤手当を活用するためのヒントもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください!

そもそも通勤手当とは?基本を理解しよう

通勤手当の基本的な定義と目的

通勤手当とは、従業員が自宅から会社へ通勤するためにかかる交通費を、会社が支給する手当のことです。

多くの企業では福利厚生の一環として導入されており、従業員の経済的負担を軽減し、通勤の利便性を高めることを目的としています。

所得税法上、一定額までは所得税が非課税となる特別な扱いが設けられているのが大きな特徴です。この非課税措置によって、従業員の手取り額が増える効果があります。

会社の就業規則や賃金規程によって支給条件や上限額が定められているため、ご自身の会社の規定を確認することが重要です。

「交通費」との決定的な違い

通勤手当と混同されやすいものに「交通費」がありますが、この二つには明確な違いがあります。

通勤手当が「自宅と勤務先の間の移動費用」であるのに対し、交通費は「営業活動や出張など、業務遂行のために発生した移動費用」を指します。

例えば、顧客先への訪問や研修のための移動にかかる費用は交通費として精算され、これは通常、全額が非課税となります。

税務上の取り扱いが大きく異なるため、両者を混同しないよう注意が必要です。特に経費精算の際には、どちらの費用に該当するのかを正しく区別して申請するようにしましょう。

意外と知らない?社会保険料への影響

「通勤手当は非課税だから、まるごと手取りが増える」と思われがちですが、実はそうではありません。

通勤手当は、所得税の計算上は非課税となりますが、社会保険料(健康保険、厚生年金保険など)の計算には含まれます。

社会保険料は、給与や各種手当を含めた「標準報酬月額」に基づいて算定されるため、通勤手当が多いほど、社会保険料も高くなる可能性があるのです。

これにより、将来受け取る年金額にも影響を与える可能性があるため、手当の総額だけでなく、社会保険料への影響も把握しておくことが大切です。

【金額別】知っておきたい通勤手当の相場

実は明確な相場がない理由

「通勤手当の相場はいくらですか?」という質問をよく耳にしますが、実は明確な全国平均を算出するのは難しいのが現状です。

その理由は、企業ごとの規模、業種、所在地、そして就業規則によって、支給条件が大きく異なるためです。

例えば、公共交通機関利用者に実費を支給する企業もあれば、距離に応じて定額を支給する企業、あるいは全従業員に一律で上限額を設けている企業もあります。

また、都心部と地方では交通費の物価水準が異なるため、一概に比較することはできません。ご自身の会社の規定を確認することが、まずは第一歩となります。

ほとんどの企業で支給されている実態

通勤手当に明確な相場はないものの、多くの企業で何らかの形で通勤費が支給されているのは事実です。

厚生労働省の調査(2020年)によると、「通勤手当など」を支給している企業の割合は、なんと92.3%と非常に高くなっています。

この数字からも、通勤手当が日本における企業福利厚生の非常に一般的な項目であることが伺えます。就職活動や転職活動の際には、基本給だけでなく、通勤手当の支給有無や上限額、支給条件も重要な確認ポイントとなるでしょう。

特に都心部での勤務を考えている方は、交通費が高額になる傾向があるため、通勤手当の条件が手取りに与える影響は大きいと言えます。

あなたの会社の通勤手当は適切?確認のポイント

あなたの会社の通勤手当は、本当にあなたの通勤実態に合っているでしょうか?そして、相場感から見て妥当な金額なのでしょうか?

まずは会社の就業規則や賃金規程を再度確認し、支給基準や上限額を正確に把握しましょう。公共交通機関を利用している場合、定期代が実費支給なのか、それとも上限額が設けられているのかを確認してください。

マイカー通勤の場合は、ガソリン代や駐車場代が含まれるか、または通勤距離に応じた定額支給になっているかをチェックしましょう。もし支給額が非課税限度額を超えている場合は、その超過分が課税対象となりますので、手取り額に影響が出ます。

定期的に自分の通勤ルートや交通費を見直し、会社の制度と照らし合わせて、最適な通勤手当を受け取れているかを確認する習慣をつけることが大切です。

通勤手当の非課税限度額とは?いくらまで税金がかからない?

所得税が非課税になる仕組み

通勤手当が「非課税」というのは、従業員が受け取る通勤手当のうち、一定の限度額までは給与所得と見なされず、所得税や住民税が課税されないという税法上の優遇措置のことです。

この仕組みは、通勤が業務に必要な費用であると認識され、従業員の経済的負担を軽減することを目的としています。

非課税の範囲内であれば、その金額分だけ手取り額が増える効果があります。しかし、この非課税限度額を超えて支給された部分は、給与所得として扱われ、課税対象となりますので注意が必要です。

国税庁によって定められたルールに基づいており、通勤手段や距離によって細かく基準が設定されています。

公共交通機関利用者向け:月15万円の壁

電車やバスなどの公共交通機関を利用して通勤する場合、1ヶ月あたりの非課税限度額は150,000円です。

この金額は、最も経済的かつ合理的な通勤経路の運賃に基づいて計算されます。例えば、複数の経路がある場合、最も安い定期代が非課税対象の基準となります。

もしあなたの定期代が1ヶ月15万円を超える場合、その超過分は給与所得として課税対象となります。新幹線通勤など、長距離の公共交通機関を利用する方は特にこの上限額に注意が必要です。

年間の通勤費が膨大になる場合でも、非課税の恩恵を受けられるのは月15万円までということを覚えておきましょう。

マイカー・自転車利用者向け:距離で変わる非課税限度額

マイカーや自転車、バイクなどの交通用具を利用して通勤する場合、非課税限度額は通勤距離に応じて細かく定められています。

以下の表は、2025年10月時点の非課税限度額です。片道2km未満の通勤は全額課税対象となる点に注意が必要です。

ガソリン代や自転車の消耗品代などがこの限度額の範囲内であれば非課税となります。

また、公共交通機関と交通用具を併用する場合は、それぞれの合計額が月150,000円まで非課税となります。</

通勤距離(片道) 1ヶ月あたりの非課税限度額(2025年10月時点)
2km未満 全額課税
2km以上10km未満 4,200円
10km以上15km未満 7,100円
15km以上25km未満 12,900円
25km以上35km未満 18,700円
35km以上45km未満 24,400円
45km以上55km未満 28,000円
55km以上 31,600円

【ケース別】通勤手当の損得をシミュレーション

非課税限度額を超えるとどうなる?

通勤手当が非課税限度額を超過した場合、その超過分は通常の「給与所得」と見なされます。これは非常に重要なポイントです。

超過した金額に対しては、所得税や住民税が課税されるだけでなく、社会保険料の計算にも含まれることになります。

つまり、非課税の範囲内に収まっていれば全額が手取りとして受け取れるものが、超過分は税金や社会保険料が差し引かれてしまうため、手取り額が減少し、実質的な負担が増えることになります。

特に高額な通勤費がかかる方は、この超過額が年間の手取りに与える影響を正しく理解しておく必要があります。

電車・バス通勤者のケーススタディ

具体的な例で見てみましょう。

ケース1:月12万円の定期代を支給されているAさんの場合
公共交通機関の非課税限度額は月15万円なので、12万円は限度額内です。このため、通勤手当の全額12万円が非課税となり、所得税や住民税はかかりません。ただし、社会保険料の計算には含まれます。

ケース2:月16万円の定期代を支給されているBさんの場合
月15万円の非課税限度額を超える1万円が課税対象となります。この1万円は給与所得と見なされ、所得税や住民税が課税されます。さらに、この1万円も社会保険料の計算に含まれるため、手取りは想定よりも少なくなる可能性があります。会社から16万円全額支給されたとしても、その1万円分は税金がかかることに注意が必要です。

マイカー通勤者のリアルな損得計算

マイカー通勤の場合もシミュレーションしてみましょう。

ケース1:片道12kmの通勤で、実費のガソリン代が月5,000円の場合
通勤距離10km以上15km未満の非課税限度額は7,100円です。実費5,000円は限度額内なので、全額非課税となります。

ケース2:片道30kmの通勤で、ガソリン代が月20,000円、駐車場代が月10,000円の場合
通勤距離25km以上35km未満の非課税限度額は18,700円です。ガソリン代20,000円のうち、18,700円が非課税となり、残りの1,300円が課税対象となります。さらに、2025年10月時点では駐車場代10,000円は全額課税対象となります。このケースでは、ガソリン代の超過分と駐車場代が課税されるため、手取りに大きく影響します。ただし、2026年4月からは駐車場代の一部が非課税となる新制度が創設予定ですので、後述の解説もぜひご覧ください。

通勤手当を最大化するための賢い裏技

2025年・2026年に控える通勤手当制度の改正

通勤手当の非課税限度額は、従業員の通勤実態や経済状況に合わせて見直されることがあります。近年、特にマイカー通勤者にとって朗報となる改正が予定されています。

2025年8月7日の人事院勧告を受け、2025年4月1日以降、自動車などの交通用具使用者に対する通勤手当の額の引き上げが勧告されました。

具体的には、既存の「60km以上」の区分において、非課税限度額が200円~7,100円程度引き上げられる予定です。さらに、2026年4月からは、通勤距離「65km以上~100km以上」の新しい区分が設けられ、上限が66,400円に引き上げられる見込みです。これらの改正は、特に長距離マイカー通勤者にとって大きなメリットとなり、手取り額の増加に繋がるでしょう。

駐車場代も非課税に?新制度をフル活用しよう

マイカー通勤者にとってさらに注目すべき改正が、2026年4月から創設される「駐車場代などの実費を最大月5,000円まで非課税」とする新制度です。

これまで駐車場代は原則として全額課税対象となっていましたが、この新制度によって、通勤ルート上でやむを得ず利用する駐車場代が一部非課税となるため、実質的な負担を軽減できます。

これは通勤手当の課税ルールにおける大きな変更点であり、マイカー通勤者の多くがその恩恵を受けられる可能性があります。もし現在、通勤のために有料駐車場を利用している場合は、2026年4月からの制度適用を意識し、会社の人事担当者と相談してみることをお勧めします。

この改正により、通勤手当全体の非課税枠をより有効活用できるようになるでしょう。

賢く申請!通勤手当を最大限に受け取るためのヒント

通勤手当を最大限に受け取るためには、以下のヒントを参考にしましょう。

  1. 会社の規定を正確に把握する: まずは自社の就業規則や賃金規程で、通勤手当の支給条件や上限額をしっかりと確認しましょう。
  2. 合理的かつ経済的な経路を申請: 公共交通機関を利用する場合は、最も合理的で経済的な経路(定期代が最も安い経路)で申請しているか見直しましょう。
  3. 通勤距離を正確に申告: マイカー通勤の場合、通勤距離が非課税限度額に直結します。引越しなどで通勤距離が変わった場合は速やかに会社に報告し、正確な距離で申請しましょう。
  4. 法改正情報を常にチェック: 国税庁のウェブサイトなどで、通勤手当に関する最新の法改正情報を定期的に確認することが重要です。2025年、2026年の改正は特に見逃せません。
  5. 交通手段の見直し: 公共交通機関とマイカー、自転車の併用など、複数の交通手段を組み合わせることで、非課税限度額を効率的に活用できる可能性があります。

これらのポイントを押さえることで、あなたは通勤手当を賢く受け取り、手取りを最大化できるはずです。