結婚を控えた皆さん、または職場の同僚が結婚すると聞いたとき、「結婚休暇って、どんな制度なんだろう?」「給料は出るのかな?」といった疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。

結婚休暇は、人生の大きな節目である結婚を従業員が安心して迎えられるよう、多くの企業で導入されている福利厚生の一つです。

しかし、その内容や取得条件は会社によって異なり、特に正社員と契約社員、派遣社員といった働き方の違いによっても、利用できる制度に差がある場合があります。

この記事では、結婚休暇の基本的な知識から、給与の扱い、注意すべきポイントまで、皆さんの疑問を解消できるよう分かりやすく解説していきます。

後悔しない結婚休暇の取得のために、ぜひ最後までお読みください。

  1. 結婚休暇とは? 基本的な制度と取得条件
    1. 結婚休暇の定義と法的根拠
    2. 一般的な取得日数と具体例
    3. 取得要件と注意点
  2. 結婚休暇中の給与はどうなる? 勤続年数や社員区分で変わる?
    1. 結婚休暇の給与は会社次第?有給・無給の判断基準
    2. 正社員と契約社員の給与待遇格差と最高裁判決の影響
    3. 結婚祝い金など、無給の場合の代替福利厚生
  3. 結婚休暇が「欠勤扱い」になるケースとは? 差別や不利益の可能性
    1. 企業が結婚休暇を認めない、あるいは無給とする背景
    2. 不合理な待遇差と法的リスク
    3. 結婚休暇が欠勤扱いになった場合のデメリット
  4. 派遣社員(スタッフサービス、テンプスタッフ、テクノプロなど)は結婚休暇を取得できる?
    1. 派遣社員における結婚休暇制度の有無
    2. 派遣元企業と派遣先企業の役割と確認方法
    3. 「同一労働同一賃金」の原則と派遣社員への適用
  5. 結婚休暇をスムーズに取得するためのポイント
    1. 就業規則の確認と事前相談の重要性
    2. 取得時期と分割取得に関する交渉術
    3. 会社への制度改善提案とモチベーション向上効果
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 結婚休暇の取得で給与は支払われますか?
    2. Q: 結婚休暇が「欠勤扱い」になることはありますか?
    3. Q: 正社員と契約社員で結婚休暇の待遇に違いはありますか?
    4. Q: 派遣社員(スタッフサービス、テンプスタッフ、テクノプロなど)でも結婚休暇は取得できますか?
    5. Q: 結婚休暇を申請する際に気をつけるべきことはありますか?

結婚休暇とは? 基本的な制度と取得条件

結婚休暇の定義と法的根拠

結婚休暇とは、従業員が結婚する際に取得できる特別な休暇のことで、新しい人生のスタートをサポートするための企業の福利厚生制度として導入されています。労働基準法で定められた「法定休暇」(例:年次有給休暇、産前産後休業)とは異なり、企業が独自に設ける「法定外休暇(特別休暇)」に分類されます。

そのため、結婚休暇の有無、日数、有給・無給の別、取得条件などは、各企業が自由に就業規則で定めることができます。これは、企業が従業員のモチベーション向上や定着率の向上を目指し、自社の裁量で提供するサービスの一部と捉えられます。

つまり、すべての会社に結婚休暇が義務付けられているわけではなく、その内容は会社ごとに大きく異なる可能性があるという点を理解しておくことが重要です。

一般的な取得日数と具体例

結婚休暇の日数は企業によって様々ですが、一般的には従業員本人の結婚の場合、5日間程度を付与する企業が多いようです。従業員の子どもの結婚の場合には、2~3日間程度の休暇が認められることが一般的です。

中には、より手厚い制度を設けている企業もあり、7日間の休暇を付与するところや、土日祝日と合わせて9連休の取得を可能にしているケースも見受けられます。例えば、入籍と新婚旅行を兼ねて長期休暇を取りたいという従業員のニーズに応えるため、柔軟な制度を導入している企業もあります。

これらの日数はあくまで一般的な目安であり、企業によっては制度自体がない場合や、日数がこれよりも少ない、あるいは多い場合もありますので、必ずご自身の会社の就業規則を確認しましょう。

取得要件と注意点

結婚休暇を取得する際には、いくつかの要件が設定されていることがほとんどです。最も一般的なのは、取得時期に関する規定で、入籍日や挙式日から「1年以内」や「結婚式後1ヶ月以内」といった期限が設けられていることが多いです。

この期間を過ぎてしまうと取得できなくなるケースもあるため、自身の結婚計画に合わせて、早めに会社の規定を確認し、上司や人事に相談することが大切です。また、結婚準備や新婚旅行などで複数回に分けて休暇を取りたいという従業員の希望に応えるため、休暇の「分割取得」を認める制度を設けている企業も増えています。

その他、入社時期によっては「入社後6ヶ月経過後」といった取得要件を設けている企業もあります。トラブルを避けるためにも、不明な点があれば必ず就業規則を確認し、会社の人事担当者に問い合わせるようにしましょう。

結婚休暇中の給与はどうなる? 勤続年数や社員区分で変わる?

結婚休暇の給与は会社次第?有給・無給の判断基準

結婚休暇が法定外休暇であるため、休暇中の給与の扱いについても、企業が自由に決定できます。つまり、結婚休暇が有給扱いとなるか、それとも無給扱いとなるかは、完全に会社の判断に委ねられているのです。

多くの企業では、従業員の福利厚生を手厚くするため、結婚休暇を有給扱いとしているケースが多いですが、中には無給としている会社も存在します。無給の場合でも、結婚祝い金として一時金を支給するなど、何らかの形で従業員をねぎらう制度を設けている企業もあります。

公務員の場合、国家公務員は5日間の結婚休暇を有給で取得できると規定されています。このように、給与の扱いは企業規模や業種、公的な機関か民間企業かによっても大きく異なるため、自身の会社の就業規則で明確に確認することが最も確実です。

正社員と契約社員の給与待遇格差と最高裁判決の影響

結婚休暇は法定外休暇であるため、企業が就業規則で定めることで、正社員だけでなく契約社員にも付与することが可能です。実際に、正社員と同じように契約社員にも結婚休暇を付与している企業も存在します。

しかし、企業によっては正社員のみを対象とし、契約社員には結婚休暇を付与しない、あるいは無給とするなど、待遇に差を設けている場合もあります。ここで注目すべきは、2020年の最高裁判決です。

この判決では、正社員と契約社員の間で、扶養手当や有給休暇(夏期休暇、冬期休暇、病気休暇など)の付与に不合理な格差があることは「不合理である」と判断されました。この判決は結婚休暇に直接適用されるものではありませんが、契約社員に対しても、正社員との間に不合理な待遇差を設けることには、慎重であるべきであるという社会的な流れを示唆しています。企業は、正社員と非正規社員の待遇差について、合理的根拠があるかどうかを常に検証する姿勢が求められています。

結婚祝い金など、無給の場合の代替福利厚生

もし結婚休暇が無給扱いとなる企業に勤務している場合でも、全く恩恵がないわけではありません。多くの企業では、結婚休暇が無給であっても、従業員の結婚を祝う気持ちとして「結婚祝い金」を支給する制度を設けています。

この結婚祝い金は、企業の規模や規定によって金額は異なりますが、従業員の新しい生活のスタートを経済的にサポートする役割を果たします。結婚休暇が無給である代わりに、このような一時金が支給されることで、実質的な福利厚生の一環として機能していると言えるでしょう。また、企業によっては、結婚を機に利用できる住宅手当や財形貯蓄制度など、他の福利厚生が充実している場合もあります。

結婚休暇の有無や給与の扱いだけでなく、企業全体の福利厚生制度についても確認することで、自身の結婚に際して利用できる制度を最大限に活用することができます。

結婚休暇が「欠勤扱い」になるケースとは? 差別や不利益の可能性

企業が結婚休暇を認めない、あるいは無給とする背景

結婚休暇は法定外休暇であるため、企業が就業規則で制度を設けていない場合は、残念ながら休暇自体を取得することができません。この場合、結婚のために会社を休むと、それは「欠勤」として扱われることになります。企業が結婚休暇を設けない背景には、人件費の削減や、福利厚生制度の運用にかかる管理コスト、あるいは従業員間の公平性の確保といった様々な理由が考えられます。

また、制度はあっても「無給」とする場合も、同様に企業の経営判断に基づいています。特に中小企業では、大企業のような手厚い福利厚生制度を設けることが経営上の負担となるケースも少なくありません。しかし、従業員にとっては、人生の大きなイベントである結婚に際して、休暇が取得できない、あるいは給与が減額されることは大きな不利益となり得ます。

このため、企業側には、制度の有無や内容を従業員に明確に周知し、理解を求める努力が求められます。

不合理な待遇差と法的リスク

特に、正社員には結婚休暇があるのに、契約社員やパート社員など非正規雇用の従業員には結婚休暇がない、あるいは無給であるといった「不合理な待遇差」が生じている場合、法的リスクを伴う可能性があります。

前述の2020年の最高裁判決は、通勤手当や賞与、病気休暇といった「不合理な格差」を禁止する「同一労働同一賃金」の原則の重要性を示しました。結婚休暇は直接的な対象ではないものの、この判決の精神は、企業が従業員の働き方に関わらず、同等の労働に対して不合理な差を設けることへの厳しい目を向けるものです。

企業が結婚休暇の付与において、合理的な理由なく正社員と非正規社員の間で著しい待遇差を設けた場合、従業員からの訴えや労働基準監督署からの指導を受けるリスクがあるため、慎重な対応が求められます。企業は、福利厚生制度の運用にあたり、公平性や透明性を確保することが重要です。

結婚休暇が欠勤扱いになった場合のデメリット

もし結婚のために取得した休暇が「欠勤扱い」となってしまった場合、従業員にはいくつかのデメリットが生じます。最も直接的なのは、その分の給与が支払われないことによる収入減です。月給制の場合でも、欠勤控除として給与から差し引かれることになります。

また、欠勤が多いと、賞与(ボーナス)の査定や昇給、昇進の評価に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。企業によっては、欠勤日数に応じて賞与が減額されたり、人事評価が下がる規定を設けている場合があるためです。

さらに、多くの企業では、年次有給休暇の付与日数を決定する際に「出勤率」を要件としています。欠勤扱いになった日が多いと、その後の年次有給休暇の付与日数が減らされる可能性も出てきます。結婚という人生の喜ばしいイベントが、将来の不利益に繋がらないよう、自身の会社の就業規則をしっかりと確認し、疑問点があれば早めに確認することが肝心です。

派遣社員(スタッフサービス、テンプスタッフ、テクノプロなど)は結婚休暇を取得できる?

派遣社員における結婚休暇制度の有無

派遣社員の場合、結婚休暇の有無やその内容は、派遣先企業ではなく、自身が雇用契約を結んでいる派遣元企業の就業規則によって定められます。例えば、スタッフサービス、テンプスタッフ、テクノプロといった大手派遣会社では、福利厚生として結婚休暇制度を設けている場合があります。

しかし、すべての派遣元企業が結婚休暇を提供しているわけではなく、また制度があったとしても、日数や有給・無給の扱いは派遣会社によって異なります。派遣社員の皆さんは、派遣先で働く前に、または結婚の予定がある時点で、ご自身の派遣会社(派遣元企業)の福利厚生制度について確認することが非常に重要です。

派遣元企業の担当者に直接問い合わせるか、派遣社員向けのポータルサイトや就業規則を確認することで、具体的な情報を得ることができます。

派遣元企業と派遣先企業の役割と確認方法

派遣社員にとって、自身の福利厚生制度を明確に把握することは非常に重要です。派遣社員は、派遣元企業と雇用契約を結び、派遣先企業で業務を行うという特殊な雇用形態であるため、福利厚生の適用主体が一般の正社員とは異なります。

結婚休暇をはじめとする特別休暇は、原則として派遣元企業の制度が適用されます。そのため、結婚休暇の取得を検討する際は、まずご自身の派遣元企業の担当営業や、登録している派遣会社の人事・福利厚生窓口に確認を取りましょう。

具体的な日数、有給・無給の別、取得条件(入籍後〇ヶ月以内など)、必要な申請書類などを詳細に確認しておくことで、スムーズな取得に繋がります。派遣先の企業に結婚休暇を問い合わせても、それは派遣先の正社員向けの制度であり、派遣社員には適用されないのが原則であるため、注意が必要です。

「同一労働同一賃金」の原則と派遣社員への適用

2020年4月1日から施行された「同一労働同一賃金」の原則は、派遣社員の待遇にも大きな影響を与えています。この原則は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差をなくすことを目的としており、通勤手当、賞与、福利厚生施設利用など、様々な項目で同等の労働には同等の賃金を支払うべきであると定めています。

結婚休暇は法定外休暇であり、直接的にこの原則の対象となるかは議論の余地がありますが、社会通念上、正規・非正規問わず、結婚というライフイベントを理由とする休暇について、不合理な格差を設けることは望ましくないという考え方が広がっています。

多くの派遣会社では、この原則に則り、派遣社員に対しても正社員に準じた福利厚生制度を整備する動きが加速しています。もしご自身の派遣元企業に結婚休暇制度がない場合や、不合理な差を感じる場合は、一度派遣元企業に相談してみる価値はあるでしょう。社会情勢の変化に伴い、制度が見直されている可能性も十分にあります。

結婚休暇をスムーズに取得するためのポイント

就業規則の確認と事前相談の重要性

結婚休暇をスムーズに取得するための最初のステップは、何よりも会社の就業規則を徹底的に確認することです。就業規則には、結婚休暇の有無、取得日数、有給・無給の別、取得条件(例:入籍日・挙式日から1年以内、入社後6ヶ月経過など)、申請手続きや必要書類といった詳細が明記されています。

これらの情報を事前に把握しておくことで、「思っていたのと違った」というトラブルを避けることができます。次に重要なのが、上司や人事担当者への早期の相談です。結婚の具体的な予定が決まったら、なるべく早い段階で「いつ頃、結婚休暇の取得を希望しているか」を伝え、業務調整の相談を行いましょう。

これにより、部署内での業務の引き継ぎや調整が円滑に進み、周囲に迷惑をかけることなく、安心して休暇を取得できるようになります。企業側も、事前に相談があることで、人員配置や業務計画を立てやすくなります。

取得時期と分割取得に関する交渉術

結婚休暇は、新婚旅行や結婚式の準備など、様々な用途で活用したいと考える方が多いでしょう。もし会社の規定で取得時期に幅がある場合や、分割取得が認められている場合は、自身の希望を明確に伝え、交渉することがポイントです。

例えば、「入籍後に一度、式の準備のために数日取得し、後日新婚旅行のために残りの日数を取得したい」といった具体的な計画を立て、上司に相談しましょう。その際、なぜ分割取得が必要なのか、どのような業務調整を行う予定なのかを具体的に説明することで、理解を得やすくなります。

また、会社によっては、規定に明記されていなくても、個別の事情を考慮して柔軟な対応をしてくれるケースもあります。まずは相談してみることが大切です。ただし、会社の業務に支障が出ないよう、代替案を提示するなど、協力的な姿勢を見せることも重要です。

会社への制度改善提案とモチベーション向上効果

もしご自身の会社に結婚休暇制度がなかったり、内容が不十分だと感じたりする場合は、会社に対して制度改善を提案することも一つの選択肢です。結婚休暇は、従業員の結婚を祝い、新しい生活を応援することで、従業員のモチベーション向上や企業へのエンゲージメント強化、ひいては定着率の向上に繋がる重要な福利厚生制度だからです。

提案する際には、他社の事例や社会的な動向(例:同一労働同一賃金の原則)などを参考にし、具体的なメリットを伝えることが効果的です。例えば、制度導入による従業員満足度向上や採用力強化といった視点から、経営層にアピールできるでしょう。

企業側も、従業員の声を積極的に聞き入れ、福利厚生制度を時代に合わせて見直していくことで、より魅力的な職場環境を構築することができます。従業員一人ひとりが制度を理解し、活用することで、個人にとっても会社にとっても良い結果に繋がるはずです。