NTTグループ各社の育児休業取得状況とは?

驚異的な男性育休取得率の背景

NTTグループは、男性育児休業取得率で目覚ましい成果を上げています。

2023年度には128.5%、2024年度には目標を上回る120%という高い数値を達成しました。これは単なる制度整備に留まらず、職場風土の改革と意識醸成に力を入れた結果です。

育休を「当たり前」にする企業文化への変革が、この驚異的な数字を支えています。

職場風土を変える具体的な施策

グループ各社は、育休取得を促すため多様な施策を展開しています。

全社員向けのオンラインD&Iセミナーでは、育休経験者の体験談を共有し、心理的障壁の低下を図っています。NTT東日本では「Co-Charge+」コミュニティを通じて、育児期社員の交流と情報交換を促進。

さらに、育児中の立場を疑似体験できるVRサービスを開発するなど、ユニークな取り組みで相互理解を深めています。

各社独自の充実した支援制度

NTTグループは、共通の目標を持ちながらも各社独自の制度を充実させています。

NTTインターネットでは、子が3歳になるまでの育児休職や、小学校3年生までの時短勤務(4・5・6時間選択可)が男性社員も利用可能です。

NTTデータでは、女性社員の育児休職からの復職率が99.5%(2023年度実績)と高い水準を維持。グループ全体で、社員が安心して育児と仕事の両立ができるよう、きめ細やかな支援体制を築いています。

男性育児休業取得を推進する企業事例

トップランナー企業の取り組み

男性育児休業取得率が高い企業ランキングでは、髙島屋が3年平均取得率180.2%で1位、NTTドコモが168.0%で2位、NTT西日本が136.8%(2020年度以降3年平均)で1位となっています。

これらの企業は、出生時育休や育休と有給休暇を組み合わせて取得できる制度、男性社員本人だけでなく所属組織長への制度案内メール送付など、多角的なアプローチで取得を促進しています。

単なる制度提供に留まらない、きめ細やかなサポートが特徴です。

業種別に見る取得率の傾向

2023年3月期上場企業の男性育児休業取得率の平均は52.2%ですが、業種によっては大きな差が見られます。

特に金融・保険業は82.7%と非常に高い水準を記録しており、ホワイトカラー中心の業務形態やデジタル化の進展が、育休取得しやすい環境に繋がっていると考えられます。

業界ごとの特性に応じた柔軟な制度設計と運用が、取得率向上の鍵を握っています。

制度拡充と環境整備のポイント

育児休業取得を促進するには、法定基準以上の手厚い制度拡充が不可欠です。

出生時育休や育休期間の延長、配偶者出産休暇制度の導入などが挙げられます。加えて、取得者のキャリアパスへの配慮、社内外のロールモデル紹介、育休取得促進セミナーの実施など、取得しやすい職場環境を整備することが重要です。

制度と運用の両面からアプローチすることで、制度の実効性は高まります。

IT・製造業における育児休業の現状

IT企業の先進的な取り組み

NTTグループの事例が示すように、IT企業はデジタル技術を駆使した先進的な育休支援を展開しています。

オンラインD&IセミナーやVR体験など、IT企業ならではのツール活用が特徴です。比較的フレキシブルな働き方が浸透しやすいIT業界では、育休取得への心理的障壁も低く、技術革新が働き方改革を強く後押ししていると言えるでしょう。

これにより、育児と仕事の両立を支える新たな方法が生まれています。

製造業の育休取得を支える工夫

製造業では、現場業務やシフト制など特有の課題がありますが、それを乗り越えるための工夫が見られます。

計画的な人員配置、多能工化による業務カバー、マニュアル整備、代替要員の育成などが挙げられます。業務の属人性を減らし、チーム全体で業務をカバーできる体制を築くことが、育休取得を可能にする重要なポイントとなっています。

これにより、安心して育休を取得できる環境が整えられています。

業界横断での育休取得推進の課題

ITや金融・保険業が高い取得率を示す一方で、2023年3月期上場企業の全産業平均はまだ52.2%に留まります。

中小企業における制度整備の遅れや、代替要員の確保、そして男性育休に対する固定観念の根深さなど、業界を横断する共通の課題も存在します。育休取得を社会全体で「当たり前」にするには、さらなる意識改革と支援が必要です。

多様な働き方を支えるための継続的な努力が求められます。

多様な働き方を支える企業の取り組み

育休を「当たり前」にするための意識改革

企業が育児休業取得を推進する上で最も重要なのは、職場風土の醸成です。

「男性育休は特別なことではなく、誰もが選択できる当たり前の制度」という意識を組織全体で共有することが不可欠。そのためには、経営層や管理職が率先して意識改革を行い、社員が安心して育休について相談できる心理的に安全な環境を築くことが求められます。

この意識改革が、育休取得の大きな推進力となります。

従業員エンゲージメントを高める情報発信

育休に関する情報発信も、従業員エンゲージメント向上に繋がる重要な要素です。

育休取得に関するハンドブックや動画の作成・配信、社内報での積極的な情報公開、マスコットキャラクターの活用などを通じて、制度の認知度を高めるだけでなく、育休取得に対するポジティブなイメージを醸成します。

これにより、社員は制度をより利用しやすくなります。

長期的なキャリア形成を見据えた支援

企業は育休取得が社員のキャリアの停滞ではなく、成長の機会となるよう支援すべきです。

育休取得者のキャリアパスへの配慮はもちろん、復職支援、継続的な面談、復帰後の柔軟な働き方のオプション提供(時短勤務、リモートワークなど)が重要。社員が育休後も安心して働き続け、長期的なキャリアを築けるようサポートする姿勢が信頼を生みます。

これにより、社員のエンゲージメントと定着率が向上します。

育児休業取得を成功させるためのポイント

事前の情報収集と計画立案

育休取得を成功させるには、事前の準備が鍵となります。

まず自社の育児休業制度を深く理解し、申請手続きや給付金制度について確認しましょう。そして、上司や同僚と早期から連携を取り、業務の引き継ぎ計画を綿密に立てることが不可欠です。

具体的な育休期間や復帰後の働き方も明確にし、周囲と共有することで円滑な取得に繋がります。

社内外のサポートを活用する

育休中は、一人で全てを抱え込まず、利用できるサポートは積極的に活用しましょう。

社内の育休経験者コミュニティやメンター制度を活用し、生の声を聞くことは非常に有益です。また、公的な子育て支援サービスや地域の情報、そして最も身近な存在である配偶者との協力体制も重要となります。

周囲の理解とサポートが育休生活を豊かにします。

復職後のキャリアを見据えた準備

育休は終わりではなく、その後のキャリアを見据えた準備も大切です。

育休中にスキルアップのための学習や、業界動向の情報収集を行うことも有効でしょう。復職前には上司との面談で、働き方や業務内容を改めてすり合わせることが重要です。

小学校3年生までの時短勤務など、復職後の柔軟な制度を積極的に活用し、育児と仕事のバランスを長期的に維持しましょう。