概要: ダブルワークで扶養内を賢く維持したい方へ。パート収入の限度額、年末調整・確定申告の注意点、大学生や母子家庭の場合の活用法まで、扶養内をキープしながら収入を増やすためのポイントを解説します。
ダブルワーク(掛け持ち)で収入を増やしたいけれど、扶養から外れたくない、税金や社会保険料をできるだけ抑えたい、とお考えの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、2025年時点の最新情報に基づき、扶養内で賢くダブルワークをするためのポイントを解説します。収入アップと扶養維持の両立を目指しましょう。
ダブルワークで扶養内を維持する基本ルール
扶養の「壁」の種類とその影響
扶養内で働くためには、まず「年収の壁」の種類を理解することが不可欠です。
主に、所得税に関わる「103万円の壁」、そして社会保険料に関わる「106万円の壁」と「130万円の壁」の3つが存在します。
これらの壁を超えると、本人に所得税が発生したり、自身で社会保険料を負担する必要が生じたり、あるいは配偶者の社会保険上の扶養から外れてしまったりする可能性があります。
それぞれの壁が持つ意味と、ご自身の働き方に与える影響を把握することで、計画的に収入を調整し、無駄な出費を抑えることが可能になります。
ダブルワークでは、これらすべての壁を意識しながら、合計収入を管理することが求められます。
2025年最新!年収の壁の変更点
2025年度に向けて、これらの「年収の壁」には重要な変更点が見込まれており、賢く働く上で見逃せないポイントです。
まず、所得税がかかる基準が従来の「103万円の壁」から、給与所得控除と基礎控除の見直しにより、「123万円の壁」、または最大で「160万円まで非課税」となる可能性が浮上しています。これにより、より多くの収入を得ながら所得税の負担を軽減できる道が開けるかもしれません。
また、社会保険上の扶養における「130万円の壁」についても、19歳以上23歳未満の親族に限り、基準が「150万円未満」に緩和される見込みです。
さらに、106万円の壁も撤廃される動きがあるため、最新の情報を常に確認し、ご自身の状況に合わせた働き方を検討することが大切です。
複数の職場での収入合算の考え方
ダブルワークで扶養内を維持する上で最も重要なのが、複数の職場からの収入を合算して考えるという点です。
税金や社会保険料の扶養判定は、原則として個々の職場での収入ではなく、年間を通じて得た全ての給与収入の合計額に基づいて行われます。
例えば、配偶者の社会保険の扶養に入り続けるためには、一般的に「各勤務先での年収を106万円以下に抑える」ことと、「年収の合計を130万円未満にする」ことが目安とされています。2025年の改正で19~23歳未満の親族は150万円未満が目安となります。
どちらかの職場で社会保険の加入条件を満たしていなくても、合計額が壁を超えてしまうと、扶養から外れたり、自身で税金や保険料を負担したりする可能性が出てきます。
常に全体の収入を把握し、年末に向けて調整を行う計画性が成功の鍵となります。
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103万円・123万円の壁:所得税の影響
かつての「103万円の壁」は、所得税が発生するかどうかの重要な分岐点でした。これは、給与所得控除(最低55万円)と基礎控除(48万円)の合計額(55万円+48万円=103万円)を超える給与収入に所得税がかかるという仕組みによるものです。
しかし、2025年度の税制改正により、この壁が見直される見込みです。具体的には、所得税がかからない基準が「123万円の壁」、または最大「160万円まで非課税」となる可能性が示されています。
これにより、以前よりも多くの収入を得ても本人の所得税がかからないケースが増えるため、手取り収入を最大化できるチャンスが広がります。
ただし、この「壁」を超えても所得税の負担額は収入に応じて段階的に増えるため、すぐに大きな負担になるわけではありません。
106万円・130万円の壁:社会保険料の分岐点
社会保険料(健康保険・厚生年金)への加入義務が生じるのが、「106万円の壁」と「130万円の壁」です。
106万円の壁は、特定の条件(従業員数51人以上の企業、週の労働時間20時間以上、月額賃金8.8万円以上など)を満たす場合に、自身で社会保険に加入する必要が生じるラインです。2024年10月からは従業員数51人以上の企業も対象となり、適用範囲が拡大されています。
これに対し、130万円の壁は、主に配偶者などの社会保険の扶養から外れる可能性が高くなる基準です。
この壁を超えると、自身で国民健康保険と国民年金に加入するか、勤務先の社会保険に加入して、月々約2万円程度の保険料を支払う必要が出てきます。これにより、手取り収入が大幅に減少する可能性があるため、この壁を意識した働き方が非常に重要になります。
配偶者控除・配偶者特別控除との関係
ダブルワークでパート収入を得る際、ご自身の収入だけでなく、扶養する側の配偶者が受けられる控除についても考慮に入れる必要があります。
妻(夫)の年収が一定額以下の場合、夫(妻)は配偶者控除または配偶者特別控除を受けることができます。
- 配偶者控除:扶養される側の年収が123万円以下(2025年以降の所得税上の扶養の壁変更後)の場合に適用され、扶養する側の所得税が軽減されます。
- 配偶者特別控除:扶養される側の年収が123万円を超えても、200万円以下であれば適用されます。特に、年収160万円までは満額の控除が受けられるため、扶養する側の税負担を軽減しつつ、扶養される側も一定以上の収入を得ることが可能です。
ご自身の収入がこれらの控除額にどのように影響するかを把握し、世帯全体の手取り収入が最大になるように計画的に働くことが、賢い選択と言えるでしょう。
年末調整と確定申告:ダブルワークの場合の注意点
ダブルワークでも確定申告が不要なケース
ダブルワークをしていても、必ずしも確定申告が必要というわけではありません。
例えば、年間の給与収入合計が103万円以下(2025年以降は123万円以下)であれば、基本的には所得税が発生しないため、確定申告は不要となるケースが多いです。
また、主な勤務先で年末調整を受けており、もう一方の副業からの所得が給与所得以外の所得(例えば、雑所得など)であり、その合計額が年間20万円以下の場合も、確定申告は不要とされています。
この場合、年末調整を受けていない方の給与所得や副業所得に対する税金は、源泉徴収されている分で完結していることがほとんどだからです。しかし、厳密には所得税がかからないケースであっても、住民税の申告が必要な場合があるため注意が必要です。
確定申告が必要なケースと手続きのメリット
ダブルワークの場合、以下のようなケースでは確定申告が必要になります。
- 年間を通じて給与収入の合計が103万円(2025年以降は123万円)を超えるにもかかわらず、どちらの職場でも年末調整を受けていない場合。
- 複数の職場から給与を受け取っており、年末調整を受けている職場以外の給与所得と、給与所得以外の所得(例: 副業の雑所得)の合計が年間20万円を超える場合。
- 本業以外に不動産収入や医療費控除、住宅ローン控除などの適用を受ける場合。
確定申告を行う最大のメリットは、源泉徴収された税金が還付される可能性があることです。
例えば、年末調整が行われていない職場の給与から所得税が天引きされている場合、確定申告をすることで、払い過ぎた税金が戻ってくることがあります。これにより、世帯全体の手取りを増やすことにも繋がります。
住民税でバレる?職場への影響と対策
ダブルワークをしている場合、確定申告を行うことで、勤務先に副業が知られる可能性があります。これは、住民税の徴収方法が関係しています。
通常、住民税は勤務先の給与から天引きされる「特別徴収」という形で納められます。複数の職場からの収入を合算して住民税額が計算されるため、本業の会社に通知される住民税額が、本業の給与から計算される金額よりも多くなり、経理担当者が不審に思うことで副業が発覚するケースがあるのです。
このリスクを避けるための対策として、確定申告の際に、副業分の住民税を自分で納める「普通徴収」を選択する方法があります。
これにより、副業分の住民税は自宅に送付される納付書で支払うことになるため、本業の会社に副業が知られる可能性を低減できます。ただし、普通徴収が選択できない自治体や、給与所得が複数ある場合は適用されないケースもあるため、事前に確認が必要です。
大学生・母子家庭のダブルワーク:扶養内を賢く活用する方法
学生の「勤労学生控除」と扶養の壁
大学生がダブルワークをする場合、特別な控除制度である「勤労学生控除」を活用することで、より多くの収入を得ながら所得税の負担を軽減できます。
勤労学生控除を適用すると、本人の給与収入が130万円までであれば、所得税が非課税になります。これは、通常の所得税の壁(103万円、2025年からは123万円)よりも高い金額で税金がかからないため、学生にとっては非常に有利な制度です。
ただし、この控除はあくまで本人の所得税に関するものであり、親の税法上の扶養(合計所得金額48万円以下)や、社会保険上の扶養(年収130万円未満、2025年からは19〜23歳未満は150万円未満)の条件とは別に考慮する必要があります。
親の扶養を外れると、親の税負担が増えたり、本人が社会保険料を負担したりする必要が出てくるため、全体のバランスを見て調整することが重要です。
母子家庭の控除制度(寡婦控除など)と年収の壁
母子家庭でダブルワークをする場合、「寡婦控除」などの特別な控除制度が適用される可能性があります。
寡婦控除は、特定の条件を満たすひとり親の方(合計所得金額が500万円以下など)が受けられる所得控除で、所得税や住民税の負担を軽減することができます。これにより、税金を抑えつつ、より多くの手取り収入を得ることが可能です。
しかし、ダブルワークによる収入が増えると、児童扶養手当など、他の公的な支援制度の所得制限に影響を与える可能性もあります。
扶養内で働くことは、これらの手当の受給を継続するためにも重要であり、特に社会保険上の扶養の壁(130万円、または106万円)を超えないように収入を調整することで、手取り収入と支援制度の両方を賢く活用できるでしょう。
19歳〜23歳の特例!扶養内で稼ぐコツ
2025年度の税制改正により、19歳以上23歳未満の親族が社会保険上の扶養に入る際の年収基準が緩和される見込みです。従来の130万円の壁が、150万円未満に引き上げられることで、この年齢層の若者がより多くの収入を得ながら、親の社会保険上の扶養に留まることが可能になります。
これは、主に大学生や専門学校生などがアルバイトで収入を得る際に、扶養から外れることを心配せずに、これまでよりも多く稼げるようになることを意味します。
この特例を活用することで、学費や生活費の足しにするための収入を増やしつつ、社会保険料の自己負担を回避できるため、手取り収入を効率的に増やすことができます。
ただし、親の税法上の扶養(合計所得金額48万円以下)は変わらないため、所得税上の扶養には引き続き注意が必要です。
賢く稼ぐ!ダブルワークで合計88,000円以下に抑えるコツ
社会保険の加入条件と月収8.8万円の目安
ダブルワークで社会保険料の負担を避けたい場合、最も意識すべきは「月収8.8万円」という目安です。これは年収106万円の壁を月額に換算した金額であり、特定適用事業所で働く場合の社会保険加入条件の一つとなっています。
具体的には、以下の全ての条件を満たすと社会保険の加入義務が発生します。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない(夜間・通信・定時制は除く)
- 従業員数51人以上の企業(2024年10月からは51人以上が対象)
つまり、この月額8.8万円を超えないようにシフトを調整することで、社会保険料の自己負担を回避できる可能性が高まります。複数の職場がある場合でも、それぞれの職場での月収がこの目安を超えないように注意することが重要です。
複数の職場で社会保険加入を避ける調整方法
ダブルワークで社会保険への加入を避け、扶養内をキープするためには、各勤務先での労働時間や収入を戦略的に調整する必要があります。
最も効果的なのは、いずれの職場でも月額賃金8.8万円以下に抑えることです。例えば、一つの職場で月8万円、もう一つの職場で月4万円稼いでいる場合、合計で月12万円になりますが、どちらの職場でも8.8万円を超えていないため、それぞれの職場で社会保険への加入義務は生じません。
ただし、年収の合計が130万円を超えてしまうと、配偶者等の扶養から外れてしまうため、自己負担で国民健康保険と国民年金に加入する必要が出てきます。このため、各勤務先での収入を調整しつつ、全体の年収が130万円未満に収まるように細心の注意を払うことが重要です。
雇用主との契約時やシフト相談の際に、扶養内での働き方を希望する旨を伝えて調整を図ることも有効です。
労働時間と体調管理の重要性
ダブルワークは収入を増やす有効な手段ですが、労働時間が増えることで、心身への負担も大きくなる傾向があります。
無理なシフトの詰め込みは、疲労の蓄積やストレスの増大を招き、結果として体調を崩してしまったり、仕事のパフォーマンスが低下したりするリスクがあります。これでは、せっかくのダブルワークも長続きしません。
賢く稼ぎ続けるためには、自身の体力や生活リズムを考慮し、無理のない範囲でシフトを調整することが何よりも大切です。
十分な休息時間を確保し、リフレッシュできる時間を設けることで、長期的に安定してダブルワークを続けることができます。また、ダブルワークが会社の就業規則で禁止されていないか、事前に確認することも忘れてはなりません。
健康こそが、働き続ける上での最大の資産です。計画的な働き方で、収入アップと健康維持を両立させましょう。
賢くダブルワークを進めることで、収入アップと扶養内の維持を両立させることが可能です。
最新の情報を常に把握し、ご自身の状況に合わせて計画的に働き、無理なく理想の収入を目指しましょう。
まとめ
よくある質問
Q: ダブルワークで扶養内を維持するには、収入の上限はいくらですか?
A: 一般的に、配偶者控除や扶養控除の対象となるためには、パート収入などの合計が年間103万円以下である必要があります。ただし、これはあくまで目安であり、個別の状況によって異なります。
Q: ダブルワークで、それぞれのパート先で年末調整は別々に行ってもらえますか?
A: はい、基本的にはそれぞれのパート先で年末調整を受けることができます。ただし、最終的な税額の計算は、年末調整とは別に確定申告が必要になる場合があります。
Q: 大学生がダブルワークをする場合、扶養から外れないための注意点はありますか?
A: 大学生の場合、給与所得が103万円を超えると親の扶養から外れる可能性があります。アルバイト代などの収入合計額を常に把握し、103万円を超えないように注意が必要です。
Q: 母子家庭でダブルワークをする場合、非課税になる収入の上限はありますか?
A: 母子家庭の場合、所得税法上の寡婦控除や扶養親族等に係る各種控除が適用されることで、非課税となる所得の上限が高くなる場合があります。具体的な金額については、税務署や税理士にご相談ください。
Q: ダブルワークで、それぞれの収入が88,000円以下であれば、合計しても問題ないですか?
A: 1か月の給与収入が88,000円以下であれば、多くの場合は源泉徴収されません。ただし、これはあくまで源泉徴収の目安であり、年間の合計所得が103万円を超えると扶養から外れる可能性があります。年間の合計所得を常に把握しておくことが重要です。