ダブルワークを始める前に!知っておきたい手続きと書類

「ダブルワークに挑戦してみたいけれど、何から手をつけていいか分からない…」
そんな不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

ダブルワーク(副業)は、収入アップやスキルアップ、キャリアの幅を広げるなど、多くのメリットがあります。
しかし、始める前に知っておくべき手続きや注意点も少なくありません。

この記事では、最新の情報を基に、ダブルワークを始める前に知っておきたい手続きや必要書類について徹底解説します。
ご自身の状況に合わせて適切な準備を行い、スムーズにダブルワークをスタートさせましょう!

ダブルワークを始める前に伝えるべきこと

ダブルワークを始めるにあたり、まず最初に行うべきは、現在の勤務先への確認と、必要な情報の把握です。
これらを怠ると、後々思わぬトラブルに発展する可能性もあります。

就業規則の確認と会社への事前相談

ダブルワークを始める前に、最も重要なのが現在の勤務先の就業規則の確認です。
副業が許可されているか、どのような条件があるかを確認しましょう。
就業規則で副業が禁止されているにもかかわらず行った場合、懲戒処分の対象となる可能性もあります。

最近では副業を認める企業が増えており、2023年の調査では27.5%の企業で副業が認められているというデータもあります。
しかし、会社によっては「許可制」や「届出制」を導入している場合もあるため、必ず事前に人事部や上司に相談し、許可を得るようにしましょう。

事前に相談することで、会社からの理解を得られ、不要な誤解やトラブルを避けることができます。
副業の内容や時間帯によっては、本業に支障が出ないか懸念されることもあるため、誠実な姿勢で臨むことが大切です。

確定申告の必要性と年間所得の把握

ダブルワークをする上で避けて通れないのが確定申告です。
原則として、全ての収入を合算して所得税を計算するため、多くの場合、確定申告が必要になります。
特に、年末調整が本業の1社でしか行われないため、他の勤務先からの収入がある場合は注意が必要です。

確定申告が必要となる主なケースとしては、「2社以上から給与を得ており、1社でしか年末調整をしていない場合」や、
「給与所得以外に、年間20万円を超える所得がある場合」
「事業所得や雑所得の合計金額が年間48万円を超える場合」などが挙げられます。

自身のダブルワークによる所得が上記の基準を超えるかどうか、事前にしっかりと把握しておくことが重要です。
年間の所得が103万円以下の場合や、年末調整を受けていない副業分の所得が20万円以下の場合など、確定申告が不要なケースもありますが、
念のため自身の収入状況を計算し、必要であれば早めに税務署や税理士に相談することをおすすめします。

住民税への影響と納税方法の選択

ダブルワークによって収入が増えると、当然ながら住民税も増加します。
住民税は前年の所得に対して課税され、お住まいの市区町村が計算します。
確定申告を行うと、税務署から市区町村へ所得情報が連携されるため、別途住民税の申告は不要なことが多いです。

しかし、住民税の納付方法には注意が必要です。
通常、住民税は本業の給与から天引き(特別徴収)されます。
この際、副業収入を含めた総所得に基づいた住民税額が本業の勤務先に通知されるため、本業の会社に副業が知られる可能性があります。

これを避けるためには、副業分の住民税を自分で納付する「普通徴収」を選択できる場合があります。
確定申告書にその旨を記載することで、本業の給与からの天引きとは別に、自宅に送られてくる納付書で自分で納付することが可能です。
ただし、普通徴収が認められるかは自治体によって異なるため、事前に市区町村役場に確認しておくことが重要です。

ダブルワークの手続きと提出書類を徹底解説

ダブルワークを始める上で、最も多くの人が頭を悩ませるのが、具体的な手続きと必要書類でしょう。
ここでは、確定申告、社会保険、住民税に関する手続きと、それぞれの提出書類について詳しく見ていきます。

確定申告に必要な書類と期間

確定申告は、通常、所得があった年の翌年2月16日から3月15日までに行う必要があります。
必要な書類は、所得の種類や状況によって異なりますが、主に以下のものが挙げられます。

  • 確定申告書: 国税庁のウェブサイトからダウンロードするか、税務署で入手できます。
  • 本業の源泉徴収票: 年末に本業の勤務先から発行されます。
  • 副業の源泉徴収票(給与所得の場合): 副業がアルバイトやパートなどで給与として支払われている場合に必要です。
  • 業務委託先から受け取る支払調書(業務委託の場合): 副業が業務委託契約の場合、取引先から送られてくることがあります。ただし、支払調書の提出は義務ではないため、発行されないこともあります。その場合は、入出金履歴などで収入を証明できるよう準備しましょう。
  • 本人確認書類: マイナンバーカード、または通知カードと運転免許証などの組み合わせが必要です。
  • 控除に関する書類: 生命保険料控除証明書、医療費の領収書、iDeCoの掛金証明書など、適用される控除があれば準備します。

確定申告が不要な場合でも、場合によっては還付を受けられる可能性もあるため、自身の状況を確認し、必要であれば積極的に申告を検討しましょう。

社会保険の二重加入と必要な手続き

ダブルワークで働く場合、社会保険の取り扱いも重要なポイントです。
いずれの勤務先でも社会保険の加入条件を満たす場合(一般的に週20時間以上の勤務、月額賃金88,000円以上など)、原則として両方の勤務先で社会保険に加入することになります。

社会保険の二重加入について、雇用保険は収入の高い方の1つの事業所でのみ加入しますが、健康保険と厚生年金保険は原則として両方の事業所で加入します。
この場合、保険料は両方の収入を合算して計算され、各勤務先の給与から按分されて天引きされます。
二重加入となる場合は、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を年金事務所へ提出する必要があるため、必ず手続きを行いましょう。

社会保険に二重加入することのメリットとしては、将来の年金受給額が増加する、健康保険の保障が手厚くなるなどが挙げられます。
一方、社会保険料の負担が増え、手取り額が減少する可能性があるというデメリットも考慮しておく必要があります。

住民税の申告方法と普通徴収の検討

前述の通り、確定申告を行えば、その情報が税務署から市区町村へ連携されるため、改めて住民税の申告をする必要はありません。
しかし、確定申告が不要なケースであっても、副業による所得が20万円以下の場合、市区町村への住民税の申告が必要になることがあります。
これは、所得税と住民税の計算基準が異なるためです。

会社に副業を知られたくない場合は、住民税の「普通徴収」を選択しましょう。
確定申告書第二表の「住民税・事業税に関する事項」欄にある「給与所得以外の住民税の徴収方法」の項目で、「自分で納付(普通徴収)」にチェックを入れることで選択できます。
これにより、副業分の住民税は自宅に納付書が送付され、自分で金融機関やコンビニエンスストアなどで納付することが可能になります。

ただし、普通徴収が認められるかどうかは自治体によって判断が分かれる場合があります。
特に、副業が給与所得の場合、普通徴収を選択できないケースもあるため、念のため事前に居住地の市区町村役場に確認を取ることをお勧めします。

扶養控除申告書の書き方と注意点

ダブルワークをする際に、多くの人が疑問に思うのが「扶養控除申告書」の扱いです。
本業と副業の両方で給与所得がある場合、どのように記載し、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。

扶養控除申告書の提出先と記載内容

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、年末調整を行う際に、所得税の計算のもととなる所得控除(配偶者控除や扶養控除など)を適用するために提出する書類です。
この書類を提出することで、月々の給与から源泉徴収される所得税額が適切に計算されます。

この申告書は、原則として「主たる給与の支払者」、つまり本業の会社に提出するのが一般的です。
記載内容としては、扶養している親族の有無や、本人の障害者区分、寡婦(夫)控除の適用などを記入します。
この申告書を提出している場合、所得税法上の「甲欄」が適用され、税額が低めに設定されます。

扶養控除申告書は毎年提出が必要で、年の途中で扶養家族の状況などに変更があった場合は、速やかに会社に再提出する必要があります。
正確に記載することで、年末調整の際に適切な控除が受けられるようになります。

ダブルワーク時の扶養控除申告書の取り扱い

ダブルワークで複数の会社から給与を受け取っている場合、扶養控除申告書は1つの勤務先にしか提出できません。
通常は、収入の多い本業の会社に提出します。
そのため、副業の勤務先ではこの申告書を提出しないことになります。

副業の勤務先に扶養控除申告書を提出しない場合、所得税法上の「乙欄」が適用されます。
乙欄が適用されると、扶養控除や社会保険料控除などが考慮されず、給与から差し引かれる源泉徴収税額が甲欄適用時よりも高めに設定されます。
これは、年末調整をしない勤務先からの給与に対しては、税金を多めに徴収しておくことで、最終的な税額との差が大きくならないようにするための措置です。

そのため、副業の給与明細を見ると、本業よりも多くの税金が天引きされているように感じるかもしれません。
しかし、これは一時的なものであり、最終的な税額は後述する確定申告で精算されますので、心配する必要はありません。

所得税と住民税への影響を理解する

扶養控除申告書の提出状況は、月々の所得税の源泉徴収額に直接影響します。
本業では甲欄が適用され、副業では乙欄が適用されることで、副業分の給与からは多めに税金が天引きされます。
しかし、これはあくまで概算であり、年間の最終的な所得税額は、全ての収入を合算して計算する確定申告で決定されます。

確定申告を行うことで、副業で乙欄が適用され高めに天引きされていた所得税が、本来の年間の税額に合わせて精算されます。
結果として、払い過ぎていた税金が還付されるケースも多くあります。
つまり、ダブルワークの場合は、確定申告が税金を正確に計算し、清算するための必須の手続きと言えるでしょう。

また、住民税についても、所得税と同じく最終的には年間所得全体に対して課税されます。
扶養控除申告書の提出の有無が直接住民税の計算方法に影響するわけではありませんが、確定申告の内容が住民税額の決定に反映されます。
正しい確定申告を行い、適切な納税方法(普通徴収など)を選択することで、安心してダブルワークを続けることができます。

ダブルワークの履歴書・職務経歴書の書き方

ダブルワークを始める際、新たな職場を見つけるために履歴書や職務経歴書を作成する機会もあるでしょう。
複数の職務経験をどのように効果的にアピールするかは、採用の成否を分ける重要なポイントです。

ダブルワークであることを明確にする記載方法

ダブルワークであることを応募先の企業に隠すのは、後々のトラブルや信頼関係の喪失につながる可能性があります。
むしろ、最初から「兼業」や「副業」であることを明確に記載し、正直に伝えることが、信頼を得る上で重要です。

職歴欄には、本業の会社名とその在籍期間、職務内容を記載し、その下に副業の会社名(または事業内容)と在籍期間、職務内容を記載します。
その際、副業であることを示すために「〇〇株式会社(副業として従事)」や「△△事業(業務委託契約にて兼業)」といった形で明記すると良いでしょう。

また、履歴書の本人希望記入欄や職務経歴書の冒頭に、「現在、〇〇(本業の職種)として勤務しており、並行して〇〇(副業の職種)に従事しております」といった形で、ダブルワークであることを簡潔に伝え、本業に支障がない旨を添えることで、応募企業に安心感を与えることができます。

スキルや経験を効果的にアピールするポイント

ダブルワークは、単に収入を増やすだけでなく、様々なスキルや経験を身につける絶好の機会です。
履歴書や職務経歴書では、その多岐にわたる経験から得られたスキルを具体的にアピールしましょう。

例えば、複数の仕事を掛け持ちすることで培われる時間管理能力マルチタスク能力は、多くの職種で高く評価される汎用性の高いスキルです。
また、本業とは異なる分野での副業であれば、専門知識の幅広さや、異なる業界での経験を通じて得られた新しい視点もアピールポイントになります。

応募先の職種に活かせる経験を優先して記述し、どのような業務で、どのような成果を出したのかを具体的な数字やエピソードを交えて説明することが重要です。
例えば、「〇〇の業務を効率化し、月間××時間のコスト削減に貢献しました」といった具体的な実績を記載することで、より説得力が増します。

複数の職務経験を整理して伝えるコツ

複数の職務経験があると、職務経歴書が長くなりがちで、読みにくくなることがあります。
効果的に伝えるためには、情報の整理が重要です。

  • キャリア式職務経歴書の活用:
    時系列で全てを羅列するのではなく、職務内容やスキル系統でグルーピングする「キャリア式」職務経歴書が有効です。
    例えば、「マーケティング経験」「プロジェクトマネジメント経験」といった見出しの下に、本業・副業それぞれの関連経験をまとめて記述することで、アピールしたいスキルが明確になります。
  • 応募職種との関連性を重視:
    応募する職種との関連性が高い業務から優先的に記載し、詳細に記述しましょう。
    関連性の低い業務は簡潔にまとめるか、場合によっては割愛することも検討します。
  • 簡潔かつ具体的に:
    一つ一つの記述は簡潔に、しかし具体的に実績を記述することを心がけます。
    冗長な表現を避け、箇条書きなどを活用して、パッと見て理解しやすいレイアウトを意識しましょう。

複数の経験を論理的かつ分かりやすく伝えることで、採用担当者はあなたの多様な能力と柔軟性を評価してくれるでしょう。

ダブルワークにおける定期券・手帳の活用法

ダブルワークは、本業と副業、そしてプライベートの時間を効率的にやりくりする能力が求められます。
交通費の管理やスケジュール調整など、日常生活におけるちょっとした工夫が、スムーズな両立の鍵となります。

交通費支給のルールと定期券の注意点

ダブルワークの場合、通勤経路が複雑になったり、複数の勤務先への移動が発生したりすることがあります。
特に注意が必要なのが交通費の支給ルールです。
一般的に、会社からの交通費支給は、通勤にかかる実費を補填するものですので、複数の会社から二重に交通費を受け取ることはできません。

もし本業と副業で通勤ルートが重なる場合、どちらか一方の会社からのみ交通費が支給されるのが通常です。
事前に両方の会社に交通費支給のルールを確認し、二重取りにならないよう注意しましょう。
定期券を購入する場合も、双方の会社への通勤に最も効率的な区間を検討し、その区間の定期代について、どちらの会社がどの程度負担するのかを明確にしておく必要があります。

交通系ICカードの利用履歴などを活用して、実際の交通費を正確に記録しておくことも大切です。
確定申告の際、交通費が経費として認められるケースもありますので、領収書や記録は大切に保管しておきましょう。

業務効率化に役立つ手帳・アプリの活用

複数の仕事を掛け持ちするダブルワーカーにとって、時間管理とタスク管理は最も重要なスキルの一つです。
これを効率的に行うために、アナログの手帳やデジタルツールを最大限に活用しましょう。

例えば、GoogleカレンダーやOutlookカレンダーのようなデジタルツールは、複数のカレンダーを統合して管理できるため、本業、副業、プライベートの予定を一覧で把握するのに非常に便利です。
リマインダー機能や共有機能も活用することで、予定の抜け漏れを防ぎ、関係者とのスムーズな連携も可能になります。

タスク管理には、Trello、Asana、Todoistなどのプロジェクト管理ツールや、シンプルなToDoリストアプリが役立ちます。
タスクを細分化し、それぞれの締め切りや優先順位を設定することで、「今、何に集中すべきか」が明確になり、効率的に作業を進めることができます。
アナログ派であれば、一元管理できる手帳を使い、色分けや記号を使って本業・副業のタスクを区別するのも良い方法です。

時間管理術とスケジュール調整のヒント

ダブルワークを成功させるためには、限られた時間を最大限に活用するための時間管理術が不可欠です。
いくつかのヒントを紹介します。

  • ポモドーロテクニック: 25分集中して作業し、5分休憩を繰り返す方法です。集中力を維持しやすくなります。
  • タスクの優先順位付け: 緊急度と重要度のマトリクスを使って、タスクに優先順位をつけましょう。重要で緊急なものから取り組むことで、効率が上がります。
  • バッファ時間の確保: 予期せぬトラブルや急な依頼に対応できるよう、スケジュールには必ず余裕(バッファ)を持たせましょう。
  • 休憩と休息を計画的に: 無理なスケジュールは心身の疲弊を招きます。意識的に休憩時間を設け、十分な睡眠と休息を取ることで、パフォーマンスを維持できます。

自分に合った時間管理術を見つけ、無理のないスケジュールを作成することが、ダブルワークを長く継続するための秘訣です。
時には家族や友人にも協力をお願いするなど、周囲の理解を得ながら調整することも大切です。